東京電力と政府は、高濃度のトリチウム汚染水を海水で500倍に薄めて、毎日5万m3以上の規模で、30年以上にわたって海洋放出しようとしています。
経済産業省の「廃炉・汚染水対策チーム」は、コロナ感染症が拡大しているにもかかわらず、形だけの「関係者の御意見を伺う場」で国民合意の形だけを作り、「トリチウム汚染水の海洋放出」方針を早期に決定しようとしています。
「原発のない福島を!県民大集会」実行委員会は、福島県民の総意を結集してこれに反対し、4月15日から反対署名を始めています。この呼びかけに応じ、福島県内は元より、全国でも署名に取り組み、拡大し、全国の力を合わせて、トリチウム汚染水の海洋放出を阻止しましょう。
この署名に加えて、国民の反対の声を直接意見として届けることも大切です。
下記の通り、「書面による御意見の募集」が行われていますので、一人でも多くの方に提出して頂きたく、お願いします。
書面による御意見の募集について
(募集期間)2020年4月6日(月)~2020年5月15日(金)(必着:※郵送の場合、消印有効)
意見公募要領
意見様式(pdf形式)
意見様式(word形式)
電子政府の総合窓口(e-Gov)からでも意見を提出できます(こちら)
若狭ネット資料室長(長沢啓行)は下記の5つの意見を本日提出しました。
皆さんも意見提出時の参考にしてください。
(提出意見のpdfはこちら:その1、その2、その3、その4、その5)
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「多核種除去設備等処理水の取扱い」に係る書面による意見提出(その1)
トリチウム汚染水の海洋放出には反対です。トリチウム汚染水は、トリチウム以外の核種を現在の技術で可能な限り除去した上で、タンク貯蔵とグラウト固化埋設の併用等で陸上保管すべきです。
トリチウム汚染水の海洋放出方針が急に出てきたのは、「汚染水タンクが2022年6月にも上限に達するため今年夏までに方針を決めねばならない」という理屈によります。確かに、「2年後には137万トンのタンク」は「満杯になる」かもしれませんが、それと「海洋放出」とは関係ありません。「タンクをなぜ増設できないのか」、「米サバンナリバーで実績のあるグラウト固化埋設をなぜ採用できないのか」、「両者を併用して3割程度の高濃度汚染水をグラウト固化埋設し、空きタンク利用とタンク増設で低濃度汚染水をタンク貯蔵し続ける選択肢をなぜ検討しないのか」、これらについて納得できる説明はありません。「多核種除去設備等処理水の取扱いに関する小委員会報告書」(2020.2.10)は東電の説明を鵜呑みにしただけで、これらを真剣に議論した形跡が全くありません。
東電は、福島第一原発敷地を町境で分割し、北(双葉町)側を「廃棄物処理・保管エリア」、南(大熊町)側を「汚染水タンク・使用済燃料・燃料デブリ保管エリア」と人為的に分け、南側は満杯だとし、北側の土捨場等の空地はタンク増設や固化埋設には使わないと恣意的に設定しています。「土捨場の汚染土は敷地外へ持ち出せない」とか「空地には他の用途が計画されている」とかは「できない理由」を無理に挙げたすぎません。この前提を取り去れば、「2022年6月の恣意的な期限」もなくなるのです。その意味では、タンク増設の余地はあり、真剣に考慮していないだけだと言えます。
タンク貯蔵のリスク低減のためには、高濃度トリチウム汚染水とそれ以外を分けて管理する必要があります。タンク貯留水のタンク群別東電公表データに基づけば、トリチウムの告示濃度比が20倍(120万Bq/L)以上のタンク貯留水は約32万m3で、そこに約520兆Bqが含まれます。2019年12月末時点のタンク貯留水118万m3、860兆Bqと比べると、この32万m3は、貯留水の27%にすぎず、そこにトリチウムの60%が含まれます。この高濃度タンク水をトリチウム以外の核種濃度を極限にまで減らした上で固化埋設すれば、数百年後にはほぼ無害になります。残りのタンク水86万トンに含まれるトリチウムは340兆Bq、平均40万Bq/Lであり、100年経てば、1.2兆Bqに下がり、その濃度も地下水バイパス運用目標の1,500Bq/L未満へ低下します。告示濃度限度以下の約2万m3は50年弱でこのレベルに達します。その頃には、セシウム(セシウム137の半減期は30.04年)による汚染も今より1桁程度低くなっているでしょう。廃炉・汚染水対策も大きく変わっている可能性もあり、その時点で残された汚染水をどうするかを決めても遅くはありません。トリチウム対策は12.33年の半減期による減衰を待つのを基本とすべきであり、海水で希釈して海洋投棄したり、加熱して水蒸気にして大気放出したりという安易な手段に頼るべきではありません。
固化埋設の実例は、米サバンナリバーにあり、低レベル放射性廃液を直径114m、高さ13m、容量約12万m3の巨大タンク(SDU6)で廃液7.1万m3をグラウト固化しています。サバンナリバーでの最近の実績では、1m3の廃液を固化すると1.76m3のグラウトができるとされています。通常は4m3程度になると言われていますので、極めて効率的なグラウトが開発されたのかも知れません。高濃度トリチウム汚染水32万m3をグラウト固化埋設するには、2~4倍程度と考えて、巨大タンク5~10基で十分です。設置面積は1基約1万m2ですので、5~10万m2で済みます。敷地北側の土捨場の一部を固化埋設場所とし、土を覆土に使えば、「敷地外への土壌移動」の必要もありません。小委員会試算では、80万m3の汚染水を「地下埋設」するのに28.5万m2の広さが必要で、地下埋設に約8年、監視に約76年、費用は2,431億円と見積もられていますが、半分以下の広さで済みますし、費用も1,000億円未満で済むでしょう。「トリチウム汚染水の海洋投棄ありき」で「審議」しているから、現実的な対策が見えないのです。
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「多核種除去設備等処理水の取扱い」に係る書面による意見提出(その2)
トリチウム汚染水の海洋放出には反対です。東京電力と政府は、福島第一原発で炉心溶融事故を招いた責任をとらず、成否不明の凍土遮水壁を中心とする汚染水対策が破綻した責任をとらず、汚染水対策として福島県民に苦渋の決断を強いた地下水バイパスやサブドレン等で「希釈は行わない」とする運用基準を踏みにじり、「トリチウム汚染水(ALPS処理水)は海洋放出しない」との約束さえ反故にするものであり、絶対に許せません。トリチウム汚染水は海洋放出を断念し、トリチウム以外の核種を現在の技術で可能な限り除去した上で、タンク貯蔵とグラウト固化埋設の併用等で陸上保管すべきです。
そもそも、今日の危機を招いたのは東電と政府です。福島第一原発1~3号炉心溶融事故を引き起こした責任は東電と政府にあり、廃炉・汚染水対策の責任も東電と政府にあります。事故直後の汚染水対策として、「地下水の流れを抜本的に変える大規模な土木工事の場合は東電救済になるから資金援助できないが、成功するかどうかわからない凍土遮水壁工事なら研究開発予算を出せる」として、役に立たない凍土壁を作って汚染水を累々と貯め続けてきたのは東電と政府です。汚染水貯蔵タンクの容量は当初の80万m3(2013.5)から90万m3(2014.7)、120万m3(2016.8)、135万m3(2016.9)、136.5万m3(2019.2)となし崩し的に増やされてきました。「それが満杯になるから海洋放出以外にない」というのは自らの失策と無能を棚上げにして居直り、福島県民に一層の犠牲を強いて逃げるものです。まずは、福島事故を招いた責任を認め、汚染水対策破綻の責任を認め、放射能放出で福島県民にこれ以上犠牲を転嫁しないため、海洋放出回避策に全力で真剣に取り組むのが政府の最低限の責任です。原子力損害賠償紛争解決センターの和解案を拒否し、事故処理能力もなく、申し訳ないという反省のかけらもない東電には退場してもらう以外にはありません。
東電によるトリチウム汚染水海洋放出の検討素案(2020.3.24)は、「地下水バイパスおよびサブドレンの運用基準(1,500Bq/L)を参考に検討する」というもので、トリチウム汚染水119万m3、860兆Bqを、平均73万Bq/Lから1,500Bq/Lへ約500倍に薄めて海洋放出するというものです。ところが、「サブドレン及び地下水ドレンの運用方針」(2015.9、廃炉・汚染水対策チーム、東電福島第一廃炉推進カンパニー)には「サブドレン及び地下水ドレン以外の水は混合しない(希釈は行わない)」と明記してあり、これに違反します。また、野﨑福島県漁連会長によれば、「バイパス、サブドレンの放出に協力してきたという経緯があります。それは『ALPSを通した水は海洋投棄しない』という回答をもらったことによる決断でした。汚染された地下水を海に流さないために凍土壁や海側遮水壁をつくるための協力だったわけですから、わたしたちにとっては前向きでした。汚染水を流さないための陸上保管だったはずです。」(日々の新聞第409号, 2020.3.15) この約束さえ反故にすることになります。
2020年3月末で、地下水バイパスは316回、約54万m3、約0.076兆Bqで、サブドレンは1,227回、約88万m3、約0.58兆Bqですが、トリチウム汚染水海洋放出は、約500倍に薄めて約5.8億m3、860兆Bqと桁違いであり、地下水バイパスの1万倍以上、サブドレン等の1千倍以上になります。
2019年12月23日の東電シミュレーションでは、海洋放出しなければ2035年には183万m3に達し、トリチウム汚染水が発生しなくなる2048年頃まで100m3/日の割合で増え続けると試算しています。事故発生から10年以上経てば、溶融燃料の発熱量は2kW/tHMへ下がり、炉内構造物やコンクリートと混合した燃料デブリでは1kW/t程度と推定され、冷却水注入方式から自然空冷方式への移行を検討し、燃料デブリと接触して生じる汚染水や地下水の建屋流入量の抜本的抑制を図るべきです。東電シミュレーションはこれを全く考慮していません。「不都合な想定はモデル化しない」のは自分勝手です。苦渋の決断で協力してきた福島県民を裏切り、あらたな犠牲を強いるトリチウム汚染水の海洋放出は断念すべきです。
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「多核種除去設備等処理水の取扱い」に係る書面による意見提出(その3)
トリチウム汚染水の海洋放出には反対です。低レベル放射性廃棄物を、陸上保管可能な対案があるにもかかわらず、意図的に海洋放出して海を汚染するのはロンドン条約違反です。海洋法に関する国際連合条約にも違反します。1993年3月30日に閣議決定した平成5年度原子力開発利用基本計画の「低レベル放射性廃棄物の海洋投棄については、関係国の懸念を無視して行わない」との方針に違反し、1993年11月2日の原子力委員会決定にある「低レベル放射性廃棄物の海洋投棄は、国際原子力機関の基準等に則って行えば、公衆の健康に特段の影響を与えるものではないと考える。しかし、・・・我が国としては、今後、低レベル放射性廃棄物の処分の方針として、海洋投棄を選択肢にしない」との方針にも違反します。トリチウム汚染水は海洋放出を断念し、トリチウム以外の核種を現在の技術で可能な限り除去した上で、タンク貯蔵とグラウト固化埋設の併用等で陸上保管すべきです。
日本政府は1980年11月14日に海洋投棄規制条約(ロンドン条約)に正式加盟し、締約国の特別な許可を得て低レベル放射性廃棄物を海洋処分しようと計画していましたが、1980年太平洋ベースン首脳会議で「投棄計画中止を要求する」共同声明が採択され、1983年第7回ロンドン条約締約国協議会議で「海洋投棄によるすべての影響が明らかにできるような研究が完了するまでは投棄を一時停止する」決議が採択され、1985年第9回同会議で、科学的検討のみならず、政治的、社会的等の検討を含む広範な調査、研究を終了するまで海洋処分を一時停止するとの決議がなされたのです。そのような中、ロシア政府が1993年4月に、かつて旧ソ連及びロシアにより日本海、オホーツク海等の極東海域及びバレンツ海等の北方海域に液体及び固体廃棄物を投棄した事実が公表され、また、同年10月のロシアによる日本海での液体放射性廃棄物の海洋投棄等が明らかになり、放射性廃棄物海洋投棄に対する国際的関心が一層高まった結果、日本政府も1993(平成5)年度原子力開発利用基本計画(1993.3.30閣議決定)で「低レベル放射性廃棄物の陸地処分については・・・処分技術の開発等を推進する。海洋処分については、関係国の懸念を無視して行わないとの考え方の下に、その実施については慎重に対処する。」とし、1993年11月2日には、「今後、低レベル放射性廃棄物の処分の方針として、海洋投棄は選択肢としない」との原子力委員会決定がなされたのです。
その10日後、同年11月12日の第16回ロンドン条約締約国協議会議では、「放射性廃棄物およびその他の放射性物質」の海洋投棄の原則禁止等の条約改定が行われました。その附属書一(投棄を検討することができる廃棄物その他の物)では、「国際原子力機関によって定義され、かつ、締約国によって採択される僅少レベル(すなわち、免除されるレベル)の濃度以上の放射能を有する」しゅんせつ物・下水汚泥・魚類残さ又は魚類の工業的加工作業から生ずる物質等8種類の物質は投棄対象として検討可能とされていますが、今回のように、「高度濃度放射性廃液を免除レベル未満へ海水で希釈すれば海洋投棄してもよい」という規定などありません。それを認めれば原則禁止が骨抜きになるからです。
低レベル放射性廃液の海洋投棄が原則禁止にされたロンドン条約の経緯や日本政府が海洋投棄を選択肢にしないと決定した経緯から判断すれば、高濃度トリチウム汚染水を大量の海水で希釈して海洋投棄するなど、到底できないはずです。海洋法に関する国際連合条約にも違反します。陸上での固化埋設とタンク貯蔵で乗り切れる選択肢があるのですから、それを真摯に検討し、海洋放出を断念すべきです。
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「多核種除去設備等処理水の取扱い」に係る書面による意見提出(その4)
トリチウム汚染水の海洋放出には反対です。トリチウム汚染水の海洋放出は、福島事故の被災者であり、今なお放射能汚染に苦しめられている福島県民等に一層の被ばくを強要するものであり、「一般公衆の被ばく線量限度1mSv/年」を担保した法令(告示)の趣旨に違反します。福島事故前のバックグラウンド線量0.04μSv/時を基準として追加される被ばく線量を1mSv/年(屋外8時間・屋内16時間として0.19μSv/時相当)未満に抑制するため全力を尽くすことこそが、東京電力と政府の責任です。トリチウム汚染水は海洋放出を断念し、トリチウム以外の核種を現在の技術で可能な限り除去した上で、タンク貯蔵とグラウト固化埋設の併用等で陸上保管すべきです。
福島県民等は福島第一原発事故で原子力災害に見舞われた原子力被災者であり、事故直後には約8万人が強制的に避難させられ、約400万人が放射線管理区域(外部放射線量が1.3mSv/3ヶ月(0.6μSv/h)超または表面密度でα核種4kBq/m2超、その他40kBq/m2超)に相当する汚染地での生活を余儀なくされ、「一般公衆の被ばく線量限度1mSv/年」を超えて被ばくさせられました。その影響はまだ続いています。
旧避難指示区域、居住制限区域、避難指示解除準備区域では、汚染レベルが十分下がっていないのに、2014年4月の田村市を初めとして、「20mSv/年の基準(空間線量率で推定された年間積算線量が20mSv以下になること)」で避難指示が解除されてきました。避難指示解除の要件には、これ以外に、「電気、ガス、上下水道、主要交通網、通信など日常生活に必須なインフラや医療・介護・郵便などの生活関連サービスが概ね復旧すること、子どもの生活環境を中心とする除染作業が十分に進捗すること」および「県、市町村、住民との十分な協議」が挙げられていますが、除染しても1mSv/年未満には下がらず、インフラも整備できないため、住民の多くは、子どもを連れての帰還を拒否しています。ところが、住民の声は踏みにじられ、他の要件は無視され続けています。他方、避難指示解除は、避難支援打ち切りに直結しています。2017年3月末で「自主避難者」への住宅の無償提供が打ち切られ、2019年3月末には旧避難区域(南相馬市、浪江町、川俣町、葛尾村、飯舘村)からの避難者約2,200世帯への仮設・借り上げ住宅提供も打ち切られました。国民が憲法で保証されるべき基本的人権が踏みにじられているのです。
被災前の自然放射線量率0.04μSv/hを基準として、これを超える追加被ばく線量が1mSv/年(空間線量率0.19μSv/h相当)を超えないように、徹底した対策を講じることこそが、東京電力と政府の第一の義務であるはずです。「緊急時被ばく状況」(参考レベルとして20~100mSv/年を強要)や「現存被ばく状況」(1~20mSv/年の下方部分を参考レベルとし、長期的に1mSv/年を目指す)など現行法令にないものを根拠にして、「一般公衆の被ばく線量限度1mSv/年」を超える被ばくを強要することは許されません。事故時に放出された放射能で今でも福島県民等の多くが1mSv/年を超えて追加被ばくさせられて続けています。そのうえさらに「1mSv/年までの追加なら許される」と主張するのは「一般公衆の被ばく線量限度1mSv/年」を担保する法令(告示)の趣旨に反します。憲法違反です。
地下水バイパスやサブドレン・地下水ドレンの排水濃度の運用基準を準用してトリチウム汚染水の海洋放出を強行するのは、「希釈を行わない」との運用基準に違反し、「ALPS処理水は海洋放出しない」との約束に違反します。さらに、被災前の自然放射線量率0.04μSv/hを基準として追加される被ばく線量を規制し、「一般公衆の被ばく線量限度1mSv/年」を担保する法令(告示)の趣旨に違反します。
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「多核種除去設備等処理水の取扱い」に係る書面による意見提出(その5)
トリチウム汚染水の海洋放出には反対です。トリチウム汚染水にはトリチウム以外の核種が高濃度に含まれているため、これを極限にまで除去した上で、トリチウム汚染水の海洋放出を断念し、タンク貯蔵とグラウト固化埋設の併用等で陸上保管すべきです。
トリチウム汚染水(ALPS 処理水)には、表1のように、告示濃度限度が最大で2万倍にも達するトリチウム以外の核種も含まれており、これを除去するのが先決です。表1では、満水になったタンクに関する濃度分布を示していますが、トリチウム以外の62 核種の告示濃度比総和が1 未満であるタンク水は約13.7 万m3、15%にすぎません。85%のタンク水は告示濃度限度を超えています。トリチウム汚染水にはトリチウム以外の核種が大量に含まれるため、これを除去したうえで、対策を議論すべきです。
こうなった理由は、タンク汚染水のALPS 処理を急いだためです。事故直後はセシウム除去を主眼にし、濃縮塩水と呼ばれる高濃度汚染水をタンクに貯蔵していたため、タンク等からの放射線による敷地境界線量が2013 年度末で9.76mSv/年と高く、告示違反状態が続き、濃縮塩水のALPS 処理を急いだのです。
当時のALPS は処理性能が低く、吸着塔を頻繁に取り替える必要がありましたが、吸着塔交換に1 塔当り2~14 日かかるため、少しでも濃度が下がればよいとの判断で、交換頻度を下げて汚染水処理量を増やしたのです。その途上で、高濃度汚染水がクロスフローフィルターを通り抜ける事故も起き、告示濃度比が100~19,909 にもなる汚染水が6.5 万m3 も生じたのです。経産省等はこの事実に触れないまま、トリチウム汚染水(ALPS 処理水)を「トリチウム水」であるかのように振る舞っていました。「国民だましから始まったことを真摯に反省し、謝罪する」のをトリチウム汚染水対策の原点とすべきです。
追い込まれた東京電力は、ALPS または逆浸透膜装置(水以外のイオン・塩類を透過しない濾過膜)で二次処理を検討中だと弁明しましたが、更田原子力規制委員長は、二次処理は「告示濃度制限が守られる限り、絶対に必要なものという認識はない。」「科学的には、再浄化と(より多くの水と混ぜることで)希釈率を上げるのに大きな違いはない。」(10.5 記者会見、福島民友新聞2018.10.6)と発言し、トリチウム以外の核種も含めて、告示濃度限度まで薄めればよいとの認識を披露したのです。告示濃度限度の2万倍でも2 万倍に薄めればよいというのは暴論であり、告示を曲解しています。経産省はこれと一線を画すべきです。トリチウム以外の核種を技術的に可能な限り低く除去しない限り、議論できません。