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高浜3・4号審査書案パブコメに意見を提出しました

高浜3・4号審査書案パブコメに意見を提出しました

高浜3・4号の審査書案に対するパブリックコメント募集に意見を2つ提出しました。

(pp.18-19への意見)—————————————————
(1)原子力安全基盤機構JNESは2005年6月報告書(独立行政法人原子力安全基盤機構「震源を特定しにくい地震による地震動の検討に関する報告書(平成16年度)」,JNES/SAE05-00405 解部報-00049(2005.6))の中で「M6.5の横ずれ断層が直下で動けば、Vs=2600m/sの地震基盤表面上で1340ガルの地震動が生じる」ことを断層モデルで解析しており、これを「震源を特定せず策定する地震動」に採用すべきである。この指摘に対して、原子力規制庁が昨年10月の川内原発地元説明会で示した回答では、「超過確率を求める目的で、厳しい条件を設定して評価した結果」だから検討対象にしないという。しかし、JNESの断層モデルのパラメータは1標準偏差分(厳しくない、ごく普通のバラツキ)の不確実さを考慮しただけであり、決して現実離れした「厳しい条件」ではない。その証拠に、2004年北海道留萌支庁南部地震(M6.1、以下「留萌地震」という)の応答スペクトル(Vs=1500m/sの川内原発解放基盤表面での地震波に調整し直したもの)は、JNESによる同規模の縦ずれ断層による地震動評価結果の最大値(応答スペクトルの最大値からなるスペクトル)と同等以上である。つまり、留萌地震の応答スペクトルはJNESの断層モデルが決して「厳しい条件を設定」したモデルではなく、通常観測されるべき地震動を評価するモデルになっており、仮に留萌地震の観測記録がなければ、JNESの断層モデルで観測記録の不足を補うことになリ得たことを示している。具体的なモデルの条件設定と実際の観測記録との整合性を無視して、科学的根拠なく「厳しい条件」と決めつけ、1340ガルの地震動を評価対象外にすることは、大きな過ちを犯すものである。JNESはそもそも震源近傍での地震観測記録の不足を補うために断層モデルを構築し、数少ない国内地震観測記録に合うようにモデルのパラメータを決めている。これは、結果として、地震観測記録に基づき「各種の不確かさを考慮する」という審査ガイドの要求に沿ったものになっているともいえる。これを評価対象外にすることは「最新の科学的・技術的知見を踏まえる」とする審査ガイドに反するのではないか。
(2)また、「目的が違う」というのも理由にならない。そもそも震源近傍の地震観測記録が採られ始めたのは1995年の阪神・淡路大震災の後、地震観測計が広く張り巡らされてからであり、ここ十数年のことである。「震源を特定せず策定する地震動」の評価対象を「得られた地震観測記録に限る」とする科学的根拠はない。なぜなら、現在でも、将来発生するであろう地震の震源近傍に地震計が存在する確率は低いからであり、数十年の短期間で将来起こりうる地震動のほとんどすべてのケースが発生するということもあり得ないからである。ここから必然的に観測記録を補う必要が生じる。その一つがJNESによる断層モデル解析であり、その結果得られたのが1340ガルの地震動である。にもかかわらず、これを検討対象に入れず、観測記録だけに限るというのであれば、その方法で不確実さを十分考慮できており、「震源を特定せず策定する地震動」を過小評価することはないという科学的根拠を示すべきである。
(3)さらに、1340ガルの地震動を評価対象外にすることは、福島第一原発の津波評価において15.7mの津波を試算しながら無視した東京電力幹部と全く同じ対応であり、福島第一原発3号炉でのプルサーマル実施のために3号炉の耐震バックチェックで貞観津波の評価を行わなかった原子力安全・保安院の過ちを再現することになる。当時、3号炉評価で貞観津波の評価を行うべしと主張した小林勝耐震安全審査室長(当時)に、野口安全審査課長(当時)が「その件は、安全委員会と手を握っているから、余計な事を言うな。」「保安院と原子力安全委員会の上層部が手を握っているのだから、余計なことはするな。」と叱責し、ノンキャリのトップだった原広報課長(当時)が「あまり関わるとクビになるよ。」と恫喝して黙らせたことが、小林氏自身の証言で明らかになっている。小林氏は現在、安全規制管理官(地震・津波安全対策担当)として適合性審査における地震・津波評価の事務局責任者だが、今度は逆の立場から原発再稼働を進めるために、かつて保安院が犯した過ちを反省することなく繰り返すのであろうか。それは原子力規制委員会への国民の信頼を決定的に裏切ることになると私は考えるが、いかがか。原子力安全・保安院との違いは、すでに下した判断が間違っていると指摘されたとき、または、新しい知見が出てきたときに、どのように対処するかで根本的に問われる。川内原発についても、高浜原発についても、今がそのときではないか。

(pp.16-18への意見)—————————————————
(1)「FO-A~FO-B~熊川断層」に関する応答スペクトルに基づく地震動評価をNoda et al.(2002)の方法、いわゆる「耐専スペクトル」で行っているが、この耐専スペクトルには、内陸地殻内における震源近傍および近距離での最新の地震観測記録が反映されていない。少なくとも、最近20年間に観測された地震観測記録を耐専スペクトルに反映させた上で、耐専スペクトルを適用し直すべきである。とりわけ、原子力安全基盤機構JNESによる2005年6月報告書(独立行政法人原子力安全基盤機構「震源を特定しにくい地震による地震動の検討に関する報告書(平成16年度)」, JNES/SAE05-00405 解部報-00049, 2005.6)によれば、耐専スペクトルによる地震動評価結果は、震源近傍や近距離において、JNESの断層モデルによる地震動評価結果と比べて半分以下の過小評価になっている。原子力規制庁は7月29日の市民団体との話し合いの場で、この事実を認め、「耐専スペクトルは日本電気協会で現在見直し作業中である」と説明している。そうであればなおさら、古い手法をそのまま使うのではなく、最新の地震観測記録を反映させた改訂耐専スペクトルを使って評価し直すべきである。また、耐専スペクトルは地震動の平均的なレベルを評価するものであり、実際の地震動には「倍半分」のバラツキがある。これは地震学界の常識であり、福島第一原発重大事故を教訓とするのであれば、耐専スペクトルに2倍の余裕を持たせるべきである。したがって、「FO-A~FO-B~熊川断層」の応答スペクトルの策定に際しては、耐専スペクトルを最新の地震観測記録に基づいて作り直し、この改訂耐専スペクトルで応答スペクトルを求め直すべきであり、さらに2倍の余裕を持たせて基準地震動を策定し直すべきである。
(2)「FO-A~FO-B~熊川断層」に関する断層モデルによる評価結果は、耐専スペクトルの1/2~1/3にすぎない。これは明らかに断層モデルによる地震動評価結果が過小評価であることを示している。原子力規制庁は7月29日の市民団体との話し合いの場で「評価手法が違うので結果が異なっても仕方がない」と説明しているが、同じ断層による地震動評価結果がこれほどにも異なるのは科学的におかしい。その理由もはっきりしている。つまり、関西電力の用いた断層モデルは、北米中心の地震データに基づく入倉式で地震規模を求めており、国内地震学界で通用している松田式による地震規模の半分程度に小さくなっている。さらに、応力降下量を断層モデルのレシピ通りに求めるのではなく、断層長さが63.4kmと中程度であるにもかかわらず、100km以上の長大な断層に適用されるべきFujii-Matsu’ura(2000)による応力降下量を採用し、応力降下量を断層平均3.1MPa、アスペリティ平均14.1MPaと小さく設定している。これらの結果、断層モデルによる地震動評価結果が耐専スペクトルの1/2~1/3になっているのである。最近国内で発生したM7クラスの内陸地殻内地震ではアスペリティ平均応力降下量は20~30MPaである。たとえば、鳥取県西部地震M7.3(2000.10.6)では2アスペリティで平均応力降下量は28.0MPaと14.0MPaと評価されており、能登半島地震M6.9(2007.3.25)では3アスペリティで20MPa、20MPaおよび10MPa、新潟中越沖地震M6.8(2007.7.16)では3アスペリティで23.7MPa、23.7MPaおよび19.8MPa、岩手・宮城内陸地震M7.2(2009.6.14)では2アスペリティで17.0MPaと18.5MPaと評価されている。これらを教訓として, 基本ケースにおけるアスペリティ平均応力降下量を20~30MPaまたはそれ以上に設定すべきであり、さらに1.5倍の不確実さを考慮すべきであろう。
ちなみに、Fujii-Matsu’uraは入倉式のデータではなく武村式の対象とした国内地震データとScholz(2002)の対象とした大規模地震のデータを用いてL-M0(断層長さ-地震モーメント)関係式を導出しており、入倉式では地震規模の過小評価になることを暗に示唆しているといえる。

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