若狭ネット

福井と関西を結び脱原発をめざす市民ネットワーク

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06月

第5次エネルギー基本計画策定に向けた意見募集に意見を出しました

第5次エネルギー基本計画策定に向けた意見募集に本日、下記の意見を出しました。

経済産業省の第5次エネルギー基本計画(案)は、現在のエネルギー基本計画をほぼそのまま踏襲するという間違った前提から出発しており、欧米で現に着実にダイナミックに進んでいる脱原発・再生可能エネルギー普及という現実から目を閉ざし、国民の原発再稼働反対の過半数の声を踏みにじり、日本の再エネ普及を妨害し続けるものであり、結果として、日本を世界から孤立化させ、技術的な退廃と産業の深刻な立ち遅れを招く危険性が高い。
閣内においても、環境省や外務省は、国際的な動きを直視して、経済産業省とは異なる方針を掲げ、それぞれの政策を独自に展開しようとしており、経産省はこれらを見習って大胆に方針転換すべきである。
たとえば、環境省は6月15日、業務消費電力の100%を再生可能エネルギーで賄う「国際的企業連合RE100」に公的機関として世界で初参加することを認められ、今後は自ら自然エネ100%をめざし、「RE100大使」として日本企業の参加を現7社から2020年度までに50社へ増やす計画を打ち出した(2018年6月16日付け朝日新聞)。
また、外務省は2月19日、「気候変動対策で世界を先導する新しいエネルギー外交の推進を」と題する「外務省気候変動に関する有識者会合エネルギーに関する提言」を公表し、「もっぱら化石燃料資源の確保を目指してきた従来のエネルギー外交は、これからは、諸外国とともに、持続可能な未来の実現を希求する再生可能エネルギー外交を柱とするべきである。」と呼びかけている。
にもかかわらず、経済産業省は、相変わらず、原発と石炭火力を重要なベースロード電源として推進し、再生可能エネルギーについては「2030年のエネルギーミックスにおける電源構成比率の確実な実現を目指し、主力電源化への布石を打つ」というに留まり、(1)電力需給面からの接続可能量の制約(これを超える接続には無制限・無補償の出力制限をかける)、(2)送電容量面からの接続拒否、(3)接続可能な変電所までの配線工事・管理費負担など、再エネ普及を現に妨げている「原発と石炭火力優先による再エネ推進妨害策」を是正しようとしていない。
(1)の再エネ接続可能量は、運転停止中の原発が福島事故以前の平均設備利用率で稼働することを前提として算出されるなど原発優遇策そのものであり、(2)は長期運転停止・建設中の原発等が送電容量の多くを占有する方針がとられていて、「日本版コネクト&マネージ」で数十万kWの空容量確保策も焼け石に水であり、欧米における再エネの優先接続・優先給電の原則とはかなり異なる。(3)の接続工事・管理費は送電網管理者が全体として最適な接続管理を行うことで解決できるはずである。(2)と(3)を欧米並みに行うには、電力会社の支配を形式的に法的分離しただけの送電事業子会社に送電網管理を行わせるのではなく、公平で中立的な公的管理者に送電網管理権を譲渡させるべきである。現在の「電力広域的運営推進機関」の議決権は事実上、9電力会社が握っていて、送配電網の所有権はもとよりその管理権も手放そうとはしていない。このような状況では、欧米のような送配電網の公平な運用はありえない。
さらに、経済産業省は「再生可能エネルギーは火力に依存しており、脱炭素化電源ではない。蓄電・水素と組み合わせれば脱炭素化電源となりうるが、高コストで開発途上である。」としているが、このような偏った評価は欧米では通じない。欧米では「蓄電池・水素と組み合わせて再エネを普及させている」わけではない。再エネによる電力を送電網に優先接続・優先給電させ、送電網全体で変動を吸収しており、「火力に依存している」というのは著しい事実誤認であり、そこには意図的な悪意すら感じられる。再エネが50~100%になれば蓄電池も必要になるかも知れないが、それは、欧米でもまだ先の話であり、ましてや日本では論外である。太陽光発電は昼間のピーク電力を吸収することに役立ち、太陽光・風力の変動は日本全国の統一した送電網管理を行えば十分吸収できる。
経済産業省は、現在の原発・石炭火力優遇のエネルギー基本計画に捕らわれる余り、国際的なエネルギー状況を真っ直ぐに見つめられず、歪んで誤った理解を正当化しようとしている。国民がそれに気付かないとでも思っているのであろうか。余りにも国民を馬鹿にした第5次エネルギー基本計画(案)は即刻撤回し、国際情勢を素直に反映させた外務省や環境省の考えに沿って、全面的に書き直すべきである。