意見2:六ヶ所再処理工場は、1993年の着工から32年後の今なお操業開始の目処が立たず、2024年8月には2026年度末までの27回目の竣工時期延期が発表されている。ところが、アクティブ試験を強行したため、六ヶ所再処理工場の主工程は極度に放射能汚染されており、設計工事認可審査で耐震補強工事が必要になっても工事ができないという「レッド・セル問題」を抱えていて、審査不合格になる可能性が高い。たとえ、操業できても、プルサーマル実績から10%操業に留まらざるを得ない。にもかかわらず、第7次エネルギー計画(案)では、むつ市中間貯蔵施設での50年貯蔵後の搬出先を六ヶ所再処理工場とするため、六ヶ所再処理工場の「(操業期間40年以上の)長期利用」が打ち出され、これまで「第二再処理工場」で再処理する計画だった「使用済MOX燃料」を六ヶ所再処理工場の処理対象に加える方針までもが謳われている。もんじゅ廃炉や第二再処理工場計画消失で一層明確になった「プルトニウム利用の核燃料サイクル」の破綻を率直に認め、「軽水炉でのプルトニウム利用=プルサーマルの中止」と「高速炉開発からの撤退」を第7次エネルギー基本計画に明記すべきである。そして、行き先のない使用済燃料をこれ以上生み出さないため、ドイツを見習って脱原発へ転換し、すべての原発を1日でも早く閉鎖することである。第7次エネルギー基本計画では、その道筋をこそ国民に示すべきである。
理由2:第7次エネルギー基本計画(案)では、「中間貯蔵施設等に貯蔵された使用済燃料は六ヶ所再処理工場へ搬出するという方針のもと、そのために必要となる同工場の安全性を確保した安定的な長期利用を進める。」と明記し、むつ市中間貯蔵施設での50年中間貯蔵後の使用済燃料搬出先を六ヶ所再処理工場と明示している。当初は「40年操業」が前提とされ、再処理等拠出金単価も「800tU/年×40年操業=総処理量32,000tU」を前提に算定されてきた。しかし、その前提そのものが崩れ、今や800tU/年のフル操業は夢物語となり、実際には10%程度の操業(総再処理量約3,200tU)しか見込めず、これでは、2024年6月末現在19,738tU(原発サイト16,770tU、六ヶ所再処理工場2,968tU)の一部しか再処理できないばかりか、2024年6月現在15.10兆円に膨れ上がった再処理事業費を賄えなくなっている。というのも、原子力委員会は「我が国におけるプルトニウム利用に関する基本的な考え方」(2018.7.31)において「プルサーマルの着実な実施に必要な量だけ再処理が実施されるよう認可を行う。」との方針に転換したが、2009~24年の15年間にプルサーマルで消費された英仏プルトニウムは5.7トン、年平均0.38トンにすぎないからである。こうなったのは、輸入MOX燃料費が輸入ウラン燃料費の10倍と高く、認可されたMOX燃料装荷体数の1/3程度しか装荷されていないこと、仏MOX燃料加工工場の品質欠陥で1/3操業となっていて、日本へのMOX燃料輸送が遅れていることなどによる。仮に、六ヶ所再処理工場が800tU/年の再処理量でフル操業すれば毎年6.6トンのプルトニウムが生み出されることから、年平均0.38トンの消費に見合う六ヶ所再処理工場の操業度は平均5.8%程度に留まらざるを得ない。福島事故後の長期停止などを除外して、「13ヶ月運転・3ヶ月定期点検のサイクルで連続的にプルサーマルが実施される」と過大想定しても、年平均0.692トン、10%程度の操業に留まる。これでは、仮に、六ヶ所再処理工場が操業開始できたとしても、現在貯蔵されている使用済燃料2,968tUを処理するのがやっとであり、仮に、原発サイトや中間貯蔵施設に貯蔵された使用済燃料を六ヶ所再処理工場へ搬入できたとしてもほとんど再処理できないことになる。最大のプルトニウム所有者である東京電力は原発再稼働そのものが実現不可能で、プルサーマルの見込みは全くない。このような操業状態で、40年以上へ利用期間を延期してもほとんど問題の解決にならない。六ヶ所再処理工場が仏再処理工場と同様に老朽化のために故障や事故を多発させ、重大事故を起こす危険性すらあり、MOX燃料加工工場も品質欠陥でほとんど操業できない事態に陥るリスクもある。こうなれば、国内製造MOX燃料費は輸入MOX燃料よりさらに高騰せざるを得ないであろう。このように、時を経るに連れて、六ヶ所再処理工場・MOX燃料加工工場の抱える問題点が顕在化していかざるを得ない。それは現時点ですでに十分な根拠をもって見通せるのであり、これを無視して「長期利用」で国民の目を欺き、嘘をつき続けるのは、もうやめるべきである。
また、第7次エネルギー基本計画(案)では、これまで「第二再処理工場」で計画されてきた「使用済MOX燃料の再処理については、国際連携による実証研究を含め、2030年代後半を目途に技術を確立するべく研究開発を進めるとともに、その成果を六ヶ所再処理工場に適用する場合を想定し、許認可の取得や実運用の検討に必要なデータの充実化を進める。」と明記し、六ヶ所再処理工場の再処理許可条件に使用済MOX燃料を加える方針を初めて打ち出した。すでに亡霊化していた「第二再処理工場」建設の可能性は跡形もなくなったと言えるが、それを六ヶ所再処理工場に押しつけることで、使用済MOX燃料の搬出先がなくなることを回避しようというのであろうが、姑息である。プルサーマルによる使用済MOX燃料を再処理しても、回収されるプルトニウムは非核分裂性プルトニウムの割合が多く、劣化していて使い物にならない。
六ヶ所再処理工場の操業が、原発サイト内で溜まり続ける使用済燃料の問題を解決する「最後の切り札」とされているため、すべての矛盾が六ヶ所再処理工場に集中するという結果を招いている。これを解決する道は、再処理をやめ、プルサーマルや高速炉開発などのプルトニウム利用を断念することである。そして、脱原発へ転換して、行き先のない使用済燃料をこれ以上生み出すのをやめることである。第7次エネルギー基本計画ではその道筋をこそ国民に示すべきである。
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