若狭ネット

福井と関西を結び脱原発をめざす市民ネットワーク

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ニュース

若狭ネットニュース第162号を発行しました

若狭ネットニュース第162号を発行しました。

第162号(2016/9/24)(一括ダウンロード1.6M
巻頭言-これ以上、東電を救済するな!原発コストの託送料金繰入=新電力への転嫁反対!東電を破産処理し、国の責任で廃炉・汚染水対策を!原子力被災者への賠償を原発再稼働で賄うな!柏崎刈羽原発再稼働反対!福島第二原発廃炉!東電が弁済すべき除染費を公共事業費で代替するな!
「もんじゅ」即刻廃炉!プルトニウム利用政策を転換し、再処理工場の閉鎖を!電源三法を廃止し、原子力予算を大幅に削減せよ!
【若狭ネット結成25周年特別企画2016.9.4】福井と関西から25年の運動を振り返り、脱原発を展望する 
(1)若狭ネット25年の闘い 報告若狭ネット久保良夫
(2)福井からの報告 山崎隆敏(武生市)田代牧夫(敦賀市)松下照幸(美浜町)石地優(若狭町)

<巻頭言>
これ以上、東電を救済するな!原発コストの託送料金繰入=新電力への転嫁反対!東電を破産処理し、国の責任で廃炉・汚染水対策を!原子力被災者への賠償を原発再稼働で賄うな!柏崎刈羽原発再稼働反対!福島第二原発廃炉!東電が弁済すべき除染費を公共事業費で代替するな!
「もんじゅ」即刻廃炉!プルトニウム利用政策を転換し、再処理工場の閉鎖を!電源三法を廃止し、原子力予算を大幅に削減せよ!

資金援助がなければ、すでに破産状態の東京電力

今から、3年前の2013年12月20日、安倍政権は閣議決定で、東京電力への資金援助のための交付国債を5兆円から9兆円へ引上げました。その内訳は、損害賠償費5.4兆円(個人・会社等への損害賠償)、除染費2.5兆円(帰還困難区域の除染費を除く)、中間貯蔵施設1.1兆円でした。ところが、図1のように、2016年3月に認定された「新・総合特別事業計画」では、損害賠償額は6.44兆円にのぼり、すでに1兆円を超えています。除染費は1.22兆円しか計上されていませんが、これは閣議決定の除染費で見積もっている「計画分」以外は払わないと東電が主張しているからです。実際には、国・自治体の前払い除染費は
約1.8兆円に達し、うち約7千億円が東電へ請求されていますが、東電は4,800億円しか払っていません。
住宅近くの森林をキチンと除染したり、帰還困難区域の除染が始まると除染費は大きく膨らみます。
また、先の閣議決定では福島第一原発の廃炉・汚染対策費は東電負担とされ、東電が資産売却やコスト削減で2兆円を捻出することになっていましたが、それでも足りず、さらに4兆円が必要だと見積られています。実際には廃炉法も未定で見積は不可能です。
これらを考慮すれば、東電の当面の資金不足額は5兆円を超え、今後の損害賠償・除染・廃炉・汚染水対策次第で、その2倍以上に膨れあがる可能性があります。東電はすでに破産状態にあると言っても過言ではありません。現に、石油価格下落で一時的に黒字へ転化したとは言え、東電の株価は図2のように事故直前の1/5の水準に留まったままであり、電力小売自由化の下で下落傾向にあります。このまま放置すれば、破産するのは時間の問題でしょう。
広瀬直己東電社長は9月20日、炉心溶融隠蔽問題等で福島県庁に呼び出され、県や周辺13市町村からの申し入れを受けた際、「東電は福島への責任を果たすため破綻を免れ、存続が許された会社だ。」(福島民報2016.9.21)と述べたそうですが、これ以上の「存続」は許されません。新たな救済策を国が行わなければ、早晩、破産処理を余儀なくされるのです。なぜ、今、東電を救済し、被災者や国民に一層の負担を強いることが許されるのでしょうか。
今こそ、東電を破産処理し、東電と東電を支援した株主・金融機関に事故責任を取らせ、原発推進政策をとり続けたためにフクシマ事故を導いた国の責任を明確にし、二度とフクシマを繰り返さないことを誓った上で、国の責任で、すべての被災者に手厚い損害賠償を行い、生活圏では1mSv/年未満となるまでの十分な除染を行い、国が前面に立って「東電救済」の枠にとらわれない形での廃炉・汚染水対策を進めるべきです。

東電救済などもってのほか!
原発コストの新電力契約者への転嫁は許せない

にもかかわらず、東電の要請を受けて、国民負担による3つの東電救済策が検討され始めました。
その第1は、東電が負担すべき4兆円の追加廃炉費を電力消費者に転嫁し、電気料金で徴収することです。あろうことか、これを電気料金の3~4割を占める送配電使用料=「託送料金」の一部に加算することで、新電力と契約した電力消費者からも徴収することが目論まれています。そのついでに、今は原発のコストに繰り入れて電力会社が電気料金で回収している廃炉積立不足金1.3兆円と損害賠償費の一般負担金3兆円を「託送料金」に加算し、新電力と契約した電力消費者からもこれらの原発コストを徴収しようとしているのです。原発を止めるために九電力から新電力へ契約を替えても、その意思は無視され、原発のコストを払わされるのです。
その分だけ新電力に対する原発の競争力が高まるという仕掛けです。しかも、合計8.3兆円にのぼるこれら費用が今後さらに増えても、自動的に託送料金へ組込まれる仕組が導入されようとしているのです。
経済産業省は「電力システム改革貫徹のための政策小委員会」を設置し、9月27日初会合から年内に最終提言をまとめさせ、来年の通常国会で法制度改正を行おうとしています。これに平行して「東京電力改革・1F問題委員会(通称・東電委員会)」を設置し、福島第一原発廃炉費負担や東電経営改革の在り方を検討し、年内に提言の原案、年度内に最終提言をまとめさせ、法制度改正案に反映させようとしています。経済産業大臣が行う「市場の制度づくり」に「意見・建議」を行う「電力・ガス取引監視等委員会」でも、制度設計専門会合の下に「送配電網の維持・運用費用の負担の在り方検討ワーキング・グループ」が設置され、9月16日から検討が始まりました。こちらは年度内に基本方針、2017年度詳細設計、2020年度施行を目指していますが、当然、本来は電気料金で徴収すべきコストが託送料金に繰り入れられることの是非が徹底討議されるべきでしょう。

2.5兆円を超える除染費は公共事業で国が負担

第2に、2.5兆円を超える計画外の除染費について、国は東電救済のため、福島復興の公共事業として来年度予算に計上しようとしています。概算要求段階では、自民党内で意見対立が表面化し、河野太郎議員など複数の自民党議員がこれに反対して東電負担を求めため、「要求項目」だけが計上されていますが、政府予算段階で金額が計上されるのではないかと危惧されます。実際、その後の与党第6次提言を受けて、原子力災害対策本部復興推進会議が8月31日に決定した「帰還困難区域の取扱いに関する考え方」では「帰還困難区域のうち、5年を目途に、線量の低下状況も踏まえて避難指示を解除し、居住を可能とすることを目指す『復興拠点』を、各市町村の実情に応じて適切な範囲で設定し、整備する。」「整備にあたっては、除染とインフラ整備を一体的かつ効率的に行う。」とあります。
復興の名の下に国民の税金で東電救済が公然と行われようとしているのです。しかも、政府は「効率的でない除染」はほどほどにして、20mSv/年未満なら帰還させる政策を強行し、汚染度が高いまま住民を帰還させ、損害賠償費を打ち切ろうとしているのです。
被災者に精神的・経済的苦痛を強い、低線量被曝の危険にさらすような住民帰還政策は被災者に寄り添ったものでは到底ありません。ましてや、それが東電救済と一体のものとして進められるのは我慢できません。

原子力被災者に原発で賠償するのは許せない

第3に、5.4兆円を超えて増え続ける損害賠償費を賄い、業績改善で東電株を引上げて3.5兆円の株売却益が上がるようにするため、東京電力は柏崎刈羽原発を再稼働させようと必至になっています。柏崎刈羽6・7号は135.6kWのABWRであり、これらを再稼働すれば1基で1千億円/年の収支改善効果があると見なしているのです。泉田知事を立候補撤回に追い込んだ「影の力」はここにあるのです。
東京電力は破産寸前であり、破産を免れるために一層の支援を国に要請し、損害賠償費を稼ぐために原発を再稼働させるなどもってのほかです。何より、東電には原発を運転する資格などありません。震災前に15.7mの津波を東電社内で試算しながら防潮堤等が高くつくという理由から対策をとらないまま炉心溶融事故を招き、炉心が溶融しているとわかっていても「炉心溶融」を隠蔽し続けました。炉心溶融の社内判断基準があるにも関わらず、「基準は存在しない」と嘘をつき、現場では「炉心損傷度合」だけを報告させるマニュアルを徹底させ、「炉心溶融」を隠蔽し続けたのです。震災後は福島県の意向に逆らって福島第二原発の廃炉を先送りにし、福島第一原発の廃炉・汚染水対策がうまくいっていないにもかかわらず、柏崎刈羽原発の再稼働を狙うなどもってのほかです。原子力規制委員会ですら、福島第二原発の警報器を「意図的に停止」させていた核物質防護規定違反では、9月12日に「組織的な管理機能が低下している」と指摘しているほどです。
東電を存続させたままでは廃炉・汚染水対策もうまくいきません。今や破綻が明白になった凍土遮水壁も、地下水の流れを変える通常の土木工事では「東電救済」になるため、「成功するかどうか不明な研究開発なら国費を投入できる」という理由で選択されたものです。案の定、凍結開始から5ヶ月経っても遮水できないばかりか、台風で雨量が増えると凍結箇所が部分的に溶け、すだれ状態になっています。8月末から9月中旬の地下水の建屋流入量は400トン/日、地下水ドレンからの建屋移送量も400トン/日で、合計800トン/日になり、1年前に逆戻りです。345億円の税金が無駄になり、2,200人の作業者が平均15.3mSv、合計33.7人Sv(3名が将来ガン・白血病死する被曝量)も不要な被曝を強いられたのです。
もはや東電を生かしておく理由は何もありません。
これ以上の「東電救済」は容認できません。今こそ、国は東電を破産処理し、被災者救済と廃炉・汚染水対策に全力を注ぐべきです。「20mSv/年未満なら帰還させる」方針を撤回し、被災者への手厚い賠償と健康手帳交付による医療・生活保障を行うべきです。

「もんじゅ」廃炉からプルトニウム利用政策転換へ

政府は9月21日、原子力関係閣僚会議を開き、「今後の高速炉開発の進め方について」を決定しました。「『もんじゅ』については、廃炉を含め抜本的な見直しを行うこととし、その取り扱いに関する政府方針を、高速炉開発の方針と併せて、本年中に原子力関係閣僚会議で決定する」というものです。遂に、1.2兆円をつぎ込んだ「もんじゅ」に終止符が打たれようとしています。「もんじゅ」の再稼働に6,000億円がつぎ込まれずにすんだこと、軽水炉原発を遙かに超える高速増殖炉による重大事故の危険から解放されたことは実に喜ばしいことです。1997年に福井で「もんじゅを動かさないでください」との22万人の県民署名が集約されてから19年目、2003年に名古屋高裁金沢支部で「もんじゅ」の設置許可処分無効確認判決が出されてから13年目の勝利です。
政府は「高速炉開発を取り巻く環境について、近年、大きな情勢の変化があった」としていますが、「もんじゅ」廃炉の直接的な契機は、「オールジャパンの推進体制が内部崩壊していた」ことです。電力会社やメーカーは高速増殖炉には実用化・ビジネス化の見通しがなく、フクシマ事故と電力自由化で自らの足下すら危ういことから、日本原子力研究開発機構に替わる運営主体への参加を拒否したのです。政府は「国内の高速炉開発の司令塔機能を担うものとして、新たに『高速炉開発会議(仮称)』を設置する」としていますが、形式的なものに終わらざるを得ないでしょう。政府はあくまでも、「核燃料サイクルを推進するとともに、高速炉の研究開発に取り組むとの方針を堅持する。」としていますが、技術的にも財政的にも行き詰まっているのは明白です。
東京新聞(2016.9.22)によれば、「もんじゅ」を中心とした核燃料サイクルに少なくとも12.2兆円がつぎ込まれましたが、これを機にプルトニウム利用政策を転換させ、原子力予算を大幅削減すべきです。その財源となってきた電源三法交付金制度を廃止し、東電を破産処理した上で、福島第一原発の廃炉・汚染水対策に振り替えるべきです。

10.26反原子力デーを全国一斉に闘おう

破産寸前の東京電力にとどめをさすため、また、「もんじゅ」廃炉方針決定を機に原発・核燃料サイクル政策を抜本的に転換させるため、東電救済策の導入反対!東電を破産処理し国の責任で被災者救済と事故処理を!『もんじゅ』即刻廃炉!プルトニウム利用政策転換と原子力予算大幅削減!を掲げ、国会に働きかけ、電力会社・政府と対決しましょう。
若狭ネットは今年9月に結成25年を迎えました。
25年間の運動の成果がようやく見える形になってきたように思えます。25年間を振り返り、反省し、今後につなげていきたい。フクシマを繰り返す前に何としても脱原発を実現したい。私たちも、10.26反原子力デーの一環として関西電力本社への申し入れ行動を行います。ふるってご参加ください。できれば申し入れ文を持ってきてください。一緒に提出しましょう。

<コラム>東電が払うべき損害賠償額は「一般負担金」で電力消費者に転嫁されている!

9兆円の交付国債の回収は、次のように行われる。損害賠償額5.4兆円は電気料金で毎年1,630億円(一般消費者から徴収するため「一般負担金」と呼ばれる)と500億円(東電から徴する「特別負担金」)の合計2,130億円を回収し続ける。除染費2.5兆円は東電株売却益で賄う。中間貯蔵施設1.1兆円は電源開発促進税で一旦賄い事業終了後に東電に求償する。2015年3月に会計検査院が、この資金回収計画を検討し、東電の株価次第で、電力消費者の負担が増えることを示唆し警告している。
フクシマ事故後、国が約33.3億株を1兆円で買い取り、東電を事実上国有化したが、当時の株価は約300円、これを売却して2.5兆円の売却益を得るには株価が1,050円になる必要がある。しかし、図2の通り、事故後はこの水準に一度も届かず、2016年9月21日現在430円にすぎない。そこで、会計検査院は株売却益を1.5兆円、2.5兆円、3.5兆円の3通りを検討し、特別負担金を毎年500億円とした場合に、一般負担金はそれぞれ5.0兆円(~2034年度)、4.4兆円(~2038年度)、3.7兆円(~2044年度)になるとしている。2016年度末までに徴収される一般負担金は8,343億円になるとみられ、2017年度以降の残高はそれぞれ4.2兆円、3.6兆円、2.9兆円になる。したがって、経済産業省が託送料金へ繰り入れようとしている損害賠償の一般負担金3兆円は株売却益が3.5兆円相当になることを仮定したものである。
現に、2013年閣議決定後の東電の「新・特別事業計画」では、「2020年代初頭までに年間1,000億円規模の利益を創出し、2030年代前半までに年間3,000億円規模の利益を創出し、4.5兆円を上回る規模の株式価値を実現」するとしているが、これは株売却益3.5兆円、すなわち、平均株価が現在の3倍以上の1,350円に上がることが前提になっている。
また、フクシマ事故に責任を有する金融機関は、交付国債を現金化する際に資金貸付で儲けている。会計検査院によれば、金融機関は上記の各場合で、1,032億円、1,127億円、1,264億円の利息を稼ぐことになるが、これは一般会計から国民の税金で払われる。実に理不尽ではないか。

若狭ネット第161号を発行しました。8/1号外もあります。

2016年8月1日若狭ネット号外(第161号抜粋プラス)
島崎氏の問題提起に揺れ動く原子力規制委・規制庁に追撃を!

若狭ネット第161号(2016/7/7)(一括ダウンロード9.3Mb
巻頭言-熊本地震は警告–原子力規制委員会は原発の基準地震動を見直せ!
島崎氏の問題提起と新レシピ適用で、大飯・伊方原発の地震動評価はクリフエッジを超え再稼働できない!
(1)「もんじゅ」を安全に運転できる「運営主体」などあり得ない! 将来展望なく、毎日5千万円を浪費する「もんじゅ」を今こそ廃炉に!
(2)島崎邦彦氏の問題提起と2016 年6 月改訂新レシピは原発基準地震動の根本改定を求めている 大阪府立大学名誉教授 長沢啓行(2016年7月4日)

「熊本地震は警告しています!」リーフレット(2016年7月7日発行)

巻頭言-熊本地震は警告–原子力規制委員会は原発の基準地震動を見直せ!
島崎氏の問題提起と新レシピ適用で、大飯・伊方原発の地震動評価はクリフエッジを超え再稼働できない!

地震動見直しで、大飯原発は動かせない!

前原子力規制委員長代理の島崎邦彦さんは退職後、国内の学会で「活断層の地震規模が小さく計算されているため地震動が過小評価されている可能性がある」と4回続けて発表しています。これを受けて6月16日、原子力規制委員長等と島崎さんとの話し合いがもたれました。島崎さんは、「実際熊本地震が起きて、現地に行った結果、やはり入倉・三宅式を適用すると震源の大きさが小さくなる。間違いないことであることを確認しました。これはかなり深刻な問題である、十分考慮すべき問題ではないか。是非前向きに検討していただきたい。」と注文をつけました。そして6月20日、原子力規制委員会は、大飯原発について、入倉式ではなく他の式を使って地震動評価をやり直すよう、原子力規制庁に指示しました。
この動きと並んで6月10日、地震調査研究推進本部は「震源断層を特定した地震の強震動予測手法(レシピ)」を改訂しています。関西電力は入倉式で地震規模を小さく見積もるだけでなく、大飯原発で63.4km長の断層を「長大な断層」と勝手に見なし、地震動を左右する「応力降下量」(断層面の固着の強さを表す)を小さく設定しています。今回改訂された新レシピでは「おおむね80kmを超える長大な断層」でなければこのようにしてはダメと明記したのです。
地震調査研究推進本部が活断層の長期評価で用いている方法(断層長さから松田式で地震規模を求め断層長さと幅を少し広げる「修正レシピ」)による私たちの評価では、大飯原発では63.4km長の「FO-A~FO-B~熊川断層」の断層モデルによる地震動評価が1.5倍強になり、1,260ガルのクリフエッジ(炉心溶融事故に至るギリギリの地震動)を超える可能性が高く、再稼働できなくなります。
伊方原発でも、敷地前面海域の54km長の断層の地震動評価が1.6倍強、69km長の断層では2.0倍以上になり、855ガルのクリフエッジを超える可能性が高く、再稼働できません。
高浜原発では、地震動評価が1.5倍強になり、基準地震動Ss-1を一部の周期帯で超えるため、基準地震動の見直しが避けられません。
島根原発では、旧原子力安全委員会による断層幅だけを拡張する修正レシピを用いると、25km長の宍道断層の地震動評価は1.5倍強になり、1,014ガルのクリフエッジを超える可能性が高く、再稼働できません。
川内原発では、島根原発と同様に修正レシピを断層幅の拡大に限定して適用すれば、約25km長の市来断層帯市来区間の地震動評価は約1.6倍になり、基準地震動Ss-1を一部の周期帯で超えるため、基準地震動の見直しは避けられません。
どの原発においても、断層モデルによる地震動評価見直しで、耐専スペクトルとの大きな差が消え失せます。これが今回の見直しの核心です。耐専スペクトルと断層モデルの差がなくなった今、(1)これらの手法による地震動の平均像には最近の地震観測記録が反映されていないこと、(2)平均像の2倍以上になるバラツキ(偶然的不確実さ)を考慮する必要があること、(3)活断層として地表に現われないM65.の伏在断層による1,340ガルの地震動が起こりうること、の3つが残された課題として浮上してくるのです。
とくに(3)については、2016年熊本地震が裏付けており、自然による人間への警告となっています。

M6.5の直下地震が川内原発を襲えば、重大事故は避けられない! 川内原発を即刻止めよ!

4月14日、M6.5の地震による震度7の激震で熊本地震が始まりました。2ヶ月後の6月12日にも震度5弱の余震が続き、累計1,723回に達しています。
国土交通省によれば、4月17日までの3日間で熊本、宮崎、大分、佐賀の4県で土砂災害が57カ所、熊本県南阿蘇村では大規模な地滑りなどが20カ所にのぼり、九州新幹線は脱線・高架のひび割れで不通になり、熊本空港はターミナルビルが被災し、JR九州は一部を除き18日も熊本県内での在来線の運転を見合わせ、熊本県内と各地を結ぶ高速バスも高速道路不通のため運転を見合わせている、等々。ここに原発重大事故が重なっておれば、どれだけ悲惨な結果になったことか。しかし、原子力規制委員会は熊本地震から何も学ぼうとせず、川内原発の運転中止を勧告も要請もしませんでした。

熊本地震から学ぶべき!原発の基準地震動の見直しを!

4月14日の熊本地震の前震は、M6.5のどこでも起こりうる、ごくありふれた小さな地震でしたが、震度7の激震を起こし、益城(ましき)町の多くの家屋を倒壊させました。益城町には地震観測点があり、地表だけでなく地下でも地震データが記録されました。それはM6.5の直下地震で1,000ガル以上の強い地震動が起きること、原発の基準地震動が過小評価であることを明らかにしたのです。
私たちは5月12日、原子力規制庁に「2016年熊本地震を踏まえた川内原発の基準地震動に関する公開質問状」(5月24日現在86団体、777個人が賛同)を提出し、5月23日の原子力規制庁(職員2名)との話合いの場で口頭回答を受けました。
原子力規制庁は、私たちの主張を、事実として認めざるを得ず、知見の一つとして検討するとしました。
①熊本地震のM6.5の地震(前震)で1,000ガル超(はぎとり波換算)の地震動が起きた可能性がある。
②益城観測点の地下地震観測記録が川内1・2号の基準地震動を超えた可能性がある。
③地震動評価手法の一つである耐専スペクトルが大幅な過小評価である可能性がある。
そして、原子力規制庁は、「熊本地震についてはきちんと情報収集をしていく」と弁解し、M6.5の地震の益城観測点での地震観測記録を「震源を特定せず策定する地震動」に組み入れることについても「まさに今調査をやっているところであり、その位置づけについても検討していきたい。」と回答しました。
しかし、原子力規制庁は、炉規法上の「法的権限で認められている範囲内であれば原発を止める権限はある」としながらも、「現時点で止めましょうというそこまでの権限を我々は有していない。」「川内の原発の直下で同じような地震がもし起これば、仮に1,000ガルを超えるかも知れないとして、九州電力に停止命令を出せる権限ではない。」と居直っています。
フクシマを繰り返さないため、手遅れにならないため、私たちは、今回の交渉成果を踏まえ、島崎氏の問題提起と新レシピによる地震動見直しとを絡めて、川内原発の運転中止と全原発の再稼働中止を原子力規制委員会に強く求めていきたいと思います。

文科省は「もんじゅ」を延命せず、廃炉にせよ!

原子力規制委員会は昨年11月、「もんじゅ」を安全に運転する資質がないなどとして日本原子力研究開発機構に代わる新たな運営主体を示すよう勧告していましたが、文部科学省は半年後も運営主体を示せず、参議院選挙後の8月に機構の運転管理部門を切り離して特殊法人化し、「オールジャパン」体制の運営主体を作ると弁明しました。しかし、機構による最重要機器の点検ミスや数千点の機器の重要度分類ミスなど目も当てられない安全管理能力のなさは旧動燃に始まり、歴史的に形成されたものなのです。その無気力・無能力の根本原因は、高速増殖炉の実用化が全く見えず、「もんじゅ」の目的もコロコロ変わり、意義を見いだせない仕事に優秀な人材(後継者)も集まらず、電力・メーカーの「オールジャパン」体制そのものが内部崩壊していることにあるのです。このまま、看板かけ替えの特殊法人で無責任体制をでっち上げ、「もんじゅ」を強硬運転するようなことがあれば、重大事故は避けられません。政府内や与党内からも不信と動揺の声が上がっています。いまこそ、「もんじゅ」を廃炉にし、再処理・プルトニウム利用路線から撤退すべきです。そして脱原発への道筋をはっきりさせるべきです。

四半世紀を迎えた若狭ネットの活動を踏まえて

私たち若狭ネットは、はや結成25年を迎えました。
若狭の原発を一日も早く止めていく運動を中心に活動し続けてきました。特に1995年1月17日の阪神・淡路大震災を体験したことで「地震と原発」問題をとりあげ、安全規制当局や関西電力の責任を粘り強く追及してきました。その成果の一つが今回の島崎氏の問題提起につながったことは喜ばしいことです。
9月4日には、若狭ネット結成25周年特別企画をもちます。これまでの25年とこれからの見通しについて、皆さんと共に話し合いたいと思います。ぜひ、ご参加下さい。

5月23日の原子力規制委員会との交渉を踏まえ、緊急申し入れを行いました

5月23日の原子力規制委員会との交渉を踏まえて、下記の緊急申し入れを行いました。

呼びかけ団体:川内原発建設反対連絡協議会、川内つゆくさ会、反原発・かごしまネット、まちづくり県民会議、川内原発活断層研究会、さよなら原発:アクションいぶすき、原発ゼロをめざす鹿児島県民の会、かごしま反原発連合有志、原子力資料情報室、若狭連帯行動ネットワーク(事務局担当)

賛同団体・個人(5月24日現在86団体、777個人)

2016年5月31日
原子力規制委員会委員長 田中俊一様

5月23日の話合いを踏まえた、熊本地震と川内原発に関する緊急申し入れ

(「緊急申し入れ」のpdfはこちら)

私たちは5月12日、貴職に「2016年熊本地震を踏まえた川内原発の基準地震動に関する公開質問状」を提出し、5月23日の原子力規制庁(職員2名)との話合いの場で口頭回答を受けました。
その中で、原子力規制庁は「現時点で、川内原発の基準地震動の見直しを働きかける、ないし、運転停止命令を出すというところにはない」と説明されましたが、熊本地震と川内原発に関する私たちの主張、すなわち、①熊本地震の前震であるM6.5の地震で1,000ガル超(はぎとり波換算)の地震動が起きた可能性、②益城観測点の地下地震観測記録が川内1・2号の基準地震動を超えた可能性、③地震動評価手法の一つである耐専スペクトルが大幅な過小評価である可能性については、事実として認めざるを得ませんでした。
そして、原子力規制庁は、「今回の地震の観測記録について、きちんと分析すべきということで・・・規制委員会として大きな地震があった後にですね、きちんと情報収集をしていくという姿勢自体はそれはそう思っております。」と説明し、「熊本地震はまさに今調査をやっているところでございますので、そういう知見を踏まえて、その位置づけ(今回のM6.5の地震の益城観測点での地震観測記録を「震源を特定せず策定する地震動」に組み入れること)についても検討していきたいと思います。」と回答されました。また、「現時点で詳細はぎとり波解析をやるというところまで、まだ、我々の知見収集も至っていないので、そこの必要姓があってやっていくということになれば、それは規制委員会、規制庁、旧JNESのグループもありますので、そういった中で解析なんかは当然やっていくことになりますけども。・・・現時点ではあくまで仮定の話なので、ここで詳細はぎとり解
析をやりますというふうに私が何か宣言するようなことはできません。」と言い訳をされました。2016年熊本地震では横ずれ断層によるM6.5の地震で震度7の激震観測記録が益城観測点で採れており、これを詳細に分析し、基準地震動の策定に反映させることは原子力規制委員会の義務だと私たちは考えます。
さらに、原子力規制庁は、炉規法上の「法的権限で認められている範囲内であれば止める権限はある」としながら、「現時点で、何かこの概算のはぎとリ波で、Ss-1を比較上超えているので、現時点で止めましょうというそこまでの権限を我々は有していない。」「ある種概算で、もしかしたら、川内の原発の直下で同じような地震がもし起これば、仮に1,000ガルを超えるかも知れない、その段階で、九州電力に対して停止命令を出せる、そこまでの権限ではない。」と居直っています。「地下地震観測記録を2倍にするはぎとり波の概算」で私たちが示した上記の①~③の知見に基づき、更なる詳細なはぎとり解析を行って基準地震動に反映させるのは当然のことですが、フクシマを繰り返さないため、手遅れにならないため、少なくとも解析を終えるまでの間、川内原発の運転を停止させ、再稼働審査を凍結させるのが、原子力規制委員会の義務だと私たちは考えます。
このような観点から、以下のことを緊急に申し入れますので、真摯にご検討下さり、速やかに対応して下さるよう強く求めます。

1.4月14日のM6.5の地震では震源断層近くで1,000ガル超の地震動(はぎとり波換算)が発生した可能性が高く、至急、再現モデルを構築して地震動解析を行ってください。また、得られた知見を基準地震動に反映させて下さい。

2.4月14日のM6.5の地震に関する益城観測点での地震観測記録を詳細にはぎとり解析し、これを「震源を特定せず策定する地震動」に位置づけ、基準地震動に反映させて下さい。

3.2の詳細解析によるはぎとり波を川内原発の市来断層帯市来区間M7.2の耐専スペクトルと比較し、耐専スペクトルが大幅な過小評価になっていることを確認し、耐専スペクトルを抜本的に改定してください。

4.上記解析を行う間、川内原発の運転を停止させ、再稼働のための適合性審査をすべて凍結して下さい。
以上

(「5・23交渉のまとめ」のpdfはこちら)
(「5・23交渉の記録」のpdfはこちら)

5・23原子力規制委交渉の成果を踏まえ、
川内1・2号運転中止、再稼働認可取り消し、
基準地震動見直しを原子力規制委に求めよう!

呼びかけ: 川内原発建設反対連絡協議会、川内つゆくさ会、反原発・かごしまネット、まちづくり県民会議、川内原発活断層研究会、さよなら原発:アクションいぶすき、原発ゼロをめざす鹿児島県民の会、かごしま反原発連合有志、原子力資料情報室、若狭連帯行動ネットワーク(事務局担当)

2016年熊本地震の余震が継続し、震源の不気味な広がりを危惧しながら、私たちは5月23日、原子力規制委員会・原子力規制庁と交渉し、川内1・2号の運転停止、再稼働認可取り消し、基準地震動の見直しを強く求めました。公開質問状への賛同は86団体・777個人(5月24日現在)に達し、市民側参加者35名で原子力規制庁の安全管理調査官ら2名を1時間半にわたり厳しく追及しました。
原子力規制庁は「現時点で、川内原発の基準地震動の見直しを働きかける、ないし、運転停止命令を出すというところにはない」と居直りました。しかし、熊本地震と川内原発に関する私たちの主張そのものについては、「現時点では即対応すべきとは考えていない。」「現時点で、詳細はぎとり波解析をやるというところまで知見収集も至っていない。」としながらも、事実上、①熊本地震の前震であるM6.5の地震で1,000ガル超(はぎとり波換算)の地震動が起きた可能性、②益城観測点の地下地震観測記録が川内1・2号の基準地震動を超えた可能性、③地震動評価手法の一つである耐専スペクトルが大幅な過小評価である可能性については、事実として認めざるを得ませんでした。その概要は以下の通りです。

熊本地震による重大な警告を直視せよ!

私たちは、2016年熊本地震において、4月14日に震度7の激震をもたらしたM6.5の益城(ましき)観測点での観測記録から、次のことが言えると主張しました。

(1)原子力安全基盤機構JNES(現在は原子力規制庁へ統合)による地震動解析結果との比較から、4月14日のM6.5の震源近傍では1,000ガルを超える地震動が襲った可能性が高い。(図1と図2参照)

(2)同地震の益城観測点での地下地震観測記録はぎとり波は川内原発の基準地震動を応答スペクトルの一部で超えている。(図3参照)

(3)同はぎとり波の応答スペクトルはM7.3の市来断層帯市来区間(等価震源距離はほぼ同じ約14km)の耐専スペクトルを超えており、耐専スペクトルでは過小にすぎる。また、断層モデルによる地震動解析結果は耐専スペクトルの1/2~1/3にすぎず、大幅な過小評価になっている。(図3参照)

1,000ガル超の可能性があることは認める

原子力規制庁は、JNESの最大加速度分布図に益城観測点のデータを載せた図2について、益城観測点の地下地震観測記録(NSで237ガル、これを2倍にした簡易はぎとり波の最大加速度470ガル)のほうが少し大きめですが、JNESの最大加速度分布図に良く合うこと、M6.5の震源断層により近いところに地震計があれば1,000ガル超(1,500ガル程度の可能性すらある)の地震動が観測されていた可能性があるとの指摘については否定しませんでした。その代わりに、JNESの断層モデルは「どの程度の年超過確率となるのかを確認する目的でパラメータをいじって評価するものであり、基準地震動と対比させて議論するようなものではない」と逃げたのです。しかし、この議論は過去2回の議論ですでに破綻しており、年超過確率を議論するためにも正確な地震動評価ができていなければ、得られた年超過確率自身が無意味になるのです。しかも、昨年1月の交渉時には、「JNESの解析結果は北海道留萌支庁南部地震の地震観測記録にも良く合う」ことを私たちから示され、原子力規制庁は、それまで主張していた「厳しいパラメータ設定だ」との主張を撤回した上で「専門家を含めて再現性について改めて検討すべき」と認めていたのです。この経緯を詳しく説明すると、原子力規制庁は沈黙せざるを得ませんでした。
検討をサボタージュしてきたのは原子力規制庁なのですから当然です。沈黙の末に、「今回の地震の観測記録について、きちんと分析すべきということで、規制委員会としては、我々審査する側もさることながら、旧JNESが統合した系列基盤グループもありますので、規制委員会として大きな地震があった後にですね、きちんと情報収集をしていくという姿勢自体はそれはそう思っております。」といいながら、「現時点で即対応すべき点があるかというご質問であれば、現時点ではまだそういうふうに考えていない」と逃げたのです。

「震源を特定せず策定する地震動」に加えるべき

その次に持ち出したのは、今回のM6.5の地震は「起こるべきところで起こった」日奈久断層帯での地震であり、「震源を特定せず策定する地震動」ではなく、「震源を特定して策定する地震動として評価すべきではないか」という主張です。しかし、M6.5の地震は地表に痕跡が残らないため、地表をいくら精査してもわかりません。川内原発の直下でM6.5の地震が起きる可能性を否定できないため、「震源を特定せず策定する地震動」が考慮され、留萌支庁南部地震の観測記録(はぎとり波)が基準地震動として採用されているのです。今回のM6.5の地震が既知の活断層による地震活動の一部として起きたとは言え、横ずれ断層によるM6.5の地震の激震記録が初めて採れたのですから、それを基準地震動に反映させるのは当然だと言えます。M6.5の地震が既知の活断層で起ころうが、活断層のないところで起ころうが、その地震動に本質的な違いはないはずです。
活断層のないところで同様の記録が採れるまで待つという悠長な姿勢では、フクシマの二の舞になってしまいます。原子力規制庁は、私たちの厳しい追及にたまらず、「熊本地震はまさに今調査をやっているところでございますので、そういう知見を踏まえて、その位置づけについても検討していきたいと思います。」と引き取らざるを得ませんでした。益城観測点の地震観測記録を基準地震動に反映させることができるかどうかは今後の運動にかかっていると言えます。

詳細はぎとり波解析を行う義務がある

3番目に持ち出したのは益城観測点の地下地震観測記録を2倍にしたものは「はぎとり波」ではないという主張です。確かに、図4左のとおり、地下地震計の地震観測記録は入射波E’と地表から反射して戻ってくる反射波F’が重なっており、後者を取り除いた上で、上部地層をはぎとった表面に地震計を置いたと仮定して得られる入射波E(この仮想表面では反射波は入射波に等しい)を2倍にして「はぎとり波」を作成しなければなりません。そのためには、正確な地盤データを用いた地表・地下の地震観測記録の突き合わせ解析が必要です。その前段として、まず、地下地震観測記録を2倍にして大きさを概算評価するという手法がとられており、北海道泊原発の審査でも行われています。原子力規制庁も「2倍化する方法自体は先ほど説明頂いた泊の審査でもスクリーニングの過程では当然使っています」と認めましたが、それを基準地震動等と直接比較して「この周期帯で超えたといって、そういった比較ができるものではない」と主張し、図3のような比較はできないと言い張りました。
ところが、詳細解析を行っても短周期側では高々10~20%程度の差にしかならないはずです。図3の基準地震動に対しては、0.2~0.3秒の周期帯で益城観測点での「地震観測記録を2倍にした概算はぎとり波」が1.5倍程度に超えており、市来断層帯市来区間M7.2の耐専スペクトルに対しても周期0.1秒以上で2倍程度になっているのです。つまり、この事実を認めるのであれば、詳細はぎとり波解析を行って、より正確に確認すべきです。そして、原子力規制庁も遂に、「地盤モデルとかもないし、実際の解析もできないので、どのぐらい下がるのか、定量的には言えない」と逃げ、「現時点で詳細はぎとり波解析をやるというところまで、まだ、我々の知見収集も至っていないので、そこの必要姓があってやっていくということになれば、それは規制委員会、規制庁、旧JNESのグループもありますので、そういった中で解析なんかは当然やっていくことになりますけども。ただ、すみません、現時点ではあくまで仮定の話なので、ここで詳細はぎとり解析をやりますというふうに私が何か宣言するようなことはできません。」「詳細解析を金輪際やりませんと申し上げているわけではなくて」と言い訳をしたのです。

現時点で川内原発を止める権限はない

益城観測点での地震観測記録を2倍にした概算はぎとり波に基づいて川内1・2号の運転中止を求めた点については、炉規法上の「法的権限で認められている範囲内であれば止める権限はある」としながら、「現時点で、何かこの概算のはぎとリ波で、Ss-1を比較上超えているので、なので現時点で止めましょうというそこまでの権限を我々は有していないです。」「ある種概算で、もしかしたら、川内の原発の直下で同じような地震がもし起これば、仮に1,000ガルを超えるかも知れない、その段階で、九州電力に対して停止命令を出せる、そこまでの権限ではない。」と居直りました。つまり、私たちの主張した内容については事実としてそうなっているということを確認しながら、事態の緊急性を認めようとしなかったのです。
「川内原発の直下でM6.5の地震が起きてからでは遅い」「フクシマを繰り返すな」という私たちの声を原子力規制庁は踏みにじり、「必要があれば、そういったはぎとり解析とか数値検証とか当然やっていくべき話でありますけど、現時点でそういったものを見立てて、直ちに川内原子力発電所を停止すべきと、そういうような、止めるのか止めないのか、止めるべきかどうかという議論をするような知見の状態では今ないということを申し上げている。」と平然と居直ったのです。

九州電力による説明は誤りと認める

最後に、適合性審査の事業者ヒアリングで九州電力が原子力規制庁に行った説明が根本的に誤っており、原子力規制庁はその誤りに気付かないという重大な過誤をおかしたのではないかという点を問い質しました。これは断層モデルによる短周期側の地震動評価で、九州電力が「応力降下量を15.9MPaから25.1MPaへ引上げても地震動解析結果は変わらない」と主張していたものです。
原子力規制庁は結局、九州電力によるこの説明が誤っていること、原子力規制庁がその説明を聞いて誤りを指摘しなかったことについては認めました。
しかし、原子力規制庁は「間違いに気付かなかったというか、必要ないというふうに考えてました。」と論点をすり替えてきました。「九州電力に対してこれでは説明になってないですよという指摘をしておけば良かったのかというと、それはそういうことなんですかね。ただ、実際、その短周期側については先ほどから申し上げているように、改めての資料とかはいらないので、この資料について九州電力に対してここはおかしいよとヒアリングの場では言ってない」というのです。私たちは、原子力規制庁側から短周期側でも地震動解析を行うようにと指示されなければ、九州電力がわざわざこのような資料を準備して説明することもなかったはずだと詰め寄りましたが、原子力規制庁は、そもそも必要なかったととぼけ続けたのです。水掛け論になってしまいましたので、議論を打ち切りましたが、九州電力がとんでもない誤りを冒したことだけは確かであり、原子力規制庁もその誤りを認めたのですから、九州電力の誤りを今後追及することが課題になります。もし、この短周期地震動解析を行っていたら、基準地震動を超えていた可能性があり、適合性審査がいかにずさんなものであるかが明らかになるからです。

大衆運動の力で規制委員会の姿勢を転換させよう

熊本地震は「原発はM6.5の直下地震に耐えられない」ことを事実で示しています。益城観測点における地下地震観測記録はそれを如実に示しています。原子力規制委員会・原子力規制庁は見て見ぬ振りを決め込んでいますが、大衆的な運動の力でそのような姿勢を転換させる必要があります。
熊本地震は、どこで起きても不思議ではないM6.5の小さな地震で1,000ガル超の大きな地震動が起きた可能性があること、益城観測点の地震観測記録は川内原発の基準地震動を超えた可能性が高く、耐専スペクトルの大幅な過小評価を暴いていることを明らかにしました。これらの事実そのものを原子力規制庁は否定できませんでした。これらを広く伝え、原子力規制委員会に川内原発の即時運転中止と再稼働認可取り消しを求め、基準地震動の抜本的見直しを求めていきましょう。

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図1.2016 年熊本地震の前震M6.5、本震7.3と余震分布(震央分布,KiK-net 観測点▲を追記)

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図2: 原子力安全基盤機構JNESによるM6.5の左横ずれ断層による地震基盤表面(Vs=2600m/s) での加速度分布図(水平方向,最大値1340.4cm/s2)(右横ずれの場合には上下を反転させた分布図になるため,図1 における震央距離約6kmの益城観測点KMMH16はこの図で震源断層の右斜め下300~400ガルの▲の地点に相当する)

 

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図3.益城観測点KMMH16の地下地震観測記録のはぎとり波(2倍化)の擬似加速度応答スペクトルと川内1・2号の基準地震動Ss-1および耐専スペクトル(水平方向)の比較(防災研データから長沢が作成)

 

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図4.はぎとり波の概念図(東京電力:柏崎刈羽原子力発電所6号炉及び7号炉敷地における地震波の増幅特性についてコメント回答,第246回原子力発電所の新規制基準適合性に係る審査会合,資料3 (2015.7.3))

5・23(月)原子力規制委交渉に賛同・参加を!

5・23(月)原子力規制委交渉に賛同・参加を!
2016年熊本地震を踏まえ、川内1・2号の運転を中止し、再稼働認可を取り消せ!

呼びかけ: 川内原発建設反対連絡協議会、川内つゆくさ会、反原発・かごしまネット、まちづくり県民会議、川内原発活断層研究会、さよなら原発:アクションいぶすき、原発ゼロをめざす鹿児島県民の会、かごしま反原発連合有志、原子力資料情報室、若狭連帯行動ネットワーク(事務局担当)
(pdfはこちら:呼びかけ 公開質問状

2016年熊本地震は震度7の激震を2度もたらし、震源が南方へも拡大し、川内原発に近づいています。
私たちは、2016年熊本地震を踏まえ、原子力規制委員会に、川内1・2号の運転中止、再稼働認可(設置変更許可)の取り消し、地震動評価手法の根本的改定、基準地震動の作成やり直しを求めます。
4月14日に震度7の激震をもたらしたM6.5の震源断層は地表からは発見できず、川内原発直下でいつ起きても不思議ではありません。また、このM6.5の地震の益(まし)城(き)観測点での観測記録から、次のことが言えます。
(1)原子力安全基盤機構JNES(現在は原子力規制庁へ統合)による地震動解析結果との比較から、4月14日のM6.5の震源近傍では1,000ガルを超える地震動が襲った可能性が高い。
(2)同地震の益城観測点での地下地震観測記録はぎとり波は川内原発の基準地震動を応答スペクトルの一部で超えている。
(3)同はぎとり波の応答スペクトルはM7.3の市来断層帯市来区間(等価震源距離はほぼ同じ約14km)の耐専スペクトルを超えており、耐専スペクトルでは過小にすぎる。また、断層モデルによる地震動解析結果は耐専スペクトルの1/2~1/3にすぎず、大幅な過小評価になっている。
私たちはこれまで、JNESの解析結果に基づき、川内原発で、M6.5の直下地震が起これば、1,340ガルの地震動に襲われ、炉心溶融事故は避けられないと主張してきました。恐ろしいことではありますが、2016年熊本地震はその正しさを裏付けてくれたのです。
私たちは、これまでの原子力規制委員会との交渉の成果を引き継ぎ、2016年熊本地震を踏まえて、5月12日に公開質問状を提出し、5月23日に追及します。ぜひご参加下さい。賛同は22日夕方まで受け付けます。

sangiin原子力規制委員会・原子力規制庁との交渉
日時:2016年5月23日(月)13:30~15:00
場所:参議院議員会館 B104会議室
 (地下鉄丸ノ内線「国会議事堂駅前」下車歩5分)
参加希望者は通行証が必要ですので、事前に久保までご連絡下さい。当日は、参議院議員会館の荷物検査を経て、12時過ぎにロビーへ集合し、事前会合(12:30~13:30)からご参加下さい。

原子力規制委員会に対する紹介議員は、社会民主党の福島みずほ参議院議員にお願いしています。

  公開質問状は5月12日に提出しましたが、賛同団体・個人は5月22日夕方まで引き続き受け付けます。遠方からの参加者には交通費半額をめどに補助したいと思いますので、1口500円で何口でも結構ですのでカンパをお寄せ下さい。

連絡先:〒583-0007 藤井寺市林5-8-20-401 久保方
TEL 072-939-5660  dpnmz005@kawachi.zaq.ne.jp
または 〒591-8005 堺市北区新堀町2丁126-6-105
若狭ネット資料室(長沢啓行室長)
TEL 072-269-4561  ngsw@oboe.ocn.ne.jp  
http://wakasa-net.sakura.ne.jp/www/

カンパ振込先: 郵便振込口座番号00940-2-100687
(加入者名:若狭ネット)

熊本地震を踏まえ川内1・2号の運転中止を求める原子力規制委交渉に賛同・参加を!

2016年熊本地震を踏まえ、川内1・2号の運転を中止し、再稼働認可を取り消せ!
5月中旬の原子力規制委交渉に賛同・参加を!

呼びかけ: 川内原発建設反対連絡協議会、川内つゆくさ会、反原発・かごしまネット、
まちづくり県民会議、川内原発活断層研究会、さよなら原発:アクションいぶすき、
原発ゼロをめざす鹿児島県民の会、かごしま反原発連合有志、原子力資料情報室、
若狭連帯行動ネットワーク(事務局担当)

2016 年熊本地震を踏まえた川内原発の基準地震動に関する公開質問状(案)

2016年熊本地震を踏まえ、川内1・2号の運転を中止し、再稼働認可を取り消せ!
5月中旬の原子力規制委交渉に賛同・参加を!

2016年熊本地震は4月14日、震度7の激震で始まりました。意外にも、この激震をもたらした地震はM6.5と小さく、南北方向に張力軸を持つ右横ずれ断層でした。防災科学研究所KiK-netの益城観測点KMMH16でましきは、地表で1,580ガルの非常に大きな地震動が観測されました。原発の基準地震動と比較可能な地下地震計でも、南北方向237ガル、東西方向178ガル、鉛直方向127ガル、3成分合成で260ガル程度の地震動が観測されました。これを原発の基準地震動と同じ「解放基盤表面はぎとり波」に換算すると、ほぼ2倍になり、それぞれ470ガル、350ガル、250ガル、3成分合成で520ガル相当になります。
この地震観測記録から、次のことが言えます。
(1)原子力安全基盤機構JNES(現在は原子力規制庁へ統合)による地震動解析結果との比較から、4月14日のM6.5の震源近傍では1,000ガルを超える地震動が襲った可能性が高い。
(2)同地震の益城観測点での地下地震観測記録はぎとり波は川内原発の基準地震動を応答スペクトルの一部で超えている。
(3)同はぎとり波の応答スペクトルはM7.3の市来断層帯市来区間(等価震源距離はほぼ同じ約14km)の耐専スペクトルを超えており、耐専スペクトルでは過小にすぎる。また、断層モデルによる地震動解析結果は耐専スペクトルの1/2~1/3にすぎず、大幅な過小評価になっている。
私たちはこれまで、JNESの解析結果に基づき、川内原発の直下でM6.5の直下地震が起これば、1,340ガルの地震動に襲われ、炉心溶融事故は避けられないと主張し、原子力規制庁もJNESの断層モデルの再現性について「専門家を入れて検討すべき」と認めていました。しかし、実際にはサボタージュされたままであり、今回の熊本地震はこのような原子力規制委員会の怠慢を事実でもって批判しているとも言えます。2016年熊本地震を踏まえ、原子力規制委員会は、川内1・2号の運転中止命令を出し、再稼働認可(設置変更許可)を取り消し、地震動評価手法を根本的に作り直し、基準地震動を作成し直すべきです。
私たちは、これまでの原子力規制委員会との交渉の成果を引き継ぎ、2016年熊本地震を踏まえて公開質問状を提出し、5月下旬(未定)に交渉を行う予定です。
日程が決まり次第、改めて交渉への参加呼びかけを出させて頂きますが、5月交渉を成功させるため、公開質問状への賛同団体・個人の拡大と1口500円で交通費カンパへの協力をお願いします。

公開質問状(案)への賛同団体・個人の募集は5月10日を第1次締め切りとし、交渉当日まで募集します。
賛同団体・個人を広げて下さい。質問項目への御意見もお寄せください。また、遠方からの交渉参加者には交通費の半額をめどにカンパしたいと思います。交渉成功のため、1口500円で何口でも結構ですのでカンパをお寄せ下さい。
連絡先:〒583-0007 藤井寺市林5-8-20-401 久保方TEL 072-939-5660 dpnmz005@kawachi.zaq.ne.jp
または〒591-8005 堺市北区新堀町2丁126-6-105 若狭ネット資料室(長沢啓行室長)
TEL 072-269-4561 ngsw@oboe.ocn.ne.jp http://wakasa-net.sakura.ne.jp/www/
カンパ振込先: 郵便振込口座番号00940-2-100687(加入者名:若狭ネット)

若狭ネットニュース第160号を発行しました。

若狭ネットニュース第160号を発行しました。

第160号(2016/4/26)(一括ダウンロード3.3Mb
巻頭言-2016年熊本地震の警告を受け止め、川内原発の運転中止を!
M6.5の地震による地震動が基準地震動を越えた!
震源近傍では1,000ガルを超え、クリフエッジを超えた可能性も!
(1)大津地裁と福岡高裁宮崎支部の真逆の仮処分決定が意味するもの~2016 年熊本地震の地震観測記録を教訓に加えて~ 大阪府立大学名誉教授 長沢啓行(2016年4月22日)

<巻頭言>
2016年熊本地震の警告を受け止め、川内原発の運転中止を!
M6.5の地震による地震動が基準地震動を越えた!
震源近傍では1,000ガルを超え、クリフエッジを超えた可能性も!

私たちは、4月14日に発生した2016年熊本地震を踏まえ、4月22日、福島みずほ社民党参議院議員を通して、原子力規制委員会に「川内原発の運転停止と基準地震動見直しを求める緊急申し入れ」を行いました。
続いて、鹿児島の市民団体や原子力資料情報室とともに、原子力規制委員会へ公開質問状を提出し交渉する予定です。これまでの交渉の成果を引き継ぎ、原子力規制委員会をさらに追い込み、川内原発の運転停止、再稼働認可の取り消し、基準地震動の根本的見直しを求め、徹底して追及してきたいと考えています。その際には、公開質問状へのご賛同、交渉へのご参加、交通費カンパへのご協力をお願いします。

熊本地震は、原発再稼働に警鐘

九州の熊本、大分を襲った2016年熊本地震は、「人間が造った原発をもう動かしてはならない」と、警告しています。原発の基準地震動(=運転中に見舞われると予想される最大規模の地震動)が過小にすぎると警鐘を鳴らしているのです。
私たちは、21年前の阪神・淡路大震災を契機に、地震と原発の問題に取り組み、「原発は短周期地震動に弱い」こと、「原発直下でM6.5の地震が起これば強い短周期地震動で炉心溶融事故が避けられない」こと、「原発の基準地震動があまりにも過小評価されている」ことを一貫して暴き続けてきました。
この20年間に起きた地震観測記録はそれを裏付けており、今回の熊本地震でも、私たちの指摘の正しさがますます明らかになっていると言えます。活断層や見えない伏在断層に切り刻まれた日本列島に原発を建てて動かすなど、とんでもないことなのです。

原子力規制委員会に川内原発の運転中止と再稼働認可取り消しを求めよう!

2016年熊本地震は4月14日のM6.5の地震に始まりました。これは、いつ、どこで起きても不思議でない小さな地震でしたが、震度7の激震をもたらしたのです。震央距離11kmの益城(ましき)観測点では地上の地震計で1,580ガルの強震動が記録されましたが、これは地表近くの地層で地震動が増幅されているため、原発の基準地震動と直接比較することはできません。しかし、益城観測点には地下252mの地震基盤上に地震計が設置されていて、南北方向237ガル、東西方向178ガル、鉛直方向127ガル、3成分合成で260ガル程度の地震動が観測されています。これを原発の基準地震動と同じ「解放基盤表面はぎとり波」に換算すると、ほぼ2倍になり、それぞれ470ガル、350ガル、250ガル、3成分合成で520ガル相当になります。この地震波は川内原発の基準地震動と直接比較することができます。それが、図1です。この地震波と図1から、次のことが言えます。
(1)原子力安全基盤機構JNES(現在は原子力規制庁へ統合)による地震動解析結果との比較から、4月14日のM6.5の震源近傍では1,000ガルを超え、川内1・2号のクリフエッジ(1号1,004ガル、2号1,020ガル)を超える地震動が襲った可能性が高い。
(2)同地震の益城観測点での地下地震観測記録はぎとり波は図1のように川内原発の基準地震動を応答スペクトルの一部で超えています。
(3)同はぎとり波の応答スペクトルは図1のようにM7.3の市来断層帯市来区間(等価震源距離はほぼ同じ約14km)の耐専スペクトルを超えており、耐専スペクトルでは過小にすぎます。また、断層モデルによる地震動解析結果は耐専スペクトルの1/2~1/3にすぎず、大幅な過小評価になっています。
熊本地震の余震の震源は北東へ南西へと広がり続けており、九州地方では伏在断層を含めて震源断層に蓄積された歪みエネルギーが次々と断層運動で解放され続けているのです。M6.5の地震は、いつ、どこで、起きても不思議ではない小さな地震であり、川内原発周辺でいつ起きても不思議ではないのです。このような小さな地震で基準地震動を超える地震動が観測され、1,000ガルを超える可能性が明らかになったのですから、川内1・2号の運転を直ちに中止させ、再稼働認可(原子炉設置変更許可)を取り消すべきです。

masiki

図1.4月14日のM6.5の地震動はぎとり波と基準地震動Ss-1および市来断層帯市来区間の耐専スペクトル

関西電力は3月9日大津地裁決定を受け高浜原発を全基廃炉にせよ!

大津地方裁判所は3月9日、高浜原発3・4号の運転差し止めを決定しました。フクシマ事故発生から5年目に当り、フクシマをくり返さないことが改めて問われています。関西電力は、この際、高浜3・4号を廃炉にし、高浜1・2号の40年超運転申請を撤回し、高浜発電所を閉鎖すべきです。何となれば、高浜3・4号のクリフエッジはたった973ガル、M6.5の直下地震で1,000ガル超の地震動に襲われれば炉心溶融事故が避けられないからです。
大津地裁決定とは対照的に、福岡高裁宮崎支部は4月6日に川内原発1·2号の即時抗告を棄却しましたが、その8日後に起きた2016年熊本地震は、まさにこの決定への自然界からの厳しい批判ではないでしょうか。関西電力も熊本地震による警鐘に真摯に耳を傾けるべきです。

伊方3号の再稼働を中止し、基準地震動を見直せ

伊方3号では、4月19日の保安規定変更認可で再稼働審査手続きがすべて終了し、四国電力は7月下旬の再稼働を目指し、4月5日から使用前検査を受けていると伝えられています。しかし、熊本地震は伊方3号の危険性も改めて浮上させています。M6.5の直下地震が伊方を襲えば、伊方3号の855ガルのクリフエッジを軽く超えてしまいます。熊本地震を契機に再稼働を中止し、基準地震動を根本から見直すべきです。

廃炉問題から再稼働を見つめ直そう

原発再稼働を巡る動きが慌ただしくなっていますが、同時に、原発廃炉問題が急浮上しています。
すでに廃炉措置が実施された動力試験炉JPDR、廃炉段階に入っている東海原発(ガス炉)、ふげん(新型転換炉)、浜岡1・2号、40年運転の新規制で新たに廃炉段階に入った美浜1・2号、敦賀1号、島根1号、玄海1号、伊方1号(中国電力が3/25に発表)では、使用済核燃料をどうするのか、解体放射性廃棄物をどうするのか、労働者被曝を強いるのか、という深刻な問題が浮上しているのです。
すでに解体されたJPDRでさえ、放射能レベルの低いL3の一部が「試験埋設」されただけで、放射能レベルの高いL1、L2廃棄物2,100tは「保管廃棄」施設で保管中で、最終処分できない状態が長く続いています。
東海、ふげん、浜岡でも放射性廃棄物の行き場がないため「解体作業」が進まない状態です。ましてや、サイト内に溜まっている使用済核燃料は、行き場がありません。政府は高レベル放射性廃棄物の最終処分場を離島の地下や沿岸部の海底地下に埋設処分使用と目論んでいますが、火山・地震列島の日本に「科学的有望地」などあるはずがありません。
だとすれば、これ以上、負の遺産を生み出さないことが最善であり、これ以上、放射性廃棄物を生み出してはならないのです。原発を再稼働して動かせば動かすほど、使用済核燃料が生み出され、原子炉施設は汚染され、より多くの放射性廃棄物が生み出されます。このようなことは止めるべきです。この観点から、5月21日に大阪で、5月27日に福井で討論集会を開きます。
また、電源三法による地域買収構造が原発立地点を潤わせてきたと一般に信じ込まれていますが、事実は逆で、原発に頼らない周辺市町村の方が元気なのです。その実態を山崎隆敏さんが暴いてくれます。ぜひ、ご参加下さい。

原子力規制委員会への公開質問状に賛同して下さい!交渉に参加して下さい!交通費カンパを!

原子力規制委員会に対し、「2016年熊本地震を踏まえた川内原発の基準地震動に関する公開質問状」を5月10日に提出し5月下旬に交渉することを計画しています。別紙の公開質問状(案)への賛同団体・個人を募集しています。第1次締め切りは5月10日です。ぜひ、賛同団体・個人になってください。また、遠方からの参加者に交通費の半額を負担したく、一口500円で何口でもカンパをお願いします。力を合わせて川内原発の運転中止を勝ち取りましょう。

2016年熊本地震を踏まえ、原子力規制委員会へ緊急申し入れを行いました

2016年熊本地震を踏まえ、原子力規制委員会へ緊急申し入れを行いました
(後日、公開質問状を提出し、5月下旬に原子力規制委員会・原子力規制庁との交渉を設定します)

2016年4月22日
原子力規制委員会委員長
田中 俊一 様

2016年熊本地震(4月14日M6.5の激震)を踏まえ,
川内原発の運転停止と基準地震動見直しを求める緊急申し入れ

若狭連帯行動ネットワーク(pdfはこちら

4月14日のM6.5の地震を皮切りに、16日にM7.3の本震が発生した2016年熊本地震は、震源の分布範囲を広げながら今なお続いています。
4月14日のM6.5の地震は、南北方向に張力軸を持つ右横ずれ断層でしたが、震度7の激震をもたらし、図1(左)のKiK-net益城観測点KMMH16では、地表で1,580ガルの非常に大きな地震動が観測されました。原発の基準地震動と関係の深い地下地震計では、南北方向237ガル、東西方向178ガル、鉛直方向127ガル、3成分合成で260ガル程度の地震動が観測されました。これを解放基盤表面はぎとり波に換算すると、ほぼ2倍になり、それぞれ470ガル、350ガル、250ガル、3成分合成で520ガル相当になります。
益城観測点の地下地震計は地下252m、S波速度Vs=2,700m/sの地震基盤に設置されており、川内原発の解放基盤表面(Vs=1,500m/s)より硬い岩盤だと言えます。他方、原子力安全基盤機構JNESはM6.5の右横ずれ断層で1,340ガルの地震動が生じると報告していますが、益城観測点と同等の地震基盤(Vs=2,600m/s)上に観測点を置いた評価になっており、震源断層との位置関係からは図1(右)の断層右斜め下300~400ガルの地点が益城観測点の位置に相当します。
したがって、益城観測点での南北方向470ガルはJNESによる地震動解析結果をやや上回ると言えますし、JNESの地震動解析結果からは、より震源断層に近いところで1,000ガルを超える強い地震動が発生した可能性が高いと言えます。川内原発のクリフエッジは1号で1,004ガル、2号で1,020ガルですので、これを超える地震動が川内原発に近い九州地方で実際に発生した可能性があると言えます。
このM6.5の地震は地表からはその存在を確認できないため、いつ、どこで起きるか分かりません。ましてや、2016年熊本地震は未だ収束せず、南方へも活発に活動範囲を広げています。川内原発のごく近辺でM6.5の地震がいつ起きても不思議ではありません。
また、南北方向470ガルの地震動は、川内原発の540ガルの基準地震動Ss-1(水平方向)より少し小さめですが、その応答スペクトルは図2のように周期0.2秒付近で一部超えています。基準地震動Ss-2についても、図示はしていませんが、周期0.08~0.3秒で超えています。つまり、川内原発の基準地震動を超える地震動が、しかも、M6.5のどこでも起こりうる小さな地震によって、川内原発周辺で実際に起きたことになります。
また、このSs-1は市来断層帯市来区間(M7.2,価震源距離Xeq=14.29km(基本ケース))の内陸補正なしの耐専スペクトルによって規定されていますが、この耐専スペクトルは約460ガルであり、益城観測点での地下地震観測記録はぎとり波はこれにほぼ等しく、図2のように周期0.1秒以上ではこれを上回ります。益城観測点はM6.5の地震との震央距離が11km、等価震源距離ではほぼ14kmになり、川内原発と市来断層帯市来区間の等価震源距離にほぼ等しいと言えます。つまり、M6.5の地震で、地震規模が1桁大きいM7.2の耐専スペクトルと同程度の地震動が観測されたことになり,M7.2の耐専スペクトルが過小にすぎることは明らかだと言えます。断層モデルによる地震動評価結果は耐専スペクトルの1/2ないし1/3にすぎず,最大加速度(水平方向)では300ガル弱にすぎません。益城観測点でのM6.5の地震観測記録はぎとり波はこれをはるかに超えています。
これらを踏まえ、緊急に下記のことを申入れます。真摯にご検討の上、英断されるよう強く期待します。

1.2016年熊本地震を踏まえると、M6.5の地震が川内原発周辺または直下で起きる可能性を否定できず、そ
の場合には川内原発のクリフエッジを超えて炉心溶融事故が起きる危険性もあることから、九州電力に対し、川内1・2号の運転中止を命令して下さい。

2.益城観測点のM6.5の地震に対する地下地震観測記録はぎとり波の応答スペクトルが川内1・2号の基準地
震動を一部超えることから、設置変更許可の前提が崩れたことは明らかであり、即刻、設置変更許可を取り消してください。

3.益城観測点の地下地震観測記録のはぎとり波によれば、今の耐専スペクトルや断層モデルによる地震動
評価では過小にすぎることが明らかであり、最近20年間の国内地震データに基づいて地震動評価手法を根本的に改定し、新しい地震動評価手法で基準地震動を策定し直してください。

以上

kumajisin

 

 

(図1の左図)

 

M65acc

 

 

(図1の右図)

 

 

 

 

 

図1.2016年熊本地震の前震M6.5、本震7.3と余震の震央分布(左図:KiK-net観測点▲を追記)および原子力安全基盤機構JNESによるM6.5の左横ずれれ断層による水平方向加速度分布(右図:最大値1340.4gal)(右横ずれの場合には上下を反転させた分布図になるため、左図の震央距離11kmの益城観測点KMMH16は右図では震源断層の右斜め下300~400ガルの地点に相当する)

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図2.益城観測点KMMH16の地下地震観測記録のはぎとり波(2倍化)の擬似加速度応答スペクトルと川内1・2号の基準地震動Ss-1および耐専スペクトル(水平方向)の比較(防災研データから長沢が作成)

注:2016年4月22日に福島みずほ社民党参議院議員を通して原子力規制委員会へ提出しました。九州電力の4月21日
資料では市来断層帯市来区間の耐専スペクトルは約460ガルになっていましたので「約470ガル」から修正しました。この緊急申し入れの内容については、原子力規制委員会に公開質問状を提出して5月下旬に交渉する予定です。公開質問状(案)・交渉へのご賛同、ご参加、遠方からの参加者への交通費カンパをよろしくお願い致します。

大津地裁決定を受け、高浜原発全基廃炉・全原発再稼働阻止へ!

若狭ネットは2016年3月9日の大津地裁決定を受け、下記の緊急アピールを発し、本日、関西電力本社へ下記の申し入れを行いました。
リーフレットはこちら

大津地裁決定を受け、高浜原発全基廃炉・全原発再稼働阻止へ!

大津地裁は3月9日、高浜3・4号について運転差止の仮処分決定を出しました。これは福井地裁による大飯3・4号運転差止判決(2014.5.21)と高浜3・4号運転差止仮処分決定(2015.4.14)に続くものであり、運転中の原発に即時停止を命じた国内初の画期的な仮処分決定です。しかも、福井地裁での高浜3・4号運転差止仮処分決定が別の裁判官によって覆されてからわずか2ヶ月半後に再び運転差止命令を出したものであり、原告弁護団による不屈の裁判闘争に畏敬の念を抱くと共に、さまざまな圧力をはねのけた裁判官の勇気ある決定に敬意を表します。
大津地裁決定は、「万が一にも人格権が侵害される危険性」を直接審理の対象とはせず、原子力規制委員会による規制基準の不合理性や調査審議・判断過程の過誤・欠落を具体的に示したものでもありません。たとえ高浜3・4号に再稼働認可(設置変更許可)が出されていても、その合理性について関西電力が「主張及び疎明を尽くさなければ、その不合理性が事実上推認される」としたものです。とくに、仮処分では速やかに主張・資料提供が行われるべきところ、1年の審理期間にもかかわらず、終了直前まで資料が出されず、「提出資料によっても不明であるといわざるを得ない」状態だったとし、関西電力のずさんな「主張及び疎明」に憤慨しています。
では、関西電力が「主張及び疎明」を尽くせば、今回の決定を覆せるのでしょうか。そうとも言えません。「主張及び疎明」を尽くそうにもできない内容が含まれているからです。

十二分に余裕をもった規制基準の策定が不可欠

たとえば、「過酷事故対策」では、福島第一原発事故の主原因を津波だとして良いかは不明であり、徹底した原因究明を行って安全確保対策を講じるという姿勢がないとすれば、「そもそも新規制基準策定に向かう姿勢に非常に不安を覚える」と批判し、十二分な余裕を持たせることの重要性を次のように指摘しています。「災害が起こる度に『想定を超える』災害であったと繰り返されてきた過ちに真摯に向き合うならば,十二分の余裕をもった基準とすることを念頭に置き,常に,他に考慮しなければならない要素ないし危険性を見落としている可能性があるとの立場に立ち,対策の見落としにより過酷事故が生じたとしても,致命的な状態に陥らないようにすることができるとの思想に立って,新規制基準を策定すべきものと考える。債務者の保全段階における主張及び疎明の程度では,新規制基準及び本件各原発に係る設置変更許可が,直ちに公共の安寧の基礎となると考えることをためらわざるを得ない。」事故原因の徹底究明や十二分に余裕のある規制基準の策定は、関西電力が「主張及び疎明」を尽くそうとしてもできない要求なのです。

十二分に余裕をもった基準地震動の策定が必要

また、「耐震性能」では、現段階の科学技術力で最大限の調査をやっても「断層の連動」を否定することも「断層の末端」を確定することもできなかったのだから、断層の連動や長めの想定をしたからといって安全余裕をとったとは言えないとし、また、耐専スペクトルと実際の観測記録との間に乖離があることから、耐専スペクトルが「起こりうる地震動の応答スペクトルの最大値」に近いものであるかどうか疑問が残るとしています。つまり、十二分に余裕をもった基準地震動を策定し直す必要があるとしているのです。

フクシマ事故の「結果(現状)」も徹底究明すべき

決定は、国家主導の避難計画とそれを視野に入れた幅広い規制基準を求め、電力会社にも避難計画を含めた安全確保対策に意を払うよう求めていますが、福島第一原発事故の原因だけでなく結果(現状)についても徹底究明する姿勢が不可欠です。福島では5年後の今なお9.7万人が避難生活を余儀なくされ、震災関連死は2031人に達し、直接死を超えて増え続けています。5年間の事故処理作業に動員された労働者と累積被曝線量は緊急事態10ヶ月間の2.4倍になり、増え続けています。被災者や労働者の人格権を侵害しない避難計画や安全確保対策などありえません。フクシマを繰り返さないことを担保できないのであれば運転を差し止めるべきです。
私たちは、関西電力に対し、大津地裁決定を受け入れ、高浜3・4号を廃炉にすること、高浜1・2号を含め高浜・美浜・大飯の全原発を廃炉にすることを求めます。全国の闘う仲間と連帯して、大津地裁決定を踏まえ、川内原発の運転停止と全原発の再稼働中止を求め、脱原発へ前進したいと思います。

2016年3月11日
関西電力株式会社 取締役社長 八木 誠 様

フクシマ事故から5年、フクシマをくり返さないため
大津地裁決定を受け入れ、高浜3・4号を即刻廃炉にしてください

若狭連帯行動ネットワーク

大津地方裁判所は3月9日、高浜原発3・4号の運転差し止めを決定しました。貴社は運転中の高浜3号を停止し、高浜4号の再稼働作業を中止せざるを得なくなりました。くしくも、本日はフクシマ事故発生から5年目に当り、フクシマをくり返さないことが改めて問われています。この際、高浜3・4号を廃炉にし、高浜1・2号の40年超運転申請を撤回し、高浜発電所を閉鎖するよう求めます。
フクシマ事故は5年後の今なお収束せず、10万人近くが今なお厳しい避難生活を余儀なくされ、その大半が仮設住宅や借上住宅で不安な毎日を送っています。震災関連死は3月10日現在2031人に達し、直接死1604人をはるかに超え、悲しいことに今なお増え続けています。事故直後の緊急事態に動員された労働者は約2万人、累積ヒバク線量は240人Svに上りますが、5年間の事故収束・汚染水対策で労働者数も累積ヒバク線量も2.4倍に増えています。その中から白血病で労災認定を受けた労働者がすでに出ています。
被災者と事故処理労働者の基本的人権が様々な形で侵害されています。「フクシマをくり返さないため、もう原発は止めるべきだ」という教訓を改めて確認すべきです。
大津地裁決定は、フクシマ事故の原因究明は不十分であり、これを意に介さない貴社と原子力規制委員会の「姿勢に非常に不安を覚える」と指弾し、「災害が起こる度に『想定を超える』災害であったと繰り返されてきた過ちに真摯に向き合う」ことを強く求めています。その上で、貴社の「主張及び疎明の程度では新規制基準及び設置変更許可が直ちに公共の安寧の基礎となると考えることをためらわざるを得ない」と断じています。1年間の十分な審議期間があったにもかかわらず、原子力規制委員会による設置変更許可を御旗に掲げ、裁判所に十分な資料を提供せず、説明も尽くさない貴社の不遜な態度についても、厳しく批判しています。
貴社の想定では安全を担保するには不十分とした上で、事故が起きれば、滋賀県の住民もヒバクし、琵琶湖が汚染され近畿地方の飲み水に影響が出るとする主張が正しく受け止められたのです。
貴社は、1年以上私たちとの面談を拒否し続けていることを謝罪し、私たちが昨年2月12日に提出した「関西電力の電気料金値上げと原発再稼働に関する公開質問状」に改めて真摯に回答すべきです。
私たちは、大津地裁決定を受け、フクシマ5年を期して、改めて申し入れます。
1.「フクシマ事故をくり返してはならない」という国民過半数の熱い思いを代弁した大津地裁決定を受け入れ、高浜3・4号の再稼働を断念し、廃炉にしてください。
2.高浜1・2号の40年超運転申請を撤回し、高浜発電所を閉鎖してください。
3.美浜3号の40年超運転申請を撤回し、美浜発電所を閉鎖してください。
4.電力自由化を機に、原発依存経営から脱皮し、再生可能エネルギーを軸とした経営に転換してください。

若狭ネットニュース第159号を発行しました

若狭ネットニュース第159号を発行しました。

第159号(2016/2/24)(一括ダウンロード1.7Mb
巻頭言-フクシマ事故から5年— 事故は収束せず、責任とらせず
東京電力を破産処理し、国の責任で事故処理・賠償を!
フクシマを繰り返すな!
高浜3・4号の再稼働を中止せよ!川内1・2号を止めよ!
「原則40年」を遵守し、高浜1・2号、美浜3号を廃炉に!
負の遺産=使用済核燃料をこれ以上生み出すな!
使用済核燃料中間貯蔵施設反対!計画を撤回せよ!
(1)2016年2月18日 美浜1・2号と敦賀1号の廃止措置計画提出に際しての声明
解体・撤去・放射性廃棄物埋設処分ではなく、長期密閉管理による廃止措置へ転換せよ!
使用済核燃料は再処理せず、超長期に隔離管理し、原発再稼働を中止して、これ以上生み出すな!
若狭連帯行動ネットワーク
(2)今こそ原発依存財政からの脱却を
山崎たかとし

<巻頭言>
フクシマ事故から5年— 事故は収束せず、責任とらせず
東京電力を破産処理し、国の責任で事故処理・賠償を!
フクシマを繰り返すな!
 高浜3・4号の再稼働を中止せよ!川内1・2号を止めよ!
 「原則40年」を遵守し、高浜1・2号、美浜3号を廃炉に!
 負の遺産=使用済核燃料をこれ以上生み出すな!
 使用済核燃料中間貯蔵施設反対!計画を撤回せよ!

2011年3月11日のフクシマ事故から5年になります。
炉心溶融事故を起こした福島第一原発1~3号の溶融燃料は依然として行方知れずのまま、崩壊熱を出し、放射能汚染水を生み出し続けています。1号の格納容器下部滞留水中にロボットを投入する予定でしたが、水中の堆積物が多すぎて視界不良になるため断念。2号では格納容器配管入口付近を除染しても100mSv/h以下へ下がらずロボット投入を断念しています(河北新報2016.1.29)。今年度中の格納容器内調査実施が危うい状態です。
放射能汚染水は依然として溜まり続け、増え続けています。2月下旬現在、建屋内に汚染水約8.3万トン、タンク内に約79万トンの処理水が溜まっています。ここには、セシウムとストロンチウム以外の放射能が大量に含まれる中間処理水=「Sr処理水」など約18万トンが含まれます。約61万トンの多核種除去設備ALPSでもトリチウムは除去できず、その処理水約61万トンにも約1千兆ベクレルものトリチウムが高濃度に含まれています。

放射能汚染水は減るどころか増えている

東京電力は、昨年9月にサブドレンの汲上げ開始、昨年10月に海側遮水壁の閉合、昨年11月に陸側凍土遮水壁の全凍結管建込完了と順調にいっているかのように主張しています。しかし、事態は逆に悪化しています。サブドレン開始で建屋侵入水は400トン/日レベルから半減しましたが、海側遮水壁を閉じた途端に、地下水位が海側で上がり、地下水の放射能汚染度が高まったため(原因不明)、汲上げた地下水を建屋へ移送せざるをえなくなり、建屋汚染水が400~800トン/日へ急増しています。溶融燃料冷却用の注入水約300トン/日を入れると、汚染水は700~1100トン/日に増えています。ところが、ALPS処理水を溜める溶接タンクの増設が間に合わないため、ALPS処理量を増やせず、増え続ける「Sr処理水」をフランジ型タンクに貯蔵しようとしています。フランジ型タンクは汚染水漏洩事故を起こしたため解体・撤去中でしたが、それをやめて再利用しようというのです。本来なら、「Sr処理水」のALPS処理を増やしてその処理水をフランジ型タンクへ貯蔵すべきところ、より危険な「Sr処理水」のフランジ型タンク貯蔵量を増やすというのです。東電には安全優先の発想が欠けているのです。
東電は陸側凍土遮水壁による凍結を始めようとしていますが、問題だらけです。第1に、建屋海側の凍結管は6ヵ所あるトレンチ上部で止まっており、トレンチの下は凍結できません。そのため、地下水が急流となってここから流れ出し、流速が増えて砂岩が押し流される恐れが出ています。第2に、地下水上流に当たる建屋山側の試験凍結では、地下水位が急激に低下するため建屋から滞留水が流出する恐れが明らかになっています。そのため、建屋海側から先行凍結して建屋山側を段階的に凍結する案が検討されています。建屋海側を先行凍結させたときに地下水の放射能汚染度が高まれば、サブドレン水を建屋へ移送しなけらばならず、建屋汚染水を減らすどころか、逆に増やすことになりかねません。

事故避難者約9.9万人、関連死2020人

フクシマ事故による避難者は2月23日現在約9.9万人(福島県内5.55万人、県外4.33万人)、その大半は仮設住宅や借上住宅で不安な毎日を送っています。帰還困難区域の2.4万人、居住制限区域の2.3万人はより長期の避難が避けられないでしょう。震災関連死は2020人に達し、直接死1604人をはるかに超え、悲しいことに今なお増え続けています。被災者の基本的人権が様々な形で侵害されています。
自主避難者への損害賠償を命じる判決が2月18日に全国初めて京都地裁で出されました。避難者を勇気づけるものです。国と東電の事故責任を厳しく問い、原子力被災者を救済し、健康手帳を交付させ将来の健康保障を勝ち取らねばなりません。

事故処理労働者が白血病で労災認定

事故収束作業で被曝した労働者は昨年末で4.62万人、集団被曝線量は585人Svです。事故発生から12月末の収束宣言までの1.96万人、240人Svと比べて、人数・被曝量共に約2.4倍に増えています。この中から、遂に、白血病にかかった労働者が現れ、昨年10月に労災認定を受けています。彼の累積被曝線量は19.8mSv(うち福島第一原発で15.7mSv)でした。政府は20mSv未満なら安全として避難者を汚染地に帰還させようとしていますが、とんでもないことです。公衆の被曝線量限度1mSv/年を下回るまで、帰還を強要すべきではありません。また、政府はこの4月から緊急時被曝限度を250mSvへ引上げ、再稼働した原発の重大事故に備えようとしています。フクシマを繰り返すことを前提としたこのような緊急時被曝限度引き上げと原発再稼働を許してはなりません。

東電を破産処理し、国の責任で事故処理と賠償を

東京電力は原油価格下落によって大もうけをする一方、賠償費をけちり、除染費支払いを滞納し、除染廃棄物処理を自治体と国に任せて知らんぷりを決め込み、まるで他人事のように事故処理作業を行い、労働者に被曝を強要し、危険手当等のピンハネを黙認しています。事故が収束していないのに、東電は柏崎刈羽原発の再稼働を狙い、福島第二原発の廃炉をしぶっています。国も、東電を事実上救済しながら、「うまく行くかどうかわからない工事だから国費を出せる」という理由で、通常の土木工事=東電救済策ではなく、陸側凍土遮水壁という危険な難工事を東電にやらせています。こんな東電と国の無責任体制では、もはや、事故を収束させることも、被災者への賠償を公平に行い、住民を被曝から守り、必要な除染を実施させることもできません。今からでも遅くありません。東京電力を破産処理し、金融機関を含めて事故の責任を取らせるべきです。原発を推進してきた国の責任を明らかにし、しがらみのない抜本的な事故処理と被災者救済を行うべきです。
原発を再稼働させながらフクシマ対策を行うことなどできません。欺瞞です。東電を破産処理しても賠償には全く影響しません。今でも、賠償・除染費はその全額が9兆円の交付国債から出されており、電力消費者が電気料金で返済し続けているのですから。

高浜3・4号の再稼働を中止し、1・2号を廃炉に

関西電力は、今年に入り、高浜3・4号の再稼働を進めてきました。その矢先の2月20日、高浜4号で汚染水が漏れ、作業が中断しました。関電は、弁のボルト締め付けが一様でなく一部で弱かったのが原因だとしていますが、これに限らず、長期停止後の原発には思わぬ事故がつきものです。ましてや、M6.5の伏在断層が高浜原発直下で動けば、1,340ガルの地震動が襲うことになり、炉心溶融事故が避けられません。関電は、この問題をはじめ私たちの公開質問状に全く回答せず、逃げ回っています。
関西電力は「40年廃炉」の原則に反して、高浜1・2号と美浜3号の再稼働を目指しています。原子力規制委員会は当初、難燃ケーブルへの全量取替を求めていましたが、1・2号全長約1300kmの6割を取替えるだけで、「施工が困難な4割はケーブルと収納トレーをまとめて防火シートで覆う」ことを容認したのです。電力は余っており、高浜1・2号の40年廃炉原則を曲げる必要性は何もなく、肝心の「特例措置が必要な理由」は不明なままです。これまでに関電が注ぎ込んだ対策費は5,279億円(高浜1~4号3,881億円、大飯3・4号108億円、美浜3号1,290億円)、当初の11基2,850億円の2倍近くに膨れ上がっています。万が一廃炉になっても、廃炉後に電気料金から10年間で回収できる会計制度ができたからです。この制度は廃炉を促すために作られたはずですが、実際には電力の無責任な原発延命投資を助長しているのです。このような無責任な延命策を許さず、高浜1・2号と美浜3号を廃炉に追い込みましょう。

美浜1・2号敦賀1号の廃炉計画に際しての声明

関電と日本原電は2月12日、美浜1・2号と敦賀1号の廃炉計画を原子力規制委員会に申請し、地元へ説明しました。解体・撤去による廃止措置は深刻な労働者被爆と行く先のない膨大な量の放射性廃棄物を生み出します。私たちは解体・撤去ではなく、長期密閉管理を軸とした廃止措置に転換するよう求めます。詳しくは、2月18日付けで声明をまとめましたので、そちら(4~19頁)をご覧下さい。
原発廃炉で、行き先のない使用済核燃料の問題が再浮上します。原発を再稼働させる限り、使用済核燃料はさらに生み出されます。次世代に負の遺産を増やし続けることはもはや許されません。現世代にできるのは直ちにこれを止めることです。
関電は11月20日、「2020年ごろまでに使用済核燃料中間貯蔵施設の立地点を決め、2030年ごろの操業を目指す」と発表しましたが、これは廃炉とは無関係で、使用済核燃料をピットから移動させなければ、新燃料との交換ができず、再稼働させた原発の運転を続けられないからです。断じて許してはなりません。

フクシマを繰り返さないため、3月~4月の連続行動で、原発再稼働阻止の闘いを強めよう

私たちはフクシマ事故5年の3月11日、「福島を忘れない関電本店前抗議スタンデイング」の呼びかけに応え、参加します。3月13日「さよなら原発関西アクション」(大阪市中央公会堂)・「御堂筋パレード」に参加し、全国の仲間と連帯して闘います。
4月3日には、チュルノブイリ・ヒバクシャ救援関西などと一緒に「チェルノブイリ30年・フクシマ5年国際シンポジウム」を大阪で開きます。チェルノブイリやフクシマを繰り返さないため、現地の声を聞くことが重要です。私たちは、「フクシマ事故を二度と招いてはならない!豊かな国土とそこに根を下ろした生活を奪うな!子どもたちの未来を守ろう!再稼働阻止まで最後まで闘う!」を合い言葉に闘います。憲法違反の「戦争法」と「原発再稼働」に反対する運動を結びつけ、安倍政権をさらに追い込んでいきましょう。

美浜1・2号と敦賀1号の廃止措置計画提出に際しての声明

2016年2月18日
美浜1・2号と敦賀1号の廃止措置計画提出に際しての声明

解体・撤去・放射性廃棄物埋設処分ではなく、長期密閉管理による廃止措置へ転換せよ!
使用済核燃料は再処理せず、超長期に隔離管理し、原発再稼働を中止して、これ以上生み出すな!

若狭連帯行動ネットワーク

美浜1・2号と敦賀1号の廃止措置計画が原子力規制委員会へ提出されました。そこでは、原子炉の解体・撤去と放射性廃棄物の埋設処分・再利用が計画されています。
私たちは、原子炉解体が深刻な労働者被曝をもたらし、廃棄物埋設処分・再利用が新たな放射能汚染をもたらすことを危惧し、また、埋設処分場も見つかり得ないことから、原子炉を解体せず長期間密閉管理することを軸にした廃止措置計画へ転換するよう求めます。
また、使用済核燃料は再処理が計画され、再処理までの中間貯蔵施設の立地も画策されていますが、再処理は燃料棒に内包されている厖大な放射能をガスや液体など拡散しやすい形態で解放し処理するため、深刻な日常的放射能汚染と壊滅的な放射能災害をもたらす危険があります。
さらに、原発再稼働で使用済核燃料を生み出し続ける現状では、使用済核燃料の中間貯蔵施設立地点はもとより高レベル放射性廃棄物の最終処分場も見つかり得ないため、使用済核燃料の超長期の隔離管理を求めます。
このような、危険な使用済核燃料をこれ以上生み出さないことが先決であり、原発の再稼働を即刻中止することを求めます。
使用済核燃料の中間貯蔵施設は、原発再稼働で出てくる使用済核燃料の搬出先となり、原発再稼働を促進するものに他ならないため、「暫定保管」を含めて、その立地に反対します。
廃止措置に伴う使用済核燃料は再処理せず、崩壊熱の高い数十年間は原発サイト内でプール貯蔵と乾式貯蔵で十分な安全性を確保して隔離管理し続け、日本全体で脱原発に転換した後に国民的合意の下、どこで、どのように隔離管理し続けるかを決定するよう求めます。

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