————- 意見その6 ——————————————————————————————
・該当箇所:第4章(2)714-718行、734-736行、第5章(1)1029-1033行、第5章(3)1437-1445行、第5章(5)1573-1579行、第5章(11)3227-3233行、第5章(13)3558-3561行
「2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、電化の促進、電源の脱炭素化が鍵となる中で、再生可能エネルギーに関しては、S+3Eを大前提に、2050年における主力電源として最優先の原則の下で最大限の導入に取り組む。」(第4章(2)734-736行)
「近年、太陽光発電等の変動型再生可能エネルギーの拡大により、一部地域では再生可能エネルギー電気の出力制御が実施されるなど、再生可能エネルギーの余剰電力が生じることがあるが、このタイミングに需要をシフト(上げDR)することは、需給一体で見たときにエネルギーの使用の合理化につながる。また、猛暑や厳冬、発電設備の計画外停止等が起因となる需給ひっ迫時等においては、節電要請等の需要の削減(下げDR)が有効な対策の一つとなる。他方、現行省エネ法では、夏冬の昼間の電気需要平準化を一律に需要家に求めており、需給状況に応じて柔軟に需要を創出・削減する枠組みとはなっていない。このため、供給サイドの変動に応じて需要を最適化する枠組みの構築を進めていく。」(第5章(3)1437-1445行)
「今後とも、2050年カーボンニュートラル及び 2030年度の温室効果ガス排出削減目標の実現を目指し、エネルギー政策の原則であるS+3Eを大前提に、電力部門の脱炭素化に向け、再生可能エネルギーの主力電源化を徹底し、再生可能エネルギーに最優先の原則で取り組み、国民負担の抑制と地域との共生を図りながら最大限の導入を促す。具体的には、地域と共生する形での適地確保や事業実施、コスト低減、系統制約の克服、規制の合理化、研究開発などを着実に進め、電力システム全体での安定供給を確保しつつ、導入拡大を図っていく。」(第5章(5)1573-1579行)
「これらのネットワーク増強等について効率化を促しつつ、必要な費用を公平に確保していくため、2023年度に託送料金制度を見直し、レベニューキャップ制度を導入するとともに、S+3Eを大前提に再生可能エネルギーに最優先の原則で取り組むという方針の下で、発電側課金制度の円滑な導入に向けて、導入の要否を含めて引き続き検討を進める。なお、託送料金の仕組みを活用し、原子力事故に係る賠償への備えに関する負担や廃炉に関する会計制度措置を講じているところであり、こうした自由化後の公益的課題に対する費用回収の取組も着実に進める。」(第5章(11)3227-3233行)
・意見内容
太陽光・風力への「接続可能量(電力需給面)」と「送電網接続制限(送電容量面)」を撤廃し、接続工事費負担を抜本的に軽減し、送配電網の管理運営権を電力会社から公平中立な公的機関に完全委譲すべきです。
・理由
再生可能エネルギーを「主力電源として最優先の原則の下で最大限の導入に取り組」(第4章(2)715-716行)むには、再エネの優先接続・優先給電が不可欠です。ところが、優先接続・優先給電を妨害している現在の政策をそのままにしていては不可能です。第1に、電力需給面からの「接続可能量」(電力需給面からの給電制限)を撤廃すべきです。第2に、送電容量面からの「送電網接続制約」(送電容量面からの接続制限)を根本的に緩和する措置が不可欠です。第3に、送電網接続点(一次変電所)までの「電源線設置工事・管理費負担」(送配電網整備費の費用負担)を抜本的に軽減すべきです。
経産省は、「接続可能量」を超える再エネ接続には無制限・無補償の出力制御を導入しておきながら(中3社を含めて2021年4月から全国へ拡大)、再エネの大量導入を実現するためには、「需要側において、時期・時間に応じて再エネ余剰電力が発生している時に需要をシフト(上げDR)し、需給逼迫時等に需要を抑制(下げDR)することが重要」であり、「今後、省エネ法において、これらを制度的に促すための枠組みを検討していく」としていますが、そんな小手先の施策ではなく、経産省の導入した「接続可能量」をはじめ、再エネ普及を妨げるシステムをすべて見直し、撤廃し、再エネ最優先で最大限に導入可能なシステムへと根本的に造り替え、再エネ優先接続・優先給電へ転換すべきです。
そのためには、欧州連合EU等で実際に行われているように、送電網の管理・運営権を公平・中立な全国統一の送電網管理機関に委譲し、電力会社による送配電網支配を断ち切るべきです。その上で、地域間連系線を増強して再エネ最優先で全面開放すべきです。そうするだけで再エネの出力制御は不要になります。送電網増強費は高速道路網と同様に全国負担とし、再エネ導入を進める新電力に新たな負担となる発電側基本料金の2023年度導入は中止すべきです。
電力会社による電力市場支配力の源泉は送配電網の支配にあります。2016年4月の小売電力自由化以降も、この支配力が依然として強すぎるため、2020年4月の発送電分離を機に「総括原価方式による電気料金規制制度」を廃止する予定でしたが、電力会社の支配力が弱まるまで存続させることになっています。再エネの優先接続・優先給電を妨げる最大の原因は電力会社による送配電網支配を通じた電力市場介入です。送配電網の管理・運営権を電力会社から剥奪しない限り、再エネの最優先・最大限の導入は妨害され続けるでしょう。
————- 意見その7 ——————————————————————————————
・該当箇所:第5章(1)1155-1162行、(7)2505-2514行、(13)3582-3585行
「(d)石炭 現時点の技術・制度を前提とすれば、化石燃料の中で最もCO2排出量が大きいが、調達に係る地政学リスクが最も低く、熱量当たりの単価も低廉であることに加え、保管が容易であることから、現状において安定供給性や経済性に優れた重要なエネルギー源である。今後、石炭火力は、再生可能エネルギーを最大限導入する中で、調整電源としての役割が期待されるが、電源構成における比率は、安定供給の確保を大前提に低減させる。」((1)1155-1162行)
「具体的には、非効率な火力、特に非効率な石炭火力については、省エネ法の規制強化により最新鋭のUSC(超々臨界)並みの発電効率(事業者単位)をベンチマーク目標として設定する。その際、アンモニア等について、発電効率の算定時に混焼分の控除を認めることで、脱炭素化に向けた技術導入の促進につなげていく。こうした規制的措置に加え、容量市場については、2025年度オークションから、一定の稼働率を超える非効率な石炭火力発電に対して、容量市場からの受取額を減額する措置を導入することで、非効率石炭火力のフェードアウトを着実に推進していく。また、脱炭素化を見据えつつ、次世代の高効率石炭火力発電技術である石炭ガス化複合発電(IGCC)や石炭ガス化燃料電池複合発電(IGFC)などの技術開発等を推進する。」((7)2505-2514行)
「火力発電については、再生可能エネルギーの更なる最大限の導入に取り組む中で、当面は引き続き主要な供給力及び再生可能エネルギーの変動性を補う調整力として活用しつつ、非化石電源の導入状況を踏まえながら、安定供給確保を大前提に、非効率石炭のフェードアウトといった取組を進め、火力発電の比率をできる限り引き下げる。その際、エネルギー安全保障の観点から、天然ガスや石炭を中心に適切な火力ポートフォリオを維持し、電源構成ではLNG火力は20%程度、石炭火力は19%程度、石油火力等は最後の砦として必要最小限の2%程度を見込む。更に、今後の重要なエネルギー源として期待される水素・アンモニアの社会実装を加速させるため、電源構成において、新たに水素・アンモニアによる発電を1%程度見込む。」((13)3582-3585行)
・意見内容
石炭火力へのバイオマス・アンモニア混焼やCCSは、石炭火力の延命につながり、CO2削減に寄与せず、化石資源採掘を促します。2050年より早い廃止を掲げ、石炭火力を速やかにフェードアウトさせる計画を具体化すべきです。
・理由
発電コスト検証ワーキンググループによる「基本政策分科会に対する発電コスト検証に関する報告」(2021年9月)では、2030年新設プラントの発電コスト比較で、太陽光(事業用、住宅)と風力は8~9円台で、13円台の石炭火力より安いという結果が示され、CO2の最大の発生源である石炭火力を「安定供給性や経済性に優れた重要なエネルギー源」(1158-1159行)と位置づける根拠はすでに失われています。CO2排出量を減らすためのバイオマス混焼やアンモニア混焼、さらにCO2分離回収・貯留CCS(Carbon dioxide Capture and Storage)は石炭火力の経済性を一層悪化させるだけであり、石炭火力の延命にしかなりません。石炭火力を「火力電源のうち最優先で速やかにフェードアウトさせるべき電源」と位置づけ直し、CCS開発費をそのために使うべきです。
石炭火力のバイオマス混焼やアンモニア混焼などでは、CO2排出量をLNG火力程度へ引き下げるだけでも50%以上の混焼が必要ですが、アンモニア混焼率を引上げようと燃焼空気を増やすと、有害な窒素酸化物NOxが大量に発生するため、20%混焼が限度だとされています。実証試験が計画されているアンモニア20%混焼では、石炭火力の運転時CO2発生量は864g-CO2/kWhから20%減っても691g-CO2/kWhに留まり、石油火力と同等で、LNG火力(GTCC)の2.3倍から1.8倍となるだけで、ほとんど変わりません。石炭火力のCO2削減策は「早期廃止」以外にないのです。
CCSによる発電単価上昇は、資源エネルギー庁評価でも、石炭火力で7~9円/kWh、LNG火力で3~4円/kWhと高く、国内のCO2貯留地は制約されているため、さらに、船舶輸送費が加わって4~5割増になります。CCSコスト削減のために、分離・回収したCO2を「油田回復EORやガス田回復EGR用に売却する方策」や「自らEORやEGRに用いて産出した石油やガスを売却する方策」も提案されていますが、関西電力子会社「KANSOテクノス」の実績評価では、貯留コストを回収できる程度に留まります(KANSOテクノス成果発表会,2007.12.17)。また、それは化石資源採掘を助長するものであり、CO2削減方針に反します。CCSやEOR・EGRは、CO2貯留・注入後のCO2漏洩の恐れがあり、シェールガス生産時に問題となった地震頻発の可能性もあります。
CCS、EOR、EGR、バイオマス混焼、アンモニア混焼などで石炭火力を延命させるのではなく、大幅なエネルギー消費削減と最優先かつ最大限の再エネ拡大で早期に石炭火力を廃止すべきです。
ところが、2019年度実績から2030年度に向けた経産省の「石炭フェードアウト計画(2030年度見通し)」では、大手電力の非効率な石炭火力(Sub-C、SC)が39基から20基程度へ減るものの、効率的な石炭火力(USC、IGCCその他)は30基から35基へ増え、その他事業者との合計では、石炭火力149基4,791万kWから145基4,800万kWでほとんど変わりません。にもかかわらず、発電電力量が31%から26%へ減っているのは、効率的な石炭火力の設備利用率を67%に維持しながら、非効率な石炭火力の設備利用率を38%程度へ下げて、減ったように見せかけただけです。これではフェードアウト計画とは言えません。今回のエネ基本計画(案)では石炭火力はさらに発電電力量の19%に下がり、総発電電力量も9300~9400億kWhへ下がっていますので、石炭火力は1,780億kWh程度へ減らさねばなりません。そのためには、さらに1,500万kW程度減らす必要があります。
他方、「火力は45年運転で廃止」を仮定した経産省の「今後10年間の火力供給力(調整力)の増減見通し」では、2021年以降10年間で、大手電力の石炭火力は686万kW新設、499万kW廃止で、合計187万kW増と試算しており、石炭フェードアウト計画の大手電力277万kW減(新設・廃止でUSC他433万kW増、SC他710万kW減)にするには、大手電力だけで「運転45年未満」の石炭火力で464万kW以上の追加廃止が必要になります。さらに、「石炭火力19%」にするには、その他事業者を含めて、さらに、1,500万kW以上の削減が不可欠です。高効率であっても石炭火力の新設は中止すべきであり、既存石炭火力についても2022~2038年に石炭火力をフェードアウトさせる欧州諸国(仏2022年、英2024年9月末、伊2025年、スペイン2030年、独2038年)を見習って、2050年よりできるだけ早くフェードアウトさせる計画を打ち出し、具体的に進めるべきです。
非効率石炭火力を38%の低稼働率でも維持し続ける理由は、原発停止時のカバー電源用、また、夏冬の電力不足対応用と考えられますが、再エネを最優先で最大限導入し、原発も閉鎖すれば、その必要はなくなります。他方、容量市場による「4年後の容量確保契約」とバイオマス混焼による「再エネFIT買取期間20年の制約」が石炭火力延命に利用されている可能性もあります。容量市場は廃止すべきであり、このような延命のための利用は言語道断です。