長期エネルギー需給見通し(案)への意見募集に3つの意見を提出しました。
(意見募集は7月1日締切です)
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「世界最高水準の規制基準」に適合した原発でもM6.5の直下地震に耐えられない!原発再稼働を中止せよ!
「横ずれ断層によるM6.5の直下地震が起こると、1340ガルの極めて強い地震動が原発を襲う」ことが原子力安全基盤機構JNESの解析(2004年度報告)で明らかにされており、この地震動には国内のほとんどすべての原発が耐えられない。具体的に言えば、炉心溶融事故に至るギリギリの地震動の大きさを示すクリフエッジは、川内1・2号で1004ガルと1020ガル、高浜3・4号で973ガル、大飯3・4号で1260ガル、伊方3号で855ガルにすぎず、1340ガルの地震動はこれらのクリフエッジをはるかに超える。「世界最高水準の規制基準」に適合した川内1・2号や高浜3・4号はM6.5の直下地震に耐えられず、炉心溶融事故が避けられない。現在審査書(案)が出されている伊方3号や審査中の大飯3・4号も同様であり、M6.5の直下地震に耐えられない。つまり、原子力規制委員会の規制基準では、確かに活断層の長さや連動の可能性については従来の原子力ムラの常識を覆して地震学界の評価法を採用することになったが、地震動評価法については、これまで通りに地震動を過小評価する手法を用いている。原子力安全基盤機構JNESは2014年3月に原子力規制庁へ統合されたため、JNESの解析結果は原子力規制庁の解析結果でもある。そして、原子力規制庁はこのJNESの解析結果について、十分良く承知した上で、2015年1月16日の市民団体との話し合いの場で、「専門家を入れて断層モデルの妥当性について検討すべきだ」と認めている。しかし、その後、検討する姿勢を見せていない。このままJNESの断層モデルの妥当性を検討せず、M6.5の直下地震で1340ガルの地震動が原発を襲うこと、この地震動はクリフエッジを超えるため炉心溶融事故が避けられないこと、これらの事実を十分認識しながら、無視し続けるとすれば、原子力規制委員会・原子力規制庁が「無作為の瑕疵」を犯すことになる。にもかかわらず、原発を再稼働させ、2030年に20~22%もの比率を確保するというのは、フクシマ事故を教訓としない暴挙である。
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原発再稼働のために再生可能エネルギーを抑制している!再生エネの「接続可能量」を撤回せよ!
再生可能エネルギーについて「最大限の導入拡大と国民負担の抑制を両立させる」としているが、原発を「最大限導入」させるために再生可能エネルギーを抑制しており、再生可能エネルギーの普及拡大を抑制することでコスト低減を困難にしている。
再生可能エネルギーの「接続可能量」は3・11震災以前に稼働していた全原発から福島第一原発6基と福島第二原発4基を除く44基(最近廃炉になった5基および直下に活断層があり廃炉に瀕する敦賀2号等も含まれる)に建設中の3基を加えた47基が震災前30年の平均設備利用率で稼働すると想定し、30日間の出力抑制を仮定して「接続可能量」を各電力会社ごとに算出したものである。昼間最低負荷に占める原発の比率は四国電力63.5%、北海道電力56.9%、九州電力55.7%と高く、これ以外でも、北陸電力48.3%、中国電力36.4%、東北電力29.7%にもなる。再生可能エネルギーの接続拒否が北海道電力や九州電力で大きな問題になったが、原発を動かさなければ「接続可能量」は2倍以上になり、接続拒否問題は解決する。この接続可能量を超えて接続することは可能だが、無補償で無制限の出力制限が課されるため、事実上の接続拒否に等しい。これは、「原発の最大限の導入拡大」のために再生可能エネルギーを「最大限抑制」するものに他ならない。
固定買取価格は、日本では40円/kWhから始まったが、ドイツなど欧米では日本の2倍の80円/kWhから始まった。そして、再生可能エネルギーが急速に普及するに従ってコストが系統的に低下し、現在では20円/kWhを割り込んでいる。後発の日本はこの先例に学びながらコスト低減に取り組むことができる上、柔軟性の高い電力システムの開発やスマートグリッドなどのデマンドサイドの高度な管理手法を組み合わせれば、再生可能エネルギーの一層急速な普及とコスト低下を図ることができる。それを不可能にしているものこそ、再生可能エネルギーの「接続可能量」の低い設定である。原発の再稼働を断念し、2030年に20~22%の原発比率を撤回すべきである。そして、「接続可能量」を撤回し、再生可能エネルギー比率を40%以上へ引き上げるべきである。
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発送電分離を早め、送電網を公的管理に移せ!原発優遇の電気料金制度を撤廃し、新たな優遇策を導入するな!
再生可能エネルギーを最大限に普及させるためには、送電網の所有権を分離すべきだが、法的分離の場合でも電力会社による影響をできる限り小さくするため、その管理運営を全国統一の送電網として公的管理に移し、中立性の徹底を図るべきである。再生可能エネルギーの出力変動は送電網が広がれば広がるほど平均化されるので、地域的・時間的な出力変動の影響を緩和することができるし、電力システムの柔軟性を最大限に生かすことができる。電力会社の都合に合わせた地域間電力融通枠の確保などは一切認めず、全国統一の送配電網として管理すべきである。送電網や配電網の整備も公的管理運営機関が主導的に行い、その費用は全国規模で回収すべきである。そうすれば、北海道と東北の連係線など高価な送電網の整備も地域負担を減らすことができる。また、揚水発電所などの管理運営も送配電網の公的管理者に任せるべきである。こうして、再生可能エネルギーの優先接続、優先給電、優先融通を実施して、2030年に40%以上の目標を掲げ、再生可能エネルギーを最大限に拡大すべきである。
託送料金の透明性を図り、原発に係る不透明なコスト転嫁を全廃すべきである。たとえば、福島第一原発重大事故の賠償金等9兆円の交付国債(厳密には、9兆円から招来の東電株売却益を除いた額)を電気料金で回収する仕組みは撤廃すべきであり、そのためには東電を破産処理して、東電役員・株主・金融機関の責任を明確にし、全資産を売却し、それでも不足する額は原発を推進してきた国の責任で税金から負担すべきである。そうでなければ、電力全面自由化後は、税金の代わりに託送料金を介して電気料金で回収されることになり、再生可能エネルギー発電事業者の電気料金に原発事故賠償費が含まれるという奇妙なことが起こる。また、廃炉後の原発施設の残存簿価や廃炉費積立不足金が10年間で電気料金から回収する仕組みが導入されているが、電力自由化後は託送料金に算入されようとしており、これも撤廃すべきである。でなければ、再生可能エネルギー事業者の電気料金に原発の廃炉関連費が含まれることになる。さらに、原発に基準価格を導入して安全対策工事費・廃炉費・再処理費などが確実に回収される制度を導入して原発事業者に有利な電気料金制度を導入しようとしているが、これもやめるべきである。要するに、電力自由化の下では原発は生き残れないのであるから、無理に原発優遇策を講じるのをやめ、原発の再稼働を断念し、原発ゼロとすべきである。