福井県議会12月定例会(12/2-24)に向けて、福井県議会事務局へ「陳情書」を送付しました。
(陳情書のpdfはこちら:知事宛申し入れ書のpdfはこちら)
<福井県議会議員宛の陳情書>
2024年11月19日
陳情書
福井県議会 議員各位
私たちは、90年代中頃より「行先のない使用済み燃料」問題を憂慮し、県民への啓発活動を進めてきた関西と県内の市民・研究者のボランティアネットワークです。
これまで私たちは、この問題に関して、福井県(原子力安全対策課)への申し入れ活動をたびたび行ってきました。たとえば私たちは2003年に「2010年までに中間貯蔵施設を県外で操業開始するとの関電の約策」の実現性に疑義をもち、県を問い質しています。その際、県は「長期保管につながるものとは考えていない」「中間貯蔵施設は2010年までに操業を開始するものと考えている」などと甘い見通しを述べていました。その結果、2003年当時に若狭(関電)に貯蔵されていた使用済核燃料は約2,600トンでしたが、現在3,830トン(2024年6月末現在、電事連資料;敦賀630トンを含めると4,460トン)もの量に膨れ上がってしまいました。
さて私たちは、六ヶ所再処理工場竣工時期の2年半延期で関西電力の「使用済燃料対策ロードマップ」が破綻したことを受け、8月20日に知事宛申し入れ書を提出し、原安課と質疑を行いました。その後の原子力規制委員会での乾式貯蔵に関する審査状況等を受け、知事あて質問書(別紙)を11月初めに改めて提出し、これへの回答と質疑を原安課に求めています。この質問書で私たちは、「たとえ再処理工場が稼働を開始できても、いくつかの事情が足かせとなっており、再処理工場のフル操業は事実上困難な状況であり、福井県が核の墓場になる恐れがある」という現実を具体的に示し、そのことを知事は認識できているのか否か、と問いかけております。
本日私たちは、福井県議会の皆様へも同じ問いを投げかけさせて頂くことにいたしました。
県議会には国政に関する調査権はないとはいえ、県民の生命・健康と生活に関わる県政の重大問題の一つですので、何とぞ、皆さまの英知を駆使され独自に調査研究を進めていただき、議論をより深めていただきたいと私たちは心から願う次第です。
サヨナラ原発福井ネットワーク / 若狭連帯行動ネットワーク
連絡先:越前市入谷町13-20 山崎隆敏 090-6271-8771
<添付資料>
2024年11月5日
「使用済燃料対策ロードマップ」の虚言に騙されないで!!
福井県知事 杉本達治 殿
関西電力と国は9月10日、昨年10月に策定した使用済燃料対策ロードマップ(工程表)を、本年度末までに見直すと表明しました。これを受けて貴職は、関電が約束していた原発3基の即時停止には言及されないまま、あくまで責任は関西電力や国にあると発言されました。しかし、マスコミも、「杉本知事が口にする使用済燃料の必要な搬出容量が確保できる姿とは何なのか」「新たな工程表の実効性の有無をどのような基準で判断するのかは不透明なまま」と疑問を呈しています(9月8日中日新聞)。
また、福井県議会は9月7日、国への意見書—①工程表を早期に見直して実効性のある計画にするよう関電を厳しく指導していくだけでなく、全面に立って主体的に取り組む。②青森県六ケ所村の再処理工場が2026年度中に完成するよう責任をもって進捗管理し、確実に実現する—を全員一致で可決しています。おそらく貴職も同様の見解をお持ちなのでしょう。しかしながら、現実を顧みれば、これまで私たちも再三再四にわたり指摘してきたように、①の「主体的に取り組む」や②の「責任をもって」のような精神論のレベルではとうてい克服しええぬ難問が目前に厳然と横たわっています。「プルトニウム・リサイクル政策の破綻」の現実をしっかりと見据えれば、そもそも「ロードマップの実効性」など望むべくもないことは誰にでも理解できることなのです。貴職には、電力事業者の口車に乗せられることなく、理非曲直を正し、「行先のない使用済燃料をこれ以上生み出すことを止めさせていただきたい」と私たち県民は心から願う次第です。以下の私たちの質問に誠実にお答えください。
1.「六ヶ所再処理工場は、プルサーマル実績等から高々10%操業に留まらざるを得ない」という現状を認識できていますか ?
2. 「六ヶ所再処理工場は、レッド・セル問題で耐震補強できず、新規制基準不適合で不合格になる可能性もある」という事実を認識できていますか ?
3.「PWRのステップ2高燃焼度燃料は再処理困難」という事実を認識できていますか ?
4.関電の説明「燃料プール内の乾式貯蔵による空きスペースは原則使用しない=管理容量は現状のまま」は、乾式貯蔵への事前了解を得たいがための虚言ではありませんか ?
5.「円滑な搬出等のために乾式貯蔵が必要」というのも、根拠のない虚言ではありませんか ?
質問概要
1.「六ヶ所再処理工場は、プルサーマル実績等から高々10%操業に留まらざるを得ない」という現状を認識できていますか ?
六ヶ所再処理工場は、竣工時期が2026年度末へ約2年半延期されましたが、仮に、2027年度以降操業できたとしても、プルサーマル実績等から高々10%程度の操業に留まらざるを得ないと言えます。というのは、「余剰プルトニウムを持たない」という国際公約を実現するため、原子力委員会は「六ヶ所再処理工場、 MOX燃料加工工場及びプルサーマルの稼働状況に応じて、プルサーマルの着実な実施に必要な量だけ再処理が実施されるよう認可を行う」(我が国におけるプルトニウム利用に関する基本的な考え方, 2018. 7.31)という方針をとっているからです。
国内のプルサーマル実績は、2009~2024年の15年間に高浜3・4号、伊方3号、玄海3号の4基で5.725tPu、平均0.382tPu/年にすぎず、六ヶ所再処理工場フル操業(800tU/年)時のプルトニウム回収量約6.6tPu/年(電気事業連合会「プルトニウム利用計画」)の6%弱にしかなりません。福島事故後の長期停止に加え、運転差止め仮処分決定や特定重大事故等対処施設設置期限切れ等による長期停止の影響を受けたのは事実ですが、仮に、①プルサーマルが途切れず実施され、②定検期間が3ヶ月程度から延びず、③事故、仮処分、規制要求等による停止がない、と仮定しても、これまでの上記実績は0.692tPut/年に留まり、フル操業時の10%程度に留まります。
しかも、現時点では、伊方3号と玄海3号はプルサーマル中断中で、高浜3・4号が細々と継続しているだけであり、「10%程度」の半分以下です。伊方3号と玄海3号では、英仏プルトニウム所有権交換で新MOX燃料を強引に調達し、2027年度以降から再開する計画ですが、この場合でも、4基によるプルトニウム消費量は0.698tPu/年に留まり、これまでの実績0.692tPu/年とほぼ同じです。
沸騰水型原発ではメドが立ちません。最大のプルトニウム所有者=東京電力は再稼働自体が困難で、プルサーマル原発も未定です。中部電力(浜岡4号)、日本原電(東海第二、敦賀2号)、東北電力(女川3号)は再稼働の見通しがありません。中国電力(島根2号)のプルサーマルは、地元同意や仏へのMOX燃料加工発注・輸送に5~10年かかり、仮に実施できたとしても、四国電力と同程度で、「10%程度」を引上げるほどの効果はありません。
つまり、六ヶ所再処理工場は竣工しても高々10%程度の操業しかできず、40年間に3,200tUの使用済燃料しか再処理できないと言えます。これは、六ヶ所再処理工場内のプールに貯蔵されている量2,968tU(2023.3末)を250tU上回る程度に相当し、2024年3月末現在の原発サイト内使用済燃料16,720tUの大半は再処理できないまま「核のゴミ」になる運命なのです。
この「再処理できない」という状況が明確になればなるほど、上関町の「中間貯蔵施設計画」も「永久貯蔵」の未来が見えてきますので、立地拒否、受入れ拒否に傾くのは当然です。貴職はこの現実を認識されていますか?
仮に、中間貯蔵施設や六ヶ所再処理工場へ搬出できたとしても、40年後には再処理できないまま、 搬出元のサイトへ戻されます。それに気付くのが、今か、40年先かの違いだけで、再処理工場が10% 程度しか操業できず、原発サイトに今ある使用済燃料をほとんど再処理できないことは、すでに、プルサーマルの実績で示されているのです。貴職はこの現実を認識されていますか?
さらに、高浜3・4号にはすでに使用済MOX燃料がプールに44体あり、36体が1~3サイクル目の装荷中です。使用済燃料PWR1,780体(800tU)を再処理すると、MOX燃料PWR168体が生み出され、これをプルサーマルすれば、使用済MOX燃料PWR168体が生み出され、プールに貯まり続けます。「これが乾式貯蔵できるように冷えるまで90年以上プールで貯蔵する以外になく、再処理もできない」こと、「核燃料サイクルを回すというのは現実にはこういうことだ」ということを、貴職は認識されていますか?
2.「六ヶ所再処理工場は、レッド・セル問題で耐震補強できず、新規制基準不適合で不合格になる可能性もある」という事実を認識できていますか ?
六ヶ所再処理工場は、2006~2013年に使用済燃料425tU(PWR206tU、BWR219tU)を剪断、溶解、分離、精製する総合試験=「アクティブ試験」を強行したため、主要工程は、福島事故で溶融した燃料(BWR257tU)の2倍程度の放射能で極度に汚染されてしまいました。厚さ1mの放射線遮蔽コンクリートで細かく区切られた「レッド・セル」内は使用前検査の立ち入りは元より、耐震補強工事も困難なため、設工認審査で耐震補強が必要になっても工事ができず、不合格になる可能性が高いと言えます。
現に、耐震バックチェック時の基準地震動(450ガル)でも応力比が1近くで耐震余裕のない機器が数多く存在していましたので、新規制基準で認可された基準地震動(700ガル)に対し、応力比が1を超える機器が続出するのは避けられないでしょう。応力比が1を超えた場合には、直ちに不合格とはされず、その機器について弾性設計用地震動Sdで「概ね弾性範囲内か」を確認することになっていますが、Sdに対しても応力比が1を超えれば不合格になります。ちなみに、2009年4月に日本原燃は耐震バックチェック時の基準地震動Ss(450ガル)に対応するSd=(2/3)Ss=300ガル(当時は1/2ではなく2/3だった)を使って「高レベル廃液濃縮缶」の応力比を0.89(詳細評価)と導き、1未満であることを確認しています。基準地震動Ss(700ガル)では、Sd=Ss/2=350ガルですので、応力比は1.17(=350/300)倍の1.04となり、1を超える可能性があります。これでは設工認審査は通らず、補強工事もできず、不合格になる可能性があります。他にも応力比が1近くの機器がたくさんありますので、設工認の壁は決して低くありません。日本原燃は従来からの3つの地盤モデルを10の地盤モデルへ変更しましたので、多少の影響はあるかもしれませんが、基本的な傾向は変わらないと思われます。
つまり、関西電力が、いくら審査のエキスパートを日本原燃へ送り込んで審査資料の整備や説明の仕方に工夫を凝らしても、レッド・セル内の主要機器で耐震補強工事が必要になれば、不合格にならざるをえません。知事はこの事実を認識されていますか?
3.「PWRのステップ2高燃焼度燃料は再処理困難」という事実を認識できていますか ?
六ヶ所再処理工場の再処理対象には、使用済MOX燃料が含まれていないだけでなく、加圧水型原発のほとんどで現在使われている「ステップ2高燃焼度燃料」の使用済燃料も、より低燃焼度の使用済燃料と混ぜなければ再処理できません。なぜなら、再処理条件が「使用済燃料集合体最高燃焼度は5.5万MWd/tUPr(照射前金属ウラン重量換算)、なお、1日当たり再処理する使用済燃料の平均燃焼度は4.5万MWd/tUPr以下」と制限される一方、PWRのステップ2高燃焼度燃料は「集合体最高燃焼度5.5万 MWd/tUPrかつ集合体平均燃焼度4.8~5.0万MWd /tUPr」で、この条件を超えているからです。結果として、この高燃焼度燃料が中間貯蔵施設や六ヶ所再処理工場へ搬出されることはないでしょう。 このPWRステップ2高燃焼度燃料の装荷実績は、関西電力の原発で2,040体、約920tUに上り、美浜・大飯・高浜で2024年3月現在プール貯蔵中の使用済燃料8,480体(約3,820tU)のほぼ1/4を占めます。しかも、美浜3号、高浜1・2号、大飯3・4号の運転で、1サイクル毎に268体も増え続け、10年で倍増します。他のPWR原発でも同様に、六ヶ所再処理工場へ搬出されることのないステップ2高燃焼度燃料が増え続けているのです。乾式貯蔵は、「燃焼度が低く、10年以上冷却されて崩壊熱が十分下がり自然空冷可能になった」使用済燃料をプールから取出しますが、高燃焼度のため中間貯蔵施設や六ヶ所再処理工場へ搬出されることがなく、かつ、プール事故(冷却失敗による燃料溶融事故)の原因となる熱い使用済燃料を次から次へとプールへ供給し続けることを可能にするのです。貴職はこの現実を認識されていますか?
4.関電の説明「燃料プール内の乾式貯蔵による空きスペースは原則使用しない=管理容量は現状のまま」は、乾式貯蔵への事前了解を得たいがための虚言ではありませんか ?
関西電力は「使用済燃料対策ロードマップ」(2023.10.10)における「大飯、高浜、美浜原発構内の乾式貯蔵施設設置」の説明の最初に「着実に発電所が継続して運転できるよう、環境を整備する」と明記して運転継続がロードマップの最優先事項だと明言しています。その下で、「今後、原則として貯蔵容量を増加させない」とし、乾式貯蔵の目的は「使用済燃料の中間貯蔵施設へのより円滑な搬出」および「将来の搬出に備える」ことだとしています。
しかし、乾式貯蔵設置認可の審査会合では、関電自ら「使用済燃料乾式貯蔵容器貯蔵分(貯蔵容量最大528体)の容量を含めて、全炉心燃料(157体)の約130%相当数の燃料集合体数に十分余裕を持たせた貯蔵容量を有する設計とする。」と説明し、「乾式貯蔵施設設置の目的は貯蔵容量の増強」だと主張する一方、「円滑な搬出」や「将来の搬出に備える」という目的には一切触れていません。
他方、「関西電力からのお知らせ:原子力発電所構内における使用済燃料乾式貯蔵施設の設置計画について」(2024年5月)の中で、関西電力は「使用済燃料を乾式貯蔵施設に移し替えることで発生する燃料プールの空きスペースは原則使用しません。これにより、発電所敷地内で貯蔵することができる量はこれまでと変わりません」と説明しています。また、電気事業連合会が第41回原子力小委員会(2024.10.16)で示した資料によれば、関西電力は、他の電力会社とは全く異なり、美浜・大飯・高浜の乾式貯蔵容量1,530体(700tU)(美浜210体(100tU)、大飯552体(250tU)、高浜768体(350tU))を「合計管理容量」に加算せず、使用済燃料貯蔵量の上限値を現行の管理容量(=ピット貯蔵容量-1炉心)のままとする姿勢を明示しています。
審査会合では「貯蔵増強策だ」と主張し、他では「貯蔵増強策ではない」と主張する。この矛盾した対応は、関西電力社内でも上層部を含めて混乱を招いていて、一貫性のない、その場しのぎの弁明が繰り返されているのです。実際には、乾式貯蔵は「貯蔵増強策」そのものであり、プールの空きスペースが使われ、使用済燃料を敷地内に貯蔵できる量は増えるのです。
例えば、美浜3号機のプール貯蔵容量は809体ですが、運転時には炉心燃料157体をいつでもプールへ戻せるよう空けておくことが法令で義務付けられています。そのため、「プール貯蔵容量」から「1炉心(157体)」を差し引いた652体が「使用済燃料の貯蔵上限値」になります。今年の関西電力の株主総会(2024.6.26)で、株主からの質問に答弁した高畠勇人執行役常務は、「具体的に申し上げると、乾式貯蔵と使用済燃料ピットの貯蔵量の合計が使用済燃料ピットの貯蔵容量を超えないようにしてまいります」(第100回定時株主総会議事録)と答えています。つまり乾式貯蔵施設設置後の「使用済燃料の貯蔵容量」は652体から「使用済燃料ピットの貯蔵容量」の809体へ増やすと明言したものであり、これは、「使用済燃料の貯蔵容量は増やさない」というこれまでの説明とは明らかに異なります。この問題については、福井県議会9月定例会全員協議会(2024.9.9)でも県議から「管理容量の652体を超えないように管理するのか、貯蔵容量の809体を超えないように管理するのか、どちらか?」と問われて、水田関電副社長・原子力事業本部長は、どちらとも正確には回答できませんでした。貴職は関電のこの巧妙な詐術を承知しておられるのでしょうか。
また、美浜3号の乾式貯蔵容量は210体であり、1炉心分(157体)より53体多いので、実際に確保される「使用済燃料の貯蔵容量」は、809体より53体多い862体になります。この53体の空きスペースが使われないという保証はどこにあるのでしょうか。
さらに、計画中の乾式貯蔵施設はキャスクごとの格納設備方式ですので必要に応じて増設できます。水田関電副社長・原子力事業本部長は、県議会で「国内外の情勢の変化や災害など、自社の事由によらない事情によって搬出が滞り、日本全国のエネルギー安定供給に貢献できなくなる可能性がある場合は、例外になると考えております。」(朝日2023.10.11)と発言していますが、貴職は、「例外的に増設される」こともやむなしと黙認される腹積もりなのでしようか。
「燃料プールの空きスペースを使わない」と関電が主張しても、それをチェックするのは、関電ホームページで公開されている情報だけでは困難でしょう。過去には、関西電力が「廃止措置中の美浜1・2号の燃料プールの空きスペースを美浜3号の使用済燃料貯蔵用に使える」との想定で燃料交換可能回数を増やしていましたが、そのトリックを暴くためには、その他の様々な入手しにくい情報を駆使する必要がありましたから。しかも、関電は仏での使用済MOX燃料再処理実証研究発表時(2023.6.12)にそれを事実上撤回した後も、そのトリックが誤りだったとは認めていないのですから。
最後に、2024年3月末現在の使用済燃料貯蔵量8,480体(廃止措置中の4基を含む)に基づけば、高浜1~4号はあと2回、大飯3・4号は3回、美浜3号は4回で燃料交換できずに運転停止となります。そうなっても、「乾式貯蔵で空いたスペースは使われない」と、貴職は保証できますか。
5.「円滑な搬出等のために乾式貯蔵が必要」というのも、根拠のない虚言ではありませんか ?
関西電力は、「使用済燃料の中間貯蔵施設へのより円滑な搬出」および「将来の搬出に備える」ために乾式貯蔵が必要だと言いますが、その必要性を示す客観的根拠がありません。
第1に、関西電力以外では、むつ市中間貯蔵施設を計画している東京電力と日本原電を含めて、「円滑な搬出」を目的としたサイト内乾式貯蔵施設の設置計画は存在しません。関西電力以外の電力会社等の乾式貯蔵はすべて「使用済燃料の貯蔵容量の増強」が目的です。
第2に、「発電所の運転・建設年報令和4年度(2022年度)」に記載された福井県内の原発から国内外再処理工場等への9,303体の使用済燃料搬出記録によれば、「乾式貯蔵がないために円滑な搬出ができなかった」というトラブルの例は何も記載されていません。輸送先と輸送計画が明確であれば、「円滑な搬出」のための乾式貯蔵など不要なのです。
第3に、輸送先も輸送計画もない中で、「円滑な搬出」のための乾式貯蔵施設の設置を計画すること自体に無理があります。関西電力は乾式貯蔵容量700tU(1,530体)の算出根拠を、中間貯蔵施設へ輸送する輸送船の積載可能量と年間輸送可能回数から算出した年間輸送可能量だと説明しているようですが、搬出先の中間貯蔵施設や再処理工場が存在せず、搬出計画も存在しない現状で、年間搬出量を示せるはずがありません。
第4に、9,303体の使用済燃料搬出記録によれば、六ヶ所再処理工場等への年間搬出量の最大値は、美浜98体、大飯140体、高浜168体にすぎず、それをはるかに超える乾式貯蔵容量(美浜210体、大飯552体、高浜768体)は、その必要性を正当化できません。ましてや、乾式貯蔵容量計1,530体(700tU)は美浜・大飯・高浜の各原発における全炉心の約1.3倍、関電の計画する中間貯蔵施設(2,000tU)の1/3に相当する大規模なものであり、審査会合で関電が主張した通り、「貯蔵容量増強策」そのものです。
第5に、高浜原発第1期工事の乾式貯蔵計画によれば、乾式キャスク収納条件は「32年以上冷却12体と25年以上冷却12体の計24体」ですが、高浜1~4号使用済燃料貯蔵量3,175体(2024.3末現在)のうち、冷却期間25年以上の使用済燃料は895体にすぎず、最初の528体を乾式貯蔵し「円滑に搬出」したとしても、収納条件に合う使用済燃料はほとんど残っていません。つまり、「円滑な搬出」ではなく、「25年ないし32年以上冷却された使用済燃料の長期貯蔵」が目的である可能性が極めて高いと言えるのです。
貴職は以上の現実をみてもなお、行先のない使用済み核燃料をこれ以上生み出すことを止めさせようと決意なされないのはなぜでしょうか? 乾式貯蔵は「中間貯蔵施設へのより円滑な搬出」だとか、「将来の搬出に備えて」とかを未だに「信じて」 乾式貯蔵の設置を了承されるおつもりなのでしょうか。
サヨナラ原発福井ネットワーク/若狭ネット福井連絡先
越前市入谷町13-20 山崎隆敏方 電話090-6271-8771