「電気事業法に基づく経済産業大臣の処分に係る審査基準等の一部を改正する訓令案」に2つ目の意見を提出しました。
<2つ目の意見(2018年2月21日提出)>
東京電力パワーグリッド(東電PG)の「2016年度託送供給等収支」報告書によれば、当期超過利潤累積額は301億円に留まり、託送料金引き下げ基準の「一定水準額1,278億円」を超えず、託送原価乖離率も2.5%増となり、託送料金引き下げ基準の「乖離率マイナス5%」(5%減)にはほど遠い。
超過利潤額の全額または大半を「廃炉等負担金」に振り替えれば、たとえ、託送料金引き下げ基準の超過利潤累積額を3/5へ下げ、同乖離率をマイナス3%へ下げても、これらの基準を満たすことはなくなる。託送電力量が減少し続けている現状で、1,200~2,000億円もの超過利潤を捻出し、「廃炉当負担金」へ振り替えようとすれば、設備更新費・修繕費の無理なコスト削減=更新・修繕の先送りによる送配電網の劣化・停電事故の発生につながる。無理に託送料金を引き下げれば、それに拍車が掛かる。託送料金による廃炉費6兆円の捻出は撤回すべきである。
具体的には次の通りである。
(1)「2016年度託送供給等収支」報告書によれば、営業収益1兆6,359億円から営業費用1兆4,851億円を差し引いた当期純利益は748億円、ここから事業報酬額958億円を差し引き、財務費用520億円を加算して調整した残りが当期超過利潤額561億円となっている。前期超過利潤累積額がマイナス261億円なので、当期超過利潤累積額は301億円になる。仮に、当期超過利潤額を全額「廃炉等負担金」に振り替えれば、当期超過利潤額はゼロになり、当期超過利潤累積額はマイナスのまま推移し、一定水準額が3/5に下げられても、これを超えることはなくなる。
(2)他方、託送電力量は2016年度までの3年累計で8,153億kWhに留まり、2012~14年の想定量8,698億kWhより6.3%減少しており、同3年累計での費用減少幅3.8%を超えている。その結果、託送単価の想定単価との乖離率は2.5%増となっている。仮に、当期超過利潤額を全額「廃炉等負担金」に振り替えれば、費用減少幅は2.5%に下がり、託送単価の乖離率は3.9%増となり、乖離率はプラスのまま推移し、「乖離率マイナス3%」へ引き下げられても、この基準より下がることはなくなる。
(3)東電PGの「廃炉等負担金」額とグループ他社の経常利益との関係が定められてはいるが、東電PGが1,200億円を超過利潤から捻出することが想定されており、グループ他社の経常利益が2,000億円を下回れば、東電GPが最大2,000億円まで負担することが期待されている。つまり、東電PGが廃炉費6兆円を30年かけて毎年2,000億円を積立てる中心的役割を果たすことが前提とされており、東電PGは毎年1,200~2,000億円の超過利潤を生み出し、それを「廃炉等負担金」として東電ホールディングスへ供出することが期待されていると言える。
(4)ところが、1,200~2,000億円の超過利潤を生み出すためには、想定レベルから託送電力需要量が8~14%増えるか、託送原価を8~14%削減する以外にない。ところが、託送電力量は過去3年間で6.3%も減少しており、託送原価をより大幅に削減する以外にない。
本来であれば、託送原価の乖離率が5%減(改定後は3%減)となった時点で託送料金を引き下げるべきところ、コストダウンで得た超過利潤を全額「廃炉等負担金」に振り替えれば、いつまで経っても乖離率がこの基準を下回ることはなく、託送料金の現状での高止まりが続くことになる。
(5)しかし、電力他社の1/3以上が託送料金値下げを実施し、または5社以上で乖離率がマイナス5%を超過し、それが構造的要因だと判断されれば、東電PGも託送料金値下げを命令されることになる。ところが、この際には、「廃炉等負担金」は「託送原価」には入らないため、「廃炉等負担金」が値下げされた託送料金から回収できる保証がないだけでなく、それまで確保されていた超過利潤の源泉がなくなってしまう。この悪循環が断たれるためには、託送電力量が増加へ転じる以外にないが、省エネ、自家発電住宅、人口減の下では、それもありえない。つまり、託送料金から超過利潤を捻出して「廃炉等負担金」に振り替えるという仕組みが成り立たないのである。
にもかかわらず、無理に「廃炉等負担金」を託送料金で賄おうとすれば、送電費用の3~4割を占める設備更新費・修繕費にしわ寄せが行くのは明らかである。
これらのことは、「2016年度託送供給等収支」報告書をみれば、明らかである。託送料金による1,200~2,000億円もの「廃炉当負担金」の捻出は撤回すべきである。