若狭ネット

福井と関西を結び脱原発をめざす市民ネットワーク

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ニュース

2016年熊本地震を踏まえ、原子力規制委員会へ緊急申し入れを行いました

2016年熊本地震を踏まえ、原子力規制委員会へ緊急申し入れを行いました
(後日、公開質問状を提出し、5月下旬に原子力規制委員会・原子力規制庁との交渉を設定します)

2016年4月22日
原子力規制委員会委員長
田中 俊一 様

2016年熊本地震(4月14日M6.5の激震)を踏まえ,
川内原発の運転停止と基準地震動見直しを求める緊急申し入れ

若狭連帯行動ネットワーク(pdfはこちら

4月14日のM6.5の地震を皮切りに、16日にM7.3の本震が発生した2016年熊本地震は、震源の分布範囲を広げながら今なお続いています。
4月14日のM6.5の地震は、南北方向に張力軸を持つ右横ずれ断層でしたが、震度7の激震をもたらし、図1(左)のKiK-net益城観測点KMMH16では、地表で1,580ガルの非常に大きな地震動が観測されました。原発の基準地震動と関係の深い地下地震計では、南北方向237ガル、東西方向178ガル、鉛直方向127ガル、3成分合成で260ガル程度の地震動が観測されました。これを解放基盤表面はぎとり波に換算すると、ほぼ2倍になり、それぞれ470ガル、350ガル、250ガル、3成分合成で520ガル相当になります。
益城観測点の地下地震計は地下252m、S波速度Vs=2,700m/sの地震基盤に設置されており、川内原発の解放基盤表面(Vs=1,500m/s)より硬い岩盤だと言えます。他方、原子力安全基盤機構JNESはM6.5の右横ずれ断層で1,340ガルの地震動が生じると報告していますが、益城観測点と同等の地震基盤(Vs=2,600m/s)上に観測点を置いた評価になっており、震源断層との位置関係からは図1(右)の断層右斜め下300~400ガルの地点が益城観測点の位置に相当します。
したがって、益城観測点での南北方向470ガルはJNESによる地震動解析結果をやや上回ると言えますし、JNESの地震動解析結果からは、より震源断層に近いところで1,000ガルを超える強い地震動が発生した可能性が高いと言えます。川内原発のクリフエッジは1号で1,004ガル、2号で1,020ガルですので、これを超える地震動が川内原発に近い九州地方で実際に発生した可能性があると言えます。
このM6.5の地震は地表からはその存在を確認できないため、いつ、どこで起きるか分かりません。ましてや、2016年熊本地震は未だ収束せず、南方へも活発に活動範囲を広げています。川内原発のごく近辺でM6.5の地震がいつ起きても不思議ではありません。
また、南北方向470ガルの地震動は、川内原発の540ガルの基準地震動Ss-1(水平方向)より少し小さめですが、その応答スペクトルは図2のように周期0.2秒付近で一部超えています。基準地震動Ss-2についても、図示はしていませんが、周期0.08~0.3秒で超えています。つまり、川内原発の基準地震動を超える地震動が、しかも、M6.5のどこでも起こりうる小さな地震によって、川内原発周辺で実際に起きたことになります。
また、このSs-1は市来断層帯市来区間(M7.2,価震源距離Xeq=14.29km(基本ケース))の内陸補正なしの耐専スペクトルによって規定されていますが、この耐専スペクトルは約460ガルであり、益城観測点での地下地震観測記録はぎとり波はこれにほぼ等しく、図2のように周期0.1秒以上ではこれを上回ります。益城観測点はM6.5の地震との震央距離が11km、等価震源距離ではほぼ14kmになり、川内原発と市来断層帯市来区間の等価震源距離にほぼ等しいと言えます。つまり、M6.5の地震で、地震規模が1桁大きいM7.2の耐専スペクトルと同程度の地震動が観測されたことになり,M7.2の耐専スペクトルが過小にすぎることは明らかだと言えます。断層モデルによる地震動評価結果は耐専スペクトルの1/2ないし1/3にすぎず,最大加速度(水平方向)では300ガル弱にすぎません。益城観測点でのM6.5の地震観測記録はぎとり波はこれをはるかに超えています。
これらを踏まえ、緊急に下記のことを申入れます。真摯にご検討の上、英断されるよう強く期待します。

1.2016年熊本地震を踏まえると、M6.5の地震が川内原発周辺または直下で起きる可能性を否定できず、そ
の場合には川内原発のクリフエッジを超えて炉心溶融事故が起きる危険性もあることから、九州電力に対し、川内1・2号の運転中止を命令して下さい。

2.益城観測点のM6.5の地震に対する地下地震観測記録はぎとり波の応答スペクトルが川内1・2号の基準地
震動を一部超えることから、設置変更許可の前提が崩れたことは明らかであり、即刻、設置変更許可を取り消してください。

3.益城観測点の地下地震観測記録のはぎとり波によれば、今の耐専スペクトルや断層モデルによる地震動
評価では過小にすぎることが明らかであり、最近20年間の国内地震データに基づいて地震動評価手法を根本的に改定し、新しい地震動評価手法で基準地震動を策定し直してください。

以上

kumajisin

 

 

(図1の左図)

 

M65acc

 

 

(図1の右図)

 

 

 

 

 

図1.2016年熊本地震の前震M6.5、本震7.3と余震の震央分布(左図:KiK-net観測点▲を追記)および原子力安全基盤機構JNESによるM6.5の左横ずれれ断層による水平方向加速度分布(右図:最大値1340.4gal)(右横ずれの場合には上下を反転させた分布図になるため、左図の震央距離11kmの益城観測点KMMH16は右図では震源断層の右斜め下300~400ガルの地点に相当する)

masiki

 

 

 

 

 

 

 

 

図2.益城観測点KMMH16の地下地震観測記録のはぎとり波(2倍化)の擬似加速度応答スペクトルと川内1・2号の基準地震動Ss-1および耐専スペクトル(水平方向)の比較(防災研データから長沢が作成)

注:2016年4月22日に福島みずほ社民党参議院議員を通して原子力規制委員会へ提出しました。九州電力の4月21日
資料では市来断層帯市来区間の耐専スペクトルは約460ガルになっていましたので「約470ガル」から修正しました。この緊急申し入れの内容については、原子力規制委員会に公開質問状を提出して5月下旬に交渉する予定です。公開質問状(案)・交渉へのご賛同、ご参加、遠方からの参加者への交通費カンパをよろしくお願い致します。

大津地裁決定を受け、高浜原発全基廃炉・全原発再稼働阻止へ!

若狭ネットは2016年3月9日の大津地裁決定を受け、下記の緊急アピールを発し、本日、関西電力本社へ下記の申し入れを行いました。
リーフレットはこちら

大津地裁決定を受け、高浜原発全基廃炉・全原発再稼働阻止へ!

大津地裁は3月9日、高浜3・4号について運転差止の仮処分決定を出しました。これは福井地裁による大飯3・4号運転差止判決(2014.5.21)と高浜3・4号運転差止仮処分決定(2015.4.14)に続くものであり、運転中の原発に即時停止を命じた国内初の画期的な仮処分決定です。しかも、福井地裁での高浜3・4号運転差止仮処分決定が別の裁判官によって覆されてからわずか2ヶ月半後に再び運転差止命令を出したものであり、原告弁護団による不屈の裁判闘争に畏敬の念を抱くと共に、さまざまな圧力をはねのけた裁判官の勇気ある決定に敬意を表します。
大津地裁決定は、「万が一にも人格権が侵害される危険性」を直接審理の対象とはせず、原子力規制委員会による規制基準の不合理性や調査審議・判断過程の過誤・欠落を具体的に示したものでもありません。たとえ高浜3・4号に再稼働認可(設置変更許可)が出されていても、その合理性について関西電力が「主張及び疎明を尽くさなければ、その不合理性が事実上推認される」としたものです。とくに、仮処分では速やかに主張・資料提供が行われるべきところ、1年の審理期間にもかかわらず、終了直前まで資料が出されず、「提出資料によっても不明であるといわざるを得ない」状態だったとし、関西電力のずさんな「主張及び疎明」に憤慨しています。
では、関西電力が「主張及び疎明」を尽くせば、今回の決定を覆せるのでしょうか。そうとも言えません。「主張及び疎明」を尽くそうにもできない内容が含まれているからです。

十二分に余裕をもった規制基準の策定が不可欠

たとえば、「過酷事故対策」では、福島第一原発事故の主原因を津波だとして良いかは不明であり、徹底した原因究明を行って安全確保対策を講じるという姿勢がないとすれば、「そもそも新規制基準策定に向かう姿勢に非常に不安を覚える」と批判し、十二分な余裕を持たせることの重要性を次のように指摘しています。「災害が起こる度に『想定を超える』災害であったと繰り返されてきた過ちに真摯に向き合うならば,十二分の余裕をもった基準とすることを念頭に置き,常に,他に考慮しなければならない要素ないし危険性を見落としている可能性があるとの立場に立ち,対策の見落としにより過酷事故が生じたとしても,致命的な状態に陥らないようにすることができるとの思想に立って,新規制基準を策定すべきものと考える。債務者の保全段階における主張及び疎明の程度では,新規制基準及び本件各原発に係る設置変更許可が,直ちに公共の安寧の基礎となると考えることをためらわざるを得ない。」事故原因の徹底究明や十二分に余裕のある規制基準の策定は、関西電力が「主張及び疎明」を尽くそうとしてもできない要求なのです。

十二分に余裕をもった基準地震動の策定が必要

また、「耐震性能」では、現段階の科学技術力で最大限の調査をやっても「断層の連動」を否定することも「断層の末端」を確定することもできなかったのだから、断層の連動や長めの想定をしたからといって安全余裕をとったとは言えないとし、また、耐専スペクトルと実際の観測記録との間に乖離があることから、耐専スペクトルが「起こりうる地震動の応答スペクトルの最大値」に近いものであるかどうか疑問が残るとしています。つまり、十二分に余裕をもった基準地震動を策定し直す必要があるとしているのです。

フクシマ事故の「結果(現状)」も徹底究明すべき

決定は、国家主導の避難計画とそれを視野に入れた幅広い規制基準を求め、電力会社にも避難計画を含めた安全確保対策に意を払うよう求めていますが、福島第一原発事故の原因だけでなく結果(現状)についても徹底究明する姿勢が不可欠です。福島では5年後の今なお9.7万人が避難生活を余儀なくされ、震災関連死は2031人に達し、直接死を超えて増え続けています。5年間の事故処理作業に動員された労働者と累積被曝線量は緊急事態10ヶ月間の2.4倍になり、増え続けています。被災者や労働者の人格権を侵害しない避難計画や安全確保対策などありえません。フクシマを繰り返さないことを担保できないのであれば運転を差し止めるべきです。
私たちは、関西電力に対し、大津地裁決定を受け入れ、高浜3・4号を廃炉にすること、高浜1・2号を含め高浜・美浜・大飯の全原発を廃炉にすることを求めます。全国の闘う仲間と連帯して、大津地裁決定を踏まえ、川内原発の運転停止と全原発の再稼働中止を求め、脱原発へ前進したいと思います。

2016年3月11日
関西電力株式会社 取締役社長 八木 誠 様

フクシマ事故から5年、フクシマをくり返さないため
大津地裁決定を受け入れ、高浜3・4号を即刻廃炉にしてください

若狭連帯行動ネットワーク

大津地方裁判所は3月9日、高浜原発3・4号の運転差し止めを決定しました。貴社は運転中の高浜3号を停止し、高浜4号の再稼働作業を中止せざるを得なくなりました。くしくも、本日はフクシマ事故発生から5年目に当り、フクシマをくり返さないことが改めて問われています。この際、高浜3・4号を廃炉にし、高浜1・2号の40年超運転申請を撤回し、高浜発電所を閉鎖するよう求めます。
フクシマ事故は5年後の今なお収束せず、10万人近くが今なお厳しい避難生活を余儀なくされ、その大半が仮設住宅や借上住宅で不安な毎日を送っています。震災関連死は3月10日現在2031人に達し、直接死1604人をはるかに超え、悲しいことに今なお増え続けています。事故直後の緊急事態に動員された労働者は約2万人、累積ヒバク線量は240人Svに上りますが、5年間の事故収束・汚染水対策で労働者数も累積ヒバク線量も2.4倍に増えています。その中から白血病で労災認定を受けた労働者がすでに出ています。
被災者と事故処理労働者の基本的人権が様々な形で侵害されています。「フクシマをくり返さないため、もう原発は止めるべきだ」という教訓を改めて確認すべきです。
大津地裁決定は、フクシマ事故の原因究明は不十分であり、これを意に介さない貴社と原子力規制委員会の「姿勢に非常に不安を覚える」と指弾し、「災害が起こる度に『想定を超える』災害であったと繰り返されてきた過ちに真摯に向き合う」ことを強く求めています。その上で、貴社の「主張及び疎明の程度では新規制基準及び設置変更許可が直ちに公共の安寧の基礎となると考えることをためらわざるを得ない」と断じています。1年間の十分な審議期間があったにもかかわらず、原子力規制委員会による設置変更許可を御旗に掲げ、裁判所に十分な資料を提供せず、説明も尽くさない貴社の不遜な態度についても、厳しく批判しています。
貴社の想定では安全を担保するには不十分とした上で、事故が起きれば、滋賀県の住民もヒバクし、琵琶湖が汚染され近畿地方の飲み水に影響が出るとする主張が正しく受け止められたのです。
貴社は、1年以上私たちとの面談を拒否し続けていることを謝罪し、私たちが昨年2月12日に提出した「関西電力の電気料金値上げと原発再稼働に関する公開質問状」に改めて真摯に回答すべきです。
私たちは、大津地裁決定を受け、フクシマ5年を期して、改めて申し入れます。
1.「フクシマ事故をくり返してはならない」という国民過半数の熱い思いを代弁した大津地裁決定を受け入れ、高浜3・4号の再稼働を断念し、廃炉にしてください。
2.高浜1・2号の40年超運転申請を撤回し、高浜発電所を閉鎖してください。
3.美浜3号の40年超運転申請を撤回し、美浜発電所を閉鎖してください。
4.電力自由化を機に、原発依存経営から脱皮し、再生可能エネルギーを軸とした経営に転換してください。

若狭ネットニュース第159号を発行しました

若狭ネットニュース第159号を発行しました。

第159号(2016/2/24)(一括ダウンロード1.7Mb
巻頭言-フクシマ事故から5年— 事故は収束せず、責任とらせず
東京電力を破産処理し、国の責任で事故処理・賠償を!
フクシマを繰り返すな!
高浜3・4号の再稼働を中止せよ!川内1・2号を止めよ!
「原則40年」を遵守し、高浜1・2号、美浜3号を廃炉に!
負の遺産=使用済核燃料をこれ以上生み出すな!
使用済核燃料中間貯蔵施設反対!計画を撤回せよ!
(1)2016年2月18日 美浜1・2号と敦賀1号の廃止措置計画提出に際しての声明
解体・撤去・放射性廃棄物埋設処分ではなく、長期密閉管理による廃止措置へ転換せよ!
使用済核燃料は再処理せず、超長期に隔離管理し、原発再稼働を中止して、これ以上生み出すな!
若狭連帯行動ネットワーク
(2)今こそ原発依存財政からの脱却を
山崎たかとし

<巻頭言>
フクシマ事故から5年— 事故は収束せず、責任とらせず
東京電力を破産処理し、国の責任で事故処理・賠償を!
フクシマを繰り返すな!
 高浜3・4号の再稼働を中止せよ!川内1・2号を止めよ!
 「原則40年」を遵守し、高浜1・2号、美浜3号を廃炉に!
 負の遺産=使用済核燃料をこれ以上生み出すな!
 使用済核燃料中間貯蔵施設反対!計画を撤回せよ!

2011年3月11日のフクシマ事故から5年になります。
炉心溶融事故を起こした福島第一原発1~3号の溶融燃料は依然として行方知れずのまま、崩壊熱を出し、放射能汚染水を生み出し続けています。1号の格納容器下部滞留水中にロボットを投入する予定でしたが、水中の堆積物が多すぎて視界不良になるため断念。2号では格納容器配管入口付近を除染しても100mSv/h以下へ下がらずロボット投入を断念しています(河北新報2016.1.29)。今年度中の格納容器内調査実施が危うい状態です。
放射能汚染水は依然として溜まり続け、増え続けています。2月下旬現在、建屋内に汚染水約8.3万トン、タンク内に約79万トンの処理水が溜まっています。ここには、セシウムとストロンチウム以外の放射能が大量に含まれる中間処理水=「Sr処理水」など約18万トンが含まれます。約61万トンの多核種除去設備ALPSでもトリチウムは除去できず、その処理水約61万トンにも約1千兆ベクレルものトリチウムが高濃度に含まれています。

放射能汚染水は減るどころか増えている

東京電力は、昨年9月にサブドレンの汲上げ開始、昨年10月に海側遮水壁の閉合、昨年11月に陸側凍土遮水壁の全凍結管建込完了と順調にいっているかのように主張しています。しかし、事態は逆に悪化しています。サブドレン開始で建屋侵入水は400トン/日レベルから半減しましたが、海側遮水壁を閉じた途端に、地下水位が海側で上がり、地下水の放射能汚染度が高まったため(原因不明)、汲上げた地下水を建屋へ移送せざるをえなくなり、建屋汚染水が400~800トン/日へ急増しています。溶融燃料冷却用の注入水約300トン/日を入れると、汚染水は700~1100トン/日に増えています。ところが、ALPS処理水を溜める溶接タンクの増設が間に合わないため、ALPS処理量を増やせず、増え続ける「Sr処理水」をフランジ型タンクに貯蔵しようとしています。フランジ型タンクは汚染水漏洩事故を起こしたため解体・撤去中でしたが、それをやめて再利用しようというのです。本来なら、「Sr処理水」のALPS処理を増やしてその処理水をフランジ型タンクへ貯蔵すべきところ、より危険な「Sr処理水」のフランジ型タンク貯蔵量を増やすというのです。東電には安全優先の発想が欠けているのです。
東電は陸側凍土遮水壁による凍結を始めようとしていますが、問題だらけです。第1に、建屋海側の凍結管は6ヵ所あるトレンチ上部で止まっており、トレンチの下は凍結できません。そのため、地下水が急流となってここから流れ出し、流速が増えて砂岩が押し流される恐れが出ています。第2に、地下水上流に当たる建屋山側の試験凍結では、地下水位が急激に低下するため建屋から滞留水が流出する恐れが明らかになっています。そのため、建屋海側から先行凍結して建屋山側を段階的に凍結する案が検討されています。建屋海側を先行凍結させたときに地下水の放射能汚染度が高まれば、サブドレン水を建屋へ移送しなけらばならず、建屋汚染水を減らすどころか、逆に増やすことになりかねません。

事故避難者約9.9万人、関連死2020人

フクシマ事故による避難者は2月23日現在約9.9万人(福島県内5.55万人、県外4.33万人)、その大半は仮設住宅や借上住宅で不安な毎日を送っています。帰還困難区域の2.4万人、居住制限区域の2.3万人はより長期の避難が避けられないでしょう。震災関連死は2020人に達し、直接死1604人をはるかに超え、悲しいことに今なお増え続けています。被災者の基本的人権が様々な形で侵害されています。
自主避難者への損害賠償を命じる判決が2月18日に全国初めて京都地裁で出されました。避難者を勇気づけるものです。国と東電の事故責任を厳しく問い、原子力被災者を救済し、健康手帳を交付させ将来の健康保障を勝ち取らねばなりません。

事故処理労働者が白血病で労災認定

事故収束作業で被曝した労働者は昨年末で4.62万人、集団被曝線量は585人Svです。事故発生から12月末の収束宣言までの1.96万人、240人Svと比べて、人数・被曝量共に約2.4倍に増えています。この中から、遂に、白血病にかかった労働者が現れ、昨年10月に労災認定を受けています。彼の累積被曝線量は19.8mSv(うち福島第一原発で15.7mSv)でした。政府は20mSv未満なら安全として避難者を汚染地に帰還させようとしていますが、とんでもないことです。公衆の被曝線量限度1mSv/年を下回るまで、帰還を強要すべきではありません。また、政府はこの4月から緊急時被曝限度を250mSvへ引上げ、再稼働した原発の重大事故に備えようとしています。フクシマを繰り返すことを前提としたこのような緊急時被曝限度引き上げと原発再稼働を許してはなりません。

東電を破産処理し、国の責任で事故処理と賠償を

東京電力は原油価格下落によって大もうけをする一方、賠償費をけちり、除染費支払いを滞納し、除染廃棄物処理を自治体と国に任せて知らんぷりを決め込み、まるで他人事のように事故処理作業を行い、労働者に被曝を強要し、危険手当等のピンハネを黙認しています。事故が収束していないのに、東電は柏崎刈羽原発の再稼働を狙い、福島第二原発の廃炉をしぶっています。国も、東電を事実上救済しながら、「うまく行くかどうかわからない工事だから国費を出せる」という理由で、通常の土木工事=東電救済策ではなく、陸側凍土遮水壁という危険な難工事を東電にやらせています。こんな東電と国の無責任体制では、もはや、事故を収束させることも、被災者への賠償を公平に行い、住民を被曝から守り、必要な除染を実施させることもできません。今からでも遅くありません。東京電力を破産処理し、金融機関を含めて事故の責任を取らせるべきです。原発を推進してきた国の責任を明らかにし、しがらみのない抜本的な事故処理と被災者救済を行うべきです。
原発を再稼働させながらフクシマ対策を行うことなどできません。欺瞞です。東電を破産処理しても賠償には全く影響しません。今でも、賠償・除染費はその全額が9兆円の交付国債から出されており、電力消費者が電気料金で返済し続けているのですから。

高浜3・4号の再稼働を中止し、1・2号を廃炉に

関西電力は、今年に入り、高浜3・4号の再稼働を進めてきました。その矢先の2月20日、高浜4号で汚染水が漏れ、作業が中断しました。関電は、弁のボルト締め付けが一様でなく一部で弱かったのが原因だとしていますが、これに限らず、長期停止後の原発には思わぬ事故がつきものです。ましてや、M6.5の伏在断層が高浜原発直下で動けば、1,340ガルの地震動が襲うことになり、炉心溶融事故が避けられません。関電は、この問題をはじめ私たちの公開質問状に全く回答せず、逃げ回っています。
関西電力は「40年廃炉」の原則に反して、高浜1・2号と美浜3号の再稼働を目指しています。原子力規制委員会は当初、難燃ケーブルへの全量取替を求めていましたが、1・2号全長約1300kmの6割を取替えるだけで、「施工が困難な4割はケーブルと収納トレーをまとめて防火シートで覆う」ことを容認したのです。電力は余っており、高浜1・2号の40年廃炉原則を曲げる必要性は何もなく、肝心の「特例措置が必要な理由」は不明なままです。これまでに関電が注ぎ込んだ対策費は5,279億円(高浜1~4号3,881億円、大飯3・4号108億円、美浜3号1,290億円)、当初の11基2,850億円の2倍近くに膨れ上がっています。万が一廃炉になっても、廃炉後に電気料金から10年間で回収できる会計制度ができたからです。この制度は廃炉を促すために作られたはずですが、実際には電力の無責任な原発延命投資を助長しているのです。このような無責任な延命策を許さず、高浜1・2号と美浜3号を廃炉に追い込みましょう。

美浜1・2号敦賀1号の廃炉計画に際しての声明

関電と日本原電は2月12日、美浜1・2号と敦賀1号の廃炉計画を原子力規制委員会に申請し、地元へ説明しました。解体・撤去による廃止措置は深刻な労働者被爆と行く先のない膨大な量の放射性廃棄物を生み出します。私たちは解体・撤去ではなく、長期密閉管理を軸とした廃止措置に転換するよう求めます。詳しくは、2月18日付けで声明をまとめましたので、そちら(4~19頁)をご覧下さい。
原発廃炉で、行き先のない使用済核燃料の問題が再浮上します。原発を再稼働させる限り、使用済核燃料はさらに生み出されます。次世代に負の遺産を増やし続けることはもはや許されません。現世代にできるのは直ちにこれを止めることです。
関電は11月20日、「2020年ごろまでに使用済核燃料中間貯蔵施設の立地点を決め、2030年ごろの操業を目指す」と発表しましたが、これは廃炉とは無関係で、使用済核燃料をピットから移動させなければ、新燃料との交換ができず、再稼働させた原発の運転を続けられないからです。断じて許してはなりません。

フクシマを繰り返さないため、3月~4月の連続行動で、原発再稼働阻止の闘いを強めよう

私たちはフクシマ事故5年の3月11日、「福島を忘れない関電本店前抗議スタンデイング」の呼びかけに応え、参加します。3月13日「さよなら原発関西アクション」(大阪市中央公会堂)・「御堂筋パレード」に参加し、全国の仲間と連帯して闘います。
4月3日には、チュルノブイリ・ヒバクシャ救援関西などと一緒に「チェルノブイリ30年・フクシマ5年国際シンポジウム」を大阪で開きます。チェルノブイリやフクシマを繰り返さないため、現地の声を聞くことが重要です。私たちは、「フクシマ事故を二度と招いてはならない!豊かな国土とそこに根を下ろした生活を奪うな!子どもたちの未来を守ろう!再稼働阻止まで最後まで闘う!」を合い言葉に闘います。憲法違反の「戦争法」と「原発再稼働」に反対する運動を結びつけ、安倍政権をさらに追い込んでいきましょう。

美浜1・2号と敦賀1号の廃止措置計画提出に際しての声明

2016年2月18日
美浜1・2号と敦賀1号の廃止措置計画提出に際しての声明

解体・撤去・放射性廃棄物埋設処分ではなく、長期密閉管理による廃止措置へ転換せよ!
使用済核燃料は再処理せず、超長期に隔離管理し、原発再稼働を中止して、これ以上生み出すな!

若狭連帯行動ネットワーク

美浜1・2号と敦賀1号の廃止措置計画が原子力規制委員会へ提出されました。そこでは、原子炉の解体・撤去と放射性廃棄物の埋設処分・再利用が計画されています。
私たちは、原子炉解体が深刻な労働者被曝をもたらし、廃棄物埋設処分・再利用が新たな放射能汚染をもたらすことを危惧し、また、埋設処分場も見つかり得ないことから、原子炉を解体せず長期間密閉管理することを軸にした廃止措置計画へ転換するよう求めます。
また、使用済核燃料は再処理が計画され、再処理までの中間貯蔵施設の立地も画策されていますが、再処理は燃料棒に内包されている厖大な放射能をガスや液体など拡散しやすい形態で解放し処理するため、深刻な日常的放射能汚染と壊滅的な放射能災害をもたらす危険があります。
さらに、原発再稼働で使用済核燃料を生み出し続ける現状では、使用済核燃料の中間貯蔵施設立地点はもとより高レベル放射性廃棄物の最終処分場も見つかり得ないため、使用済核燃料の超長期の隔離管理を求めます。
このような、危険な使用済核燃料をこれ以上生み出さないことが先決であり、原発の再稼働を即刻中止することを求めます。
使用済核燃料の中間貯蔵施設は、原発再稼働で出てくる使用済核燃料の搬出先となり、原発再稼働を促進するものに他ならないため、「暫定保管」を含めて、その立地に反対します。
廃止措置に伴う使用済核燃料は再処理せず、崩壊熱の高い数十年間は原発サイト内でプール貯蔵と乾式貯蔵で十分な安全性を確保して隔離管理し続け、日本全体で脱原発に転換した後に国民的合意の下、どこで、どのように隔離管理し続けるかを決定するよう求めます。

全文はこちら

4月3日「チェルノブイリ30年・フクシマ5年・国際シンポジウム」への賛同と参加のお願い

今年は、チェルノブイリ原発事故から30年、フクシマ(福島第一)原発事故から5年の節目の年にあたります。原発再稼働に突っ走る安倍政権の動きを止めるべく、原発事故による放射能災害の実態を直視することの重要さが改めて増しています。
若狭ネットは、チェルノブイリ・ヒバクシャ救援関西やヒバク反対キャンペーンなどとともに、実行委員会を作り、4月3日に下記の国際シンポジウムを開きます。
国際シンポジウムへの皆さんの賛同(団体・個人)と参加をよろしくお願いいたします。

チェルノブイリ30年・フクシマ5年・国際シンポジウム
チェルノブイリ・フクシマを繰り返すな
事故被害者の補償と人権の確立に向けて
フクシマを核時代の終わりの始まりに
国際シンポジウム開催へのご協力とご参加をお願いします。

チェルノブイリ30年・フクシマ5年・国際シンポジウム

(pdf版はこちらからダウンロードしてください)

 日時:2016年4月3日(日)午前10時~午後4時30分  
 場所:大阪府教育会館(たかつガーデン)8Fたかつ(東中)
 近鉄上本町駅から徒歩3分(TEL 06-6768-3911)

プログラム
I部 チェルノブイリとフクシマを結んで:午前10時~
<基調報告>
シンポジウム実行委員会 振津かつみ

<チェルノブイリからの報告>
ジャンナ・フィロメンコ さん 「移住者の会」代表(ペラルーシ)
パーベル・ブドビチェンコ さん「ラディミチ~チェルノブイリの子どもたちのために」元代表(ロシア)

 (昼食休憩:午後1時半再開)

<フクシマからの報告>
 馬場 有 さん 福島県浪江町町長
 秋葉 信夫 さん 「フクシマ原発労働者相談センター」事務局長(いわき)

<討論(シンポジウム形式)>

II部 チェルノブイリ・フクシマを繰り返させないために:午後3時半~
<特別報告>
広島、長崎、福井から

<討論>
<シンポジウム・アピール提案、討論、採択>

主催:「チェルノブイリ30年・フクシマ5年—国際シンポジウム実行委員会」
[実行委員会構成団体:チェルノブイリ・ヒバクシャ救援関西/ヒバク反対キャンペーン/ 若狭連帯行動ネットワーク/原発の危険性を考える宝塚の会/地球救出アクション97/科学技術問題研究会]

賛同カンパにご協力下さい!

賛同カンパ:個人一口1,000円、団体一口2,000円
(複数口大歓迎)
カンパ振込先:郵便振替:00910−2—32752
口座名:チェルノブイリ・ヒバクシャ救援関西
「チェルノブイリ30年・フクシマ5年・国際シンポ、賛同カンパ」と明記して下さい。

連絡先:「チェルノブイリ・ヒバクシャ救援関西」事務局
〒591-8021 堺市北区新金岡町1-3-15-102 猪又方
TEL:072-253-4644, E-mail:cherno-kansai@titan.ocn.ne.jp

<呼びかけ>
まもなくチェルノブイリ事故30年・フクシマ事故5年を迎えます。チェルノブイリとフクシマの原発重大事故は、国境を越える広範な地域を放射能で汚染し、何百万人もの市民と労働者に被ばくを強いています。事故の被害は長期にわたり、人々の命や健康のみならず、生活全体、さらに社会・経済・文化等にも及び、生命権・健康権、生活権をはじめ様々な「人権」が侵害されています。

フクシマ事故は世界に大きな衝撃を与えました。核と人類は共存できないことをあらためてしめしました。事故後、ドイツをはじめ多くの国々は脱原発と再生可能エネルギーの推進へと政策を転換しました。しかし、日本政府と電力・原子力産業は、脱原発に向かう世界の流れに逆行し、重大事故が起こることを前提に全国の原発再稼働を強行し、また原発輸出を進めようとしています。

原発重大事故を、これ以上繰り返させてはなりません!日本の原発再稼働をやめさせ、脱原発、再生可能エネルギーへの転換を政府に要求します。そして、東電はもちろんのこと、国策として原発を推進し重大事故を招いた国の責任を厳しく問い、事故被害者への補償と人権の回復・確立に向けて進まなければなりません。さらに、核のない未来を目指し行動を強めなければなりません。

このような思いを同じくする皆さんとともに、私たちは「チェルノブイリ30年、フクシマ5年」の節目に、「国際シンポジウム」を大阪で開催します。

「国際シンポジウム」では、チェルノブイリとフクシマの被災地からゲストを迎え、チェルノブイリ事故30年とフクシマ事故5年の被害者の体験に学び、「重大事故をこれ以上繰り返させてはならない」という思いをより多くの人々に伝えていきたいと思います。さらに、ふたつの事故とその被害の普遍性と、歴史的・社会的背景による特殊性を理解し被害者の補償と人権の確立・回復をめざす運動の前進に繋いでいきたいと考えます。また、ふたつの原発重大事故の被害者どうしが出会い、交流と連帯を深めるきっかけにしたいと思います。

「国際シンポジウム」では、原発重大事故をこれ以上繰り返させないために、脱原発と再生可能エネルギーへの転換、ヒバク反対、被害者支援等に具体的に取り組んでいる、各地の皆さんからの報告やアピールも受け、連帯を深め、運動を強め拡げていきたいと思います。そして「フクシマを核時代の終わりの始まりに」することをめざし、さらに進んでいきましょう。

私たちは「3.11」以降、「フクシマを核時代の終わりの始まりに」を合い言葉に、多くの皆さんとともに、脱原発・再稼働反対、住民や労働者への被ばくの強要反対、フクシマ原発事故被害者との連帯・支援に、全力で取り組んできました。同時に、「脱原発から非核未来を探る」「核被害者の人権の確立・回復をめざす」、「フクシマとヒロシマ・ナガサキを結び、非核・放射線教育、平和・人権教育を進める」等々をテーマに、シンポジウムや学習会にも取り組んできました。これまでの運動の経験とネットワークをこれからの運動に活かすためです。ヒロシマ・ナガサキ70年から、チェルノブイリ30年・フクシマ5年に当り、このような活動と議論をさらに深め、これからの運動の力にしていきたいと思います。

「国際シンポジウム」開催に、ぜひご協力、ご参加下さい!

ジャンナ・フィロメンコさんのプロフィール

  image4 「移住者の会」代表(ペラルーシ)
チェルノブイリ原発から北西40kmのベラルーシ共和国ゴメリ州ナローブリア出身。事故当時、夫と幼い二人の息子と暮らしていた。ナローブリアは高汚染地(福島の「避難区域」と同レベル)だったが、ソ連政府は一般市民も「生涯350ミリシーベルトまでは許容される」(注)との施策をとり、人々は住み続けた。住民運動の結果、「チェルノブイリ法」(1991年)が制定され、同地区は「移住対象地域」となり、首都ミンスクの集合住宅の権利を得て家族で移住。慣れない都会で「ゼロからのスタート」だった。同じような境遇の人々が次第に連絡を取り合い「移住者の会」を結成。
「事故15周年」(2001年)に「救援関西」の招聘で来日。欧州各地でも体験を語り「核はコントロールできず、使ってはならない。誤りを繰り返さないで」と訴えている。

[注:国際放射線防護委員会(ICRP)の当時の一般公衆の被ばく限度が年5ミリシーベルトで、その70年分で「生涯350ミリシーベルト」とされた。]

パーベル・ブドビチェンコ さんのプロフィール

image1「ラディミチ~チェルノブイリの子どもたちのために」元代表(ロシア)
チェルノブイリ原発から北東170km離れたロシア共和国の高汚染地、ブリヤンスク州ノボツィプコフ市在住。人口約4万人の同市は、「チェルノブイリ法」(1991年)制定後も、財政的理由などから移住政策が進まず、住民の多くは汚染地に住み続ける選択を強いられた。1987年、当時、教鞭を取っていた学校の生徒たちと共に、高齢者や障がい者の支援ボランティア活動を始めた。それが基になり、NGO「ラディミチ—チェルノブイリの子どもたちのために」を創設。「ラディミチ」は、子どもたちの保養キャンプ、甲状腺検診、住民に放射線リスクを知らせる「チェルノブイリ情報センター」など、10以上のプログラムに取り組んでいる。
「事故25周年」(2011年4月)に原水禁の招聘で来日。「人類は、チェルノブィリとフクシマの共通の経験から出発し、新しい目で世界を見直さなければならない」と、各地で訴えた。

馬場 有 さんのプロフィール

image2福島県浪江町町長
浪江町議、町議会議長、福島県議を経て、2007年12月より現職。「協働のまちづくり」の理念の下、町民が主体的に参画するまちづくりを本格的にスタートさせようとした矢先に東日本大震災が発生。直後から対策本部を設置し、その後町役場津島支所、二本松市役所東和支所、福島県男女共生センターと、次々と事務所の移動を強いられる中、一貫して事務スペースで職員と寝食をともにし、捜索や避難の対応にあたる。現在もなお続く避難指示の中、「どこに住んでいても浪江町民」を実現すべく、避難生活支援やふるさとの再生のため陣頭指揮にあたっている。また「未曾有の原発災害の被害者となった浪江だから訴えることができる『原発エネルギーに依存しない社会』を体現する町づくりを先陣切って世界に示したい」とメッセージを発信。
浪江町は現在、二本松市内の仮設庁舎に大部分の機能を移転中だが、2013年4月より浪江町本庁舎での一部業務を再開。町内の道路・上下水道などインフラ復旧、また復興公営住宅や医療施設、教育機関などの整備を進め、帰町に備えている。また、町民の健康診断と甲状腺検診、内部被ばく検査を毎年実施し、「放射線健康管理手帳」を全町民に交付(2012年)。「東京電力福島第一原発事故の賠償・責任の当事者である国に対し、原発事故被災者の医療費の恒久的な無料化」を要求。

秋葉 信夫 さんのプロフィール

image3「フクシマ原発労働者相談センター」事務局長(いわき)
フクシマ原発事故は、未だ収束していない。30~40年とも言われる廃炉作業に携わる労働者は、80万人を動員したチェルノブイリ事故を遥かに凌ぐと言われ、将来的な労働力不足、過酷な労働条件と被ばく労働による健康被害が懸念されている。雇用形態、労働条件、被ばくと健康管理など、様々な問題が生じているが、収束・廃炉・除染作業に従事する労働者は、解雇や不利益を恐れてどこにも相談できずに悶々としている。そのような労働者に寄り添う「かけこみ寺」をつくろうと、2015年2月に、いわき市で「フクシマ原発事故労働者相談センター」が設立された。センターでは、相談事業、企業、行政・国への要請や交渉などに取り組むと同時に、福島第二第原発廃炉を求め、脱原発を目指している。
秋葉さんは、元自治労いわき市職労委員長。センターの事務局長を勤め、労働者からの相談に対応している。

若狭ネットニュース第158号を発行しました

第158号(2015/12/24)(一括ダウンロード2.45Mb
巻頭言-高浜3・4号運転差止命令撤回に厳重抗議!原発再稼働阻止と使用済核燃料貯蔵施設立地反対を結合して闘おう!もんじゅ廃炉!原子力政府予算大幅削減!
(1)原子力政府予算を大幅削減せよ!電源三法廃止!「もんじゅ」廃炉!日本原子力研究開発機構を解体せよ!
(2)高レベル放射性廃棄物の地層処分反対!「総量管理」を!原発再稼働をやめ、これ以上使用済核燃料を生み出すな!
(3)関西電力の主張を丸呑みし、誤認した「高浜3・4号運転差止命令撤回」決定 大阪府立大学名誉教授長沢啓行

関西電力本社へ「10・26反原子力デーに際しての申し入れ」を提出

10・26反原子力デーの一環として、私たちは10月23日(金)午後4時から関西電力本社へ申し入れ行動を行いました。市民側参加者は14名で、関西電力広報部は1名が出てきましたが、一方的に「5名で5分以内」との条件を付け、警備員3名が少し離れて警戒する中、ロビーで私たちの申し入れを受け取りました。前回までは、「広報部ではなく庶務から1名が出てきて対応する」という異常事態でしたが、今回は広報部が出てこざるを得なくなったのでしょう。しかし、「5名で5分以内」の一方的な条件を押しつけて、部屋を取らずにロビーで申し入れを受け取り、回答もしないという、公益事業を担う電力会社とは到底思えない異常な対応でした。申し入れは、若狭ネットに続き、チェルノブイリ救援関西とヒバク反対キャンペーンが行いました。

2015年10月23日
関西電力株式会社 取締役社長 八木 誠様

10・26反原子力デーに際しての申し入れ(pdfはこちら

若狭連帯行動ネットワーク

貴社は、電気料金値上げに関する私たちとの話し合いを8ヶ月以上拒み続けてきました。 しかし、貴社の「関西電力グループレポート2015」(CSR行動原則「企業の社会的責任」)を見れば、貴社の社会的責任を高々に謳っています。言っていることと、実際にやっていることが明らかに矛盾しています。
私たちは2015年2月12日に賛同39団体500個人で「関西電力の電気料金値上げと原発再稼働に関する公開質問状」を提出しました。賛同は52団体、5,265個人に増えています。社会的責任を謳うのであるならば、面談も回答も8か月以上拒否したままであることを謝罪し、公開質問状に改めて真摯に回答すべきです。
フクシマ事故以降、貴社の経営は、原発依存の経営を頑強に続けたため、4年連続赤字になりました。私たちが警鐘してきた通りになったのです。にもかかわらず、赤字のツケを電力消費者に転嫁するのは間違いです。原発に頼った経営失敗であり貴職はまずその責任をとるべきではないでしょうか。
「原発をやめれば、年間3600億円の原発の維持管理費が浮いて電気料金を下げられる」という私たちの主張の正しさは、美浜1・2号と敦賀1号の廃炉でコストを実際に削減できたという事実で証明されました。「廃炉に伴うコスト削減額を消費者に還元する」ことを条件として電気料金値上げが承認され、貴社も「精査し消費者に還元する」と約束していたにもかかわらず、いまだにコスト削減額を明らかにせず、還元もしていません。共同通信によれば、2014年度には「電力9社が、稼働している原発がなかったのに、原発の維持、管理のため計約1兆4千億円を使っていた」と報じられています。金食い虫の原発を廃炉にすれば、それに応じて電気料金を値下げできるのです。
原発再稼働は「2030年に総発電電力量の22~20%の原発比率達成」を掲げる政府のエネルギー計画の一環ですが、これは、老朽原発の40年超運転を増やし、オンライン検査で定期検査期間を短縮させ、原発の長期連続運転で平均設備利用率を90%以上へ引き上げる政策と一体のものです。経済産業省は、米国でスリーマイル島原発炉心溶融事故の後、米原子力規制委員会NRCが規制緩和をして原発の平均設備利用率を90%以上へ引き上げを日本でも導入しようと目論んでいます。フクシマ事故を顧みない、このような無謀な原発再稼働と強硬運転は断じて容認できません。
原発を再稼働すれば、使用済核燃料が生み出されます。使用済核燃料中間貯蔵施設は、問題を先送りするだけであり、根本解決にはなりません。これ以上の使用済核燃料を生み出さないことが最も重要であり、使用済核燃料中間貯蔵施設計画そのものも、撤回すべきです。
昨年5月21日の大飯3・4号運転差止判決に続き、福井地裁は今年4月14日、高浜3・4号の運転差止仮処分命令を出しました。貴社は異議申立をしていますが、企業の社会的責任を謳うのであれば、仮処分命令に真摯に従い、原発再稼働を断念すべきです。
貴社は、省エネと再生可能エネルギー中心の未来型電力会社に転換すべきです。原発の再稼働を断念し、全原発を即刻廃炉にし、来年度からの電力小売り全面自由化に備えるべきです。発送電分離を早め、送配電網の全国的統合・公的管理化に協力し送配電網整備・再生可能エネルギーの優先拡大を図るべきです。
10・26反原子力デーに際して、以下の項目を改めて申入れます。貴社が本来あるべき社会的責任を果たすため、真摯に回答されるよう強く求めます。
1.美浜1・2号だけでなく、2016年7月に40年超運転と見なされる高浜1・2号、2016年12月に40年運転の美浜3号、35年超運転で老朽化した大飯1・2号を即刻廃炉にしてください。
2.福井地裁による昨年5月の大飯3・4号運転差止判決および今年4月の高浜3・4号の運転差止仮処分命令に従い、高浜3・4号炉と大飯3・4号炉の再稼働を断念し、再稼働申請を撤回して下さい。
3.美浜1・2号と敦賀1号の廃炉に伴うコスト削減額を明らかにし、電気料金を値下げして下さい。
4.使用済核燃料中間貯蔵施設の立地計画を撤回して下さい。プルサーマルなど再処理・プルトニウム利用計画から全面的に撤退して下さい。
5.発送電分離と送電網の全国的統合・公的管理化に協力し、省エネと再生可能エネルギー中心の未来型電力会社に転換して下さい。
以上

若狭ネットニュース第157号を発行しました

第157号(2015/10/16)一括ダウンロード14.5Mb
巻頭言-憲法違反の原発再稼働反対!戦争法撤回!これからが正念場、徹底して闘おう
(1)東電救済のための国費投入を許すな!東電を解体し、抜本的な事故対策を!原発再稼働と使用済核燃料貯蔵能力拡大のための自治体買収拡充を許すな!もんじゅ廃炉!RETF解体!プルトニウム利用政策維持予算を全面削減せよ!
(2)高浜・大飯仮処分審尋で裁判官に地震動過小評価を説得して 大阪府立大学名誉教授 長沢啓行

労働者の緊急時被ばく限度引き上げ反対!7月30日放射線審議会答申に対する緊急声明

2015年7月31日

7月30日放射線審議会答申に対する緊急声明(pdfはこちら)

双葉地方原発反対同盟、フクシマ原発労働者相談センター、原水爆禁止日本国民会議、全国被爆2世団体連絡協議会、原子力資料情報室、川内原発建設反対連絡協議会、島根原発増設反対運動、原発いらん!山口ネットワーク、原発さよなら四国ネットワーク、原発はごめんだヒロシマ市民の会、反原子力茨城共同行動、若狭連帯行動ネットワーク、I女性会議、原子力行政を問い直す宗教者の会、チェルノブイリ・ヒバクシャ救援関西、ヒバク反対キャンペーン

政府は、「国策として原発を推進し福島原発事故を招いた責任」を省みず、重大事故が起きることを前提に原発の再稼動を進めようとしています。川内原発等の再稼働準備の一環として、原子力規制委員会・原子力規制庁、厚生労働省、人事院は、原発重大事故発生時の緊急時作業被ばく限度を現行の100ミリシーベルト(mSv)から250mSvに引き上げる法令改定作業を進めています。
諮問を受けた放射線審議会は7月30日、「この法令改定は妥当である」との答申を行いました。これは、原発再稼働を優先させ、憲法に保障された労働者の人権、労働者保護の法体系、「放射線障害防止の技術的基準に関する法律」第3条のすべてを無視・蹂躙するものであり、絶対に認めることができません。
被爆70周年の今日、被爆者と被爆地の体験を共有し、将来世代に継承することの重要性が国際的にも認められつつあります。答申は広島・長崎の「被爆の実相」を無視するものです。政府の機関である放射線審議会が被爆の実相を無視することは、被ばくを繰り返してはならないとの被爆者の思いを踏みにじるだけではなく、この国際的な流れにも反し、決して許されない事です。
私たちは、以下の5点から今回の答申を認めることはできません。放射線審議会はただちに答申を撤回すべきです。
私たちは、現在取り組んでいる「緊急時作業被ばく限度引き上げ中止と原発再稼働中止を求める全国署名」をさらに全国に拡大し、法令改定作業の中止を求めます。第2次集約までの署名4322筆は6月30日に提出しました。次の署名集約は、第3次8月末です。原発再稼働中止の闘いや「戦争法案」廃案の闘いと結合して署名運動を広げ、法令改定中止の声を政府に突きつけましょう。署名運動はその後も継続します(第4次10月末)。全国の皆様、ご協力よろしくお願いします。

署名呼びかけ(pdfはこちら) 署名用紙(pdfはこちら)

1.被爆の実相を無視し、「放射線障害防止の技術的基準に関する法律」第3条に反する
250mSvは広島原爆の爆心から1.7キロ付近での遮へい無し直接被ばくに相当します。このような大量の放射線被ばくは、急性障害を引き起こし、がん・白血病や晩発性の様々な疾病のリスクを増大させます。1.7㌔付近の被爆者には下痢、出血斑、脱毛等の急性症状が生じました。この被爆の実相から、250mSvへの引き上げが、緊急時作業従事者に障害を及ぼすおそれがあることは明らかです。
ところが、250mSvの被ばくが及ぼす健康影響について、厚生労働省は「ヒトに関する急性被ばくによる健康影響に関する文献からは、リンパ球数減少のしきい値は250 ミリグレイ程度から500~600 ミリグレイ程度の間にあると考えられるが、この間のデータ数が少ないため、しきい値を明確に決めることは難しい。このため、緊急作業中のリンパ球数の減少による免疫機能の低下を確実に予防するという観点から、東電福島第一原発事故時に、しきい値を確実に下回る250 mSvを緊急被ばく限度として採用したことは、保守的ではあるが妥当といえる。」(注1)としており、放射線審議会はこれを「妥当」と判断しました。
これは被爆の実相に反するばかりか、放射線被ばく事故等から得られている事実にも反します。厚生労働省自身も認めているとおり、精子数減少は100~150mSvで生じます。「イリジウム被ばく事故(1971年、千葉市)」では、250mSv以下でも、骨髄低形成、白血球、リンパ球の減少等の急性症状が造血系に生じたことが、被ばく者を収容し診察・治療・調査にあたった放射線医学総合研究所スタッフから学術論文として4回にわたって報告されています。(注2)こうした報告を全く無視して250mSvが「保守的」と断定することは不当です
放射線審議会が立脚する「放射線障害防止の技術的基準に関する法律」第3条では、「放射線障害の防止に関する技術的基準を策定するに当たっては、放射線を発生する物を取り扱う従業者及び一般国民の受ける放射線の線量をこれらの者に障害を及ぼすおそれのない線量以下とすることをもって、その基本方針としなければならない」とされています。
250mSvへの引き上げを「妥当」としたことは「放射線障害防止の技術的基準に関する法律」第3条を無視するもので不当です。

2.緊急時作業被ばく限度の250mSvへの引き上げは、労働者の人権を蹂躙し、労働者保護の労働安全衛生法の法体系を破壊し、憲法違反である。
原子力規制委員会・原子力規制庁は、「重大事故による破滅的状況の回避のために、労働者の健康リスクと周辺住民の生命・財産を守る利益を比較衡量する」と、被ばく限度の250mSvへの引き上げは正当化できるとしています。厚生労働省は当初、緊急時被ばく限度の250mSvへの引き上げは「労働者保護の観点からは逆行する」と認めていましたが、最終的には原子力規制委員会と同じ立場に立っています。放射線審議会もこれを妥当と判断しました。これは労働者の人権を蹂躙するものです。
急性・晩発性の放射線障害をもたらす「特例緊急被ばく限度」250mSvを導入することは労働者保護、労働災害防止の労働安全衛生法の法体系を破壊するもので、憲法(13条、25条、27条)、なかでも生命権について「国政の上で、最大の尊重」を要請した13条違反であり、決して許されません。

3.重大事故を前提とする原発の再稼働をしなければ、緊急時被ばく限度の引き上げの必要はない
国民の多数が反対しているにもかかわらず、政府は重大事故を前提とした原発の再稼働を行おうとしています。
平成26年7月30日の原子力規制委員会で、田中委員長は、緊急時作業の被ばく限度の引き上げ等の検討の提案に際し、「それ(現行の緊急時被ばく限度100mSv)を超えるような事故が起こる可能性を完全に否定することはできないというのが私どもの考え方です。」と述べています。
重大事故を前提とする原発の再稼働のために労働者の命と健康が犠牲に供されようとしているのです。
原発を再稼働しなければ、重大事故による破滅的な状況の回避の為に、労働者が250mSvも被ばくすることなど必要ありません。

4.原発優先で労働者の人権とすべての法体系を無視する「運用」=「法令上は限度とするが、参考レベルという考えも考慮した運用」は、250mSvをさらに超える被ばくを「容認」し、許されない
原子力規制委員会は250mSvについて、「法令上は限度とするが、参考レベルという考えも考慮して運用する」と表明し、審議会はこれを了承しました。「250mSvをさらに超えた被ばくをも容認する運用」など絶対に認められません。

5.生涯1000mSvの大量被ばく容認ではなく、被ばく労働以外の職場・生活を保障すべき
原子力規制委員会と厚生労働省から、緊急時被ばく限度引き上げに関連して、緊急時作業で大量被ばくした労働者に、さらに通常被ばくとの合計で生涯線量として1000mSvまで被ばくさせても良いとするなどの「事後の放射線管理」が示され、審議会は了承しました。
これは来年4月から、福島第一原発の緊急作業従事者に適用されます。緊急時作業で200mSvを超えた労働者さえも被ばく労働に従事させられます。また、福島原発事故の緊急作業で100mSvを超えた労働者は5年間「通常」の放射線業務従事を認められませんでした。しかし今後はそれも撤回され、重大事故発生による緊急時作業従事者には、続いて年5mSvの「通常」被ばくが容認されます。このように、「事後の放射線管理」は「5年で100mSv」の労働者の通常被ばく限度を事実上取り払うものです。
累積1000mSvもの高線量の被ばくは、ガン・白血病に限った場合でもそのリスクは、一般の人の2倍以上にも激増します。心臓・循環器系やその他の疾患による死亡のリスクも非常に高くなります。このように放射線被ばくの犠牲を強要する生涯1000mSvを基準とした「事後の放射線管理」は一切認めることができません。
このような、緊急時作業で大量被ばくした労働者へのさらなる大量被ばくの強要は、緊急作業従事者の基本的人権(憲法13条、25条)を侵害し、許せません。政府は、福島原発緊急時作業従事者に被ばく労働を強要するのではなく、被ばく労働以外の職場・生活の保障をすべきです。

(注1)厚生労働大臣「電離放射線障害防止規則の一部を改正する省令案及び関係告示に係る放射線障害の防止に関する技術的基準の改正等について(諮問)」,「技術的基準の説明」p.1(2015.7.17)および「東電福島第一原発作業員の長期健康管理等に関する検討会報告書」p.21(2015.5.1)
(注2)厚生労働省の報告書には引用されていません。厚生労働省は、引用しなかった理由を、私たちとの交渉(2015年6月9日)で「点線源からの被ばくで線量推定などの信頼性が低い」と説明しています。

以上

【参考1】7月23日の放射線審議会の配布資料等
【参考2】7月30日の放射線審議会の配布資料等
【参考3】原子力規制委員会記者会見録:平成27年7月29日

連絡先・署名集約先:
原子力資料情報室 東京都新宿区住吉町8-5曙橋コーポ2階B Tel:03-3357-3800
ヒバク反対キャンペーン 兵庫県姫路市安富町皆河1074 建部暹 Tel&Fax:0790-66-3084

若狭ネットニュース第156号を発行しました

第156号(2015/7/27)(一括ダウンロード1.6Mb
巻頭言-原発重大事故の発生を前提とした
川内1・2号の8月再稼働を許すな!緊急時被ばく限度の引き上げ反対!
安倍政権による「憲法違反の戦争法案・原発再稼働」を阻止しよう!
(1)「戦争法案」反対集会に参加し、「緊急時被ばく限度引き上げ・再稼働反対全国署名」をとりました 原発重大事故を前提とした再稼働は許せません!
若狭ネット久保きよ子
(2)40年超運転・老朽原発を増やし、設備利用率90%で酷使する「長期エネルギー需給見通し」=ベストミックスを撤回せよ!
太陽光と風力の「接続可能量」を撤回し、再生エネを40%に!
発送電分離を早め、送電網の公的管理を!

緊急時作業被ばく限度引き上げ中止と原発再稼働中止を求める全国署名
署名呼びかけpdfはこちら署名用紙pdfはこちら)

政府は、「国策として原発を推進し福島原発事故を招いた責任」を省みず、重大事故が起きることを
前提に原発の再稼動を進めようとしています。
川内原発1・2 号機の審査書(案)作成後の昨年7月30 日、田中俊一原子力規制委員長は突然、「現
在、緊急作業時の被ばく線量限度を100 ミリシーベルトとして規制を行っているが、それを超えるよ
うな事故が起こる可能性を完全に否定することはできない」と被ばく限度引き上げをはじめ緊急時作業
に関する「見直し・検討」を提案しました。厚生労働省は5 月15 日から、原子力規制委員会は5 月21
日から、「緊急時に被ばく限度を250 ミリシーベルトに引き上げるための法令改定案」のパブコメを開
始し、原発再稼働を見込んで事態は急展開しています。
原発重大事故が起きれば、通常作業とはけた違いの被ばくが強要されます。緊急時作業被ばく限度の
250 ミリシーベルトへの引き上げは労働者の安全と健康を一層危険にさらします。原発労働者は「重大
事故を前提とする原発再稼働・原発維持の犠牲」に供されようとしています。これは労働者の人権蹂躙
であり、労働安全衛生法の労働者保護の法体系を破壊するものです。原発を再稼働しなければ、「重大
事故による破滅的な状況の回避のために高線量被ばくが必要になる」ことなどありません。
厚生労働省の検討会報告書では、福島原発事故の緊急作業で大量被ばくしその後通常被ばく業務から
離れている労働者について、2016 年4 月から通常被ばく業務従事を認め、合計して生涯1000 ミリシー
ベルトを超えないよう被ばく管理するとしています。大量被ばくした労働者に更なる被ばくを強要する
のではなく、被ばく労働以外の職場・生活を保障すべきです。
現在、福島原発では毎日7000 人もの労働者が動員され、被ばくが増え続けています。作業の安全確
保、被ばく低減、健康管理・生活保障、雇用条件の監視・是正指導を行うべきです。
申し入れ事項
1.緊急時被ばく限度を引き上げないこと。関連する法令改定作業を中止すること。
2.緊急時被ばくと通常被ばくによる、生涯1000 ミリシーベルト容認を撤回すること。福島原発事故
の緊急時作業で大量被ばくした労働者に被ばく労働以外の職場・生活を保障すること。
3.福島原発被ばく労働者の作業の安全確保、被ばく低減、健康管理・生活保障、雇用条件監視・是正
指導を行うこと。
4.原発を再稼働しないこと。再稼働認可を撤回し、適合性審査を中止すること。

署名呼び掛け:双葉地方原発反対同盟、フクシマ原発労働者相談センター、原水爆禁止日本国民会議、全国被爆2世団体連絡協議会、原子力資料情報室、川内原発建設反対連絡協議会、島根原発増設反対運動、原発いらん!山口ネットワーク、原発さよなら四国ネットワーク、原発はごめんだヒロシマ市民の会、反原子力茨城共同行動、若狭連帯行動ネットワーク、I 女性会議、原子力行政を問い直す宗教者の会、チェルノブイリ・ヒバクシャ救援関西、ヒバク反対キャンペーン

<巻頭言>
原発重大事故の発生を前提とした
川内1・2号の8月再稼働を許すな!緊急時被ばく限度の引き上げ反対!
安倍政権による「憲法違反の戦争法案・原発再稼働」を阻止しよう!

安倍政権は、集団的自衛権行使のための戦争法案を衆議院で7月16日強行採決し、原発重大事故の発生を前提とした川内1・2号の再稼働を8月10日にも強行しようとしています。いずれも憲法違反の暴挙であり、安倍政権の暴走を許してはなりません。
戦争法案は、集団的自衛権による戦争行為を行うための法案であり、日本国憲法にある「政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し」「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」との前文に違反し、第九条の「国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」との条項に違反します。今年は、敗戦70年、被爆70年です。日本軍国主義による侵略戦争と植民地支配を深く反省し、原爆投下を招いた国家の責任を認め、二度と再び同じ過ちを繰り返さないための措置を講じるべきときです。にもかかわらず、新たな戦争への道を掃き清めるための戦争法案を強行採決することは断じて許せません。参議院審議を大衆行動で包囲し、廃案に追い込みましょう。
原発再稼働は、重大事故の発生を前提としており、人格権を万が一にも侵害する可能性があり、憲法違反です。福井地裁による2014年5月の大飯3・4号運転差止判決や2015年4月の高浜3・4号運転差止仮処分判決では、「人格権は憲法上の権利であり、我が国の法制下においてはこれを超える価値を他に見出すことはできない。」「これを侵害する具体的危険が万が一でもあれば原発の運転の差し止めが認められる」と明確に断言しています。国内の原発はすべて止まったままであり、節電が進み電力不足が生じることはなく、7月の世論調査でも国民の過半数が再稼働に反対しています。にもかかわらず、重大事故の発生を前提として原発を再稼働させることは、万が一にも人格権を侵害する可能性のある憲法違反行為です。原子力規制委員会は川内1・2号、高浜3・4号、伊方3号の再稼働を認可していますが、いつどこで起きても不思議でないM6.5の直下地震による1,340ガルの地震動には耐えられないことを認めながら、それを基準地震動に取り入れようとはしていません。憲法違反の川内1・2号再稼働を即刻中止すべきです。
安倍政権による暴走を許さず、憲法違反の戦争法案と原発再稼働を共に葬り去りましょう。これらはいずれも根は一つです。戦争法案反対の街頭行動は若者による新たなうねりをもたらしています。再稼働反対の闘いをこのうねりと結びつけ、安倍政権の暴挙を阻止する闘いとして拡大させましょう。

侵略戦争・原爆災害とフクシマ事故を反省せよ

広島・長崎の原爆被害者は、自らの辛い体験に基づいて、核の非人道性を世界に訴え、「過去の補償・現在の保障・未来の保証」を求め、原爆医療法(1957年)による被爆者健康手帳の交付を皮切りに被爆者の健康・生活保障を一歩一歩勝ち取って来ました。村山政権下で「被爆者援護法」(1995年)を勝ち取りましたが、被爆70年の今なお放射線障害をはじめ肉体的・精神的苦痛に苛まれて続けています。原爆症認定の壁は依然として高く、健康手帳保持者18.4万人(2015.3)中、認定・手当受給者は5%に満たないのが現状です。侵略戦争が招いた原爆投下であるにもかかわらず、日本政府は今なお国家補償に基づく被爆者援護をしていません。侵略戦争の責任と原爆災害を招いた責任を反省し、すべての被爆者を全面救済し、被爆国として核の非人道性を世界に訴え、核廃絶に向かって核軍縮を求める諸国の先頭に立つべきです。被爆70年の今が、その最後のチャンスかもしれません。集団的自衛権行使に踏み込むなどもってのほかであり、戦争法案を直ちに廃案にし、平和憲法に立ち返るべきです。
フクシマ事故被災者は、極度に放射能汚染された古里から避難を余儀なくされ、4年後の今なお11万人強の福島県民が県内外で仮の生活を強いられています。震災関連死は1,942人(2015.7)に上り、直接死1,604人を超え増え続けています。原爆症認定基準では「爆心から約3.5km以内(約1mSv以上の被ばく)でガン・白血病・副甲状腺機能亢進症が認定」されることになっていますが、フクシマでは「20mSv/年以下なら帰還すべき」という方針が「福島復興」の名の下に進められようとしています。政府の原子力災害対策本部は6月12日、帰還困難区域(50mSv/年以上)を除き、居住制限区域(20~50mSv/年)を含めて2017年3月までに避難指示を解除し、「帰還」と「支援打切」をセットで強行しようとしています。一層のヒバクを強要する「帰還」政策は撤回し、自主避難者を含めて被災者支援を拡充すべきです。
福島県による「県民健康調査」で子どもの甲状腺検査が進められ、すでに15人がガンまたは疑い有(うち5人が手術を受けがんと確定)と診断されています。さらに、1300人を超える子どもたちが、半年または1年後に保険診療による経過観察が必要と診断されています。これまで自費だった19歳以上の甲状腺ガン治療費は、運動の成果として国費でまかなわれるようになりましたが、健康手帳の交付など将来の健康保障は手つかずのままです。フクシマ事故をもたらした責任は東京電力とそれを支えた株主・金融資本にあり、原発を推進してきた政府にあります。その責任をとらせるため東電を破産処理し、国の責任で被災者の健康・生活保障を行うべきです。

労働者の緊急時被ばく限度引き上げを許すな

川内1・2号の運転再開は原発重大事故の発生を前提にしています。2014年7月に川内1・2号の審査書が確定(再稼働認可)した直後に労働者の緊急時被ばく限度を100mSvから250mSvへ引き上げる検討が開始されました。フクシマ事故を「教訓」に、重大事故発生現場へ突入させる被曝要員を事前に確保し、どこまで被曝させてもよいかを決めておこうというのです。何という「教訓」なのでしょう。本来ならフクシマ事故を繰り返さないため再稼働を認めないことが最大の教訓なのではないでしょうか。250mSvの放射線被曝は広島原爆の爆心から1.7kmの直爆線量であり、急性放射線障害が免れません。厚生労働省は「重篤な、または永久に続く急性放射線障害でなければよい」というとんでもない立場に立とうとしています。労働安全衛生法では「労働災害」を防ぐことを目的としており、「重篤でない労働災害は許される」という特例を設けるのは法律違反であり、憲法第二十五条に保障された「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」を侵害し、憲法違反です。このような特例を設けなければ成り立たない労働現場は認めないという立場を打ち出すべきです。
川内1・2号の再稼働と同様に、緊急時被ばく限度引き上げも切迫しています。この秋までに改定法令を公布し、来年4月施行が目論まれています。16団体の呼びかけで5月末から「緊急時作業被ばく限度引き上げ中止と原発再稼働中止を求める全国署名」を展開しており、6月30日には4,322筆の署名を提出し、111団体連名による再申し入れを行い、政府を追及しました。8月末には第3次集約を行い、署名をバックに緊急時被ばく線量の引き上げ・再稼働中止を迫りたいと思います。戦争法案廃案・原発再稼働中止の闘いと結合して、ご協力をお願いします。

原発再稼働を中止しベストミックスを撤回せよ

安倍政権は、長期エネルギー需給見通し=2030年のエネルギー・ベストミックスを確定させました。そこでは、電源構成比を「原発22~20%」「再生可能エネルギー22~24%」とし、「再生可能エネルギーの最大限の拡大」等により、原発については「可能な限り依存度を低減することを見込む」としています。
しかし、実際には震災前の原発44基(福島第一・第二原発10基を除き、廃炉5基を含む)と建設中3基が震災前30年の平均設備利用率で動くことを想定した原発容量の枠取りを行い、その上で太陽光・風力発電の「接続可能量」を設定し、これを超える太陽光等の接続は認めるが「無制限の出力制限」を課すというとんでもない法令が今年1月に施行されています
これでは、原発の「最大限の拡大」と再生可能エネルギーの「可能な限りの抑制」ではないでしょうか
しかも、「原発22~20%」は40年超運転の老朽原発をできるだけ増やし、これを中心に設備利用率を90%に引き上げて酷使するという、恐るべき原発強硬運転が想定されているのです。そのため、米原子力規制委員会NRCが1979年のスリーマイル島原発重大事故の後で実施し、当時50~60%に低迷していた設備利用率を90%以上へ引き上げた例にならい、日本でも安全目標を導入し確率論的リスク評価を適合性審査の中へ正式に取り込み、大胆な規制緩和を図ろうとしています。原子力規制委員会の「発足3年以内の見直し」を今年9月に控え、これを利用して規制委を内閣府へ移管させ、原子力規制行政への政権の影響力を強めようと画策しています。これでは、フクシマ事故再発の危険が一層高まります。
ベストミックスの危険な原発推進策を暴露し、川内1・2号、高浜3・4号、伊方3号と相次ぐ原発再稼働の動きを阻止し、ベストミックスを撤回させましょう。そのため、戦争法案廃案の闘いと原発再稼働阻止・緊急時被ばく限度引き上げ中止の闘いを結合して進め、安倍政権による憲法違反の暴走を食い止めましょう。

電力自由化に向けた原発優遇策の導入反対

来年(2016年)度から電力の小売りが自由化され、一般家庭でも自由に電力会社を選択できるようになります。しかし、再生可能エネルギーは「接続可能量」で抑制され、2020年の発送電分離までは送電網は電力会社に有利に運用されます。それでも、原発は電力自由化の下では生き残るのが困難なため、政府と電力会社は一体となって原発優遇策を導入してきました。原発廃炉時に計上すべき電力会社の特別損失を廃炉後に電気料金から回収できる廃炉会計制度がそれです。さらに、今年度内に、①再処理事業の認可法人化、②原子力損害賠償制度の有限責任化、③廃炉会計制度による電気料金の託送料金化、④「基準価格」による原発用「固定価格買取制度」の導入など、とんでもない原発優遇策が目白押しです。このような原発優遇策の導入には断固反対しましょう。再生可能エネルギーの拡充を図るには、「接続可能量」を全面撤回させ、発送電分離を早めさせ、送電網の全国統一の中立的な公的管理を実現させねばなりません。これらを原発再稼働反対、緊急時被ばく限度引き上げ中止の闘いと結合して求めていきましょう。