原子力規制委員会では、大飯3・4号と高浜3・4号の耐震安全性評価が佳境に入っています。ところが、地震動評価の二大手法である「耐専スペクトル」と「断層モデル」は、いずれも、地震動を過小評価する手法のままであり、根本的な再構築が必要です。
耐専スペクトルは、国内地震データに基づくものであり、実際の地震動を反映しているとは言えますが、残念ながら、最近20年間の震源近傍の地震観測記録が反映されておらず、近距離では過小評価のままです。また、高浜原発では採用されていますが、大飯原発等では「震源が近すぎて適用範囲外」だとして採用されていません。
断層モデルは、北米中心の地震データに基づくもので、日本国内の活断層にそのまま適用すると地震規模が1/2以下に過小評価されるため、地震動が大幅に小さく評価されてしまいます。この問題点は、関西電力自身が行った地震動評価結果で明確に示されています。昨年末の12月25日の審議会合で関西電力が説明した高浜3・4号の断層モデルによる地震動評価結果は耐専スペクトルの1/2~1/3でした。実際の地震動は断層モデルの2~3倍になることが明確に示されたのです。
これらを科学的に検討すれば、大飯も高浜もクリフエッジ(炉心溶融事故に至る限界の地震動)を超える地震動が想定され、再稼働はできなくなります。これらについて、本日、原子力規制委員会へ質問を提出しました。字数が1000字ですので、要点だけですが、地震動評価に詳しい専門家であれば、事柄の重大さに気付くはずです。原子力規制委員会の良識ある科学的検討に期待したいと思います。
原子力規制委員会のホームページから入力した内容は以下の通りです。(詳しくは 若狭ネットニュース第147号 をご覧下さい)
分野:原子力規制委員会への御質問
件名:高浜3・4号と大飯3・4号の地震動評価について
内容:
(1)第63回原子力発電所の新規制基準適合性に係る審査会合の資料3-2「高浜発電所 基準地震動の評価について」のp.71にFO-A~FO-B断層と熊川断層の連動を考慮した地震動評価のうち耐専スペクトルによる評価結果が示され、p.87に断層モデルによる評価結果が示されていますが、両者を比較すると断層モデルの場合には耐専スペクトルの1/2~1/3にすぎません。
これは断層モデルが北米中心の地震データに基づくものであり、日本国内の地震規模を1/2以下へ過小評価し、応力降下量を実際の値より小さく設定していることによると考えられますが、いかがですか。
その結果、日本国内の地震データに基づく耐専スペクトルと比べて地震動評価結果が1/2~1/3へ過小評価されていると考えられますが、いかがですか。
断層モデルの妥当性について審議会合ではきちんと検討されていないと考えられますが、いかがですか。
(2)耐専スペクトルも1990年代前半までの地震観測記録に基づいており、1995年の阪神・淡路大震災以降に設置された強震観測網で記録された地震観測記録は反映されていません。とくに、2007年新潟県中越沖地震M6.8や2008年岩手・宮城内陸地震M7.2などでは地下で1000ガル以上の地震観測記録が取られており、解放基盤表面はぎとり波では1500~2000ガルにもなります。
これらを耐専スペクトルに反映させて適用範囲を広げて改定し、耐専スペクトルによる地震動評価をやり直せば、高浜3・4号の基準地震動は700ガルでは収まらず、1000ガルを超える可能性すらあると考えますが、いかがですか。
(3)第59回原子力発電所の新規制基準適合性に係る審査会合の資料2-3「大飯発電所 基準地震動の評価について」のp.100にFO-A~FO-B断層と熊川断層の連動を考慮した地震動評価結果が出ていますが、これは実際の地震動を1/2~1/3に過小評価したものであることを考慮すると、1000~1500ガルの基準地震動に設定し直す必要があると考えられますが、いかがですか。
参考資料として下記サイトの「大飯3・4号と高浜3・4号の耐震安全性は保証されていない 大阪府立大学名誉教授 長沢啓行」をご覧下さい。
http://wakasa-net.sakura.ne.jp/news/147ooi.pdf