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2022年

2ヶ月半かけてやっと出てきた「基準地震動及び耐震設計方針に係る審査ガイド等の一部改正について(案)に関する御意見及び御意見に対する考え方(案)」で明らかになったものは?

 2022年6月8日の第15回原子力規制委員会で、ようやく意見募集への結果が明らかにされ、「基準地震動等審査ガイドの改正」が審議されました。
 意見募集は2022年2月25日~3月26日(30日間)で、意見数は62件(のべ96件)でした。
私の出した3つの意見はNo.86、No.87、No.66に全文が掲載され、原子力規制庁の「考え方」が示されています。それぞれの「考え方」に続いて、私の(「考え方」への批判)を載せていますので、ご覧ください。

【別紙1】基準地震動及び耐震設計方針に係る審査ガイド等の一部改正について(案)に関する御意見及び御意見に対する考え方(案)(出典:原子力規制庁「基準地震動等審査ガイドの改正」,第15回原子力規制委員会,資料1(2022.6.8)

<意見86>———————
 新旧対照表pp.18-19の「(解説)」は「3.3.2 断層モデルを用いた手法による地震動評価」の(4)の詳細項目①~③をほぼそのまま転記し、「(4)「震源断層を特定した地震の強震動予測手法(『レシピ』)」を用いて地震動評価を行っている場合には、レシピに示された関係式及び手順に基づいて行われていることに留意する必要がある。また、レシピに示されていない方法で評価を行っている場合には、その方法が十分な科学的根拠に基づいていることに留意する必要がある。」と追記したものである。
 このレシピには「(ア) 過去の地震記録や調査結果などの諸知見を吟味・判断して震源断層モデルを設定する場合」と「(イ) 長期評価された地表の活断層長さ等から地震規模を設定し震源断層モデルを設定する場合」の2種類があり、検討用地震に対応する地震観測記録が存在しない場合には、(ア)を用いてはならず、(イ)を用いるべきであることが示されている。たとえば、日本地震学会2016年度秋季大会(2016.10.5)で東京大学地震研究所の纐纈一起教授は、「『震源断層を特定した地震の強震動予測手法』と熊本地震」(予稿集S15-06)を発表し、2016年4月の熊本地震の震源断層評価結果に基づき、「詳細な活断層調査を行っても震源断層の幅の推定は困難であるので、活断層の地震の地震動予測には『手法』(イ)の方法を用いるべきであることを確認した。」と結論づけている。
 したがって、(4)として追記された前半部分について、「震源断層を特定した地震の強震動予測手法(『レシピ』)」を用いて地震動評価を行っている場合には、検討用地震に対応する地震観測記録に基づいて震源断層が適切に推定されているケースでは(ア)を用い、地震観測記録がないケースでは(イ)を用いることとし、レシピに示された関係式及び手順に基づいて行われていることに留意する必要がある。」と修正すべきである。

<考え方>
➢御指摘の規定は、事業者が地震動評価においてレシピを引用している場合には、その手順等に基づいて評価を行っているか、審査において留意して確認すること等について規定しているものであり、レシピの中で示される手法の適用条件に関して規定する必要はないと考えます。
➢なお、新規制基準では、震源として考慮する活断層の評価に当たって詳細な調査を求めていることから、事業者が、過去の地震記録や調査結果などの諸知見を吟味・判断して震源断層モデルを設定する場合に用いる(ア)法で評価していることを審査において確認しています。
 以上より、原案のとおりとします。

(「考え方」への批判)
 島崎邦彦元原子力規制委員長代理による入倉式批判や熊本地震に基づくレシピの検証などで、地震観測記録等から震源断層を推定できない場合には、レシピ(イ)を使うべきで、レシピ(ア)を使うべきではないと地震学界で主張されているにもかかわらず、原子力規制庁の「考え方」は、「レシピの中で示される手法の適用条件に関して規定する必要はない」と断言し、事業者が「レシピ(イ)を用いず、レシピ(ア)を用いた」ことを「審査において確認」しながら、その妥当性については審査の対象外だと明言したことは、極めて重大である。

 地震調査研究推進本部のレシピでは、レシピ(ア)とレシピ(イ)が明確に区別されており、検討用地震に関する地震観測記録によって地下の実際のすべり分布が分からなければ震源断層の広がりを正確に推定することなどできず、将来活動しうる震源断層の広がりを推定することも、その不確かさを判断することもできない。にもかかわらず、検討用地震に関する地震観測記録がない中で、事業者がどのようにして「過去の地震記録や調査結果などの諸知見を吟味・判断して震源断層をモデルを設定(震源断層を推定)」できるのか、という根本問題から目を背けている。つまり、原子力規制庁は、レシピ(ア)が適用できるかどうかの判断を回避している。レシピ(ア)の適用ありきであって、その妥当性に疑問を差し挟むことは許さないという姿勢を明確にしたと言える。これでは、地震動評価について審査しないと言うに等しい。

<意見87>———————
 新旧対照表pp.20-21の「(解説)」は「3.3.3 不確かさの考慮」の(2)の詳細項目①と②をほぼそのまま転記し、①に「なお、アスペリティの応力降下量( 短周期レベル) については、新潟県中越沖地震で得られた知見を踏まえた不確かさが考慮されていることに留意する必要がある。」と追記したものである。
 しかし、新潟県中越沖地震で得られた知見から「アスペリティの応力降下量( 短周期レベル)」を1.5倍にする場合、応力降下量を1.5倍にし、すべりの重ね合わせ数を1/1.5にして短周期レベルも1.5倍にする場合は妥当だが、統計的グリーン関数法で要素地震の応力降下量を最初から1.5倍にする方法では短周期レベルは「1.5の2/3乗」倍に留まり、1.5倍にならない。この誤りを避けるには、「アスペリティの応力降下量および短周期レベル」と書き換えるべきである。
 また、2012年8月17日に原子力安全・保安院が出した「活断層による地震動評価の不確かさの考慮について(考え方の整理)」では「応力降下量について1.5倍又は20MPaの大きい方※」とされ、※印の注意書には「※断層のずれのタイプや地域特性について十分な検討が行われた場合、これ以外の数値を用いて評価しても良い。」とされている。
 さらに、新潟県中越沖地震で得られた知見は震源特性が1.5倍も大きかったという知見であり、これまでの審査でも、アスペリティだけでなく震源断層の平均についても応力降下量と短周期レベルは1.5倍にされている。
 結論的には、「アスペリティの応力降下量( 短周期レベル)」を「応力降下量※および短周期レベル」に書き換え、「※アスペリティの応力降下量については1.5倍又は20MPaの大きい方」と注記すべきである。

<考え方>
➢改正案における「なお、アスペリティの応力降下量(短周期レベル)については、新潟県中越沖地震で得られた知見を踏まえた不確かさが考慮されていることに留意する必要がある。」との記載は、改正前の3.3.2(4)①2)のアスペリティの応力降下量(短周期レベル)に関する記載について、より適切な位置に記載を移動し、表現を適正化したものです。
 この記載は、短周期領域における加速度震源スペクトルのレベル(短周期レベル)を保守的に設定する観点で、アスペリティの応力降下量の不確かさ考慮について、応力降下量に一定の倍率を考慮していることを確認していることを表したものであり、アスペリティの応力降下量と短周期レベルの両方について別々に不確かさを考慮しなければならないという意味ではありません。
➢御意見のうち「アスペリティの応力降下量については1.5倍又は20MPaの大きい方」については、新規制基準では、応力降下量の不確かさについて定量的な要求はしておらず、審査において、施設ごとに必要に応じて断層のずれのタイプや地域特性について十分な検討が行われた上で、不確かさが考慮されていることを確認しています。
以上より、原案のとおりとします。

(「考え方」への批判)
「アスペリティの応力降下量と短周期レベルの両方について別々に不確かさを考慮しなければならないという意味ではありません」としているが、これそのものが、原子力規制庁の断層モデルに関する無知をさらけ出すものだと言える。断層モデルによる地震動評価法における「アスペリティの応力降下量と短周期レベル」の関係については、旧原子力安全委員会の地震動解析技術等作業会合(平成21年4月23日)の資料第1−1号「波形合成法の基本的考え方」(東京電力株式会社)で詳しく解説されている。この知識を前提として、意見を述べたところ、恐ろしいことに、原子力規制庁には、この知識がなかったことが判明した。

 その知識を要約すると次のようになる。
 ①手法A:基本モデルと同じ要素地震波を用い,応力降下量補正係数Cと重ね合わせ数nを新たに設定する。この考え方は,通常の入倉法におけるΔσのCによる補正と類似しており,経験的グリーン関数法と統計的グリーン関数法のいずれにも適用できる。
⇒応力降下量補正係数C’=1.5C,すべり量の分割数n’D=nD/1.5(長さL方向と幅W方向の分割数nLとnWは同じ)と設定すると、応力降下量は1.5倍、短周期レベルAも1.5倍になる。
 ②手法B:要素地震の応力降下量Δσeを基本モデルから変更し,基本モデルと同じCとnを用いる。この考え方は,要素地震波を人工的に作成する統計的グリーン関数法にのみ適用できる。
⇒要素地震の応力降下量をΔσ’e=1.5Δσとし,CとnDは同じ(nLとnWも同じ)と設定すると、応力降下量は1.5倍だが、短周期レベルAは「1.5の2/3乗」倍になり、1.5倍より小さくなる。

 この評価に基づき、翌日の第19回耐震安全性評価特別委員会(2009.04.24)で報告され、入倉特別委員会委員長が次のようにまとめている。
「・・・バックチェックにおいて中越沖地震の反映の一つとして、短周期レベルを基本モデルに対する1.5倍をばらつきとして検討すべきというのが保安院の指示にあったわけですけれども、それについて事業者の方法について必ずしも明確ではないのではないか。実際に1.5倍というものはどういうものかについて、必ずしも方法論が正確に行われているかどうか、ご意見がございましたので、作業会合において特にこの論点に絞ってご説明いただきました。

 先ほどご説明がありましたように、もちろん、こういう計算法にはいろんな手法があるわけですが、典型的な手法としては2つに分けることが出来る。1つは応力降下量、実際には実効応力というべきなんですけれども、実効応力を1.5倍にすると同時に短周期を1.5倍にするという、そういう手法で基本モデルに対する基準地震動の計算に対して、短周期レベルが1.5倍になるような計算をする、そういう方法についてご説明いただいたのと、もう一つの方法は実効応力は1.5倍になるけれども、実効応力を1.5倍ということを拘束条件として計算すると、短周期レベルは必ずしも1.5倍にならない。大体の値としては1.3倍程度という少し高周波というか、短周期が足りないような計算法もある。
 そういう2つの方法が混在して説明されている可能性があるということで、これまでに例えば柏崎刈羽であるとか、北陸電力の説明の中で北陸電力に関しては混在があったわけですけれども、東京電力に関しては両方とも1.5倍になるということ、そういうことが分かりました。そういう意味で、保安院の指示に従って基準地震動を評価する場合には、短周期レベルが1.5倍になるような計算法をとるべきではないかということが、昨日の作業会合では確認されたわけです。」(速記録pp.15-16
 原子力規制庁は、このように重要な応力降下量と短周期レベルの関係について無知であることを恥じることなく、「新規制基準では、応力降下量の不確かさについて定量的な要求はしておらず、審査において・・・確認しています」としていることも重大である。そもそも、新潟中越沖地震が起こらなければ「応力降下量(短周期レベル)1.5倍」という不確かさの定量的な要求は出てこなかったのであり、それを考慮しなくてもよいというのであれば、その根拠を「考え方」で示すべきである。

<意見66>———————
 新旧対照表pp.21の「(解説)」の「(2)必要に応じた不確かさの組み合わせによる適切な考慮」は「3.3.3 不確かさの考慮」の(2)の詳細項目②をそのまま転記し、「②地震動評価においては、震源特性( 震源モデル) 、伝播特性( 地殻・上部マントル構造) 、サイト特性( 深部・浅部地下構造) における各種の不確かさが含まれるため、これらの不確かさ要因を偶然的不確かさと認識論的不確かさに分類して、分析が適切になされていることに留意する必要がある。」としているが、偶然的不確かさについては「破壊開始点」のバラツキぐらいしか考慮されておらず、地震動そのものの確率論的バラツキがこれまで一貫して全く考慮されていない。わざわざ不確かさを偶然的不確かさと認識論的不確かさに分類したにもかかわらず、「地震動そのものの確率論的バラツキ」が偶然的不確かさから除外されている。このようにするのであれば、その根拠を解説で明記すべきである。
 他方、「4. 震源を特定せず策定する地震動」で導入された標準スペクトルの策定時には、M5~M6.5の地震観測記録の基盤波の平均に対して標準偏差の3倍のバラツキが考慮されており、不整合であり、ご都合主義である。「3. 敷地ごとに震源を特定して策定する地震動」における検討用地震に対しても、地震学界で常識的に認められている地震動の1標準偏差で「倍半分」程度のバラツキを考慮し、平均像として求められた現在の基準地震動に対して2倍のばらつきを考慮すべきである。

<考え方>
➢御指摘の「地震動そのものの確率論的バラツキ」の意味するところが必ずしも明らかではありませんが、不確かさに関する扱いについてはNo.19の御意見に対する考え方を参照してください。
➢「震源を特定せず策定する地震動」に関する御指摘について、標準応答スペクトルは、震源を特定せず策定する地震動のうち全国共通に考慮すべき地震動として策定したものです。その策定に当たっては、地域的な特徴を極力低減させて普遍的な地震動レベルを設定するために、地表に明瞭な痕跡が見られない地震(Mw6.5程度未満)として、推定誤差等を考慮し、Mw5.0~6.6の震源近傍の多数の地震観測記録(89地震)を統計処理しています。

➢したがって、各種調査により評価対象となる断層を特定するなどし、震源断層モデル等を設定した上で策定する「敷地ごとに震源を特定して策定する地震動」とは、不確かさの扱いを含め、地震動評価の手法が異なることから、「不整合であり、ご都合主義である」との御指摘は当たりません。
➢標準応答スペクトルの策定の詳細については、「「震源を特定せず策定する地震動に関する検討チーム」の検討結果について-全国共通に考慮すべき「震源を特定せず策定する地震動」に関する検討報告書-」(令和元年8月28日第24回原子力規制委員会資料3)を参照ください。
 以上より、原案のとおりとします。

(「考え方」への批判)
 原子力規制庁は、「『地震動そのものの確率論的バラツキ』の意味するところが必ずしも明らかではありません」としているが、地震動を確率論的に評価する場合には、同一の地震と見なす地震の母集団を定め、その地震観測記録を地震基盤などの統一的に評価可能な地震波に変換した上で、その地震波集合を母集団とみなして地震動の偶然変動を抽出することになる。この偶然変動を一般にもわかりやすい表現で「バラツキ」と称するのはごく普通のことである。それを明らかでないというのは、偶然変動そのものを理解していないからである。参照すべきという「No.19の御意見に対する考え方」(下記参照)は、断層長さやマグニチュードなど震源断層モデルのパラメータ推定における精度に関するものであり、地震動そのものの偶然変動とは別の次元のものである。これを参照せよということは、確率論的モデルについて全く混乱しているとしか言いようがない。

 また、「『敷地ごとに震源を特定して策定する地震動』とは、不確かさの扱いを含め、地震動評価の手法が異なる」というが、「だから地震動の偶然変動を考慮しなくてよい」という理由にはならない。震源断層モデルのパラメータにおける不確かさの扱いを含めて評価手法が異なっても、各評価手法によって算出される地震動はそれぞれの震源断層モデル・パラメータに基づく平均的な地震動評価にすぎず、実際には、それを中心にして地震動は偶然変動するのであり、その偶然変動はいずれの地震においてもほぼ「倍半分」のバラツキをもっている。たとえば、新潟県中越沖地震を教訓とした応力降下量(短周期レベル)1.5倍の震源パラメータに基づく地震動評価結果も、その仮定の下での平均的な地震動評価結果に過ぎず、実際の地震観測記録を見れば一目瞭然だが、平均に対して「倍半分」がほぼ「±1標準偏差」となってばらついている。
 標準応答スペクトルの元になった地震波は「Mw5.0~6.6の震源近傍の多数の地震観測記録(89地震)」だが、これを単一の母集団と見なして「平均+3標準偏差」となるように標準応答スペクトルを定めたものであり、母集団の設定に疑問は残るが、地震動の偶然変動を考慮したものと評価できる。にもかかわらず、「敷地ごとに震源を特定して策定する地震動」では、このような偶然変動を考慮する必要はないと主張するのは、まさに「不整合であり、ご都合主義である」と言える。原子力規制庁は、それを理解できないほど知識水準が落ちてしまったのであろうか。

<No.19の御意見に対する考え方>
➢No.1の御意見に対する考え方のとおり、今回の改正は、審査実績等を踏まえた表現の改善等を行うものです。
➢改正前の基準地震動審査ガイド3.2.3(2)の規定に係る改正については、複雑な自然現象の観測データにばらつきが存在するのは当然であり、経験式とは、観測データに基づいて複数の物理量等の相関を式として表現するものであることに注意して審査を行うべきとする、従来からの趣旨をより明確に記述するためのものであり、審査の内容を変更するものではありません。
➢なお、基準地震動審査ガイドにおいては、従来から、地震動評価に大きな影響を及ぼす支配的なパラメータの不確かさを十分に考慮することにより、保守的な地震動評価が行われていることを審査官等が確認する趣旨を規定しています。一方で、当該不確かさの考慮に更に経験式の元となった観測データのばらつきを上乗せすることは、震源断層を特定した地震の強震動予測手法(「レシピ」)で示された方法ではなく、かつそのような方法に係る科学的・技術的知見を承知していないため、元々規定していません。
➢審査ガイドの目的に関する御指摘については、No.8の御意見に対する考え方を参照ください。
 以上より、原案のとおりとします。

<No.1の御意見に対する考え方>
➢今回の改正は、審査実績等を踏まえた表現の改善等を行うものであり、規制要求や審査の緩和を行うものではありません。
➢原子力規制委員会は、令和2年度から、審査実績を踏まえた規制基準等の記載の具体化・表現の改善に計画的に取り組んでおり、今回の改正もその一環です。
➢なお、審査ガイド(原子力規制委員会が作成するガイドのうち、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律に基づく基準規則等に関する審査に用いるためのもの。)は、基準規則やその解釈等のように規制要求を定めるものではありません。
 以上より、原案のとおりとします。

<No.8の御意見に対する考え方>
➢基準地震動及び耐震設計方針に係る審査ガイド(以下「基準地震動審査ガイド」という。)は、従前から「基準地震動の妥当性を厳格に確認するための方法の例を示した手引」として策定しているものです。
➢審査ガイドの位置付けについては、「審査ガイドの位置付け」(令和3年6月16 日原子力規制委員会了承)を参照ください。
 以上より、原案のとおりとします。

「基準地震動及び耐震設計方針に係る審査ガイド等の一部改正(案)」への意見募集に意見を3件提出しました

下記の「基準地震動及び耐震設計方針に係る審査ガイド等の一部改正(案)」への意見募集に意見を3件提出しました。

基準地震動及び耐震設計方針に係る審査ガイド等の一部改正について(案)に対する意見募集について

受付開始日時    2022年2月25日0時0分

受付締切日時    2022年3月27日0時0分

————–<意見1>————————————-

新旧対照表pp.18-19の「(解説)」は「3.3.2 断層モデルを用いた手法による地震動評価」の(4)の詳細項目①~③をほぼそのまま転記し、「(4)「震源断層を特定した地震の強震動予測手法(『レシピ』)」を用いて地震動評価を行っている場合には、レシピに示された関係式及び手順に基づいて行われていることに留意する必要がある。また、レシピに示されていない方法で評価を行っている場合には、その方法が十分な科学的根拠に基づいていることに留意する必要がある。」と追記したものである。

このレシピには「(ア) 過去の地震記録や調査結果などの諸知見を吟味・判断して震源断層モデルを設定する場合」と「(イ) 長期評価された地表の活断層長さ等から地震規模を設定し震源断層モデルを設定する場合」の2種類があり、検討用地震に対応する地震観測記録が存在しない場合には、(ア)を用いてはならず、(イ)を用いるべきであることが示されている。たとえば、日本地震学会2016年度秋季大会(2016.10.5)で東京大学地震研究所の纐纈一起教授は、「『震源断層を特定した地震の強震動予測手法』と熊本地震」(予稿集S15-06)を発表し、2016年4月の熊本地震の震源断層評価結果に基づき、「詳細な活断層調査を行っても震源断層の幅の推定は困難であるので、活断層の地震の地震動予測には『手法』(イ)の方法を用いるべきであることを確認した。」と結論づけている。

したがって、(4)として追記された前半部分について、「震源断層を特定した地震の強震動予測手法(『レシピ』)」を用いて地震動評価を行っている場合には、検討用地震に対応する地震観測記録に基づいて震源断層が適切に推定されているケースでは(ア)を用い、地震観測記録がないケースでは(イ)を用いることとし、レシピに示された関係式及び手順に基づいて行われていることに留意する必要がある。」と修正すべきである。

————–<意見2>————————————-

新旧対照表pp.20-21の「(解説)」は「3.3.3 不確かさの考慮」の(2)の詳細項目①と②をほぼそのまま転記し、①に「なお、アスペリティの応力降下量( 短周期レベル) については、新潟県中越沖地震で得られた知見を踏まえた不確かさが考慮されていることに留意する必要がある。」と追記したものである。

しかし、新潟県中越沖地震で得られた知見から「アスペリティの応力降下量( 短周期レベル)」を1.5倍にする場合、応力降下量を1.5倍にし、すべりの重ね合わせ数を1/1.5にして短周期レベルも1.5倍にする場合は妥当だが、統計的グリーン関数法で要素地震の応力降下量を最初から1.5倍にする方法では短周期レベルは「1.5の2/3乗」倍に留まり、1.5倍にならない。この誤りを避けるには、「アスペリティの応力降下量および短周期レベル」と書き換えるべきである。

また、2012年8月17日に原子力安全・保安院が出した「活断層による地震動評価の不確かさの考慮について(考え方の整理)」では「応力降下量について1.5倍又は20MPaの大きい方※」とされ、※印の注意書には「※断層のずれのタイプや地域特性について十分な検討が行われた場合、これ以外の数値を用いて評価しても良い。」とされている。

さらに、新潟県中越沖地震で得られた知見は震源特性が1.5倍も大きかったという知見であり、これまでの審査でも、アスペリティだけでなく震源断層の平均についても応力降下量と短周期レベルは1.5倍にされている。

結論的には、「アスペリティの応力降下量( 短周期レベル)」を「応力降下量※および短周期レベル」に書き換え、「※アスペリティの応力降下量については1.5倍又は20MPaの大きい方」と注記すべきである。

————–<意見3>————————————-

新旧対照表pp.21の「(解説)」の「(2)必要に応じた不確かさの組み合わせによる適切な考慮」は「3.3.3 不確かさの考慮」の(2)の詳細項目②をそのまま転記し、「②地震動評価においては、震源特性( 震源モデル) 、伝播特性( 地殻・上部マントル構造) 、サイト特性( 深部・浅部地下構造) における各種の不確かさが含まれるため、これらの不確かさ要因を偶然的不確かさと認識論的不確かさに分類して、分析が適切になされていることに留意する必要がある。」としているが、偶然的不確かさについては「破壊開始点」のバラツキぐらいしか考慮されておらず、地震動そのものの確率論的バラツキがこれまで一貫して全く考慮されていない。わざわざ不確かさを偶然的不確かさと認識論的不確かさに分類したにもかかわらず、「地震動そのものの確率論的バラツキ」が偶然的不確かさから除外されている。このようにするのであれば、その根拠を解説で明記すべきである。

他方、「4. 震源を特定せず策定する地震動」で導入された標準スペクトルの策定時には、M5~M6.5の地震観測記録の基盤波の平均に対して標準偏差の3倍のバラツキが考慮されており、不整合であり、ご都合主義である。「3. 敷地ごとに震源を特定して策定する地震動」における検討用地震に対しても、地震学界で常識的に認められている地震動の1標準偏差で「倍半分」程度のバラツキを考慮し、平均像として求められた現在の基準地震動に対して2倍のばらつきを考慮すべきである。