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第7次エネルギー基本計画(案)に4つ目の意見を提出しました

第7次エネルギー基本計画(案)に4つ目の意見を提出しました

意見4:第7次エネルギー基本計画(案)では、「再生可能エネルギーか原子力かといった二項対立的な議論ではなく、再生可能エネルギーと原子力をともに最大限活用していくことが極めて重要となる。」としているが、再エネと原子力を最大限活用するための施策は正反対であり、両立し得ない。太陽光・風力の最大限活用には、欧州連合EUで具体的に実施されて実績を上げてきた「再エネ優先給電」と「送電部門の所有権分離」が不可欠である一方、原子力の最大限活用には、「原子力・石炭火力などのベースロード電源優先」と「送電部門の電力会社支配維持」が不可欠であり、再エネ最大限活用のための施策とは根本的に対立する。太陽光・風力は限界費用が最も安く、メリットオーダーによれば真っ先に優先給電されるはずだが、低需要期には出力制御されて給電できず、送電容量制限を口実に優先アクセスも保障されない。このような現施策の延長線上では、再エネの抜本的拡大はあり得ず、原子力最大限活用も再エネ最大限活用も期待通りには進まず、共倒れになる。さらに、第7次エネルギー基本計画(案)では、「廃炉を決定した原子力発電所を有する事業者の原子力発電所のサイト内での次世代革新炉への建て替え」の「具体化を進めていく」と踏み込んでいる。しかし、「次世代革新炉への建て替え」は百万kW級原発1基当り1兆数千億円~2兆数千億円の建設費を要し、これを電気料金(託送料金)に転嫁する方針であることから、建て替えが進むほど電気料金は高騰せざるをえない。原子力の電気を使いたくないために新電力へ契約変更した消費者からも原発建て替え費を徴収するのは、商法違反でもある。福島事故の実態に即しても次世代革新炉の安全性は実証されておらず、福島事故を繰り返すリスクも決して小さくない。福島事故を繰り返さないためにも、現行の「可能な限り原発依存度を低減する」方針を堅持し、「次世代革新炉への建て替え」を認めず、再生可能エネルギーを「主力電源として最優先の原則の下で最大限の導入に取り組」むという現エネルギー基本計画を具体化するため、「再エネ優先給電」と「送配電部門所有権分離」へ転換すべきである。

理由4:「再生可能エネルギーか原子力かといった二項対立的な議論」は決して恣意的な課題設定によるものではなく、現行のエネルギー政策そのものが「原子力優先施策」を次々と具体化する一方、「再エネ優先施策」を排除し、後退させ、「二項対立」させているからである。電力需給に係る施策では、「原子力・石炭火力などベースロード電源優先」と「再エネ優先給電」は互いに対立し、両立することなどあり得ない。電力送電に係る施策では、原子力推進のためには「送配電部門の電力会社支配」が不可欠である一方、太陽光・風力など再エネ推進のためには「送電部門の所有権分離」が不可欠であり、両者は二律背反である。これらの「二項対立的施策」のどちらをとるかで第7次エネルギー基本計画の性格が決まる。第六次エネルギー基本計画では、再生可能エネルギーを「主力電源として最優先の原則の下で最大限の導入に取り組」むと書き込みながら、「原子力・石炭火力などベースロード電源優先」から「再エネ優先給電」へ転換せず、「送電部門の所有権分離」を拒否し続けて「送配電部門の電力会社支配」を維持してきた。すべては原発再稼働を進め、原発新増設を復活させるためであり、その結果、太陽光・風力発電は、固定価格買取制度FITで一時的に普及したものの、進展速度が低下した。国内最大の発電会社JERAによる電力市場相場操縦事件、関西電力など電力四社によるカルテル事件、送配電会社顧客情報等の漏洩事件など「電力会社の市場支配力行使」によって、ピーク時の約16%もの新電力が廃止・解散・取消または休止へ追い込まれた。この現実を教訓とすれば、再エネを一層急速に拡大するためには、「再エネ優先給電」と「送電部門の所有権分離」の2大施策を断行するしかないことは明らかだ。

日本と同様に、石炭火力中心の電力構成で、EUのような国際的連系線もないオーストラリアでは、2022年5月に発足した労働党のアルバニージー政権が、エネルギー政策を大転換させ、「2030年までに再エネ比率82%」、「2038年までに石炭火力ゼロ」を目標に掲げた。再エネ比率はすでに2022年度発電電力量の37%(太陽光16%、風力13%、水力・その他8%)に達し、南オーストラリア州では太陽光と風力が74%を占めており、決して非現実的な目標ではない。「太陽光16%」の6割強が屋根置き太陽光発電(主に自家消費)であり、大規模太陽光発電は4割弱に過ぎない。決して「広大な土地」が太陽光発電を広げているわけではない。「メリットオーダーによる再エネの優先給電」と「送電部門の所有権分離」は、すでに実現していて目標実現の条件はすでにできている。日本もオーストラリアのエネルギー基本計画を見習うべきである。

 また、第7次エネルギー基本計画(案)では、「次世代革新炉への建て替え」を打ち出す一方、「安定的に事業運営できるような事業環境の整備」とか「原子力事業者の予見可能性確保」とかの抽象的表現で、1基当り1兆数千億円~2兆数千億円もの巨額の建て替え費用を国民に転嫁する方針を検討するとしている。原発が経済性を有するものであれば、このような「事業環境の整備」など不要だ。2024年12月の発電コスト検証WGの試算によると、「2023年新設」の太陽光(事業用)が10.9円/kWhに対し原子力は12.6円/kWh以上と高い。火力は、LNG火力19.1円/kWh、石炭火力24.8円/kWhで、もっと高い。「2040年新設」では、太陽光(事業用)7.0~8.9円/kWh、太陽光(住宅用)7.8~10.7円/kWh、原子力12.5円/kWh以上となり、太陽光の優位が高まる。原子力だけ「以上」となっているのは重大事故による損害賠償・廃炉費に事故発生確率をかけたコストによって変わるからだ。しかも、原発の建設費はAP1000やEPRなど革新軽水炉では1兆数千億円~2兆数千億円に上がっている。最新のポーランド第1原発(AP1000×3基計375万kW)計画の総投資額は約450億ユーロ(約7.3兆円、1基2.4兆円)と見込まれている(原産新聞2024/12/20)。にもかかわらず、旧型原発の建設費5,496億円+追加的安全対策費1,707億円=7,203億円と設定している。これは旧型原発を建てて福島事故後の平均的な追加的安全対策費を加えたもので、AP1000やEPRなど革新軽水炉とは異なる。三菱重工業のSRZ-1200は基本設計段階のため建設費を見積もることすらできない。原発の経済性はすでに失われており、「次世代革新炉への建て替え」を断念し、「事業環境の整備」を検討することを含めて一切やめるべきである。

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