若狭ネット

福井と関西を結び脱原発をめざす市民ネットワーク

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ニュース

原子力規制委員会の「高経年化した発電用原子炉に関する安全規制の概要(案)」のパブコメに怒りの意見を出そう!(その2とその3を追加提出しました。)

原子力規制委員会は12月21日、第59回原子力規制委員会で、「高経年化した発電用原子炉に関する安全規制の概要(案)」を決定し、翌22日0時から2023年1月20日深夜までのパブコメを始めました。これは、岸田政権の「GX実現に向けた基本方針」に呼応するもので、原発の「40年で原則廃炉」と「例外中の例外としての20年延長」を定めた「40年ルール」が、2023年初めの通常国会で改変(=事実上の撤廃)されようとしています。理不尽な「大転換」を許してはなりません。
大晦日と正月をはさんで1ヶ月間ですので、意見提出がしにくい期間に敢えてぶつけたとしか思えません。この点での怒りも込めて、2023年1月20日深夜締切までに怒りの意見を提出しましょう。
以下は若狭ネット資料室長が本日提出した意見です。今後も追加提出する予定です。(その2とその3を追加提出しました。)
参考にしてください。

<原子力規制委パブコメへの意見例(その1)>

該当箇所 前文と1および2の項目

意見 原子力規制委員会が設置された経緯と原子力規制委員会設置法の原点に戻り、「40年で原則廃炉、延長は例外中の例外」であることを再確認すべきです。2020年7月29日の声明を撤回すべきです。

理由 「40年ルール(運転40年で原則廃炉、20年延長は例外中の例外)」は、そもそも、福島事故を教訓として、原発の再稼働に反対する圧倒的多数の国民世論をバックに、与野党の合意で、原子力規制委員会を三条委員会として行政から独立させ、原子力規制委員会設置法の附則の中に「核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(炉基法)」を取り込み、そこに導入されたルールです。つまり、「40年ルール」は、原子力規制委員会設置法によって規制委に委嘱された、規制委の出発点となる根本原則であり、規制委が国民からその遵守を委託されたのであって、2020年7月29日の声明で「発電用原子炉施設の利用をどのくらいの期間認めることとするかは、原子力の利用の在り方に関する政策判断にほかならず、原子力規制委員会が意見を述べるべき事柄ではない」としたのは、法成立の経緯を無視し、法解釈を誤った見解に過ぎず、原点に立ち返って、同見解を撤回し、現行の法規定を遵守すべきです。
パブコメ案の項目1および2は、30年以降は10年ごとの審査で延々と運転期間を延ばすことが前提になっていますが、これは「40年ルール」の改変であり、撤回すべきです。これまで、10年ごとの高経年化技術評価で審査してこなかった添付書類のデータを使って「10年後も技術基準に適合しているか」を審査し、データの測定方法も審査するとしても、「より厳格になる」とは言えません。山中委員長は特別点検は「40年目で実施する予定」だと言いますが、パブコメ案には明記されていません。「40 年目で行われている試験というのは、かなり特殊な、例えば圧力容器の胴回り 100%超音波試験をしなさいとか、あるいはコンクリートのコア抜きをして破壊強度等の試験をしなさいとか、非常に特殊なものが追加されています。むしろ50年に追加して、それぞれの炉で特徴のあるところを私は試験をしたほうがいい。特別点検と比べて劣るかどうかというのは、これはそれぞれ見解を持たれるところだと思うのですけど、私はそれぞれの炉に対して必要なところを50年目に対してプラスアルファで60年見るべきだ。」とも言っています。40年目の特別点検はむしろ強化し、廃炉を前提に、厳格に審査し、20年の延長限度も遵守すべきです。

<原子力規制委パブコメへの意見例(その2)>

該当箇所 1、2および6の項目

意見 「40年ルール(運転40年で原則廃炉、20年延長は例外中の例外)」を堅持し、40年の特別点検の抜本的強化を求めます。また、40年時点の特別点検がどのように改変されるのか、その具体的内容を明示した上でパブリックコメントをやり直すべきです。

理由 項目6では、「長期施設管理計画の認可の基準は、劣化評価が適確に実施されていること、発電用原子炉施設の劣化を管理するための措置が災害の防止上支障がないものであること及び計画の期間において生じる劣化を考慮しても技術基準に適合することのいずれにも適合していることとする。」としていますが、「災害の防止上支障がない」との基準は「高経年化技術評価」であり、「劣化を考慮しても技術基準に適合すること」との基準は「運転期間延長認可」です。ところが、その前提となる項目1と2に基づけば、30年時点での認可後、「運転開始後40年を超えて発電用原子炉を運転しようとするときは、10年を超えない期間における発電用原子炉施設の劣化を管理するための計画(長期施設管理計画(仮称))を策定し、原子力規制委員会の認可を受けなければならない」ことになり、10年先の「50年運転時点」までの技術基準適合性評価になります。これは、現在の運転40年までに20年先の「60年運転時点」までの技術基準適合性評価とは明らかに異なります。また、「実用発電用原子炉の運転期間延長認可申請に係る運用ガイド」に定められた「申請に至るまでの間の運転に伴い生じた原子炉その他の設備の劣化の状況の把握のための点検」(以下「特別点検」という。)が、項目6の「劣化評価」とも異なり、「特別点検」の中身が弱められるのではないかと危惧されます。「40年ルール(運転40年で原則廃炉、20年延長は例外中の例外)」は福島事故を踏まえた国民の意思を反映させた原則であり、これを堅持し、延長する場合には例外中の例外とするにふさわしい「40年時点での特別点検」の抜本的強化を求めます。
また、現在の案には、「核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律」第四十三条の三の三十二(運転の期間等)の変更に伴い、「実用発電用原子炉の設置、運転等に関する規則」第百十三条および第百十四条が変更され、さらには、「実用発電用原子炉の運転期間延長認可申請に係る運用ガイド」も変更されるにもかかわらず、それらには一切言及されていません。法律が変更されることに伴う40年時点での特別点検がどのように変えられるのかについて国民への説明が一切ないままに、このような法律の変更だけに留めたパブリックコメントを行うのは、重大な変更内容を隠蔽するに等しいのではないでしょうか。法律変更後に規則以下を検討するというのは、国民だましもいいところではないでしょうか。40年ルールをどのように変更しようとしているのかについて、明確にした上で、パブリックコメントをやり直すべきす。

<原子力規制委パブコメへの意見例(その3)>

該当箇所 1、2および11の項目

意見 1および2の認可はそれぞれ40年および50年を超えるまでに行われなければならないことを明記し、11の新制度施行日によっては1と2が骨抜きにされるため、新制度施工日を明記し、パブコメをやり直すべきです。

理由 原子力規制委員会記者会見録(2023.1.11)によれば、泊1号機と2号機は現在、運転33年と31年ですが、黒川総務課長は「30年を超えていますけれども、運転をするときまでに認可を受ければよい」とし、また、柏崎刈羽1号機と2号機は運転37年と32年ですが、黒川総務課長は「経済産業省が恐らく法改正をしまして、運転期間40年というところから止まっていた期間を除くという改正をされますので、40年でもう一切運転できないというくびきはなくなる」とも答えています。ところが、原子力規制委員会の運転期間は暦年によるのであって、休止期間も含むはずです。また、「今後の原子力政策の方向性と行動指針(案)」(2022.12.23原子力関係閣僚会議)でも、「延長を認める運転期間については、20年を目安とした上で、以下の事由による運転停止期間についてはカウントに含めないこととする」とし、「運転期間40年というところから止まっていた期間を除くという改正」ではありません。国民を混乱させるような記者会見での上記発言を撤回し、正確に説明し直すべきです。
1および2によれば、40年を超えて運転しようとする場合は、(1)30年を超えて運転するための「10年を超えない期間における長期施設管理計画」の認可を受けていなければならず、さらに、(2)40年を超えて運転するための「10年を超えない期間における長期施設管理計画」の認可を受けなければならず、これらが満たされない限り40年を超えては運転できないことになるはずです。たとえば、柏崎刈羽1号機が(1)の認可を受ける期限は2025年9月18日(運転開始40年後)であり、これを過ぎても(1)が認可されていなければ、40年を超えての運転はできないというのが、「高経年化した発電用原子炉に関する安全規制の概要(案)」の1および2の趣旨のはずです。ところが、黒川総務課長の発言によれば、(1)の認可を受けていなくても、40年を超えた段階でも申請があれば、(1)と(2)の認可を段階的に、または、同時に受けて、40年を超えての運転が可能であるかのように見えます。
さらに、同11では「新たな制度への円滑な移行を図るため、次のような準備行為その他所要の経過措置を設ける」とし、「新制度施行までの一定の期間中、あらかじめ長期施設管理計画の申請及び認可ができ」、「新制度の施行前に認可を受けたときは、新制度が施行された日に、新制度下での認可を受けたものとみな」し、「新制度の施行前に認可を受けていないときは、新制度が施行された日に、新制度下の申請とみなす」ともされています。これは、40年を超えていても「新制度施行までの一定の期間」内に(1)の認可を受ければ、(1)の条件は満たされたものとし、(2)の認可は50年を超えるまでに受ければよいということになります。つまり、「新制度施行」日を(1)の長期施設管理計画の策定と認可に必要な経過措置期間後に設定することで、1と2の規制が事実上効かないようにできることを意味しています。「新制度施行」日を明示した上で、その妥当性についてもパブリックコメントで問い直すべきです。

岸田政権の「GX実現に向けた基本方針」のパブコメに怒りの意見を出そう!

岸田政権は12月22日、第5回GX(グリーントランスフォーメーション)実行会議で「GX実現に向けた基本方針」を決定し、翌23日20時から2023年1月22日深夜までのパブコメを始めました。
原発の「40年で原則廃炉」と「例外中の例外としての20年延長」を定めた「40年ルール」が、2023年初めの通常国会で改変(=事実上の撤廃)されようとしています。理不尽な「大転換」を許してはなりません。
大晦日と正月をはさんで1ヶ月間ですので、意見提出がしにくい期間に敢えてぶつけたとしか思えません。この点での怒りも込めて、2023年1月22日深夜締切までに怒りの意見を提出しましょう。
以下は若狭ネット資料室長が本日提出した三つの意見です。参考にしてください。

<政府パブコメへの意見例(その1)>

該当箇所 7ページ18-21行

意見 「40年で原則廃炉」、「例外中の例外としての20年延長」を定めた「40年ルール」の改変方針を撤回し、「可能な限り原発依存度を低減する」現行のエネルギー基本計画に沿い、「可能な限り活用」する方針を撤回すべきです。

理由 「40年ルール(運転40年で原則廃炉、20年延長は例外中の例外)」は、そもそも、福島事故を教訓として、原発の再稼働に反対する圧倒的多数の国民世論をバックに、与野党の合意で、原子力規制委員会を三条委員会として行政から独立させ、原子力規制委員会設置法の附則の中に「核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(炉基法)」を取り込み、そこに導入されたルールです。つまり、「40年ルール」は、原子力規制委員会設置法によって規制委に委嘱された、規制委の出発点となる根本原則であり、本来、政府や経産省が口出ししたり、行政の都合に合わせて、一方的に、自由に変えられるものではありません。
「GX基本方針」では「既存の原子力発電所を可能な限り活用するため、原子力規制委員会による厳格な安全審査が行われることを前提に、運転期間に関する新たな仕組みを整備する。現行制度と同様に、運転期間は40年、延長を認める期間は20年との制限を設けた上で、一定の停止期間に限り、追加的な延長を認めることとする。」としていますが、これは原子力規制委員会設置法が導入された際の「法の精神」に反します。「運転期間は40年」という条文の趣旨は、40年で原則廃炉という趣旨であり、その延長は例外中の例外であって容認し難いというのが、福島事故を踏まえた国民の意思、それに従い決議した国会の意思であり、条文に込められた法の精神です。それを踏みにじる方針は撤回すべきです。
「GX基本方針」の「既存の原子力発電所を可能な限り活用する」は、その元になった「今後の原子力政策の方向性と実現に向けた行動指針(案)」では「(2)設備利用率の向上 エネルギー供給における『自己決定力』の確保や、グリーントランスフォーメーションにおける『牽引役』としての貢献に資するため、安全性確保を大前提に、運転サイクルの長期化、運転中保全の導入拡大及び定期検査の効率的な実施に取り組む。」(p.8)とされています。これは老朽炉を徹底的に駆使して設備利用率を80~90%へ引き上げ、脱炭素電源の「牽引役」にしようというもので、極めて危険です。現在の13ヶ月運転サイクル(次回定期点検までの連続運転期間)を15~16ヶ月へ伸ばし、18ヶ月さらには24ヶ月へ伸ばし、定期点検期間を2~3ヶ月ないし1年以上の現状から大幅に短縮させようというものです。かつて死傷者11名を出した2004年美浜3号配管破断事故は、このような定検短縮競争の結果であり、その二の舞になりかねません。「可能な限り活用」方針を撤回し「可能な限り低減」方針へ戻るべきです。

<政府パブコメへの意見例(その2)>

該当箇所 7ページ9-14行

意見 原発のリプレースや新・増設は、第六次エネルギー基本計画にも参議院選挙公約にもなく、「想定していない」との閣僚答弁だったにもかかわらず、「まずはリプレース、今後は新増設推進」へ「大転換」しており、撤回すべきです。

理由 2021年10月策定の第六次エネルギー基本計画には、「原子力については安全を最優先し、再生可能エネルギーの拡大を図る中で、可能な限り原発依存度を低減する。」とあり、原発のリプレースも新・増設も記載されていません。それから1年も経たないうちに、国民との対話もなく、2022年8月からたった4ヶ月間の、反対・慎重意見の委員が2名程度しかいない「有識者」会議で形式だけの検討をして、一方的に「大転換」しました。これは、エネルギー基本計画にも、参議院選挙公約にも、「想定していない」との一連の閣僚答弁にも違反し、国民の常識にも民主主義にも反します。即刻撤回すべきです。
「GX基本方針」には「将来にわたって持続的に原子力を活用するため、安全性の確保を大前提に、新たな安全メカニズムを組み込んだ次世代革新炉の開発・建設に取り組む。」とありますが、現在検討中の三菱重工の革新型軽水炉SRZ-1200は「次世代革新炉」とは名ばかりで、既存の第2世代PWRに第3世代APWRの設計を一部取り入れ、第3世代+のコアキャッチャーなどを取って付けただけです。高性能蓄圧タンクはECCSの追加に過ぎず、電源なしの自然循環で動く受動的炉心冷却装置ではありません。にもかかわらず、「次世代革新炉」を標榜するのは国民だましと言えます。しかも、基本設計から詳細設計にほぼ10年、2030年代初めまでかかるというのですから、その性能が実証されたものでないことは明白です。未だ設計すらできていない段階で、「今後10年を見据えた取組みの方針」(p.2)に入れるのは、博打を打つようなものです。
また、「地域の理解確保を大前提に、まずは廃止決定した炉の次世代革新炉への建て替え」、すなわち、リプレースを先行させ、新・増設についても「その他の開発・建設は、各地域における再稼働状況や理解確保等の進展等、今後の状況を踏まえて検討していく。」と、忍ばせています。新たに原発が建設されれば、今後40年以上、2060年代以降も危険な原発に依存する状態が続きます。それは、福島事故を顧みず、国民に重大事故のリスクを受忍させ、約2万トンに達する使用済燃料のさらなる積増しに伴うリスクを後世に押しつけ、1基1兆数千億円もの原発建設費の負担を電力消費者に強要することになります。このような原発依存はもうやめるべきです。

<政府パブコメへの意見例(その3)>

該当箇所 5ページ8行目-6ページ11行目

意見 再エネの優先接続・優先給電を実現するため、全国統一の公的送配電機関に電力会社の送配電網管理運営権を移譲させ、電力会社の電力市場支配力を削ぐべきです。長期脱炭素電源オークションのリプレース原発への適用を断念すべきです。

理由 「GX基本方針」にある、再エネを「主力電源として最優先の原則で最大限導入拡大に取り組」むためには、欧米で普遍的に行われている「再エネの優先接続・優先給電」が欠かせません。それを阻害しているのは、電源の8割を独占し、送配電網を独占し、電力市場を支配している電力会社(旧一般電気事業者)です。2020年末からの価格高騰は電力市場支配力行使(自社顧客優先の燃料調達と売り入札量抑制)の結果であり、今日の価格高騰はウクライナ危機以前からの高騰の延長に過ぎません。相対取引をする場合でも、全電源の取引を電力市場で行わせるべきであり、発販分離により、社内取引情報が電力市場で透明化させるべきです。
送配電網は電力会社の市場支配力の源泉となっているばかりか、経常利益の大半はここから出ています。「送配電網を手放せば、原発を建設できない」と、かつての電力会社社長は臆面もなく主張していました。今の電力広域的運営推進機関は電力会社に支配された機関であり、欧州のように、これに代わる全国統一の公的な送配電網管理機関へ管理運営権を移譲させ、基幹送電網の全国規模での整備と投資回収を担わせ、再エネ普及を阻害しかねない2024年度からの発電側課金(発電側基本料金)を断念すべきです。
「GX基本方針」では、その元になった「今後の原子力政策の方向性と実現に向けた行動指針(案)」で示していた「長期脱炭素電源オークション」をリプレース原発へ適用する方針を記載せず、隠していますが、このような姑息なことはやめ、断念すべきです。

若狭ネット第191号を発行:岸田政権の「GX基本方針」と原子力規制委の「劣化規制案」反対!2023年1月22、20日締切のパブコメ意見で国民の怒りを示そう!ALPS処理水海洋放出をやめさせ、陸上保管へ転換させよう!使用済燃料問題を追及し、美浜・大飯・高浜原発停止を勝ちとろう!

若狭ネット第191号を発行しました。

(誤植修正:p.15左↓4行目(誤)「22兆Bq/L」→(正)「22万Bq/L」)

第191号(2022/12/27)(一括ダウンロード8.0M
巻頭言–岸田政権の「GX基本方針」と原子力規制委の「劣化規制案」反対!2023年1月22、20日締切のパブコメ意見で国民の怒りを示そう!
ALPS処理水海洋放出をやめさせ、陸上保管へ転換させよう!
使用済燃料問題を追及し、美浜・大飯・高浜原発停止を勝ちとろう!
1.「40年で原則廃炉」ルールの改変、「可能な限り低減」から「可能な限り活用」への転換を許すな!政府と原子力規制委のパブコメに意見を出そう!
2.若狭湾沿岸に、すでに4,280トンの核のゴミ=使用済み燃料 —「これでよいのか」、「これを増やし続けてよいのか」を問いたい 越前市 山崎隆敏
3.関西電力は、美浜1・2号使用済燃料貯蔵プールを美浜3号用に使い、管理容量を大きく設定し、燃料取替可能回数を大きく見せかけている!
4.ALPS処理水の海洋放出は「30~40年後の廃止措置終了」後も続く・・・「汚染水排出ゼロ」は早期に可能!タンク保管継続へ転換を!
5.福島事故での炉心溶融・落下状況にコアキャッチャーは対応できるか?

<「福島原発事故被害から健康と暮らしを守る会」2022年10月1日に発足>

「医療費等減免措置の段階的廃止」の撤回・措置継続と国の責任ですべての福島事故被害者に「健康手帳」の交付を求める署名に、ご協力ありがとうございました。コロナ禍にかかわらず、精力的に署名を集めていただき、感謝します。原発事故被災者に健康手帳を交付させることは、国に福島事故の責任を認めさせ、その責任で、福島の人々をはじめ被災者の健康と命の保障を求める観点から重要な取り組みだと考えています。さらなるご協力をお願いします。ニュースに会報の創刊号と署名を改めて添付させて頂きます。

「守る会」会報(暫定・創刊号)2022.11.17は、こちら

署名用紙はこちら

今後の集会などの予定のうち、下記の行動は、大阪地検による不起訴決定により、中止されました。

1月26日(木)午後1時半から短時間
(2月以降も、毎月26日に同様に行動する予定です)
強制捜査、起訴を行え! 大阪地検前アピール

詳しくは「関電の原発マネー不正還流を告発する会」のホームページをご覧ください。

「10・26反原子力デー全国一斉行動」の一環として、若狭ネットも、他の4市民団体とともに、関西電力本社へ申入れを行いました

「10・26反原子力デー全国一斉行動」の一環として、若狭ネットも、他の4市民団体とともに、関西電力本社へ申入れを行いました(申し入れのpdfはこちら)。

市民側参加者は12名でしたが、関西電力広報部は今回も対応せずでした。
私たちは、30年以上前からの「2週間前に電話連絡する」との慣例に従って電話連絡したのですが、広報部は「10月26日は多忙」だと拒否しました。「他の日なら話合いの場を設定してもらえるのか」と問うと、「応じられない」との一言。
結局、総務部の社員が出てきて申し入れ書を受け取りましたが、「5人、5分」のルールで、1階ロビーの片隅で、申し入れ書を読み上げて手渡し、5人以外は遠巻きに見守らざるをえないという状況でした。
この悪習は、2015年の八木社長時代に突然始まったのですが、7年後の今なお継承し続けているのです。

2022年10月26日

関西電力株式会社取締役代表執行役社長 森 望 様

10・26反原子力デーに際して、関西電力への申し入れ

若狭連帯行動ネットワーク 

 本日10月26日は反原子力デーです。

 貴社は、未だに原発依存の経営を行い、老朽原発の延命路線を突き進もうとしています。これは、多くの人々の思いとは逆行します。原子力文化財団の昨年の世論調査でも、「原発は徐々に減らすべき」52.8%と「即時廃止すべき」7.5%が合計で60%を占めています。ここ10年、この傾向はほとんど変りません。

 7月13日の「東電株主代表訴訟」東京地裁判決は画期的でした。旧東電経営陣は巨大津波を予見できたのに防潮堤や水密化の対策を先送りし、取締役としての注意義務を怠って事故を招いたと認定し、 「広範な地域及び国民全体に対しても甚大な被害を及ぼし、我が国そのものの崩壊にもつながりかねない」、大事故が「万が一にも」起こらないようにする義務があるのに、怠ったと断罪したのです。貴職をはじめとする関電経営陣も、今のままでは同じ轍を踏むことになるでしょう。

 私たちは強く訴えます。原発再稼働・40年超運転による利潤追求を続けていては、老劣化によるトラブル・故障・事故を頻発させる一方、事故原因の究明を切り上げての運転再開、次の定検までのひび割れ放置の強硬運転、異常発見時の無理な運転継続や異常対策等が不完全なままでの運転再開前倒しなどで、予想外の危険な事態を招き、福島事故を繰り返すことになりかねません。

 高浜1・2号は国内で最も古い原発であり、来年6月と7月に再稼働予定ですが、その時点で49年目と48年目になり、60年運転の期限まで残り11年と12年しかありません。しかも、高浜1号の原子炉圧力容器は長年の中性子照射による材料の脆化が最も進んでいて、蒸気発生器細管破断などの事故時に原子炉容器が破断する恐れが高いのです。

 老朽原発の長期連続運転・40年超運転・ひび割れ放置運転等の強行を招き、福島事故を繰り返す危険性を高めるだけでなく、一層大量の使用済核燃料を生み出し、次世代に重い「負の遺産」を残します。

   「原子力災害の危険を伴い、使用済燃料と核廃棄物を生み出す原発」を推進するためには、「森山案件」に見られるような地元利権集団との癒着と利権構造の形成は避けられません。原発依存経営から脱却し、原発利権構造を一掃し、再エネ推進のクリーンな経営に転換すべきです。

 原子力は夢のある産業ではなく、若者が将来を夢見ることのできない産業へ転落しています。脱炭素・脱原発の社会に寄与する産業こそ若者に夢を与える産業です。にもかかわらず、貴社は、原発再稼働を最優先させ、目指すべき社会の実現を遠ざけているのです。

 以上を踏まえ、次のことを強く申し入れます。公益事業者として自覚した上で、真摯に対応してください。

1.高浜1号は運転開始48年の国内最古かつ原子炉圧力容器の中性子脆化が最も進んだ危険な老朽原発です。運転開始47年の高浜2号、同46年の美浜3号と共に40年超運転を断念し、廃炉にしてください。

2.配管のひび割れや蒸気発生器細管の減肉など老劣化の進む高浜3・4号と大飯3・4号を廃炉にしてください。大飯3号で強行しようとした「次回定検までのひび割れ放置運転」を二度としないでください。

3.むつ市への使用済燃料の中間貯蔵押しつけを断念し、使用済燃料をこれ以上生み出さないでください。貴社による「福井県外での中間貯蔵施設立地」の約束、すなわち、①2010年まで、②2018年中、③2020年末まで、のいずれも実現できず、運転停止などの約束を反故にしました。④2023年末までが現在の約束です。「4度目の正直」として、これを守れない限り、すべての原発を運転しないでください。

4.高浜3・4号でのプルサーマルを即刻中止し、大飯原発にプルサーマルを広げないでください。プルトニウム利用を断念し、これ以上、MOX燃料の発注・輸送・輸入をしないでください。六ヶ所再処理工場の閉鎖を日本原燃に求めてください。

5.「福島賠償費・原発関連費の今年度分約288億円(一般負担金「過去分」156億円/年と廃炉円滑化負担金132億円/年)」を託送料金に加算して回収するのをやめ、電気料金を下げてください。

6.取替や廃炉による美浜・大飯・高浜原発の蒸気発生器33基をはじめ給水加熱器や核燃料輸送・貯蔵用キャスクなど大型放射性廃棄物の輸出、海外での溶解・再利用の計画を断念し、密閉管理し続けてください。

7.東京電力の事故責任を認定した最高裁決定を受け、原発依存の経営方針を「脱原発・脱石炭」、「再エネ拡大」へ大転換してください。                             

以上

若狭ネット第190号を発行:福島廃炉費約4兆円、損害賠償費2.44兆円、原発廃炉損失約5千億円の託送料金による回収をとりやめ、電気料金を直ちに引き下げろ! 岸田政権による原発再稼働・40年ルール撤廃・原発新増設反対! 東京電力の柏崎刈羽6・7号再稼働による利潤追求を許すな!

若狭ネット第190号を発行しました。

第190号(2022/10/17) (一括ダウンロード3.7Mb)
巻頭言–福島廃炉費約4兆円、損害賠償費2.44兆円、原発廃炉損失約5千億円の託送料金による回収をとりやめ、電気料金を直ちに引き下げろ!
岸田政権による原発再稼働・40年ルール撤廃・原発新増設反対!
東京電力の柏崎刈羽6・7号再稼働による利潤追求を許すな!
1. 廃炉費6兆円の大半を託送料金から回収する「廃炉等負担金」の撤廃を!
2. 40年運転で原発廃炉の原則=40年ルールの撤廃を許すな!
3. 新たな核災害リスクと建設費負担転嫁を招く原発新増設・リプレース反対

福島事故被災者への「医療・介護保険料及び医療費の減免措置」見直し撤回署名にご協力ください!(署名用紙はこちら)

「医療・介護保険料及び医療費の減免措置」見直し政府方針撤回と措置継続、国の責任で全ての福島原発事故被害者に「健康手帳」(医療費無料化等)交付を求めます

福島原発事故被害から健康と暮しを守る会

問い合わせ先:福島原発事故被害から健康と暮しを守る会 事務局
〒979-1514 福島県双葉郡楢葉町大字下小塙字広畑54番地 佐藤龍彦

政府は、2022年4月8日、福島県の原子力災害被災地域における「医療・介護保険料及び医療費の減免措置」(「医療費等、減免措置」)の見直しを方針決定しました。避難指示解除から10年程度で減免措置を終了し、解除時期別に4グループに分け、段階的に支援を削減し廃止するというのです。政府は、当該地域の首長の意見聴取をしただけで、被害者住民の一人ひとりの声を一切聞くことのなく、方針決定しました。私たちは、このように、民主主義の原則にも反する決定を到底容認できません。
福島原発事故から10余年を経過してもなお「緊急事態宣言」下にあり、事故被害による課題は山積して多岐にわたります。政府は、「他の被災地域との公平性」を理由に「医療費等、減免措置」を見直し、廃止するとしています。しかし、長期にわたる放射能汚染と被ばく被害をもたらす原発重大事故は、自然災害とは異なります。原発事故で強いられた放射線被ばくによる健康への不安や懸念は拭い去られるものではありません。また、未だ生活再建途上にある被害者にとって、「医療費等、減免措置」はまさに「命綱」です。
国策で進めた原発で重大事故を起こし、放射能汚染で故郷を奪い、生業を奪い、避難生活を強いたのです。
そして避難指示地域をはるかに超えた地域の多くの人々を被ばくさせました。その責任は国と東電にあります。「医療費等、減免措置」は、原発事故被害者対して国が行うべき最低限の「補償」であり、被害者の権利です。
政府は原発重大事故を起こした国の責任を猛省し、「国策の被害者」である福島原発事故被害者に「最後まで国が前面に立ち責任を持つ」との約束(2011 年5 月17 日, 原子力災害対策本部)を守り、被害者の健康と暮しの保障を復興の基本とするべきです。そして、事故による放射能汚染と被ばくを被った全ての人々に対して、国の責任で「健康手帳」を交付し、無料の医療・健康管理等の保障を生涯に渡って行うための法整備(国による「健康手帳」交付等を定めた「被爆者援護法」に準じた法整備)を行うよう強く求めます。
<要請事項>
一、原子力災害被災地域における「医療・介護保険料、医療費の減免措置」について
1. 見直し・廃止の方針を撤回し、現行措置の継続を求める。
2. 措置の拡充(保険者別支援の違い是正、所得制限撤廃、対象範囲拡大、等)を求める。
3. 広く被害者の意思を尊重する「公聴会」の開催を求める。
一、全ての原発事故被害者に、国の責任で無料の医療等を保障する「健康手帳」の交付を求める。

(第一次集約:2022年11月末、その後も、減免措置継続まで続けます)

 

原発も核も戦争もない平和な社会の実現を「被爆77周年原水爆禁止世界大会・福島大会」の動画案内と講演資料を掲載しました

被爆77周年原水禁世界大会、2022年

原発も核も戦争もない平和な社会の実現を 
「被爆77周年原水爆禁止世界大会・福島大会」の全体はこちら

「被爆77周年原水爆禁止世界大会・福島大会」アーカイブ動画はこちら

7月30日(土) 午後1時~4時半 全体集会・基調講演・パネルディスカッション

基調講演 「国と東電が進めるALPS処理水海洋放出の問題点と反対する根拠」
長沢啓行氏(大阪府立大学名誉教授)

当日に使用した講演資料はこちら

パネルディスカッション
コーディネーター 振津かつみ氏(医師)
パネリスト 長沢啓行氏(大阪府立大学名誉教授)
パネリスト 川島秀一氏(民俗学研究者)漁業者の立場から
パネリスト 後藤 忍 氏(福島大学教授)放射線教育について

場所 パルセいいざか・コンベンションホール(福島市飯坂町筑前27−1)
主催 被爆77周年原水爆禁止世界大会実行委員会

「2022 フクシマアピール」(pdf版はこちら

若狭ネット第189号を発行:国は福島事故被災者への損害賠償責任を誠実に果たせ! 国の責任を否定した最高裁決定は砂上の楼閣・・・最高裁三浦裁判官の反対意見と株主代表訴訟東京地裁判決に続き、掘り崩そう! 約束違反・法令違反の正当性なきトリチウム汚染水海洋放出をたった7分の議論で認可した原子力規制委員会は許せない!

若狭ネット第189号を発行しました。

若狭ネット第189号(2022/7/27)一括ダウンロード4.3Mb
巻頭言–国は福島事故被災者への損害賠償責任を誠実に果たせ!
国の責任を否定した最高裁決定は砂上の楼閣・・・最高裁三浦裁判官の反対意見と株主代表訴訟東京地裁判決に続き、掘り崩そう!
1. 約束違反・法令違反の正当性なきトリチウム汚染水海洋放出をたった7分の議論で認可した原子力規制委員会は許せない!
2. 福島事故の国家賠償責任を否定した最高裁決定は「仮定の上に仮定」を重ねた砂上の楼閣
3. 損害賠償費の一般・特別負担金総額が393億円も減額—新電力破産の陰で電力会社への利益供与は許されない!
4. 今年は長居公園自由広場で開催する予定戦争はいやや!核なんかいらへん! FESTIVAL2022 代表代行久保良夫

若狭ネット第188号を発行:脱原発福島県民会議など8団体の4月19日対政府交渉で、トリチウム汚染水(ALPS処理水)の海洋放出に正当性がないことが明らかに! 海洋放出に関する原子力規制委員会審査書(案)パブリックコメント(6/17まで)へ意見を出し、海洋放出の政府方針を撤回させよう!

若狭ネット第188号を発行しました。

第188号(2022/5/31)(一括ダウンロード3.1Mb

巻頭言–脱原発福島県民会議など8団体の4月19日対政府交渉で、トリチウム汚染水(ALPS処理水)の海洋放出に正当性がないことが明らかに!
海洋放出に関する原子力規制委員会審査書(案)パブリックコメント(6/17まで)へ意見を出し、海洋放出の政府方針を撤回させよう!
1.トリチウム汚染水(ALPS処理水)の来年海洋放出を阻止するため、審査書(案)のパブリックコメント(6/17まで)へ意見を提出しよう!
2.むつ市の使用済燃料中間貯蔵施設共同利用を許すな!
若狭の原発は30年後までに、すべて廃炉になり、使用済燃料だけが2倍になって残される!

「脱原発福島県民会議など8団体による4月19日対政府交渉の報告」は下記サイト参照
チェルノブイリ・ヒバクシャ救援関西のホームページ
または、若狭ネットホームページでの5月24日付転載
をご覧ください。

脱原発福島県民会議など8団体による4月19日対政府交渉の報告とそれに基づくトリチウム汚染水(ALPS処理水)海洋放出審査書案パブリックコメントへの意見提出の呼びかけ

(若狭ネット編集局の責任で8団体による対政府交渉報告とパブコメ意見提出の呼びかけを転載します)

政府交渉呼びかけ8団体:脱原発福島県民会議、双葉地方原発反対同盟、原水爆禁止日本国民会議、原子力資料情報室、全国被爆2世団体連絡協議会、原発はごめんだ!ヒロシマ市民の会、チェルノブイリ・ヒバクシャ救援関西、ヒバク反対キャンペーン

4月19日の8団体対政府交渉の報告
(その1)避難指示解除に伴う医療・介護保険料及び医療費の減免措置見直しの撤回
     (議事録はこちら
(その2)トリチウム汚染水(ALPS処理水)の海洋放出方針決定の撤回
     (議事録はこちら)(交渉資料はこちら

2022年4月19日・トリチウム汚染水(ALPS処理水)海洋放出方針決定に関する8団体主催・政府交渉報告

経産省、原子力規制庁、外務省は、私たちの追及に明確に反論できず
政府と東京電力は根拠のない大ウソで強引に「理解」を得ようとしていることが露呈
交渉の成果を広く知らせ、署名を拡大し、トリチウム汚染水海洋放出を止めよう!

私たち、脱原発福島県民会議をはじめ8団体は、「避難指示解除に伴う医療・介護保険料及び医療費の減免措置見直しの撤回」および「トリチウム汚染水(ALPS処理水)の海洋放出方針決定の撤回」を求め、4月19日に対政府交渉をもちました。後半の方針決定は、昨年4月、全国と福島県漁連等が「断固反対」し続ける中で、漁連をはじめ「関係者の理解」を得ないまま、当時の菅政権が強引に決定したものです。このように方針決定した後に「理解」をゴリ押ししようとしても無理があり、1年経っても全く「理解」は進んでいません。4月19日の対政府交渉では、海洋放出方針に法的・技術的根拠がないことを徹底追及し、政府や東京電力が根拠のない大ウソをついてまで強引に「理解」を得ようとしていることを暴き出し、私たちの主張が正しいことを認めさせました。

1.政府は、ALPS処理水海洋放出「方針決定」は、漁連等との「約束を破るものではない」と強弁

2015年に、福島県漁連がサブドレン及び地下水ドレンに同意した大前提には、政府と東京電力による「ALPS処理水を海洋放出しない」との文書回答があり、「同意」はこれと一体のものです。そして、現に地下水ドレン水6.5万トンがタンクへ移送されて「ALPS処理水」となっています。しかし経産省は、サブドレン等の運用方針は「トリチウム濃度が1,500Bq/Lを超える場合には、排出しない、希釈しない、タンクへ移送する」という「移送に関する規定」であり、「ALPS処理水の扱いはこれとは異なる」との詭弁を弄して私たちの追及を突っぱねました。また、昨年4月の政府によるALPS処理水海洋放出の「方針決定」も、文書回答による約束を破るものではなく、「ご理解を得られるように努力する」と開き直りました。
来春からのALPS処理水の海洋放出は、今発生している汚染水をALPS処理した水から優先的に排出するものです。今後サブドレン及び地下水ドレンで(1500Bq/Lを超えた場合に)タンクへ移送されれば、それもALPS処理後、優先的に海洋に排出されることになります。そうなれば、「タンクへ移送する」との運用方針が「タンクへ移送し、ALPS処理して排出する」という内容に、事実上書き換えられることになるとの私たちの指摘に対して、タンク移送後は異なる扱いになり、運用方針の書き換えではないと経産省は言い張ったのです。

2.ALPS処理水を来春から海洋放出する「3つの理由」は全て根拠なしの大ウソだった

ALPS処理水を来春から海洋放出する理由として挙げられた「3つの理由」、①タンクは来春満水になる、②廃炉作業のために敷地を空ける必要がある、③汚染水は今後も発生し続ける、のいずれも大ウソだったことが明らかになりました。

①満水になるタンク以外に、フランジタンク解体によるタンク増設可能エリアが約9万トン分あります。さらに、空けた状態の予備タンクが2.5万トン、計12万トン程度あります。「切羽詰まっている」のであれば、これらを転用すれば数年は大丈夫です。

②東電が示した廃炉作業に伴う敷地利用計画は、「2030年度頃までに共用プールを空けるための乾式キャスク仮保管施設、将来的に燃料デブリ一時保管施設等」というものです。しかし、これらは全く緊急性がありません。現在ある乾式キャスク仮保管施設と共用プールを合わせると、使用済燃料貯蔵容量には2,071体の余裕がありますので、1・2号の使用済燃料879体を取出して貯蔵しても十分余裕があります。ですから、共用プールは満杯でも、十分冷えた使用済み燃料から、現在ある乾式キャスク仮保管施設に移動すれば、「共用プールを空ける」必要などありません。また、燃料デブリ取出しも、シールドプラグに事故時放出量の数倍ものセシウムが検出されていて、極めて困難になり、見通しが立たない状況です。急いで敷地を空けなければならない理由など存在しないのです。

③建屋内滞留水のALPS処理とサブドレンによる系統的な周辺地下水水位低減で、すでにタービン建屋と廃棄物処理建屋は床面露出しています。さらに今、原子炉建屋の床面露出へと進んでいて、汚染水発生ゼロが可能な段階に来ています。現在は2週間に10cmのペースで滞留水の水位を下げており、2022年度末には1号炉で水深0.5m、2・3号炉で水深2.0mになり、このペースを順次続ければ90週、2年以内に原子炉建屋の床面露出は可能になります。屋根からの雨水侵入も1号機だけとなり、屋根の設置をあと1~2年で終えれば、汚染水発生ゼロは可能です。

経産省は、①~③に関するこれらの具体的な指摘に、まともに反論できませんでした。つまり、①タンク増設余地も空きタンクも十分ある、②急ぎの敷地利用計画など存在しない、③汚染水発生ゼロが実現可能な段階に来ている、のです。

3.「福島第一原発は敷地境界で1mSv/年を守れない違法状態にある」ことを規制庁は認めた
—緊急性のないさらなる放射能放出は一切認められない

福島第一原発は事故後、特定原子力施設に指定されていますが、現行法令を遵守する義務は原則として変らず、一般公衆の被ばく線量限度1mSv/年を担保するための敷地境界での1mSv/年の線量告示を守るべき義務があります。しかし、現状は守れない違法状態にあるのです。「措置を講ずべき事項」にいう「発災以降発生した瓦礫や汚染水等による敷地境界における実効線量を2013年3月末までに1mSv/年未満とすること」という管理基準を満たしても、違法状態にあります。今回の交渉の中で、以上のすべてを原子力規制庁は認めました。つまり、現状のように、敷地境界線量が1mSv/をかなり超える違法状態にある限り、液体・気体のさらなる放射性物質の放出は告示違反であること、地下水バイパスやサブドレン及び地下水ドレンの海洋放出を「苦渋の選択」で漁連が承諾した2015年の時のように、「汚染水の大量発生を阻止するため」など、よほど緊急避難的な理由がない限り、放射能汚染水の放出は認められないことが改めて明らかになりました。2.に記したように、ALPS処理水の海洋放出には、このような緊急避難的な理由など全く存在しません。

4.「ALPS処理水海洋放出は投棄に該当しないとの外務省決定」は、外務大臣を含めた会議や議事録の残る形の決定ではなかった

東電は、ALPS処理水を放出立坑と海底トンネル(パイプライン)を介して海洋放出する計画です。これは、ロンドン条約/議定書で禁止された「その他の人工海洋構築物からの故意の海洋処分」に該当する可能性があるため、私たちは、その観点からも禁止するよう求めていました。今回の交渉で、外務省は「ALPS処理水の海洋放出は投棄に該当しないと外務省決定した」と言いながら、いつ、どこで決定したのか追及されても明確に答えられず、挙げ句の果てに、「昨年4月の方針決定には外務省も入っているからそこで決定された」と主張したのです。つまり、こんな大事なことを外務官僚の内輪だけで判断し、外務大臣を含めた会議や議事録に残る形では決定していなかったのです。

議事録はこちら)(交渉資料はこちら

交渉の成果を広く知らせ、方針撤回署名をさらに拡大し、トリチウム汚染水海洋放出を止めよう!

今回の対政府交渉は、脱原発福島県民会議をはじめ、8団体で呼びかけて取り組んできた、度重なる政府交渉の上に行われたものです。その交渉の場で、経産省、原子力規制庁、外務省が、そろって私たちの主張に明確に反論できず、うろたえていた事実は極めて重要です。福島県漁連も全国漁連も「断固反対」の姿勢を堅持し、福島県でのアンケートでも8割で「ご理解」が進んでいません。トリチウム汚染水(ALPS処理水)の海洋放出は止められるし、止めねばなりません。そのために今回の交渉の成果と内容を広く知らせ、最大限に活用し、運動をさらに強めてゆきましょう。

規制委員会は5月18日、トリチウム汚染水(ALPS処理水)の海洋放出認可に関する審査書(案)を承認し、5月19日から6月18日(午前0時締切)まで、審査書(案)へのパブコメが行われています。トリチウム汚染(ALPS処理水)の政府方針決定(2021.4.13)を撤回させ、放出を阻止するため、パブコメに意見を出しましょう!

東京電力ホールディングス株式会社福島第一原子力発電所の実施計画変更認可申請(ALPS処理水の海洋放出関連設備の設置等)に係る審査書案 意見募集

福島県の漁業者をはじめ生産者とともに「原発のない福島を!県民大集会」が呼びかけている「海洋放出方針の再検討を求める署名」(方針撤回署名)をさらに広げ、福島県、全国、全世界から多くの声を集め、「トリチウム汚染水海洋放出」の方針を撤回させましょう!
オンライン署名、及び署名用紙のダウンロードもできます。

(前半の「避難指示解除に伴う医療・介護保険料及び医療費の減免措置見直しの撤回」の交渉内容は別紙 その議事録はこちら

政府交渉呼びかけ8団体:脱原発福島県民会議、双葉地方原発反対同盟、原水爆禁止日本国民会議、原子力資料情報室、全国被爆2世団体連絡協議会、原発はごめんだ!ヒロシマ市民の会、チェルノブイリ・ヒバクシャ救援関西、ヒバク反対キャンペーン

連絡先:原子力資料情報室(担当:高野聡)Tel:03-6821-3211<takano@cnic.jp>
チェルノブイリ・ヒバクシャ救援関西(担当:振津かつみ)Tel:090-3941-6612<cherno-kansai@titan.ocn.ne.jp>

トリチウム汚染水(ALPS処理水)の海洋放出認可に関する審査書案パブリックコメント(5/19~6/18)へ意見を出そう!

東京電力ホールディングス株式会社福島第一原子力発電所の実施計画変更認可申請(ALPS処理水の海洋放出関連設備の設置等)に係る審査書案へのパブリックコメント募集中
受付開始日時 2022年5月19日0時0分
受付締切日時 2022年6月18日0時0分

若狭ネット資料室長として7つの意見を提出しました。
(提出した意見のpdfはこちら)

トリチウム汚染水(ALPS処理水)の政府方針決定(2021.4.13)を撤回させ、
来春放出実施を阻止するため、パブコメに意見を出しましょう!

意見(その1)————————————————-

該当箇所:「本章においては、原子炉等規制法第64条の3第3項に関する審査の内容を、以下のとおり関連する措置を講ずべき事項ごとに示した。 (中略) 1-3 放射性固体廃棄物の処理・保管・管理 (中略) 規制委員会は、これらの項目について審査した結果、変更認可申請の内容が、措置を講ずべき事項を満たすものであることを確認した。」(p.3)

意見:東京電力による実施計画変更認可申請においても「海洋への放出は、関係省庁の了解なくしては行わないものとする。」と明記されています。最大の関係省庁である経済産業省は、大臣名で「関係者の理解なしにはいかなる処分も行いません」と文書で確約しており、しかも、2015年8月24日だけでなく、2022年4月5日にも同趣旨の文書確約をしています。「関係者の理解」なくして「関係省庁の了解」など得られません。原子力規制委員会としても、「関係者の理解」および「関係省庁の了解」なしには、今回の「変更認可申請(ALPS処理水の海洋放出関連設備の設置等)」を認可できないはずです。審査書(案)にもこのことを明記し、「関係者の理解」が得られるまで「案」のまま留め置き、関連する設計工事認可の手続きを全面凍結すべきです。

理由:「『福島第一原子力発電所 特定原子力施設に係る実施計画』の変更認可申請(ALPS処理水の海洋放出関連設備の設置等)」の「III 第3編 2.1.2 放射性液体廃棄物等の管理」では、「なお,海洋への放出は,関係省庁の了解なくしては行わないものとする。」(p.Ⅲ-3-2-1-2-6)と明記されており、最大の関係省庁である経済産業省の萩生田光一大臣は、全漁連による2021年4月の5項目要求に対し、2022年4月5日に全漁連事務所へ出向き、「(2015年8月24日に)福島県漁連に示した、漁業者を含む関係者への丁寧な説明等、必要な取り組みを行うこととしており、こうしたプロセスや関係者の理解なしにはいかなる処分も行いません、との回答は今後も遵守します。」と文書回答しています。また、政府の基本方針(「東京電力ホールディングス株式会社福島第一原子力発電所における多核種除去設備等処理水の処分に関する基本方針」,廃炉・汚染水・処理水対策関係閣僚等会議,2021年4月13日)においても、2(2)③で「併せて、国民・国際社会の理解醸成に向けた取組に万全を期す必要がある。」と理解醸成を重要視しています。
ところが、福島県の県漁連、農林水産業者、市町村議会をはじめ福島県民の多く、さらには、隣接する宮城県や茨城県をはじめ全国の多くの関係者が海洋放出反対の意思を示していて、「関係者の理解」が得られたとは到底言えません。このことは、福島民報社が行った福島県内59市町村長アンケートで、政府が処分の前提としている地元との合意形成について、49市町村長(83%)が「あまり合意形成が進んでいない」(福島民報2022/4/18)と答えていること、また、福島民報社が福島テレビと共同で行った福島県民世論調査(第36回)でも、海洋放出方針について国内外での理解が広がっているかについて、「全く広がっていない」「あまり広がっていない」との回答が合わせて52.5%に上っているという事実(福島民報2022/3/7)で明らかです。このような現状がある限り、経産省が「関係省庁の了解」を与えたとは言えないはずであり、「関係省庁の了解」を得ているかどうかについても、審査書で確認するのが、原子力規制委員会の義務だといえます。少なくとも経産省に関しては、「関係者の理解なしにはいかなる処分も行いません」というのが再三確認された経産省の方針であることから、経産省には「関係者の理解を得た」と判断する基準を明確にするよう求め、その基準が満たされることを前提とすることを審査書(案)に明記すべきです。

意見(その2)————————————————-

該当箇所:「本章においては、原子炉等規制法第64条の3第3項に関する審査の内容を、以下のとおり関連する措置を講ずべき事項ごとに示した。 (中略) 1-3 放射性固体廃棄物の処理・保管・管理 (中略) 規制委員会は、これらの項目について審査した結果、変更認可申請の内容が、措置を講ずべき事項を満たすものであることを確認した。」(p.3)

意見:ALPS処理水の海水での希釈・海洋放出の政府方針決定は、「ALPS処理水は海洋放出しない」との政府と東京電力による文書確約に違反し、その確約に基づいて合意された「サブドレン及び地下水ドレンの運用方針」の「トリチウム濃度が1,500Bq/Lを超える場合には、排出しない、希釈しない、タンクへ移送する」との内容にも違反します。変更認可申請における「放射性固体廃棄物の処理・保管・管理」の項目に該当するこの内容が審査書(案)で全く触れられていないのは重大な瑕疵になります。というのは、「タンク等へ移送」が「タンク等へ移送後、ALPSで処理し海水で希釈し海洋放出する」という全く違う中身に書き換えられるからです。この重大な書き換えをこっそり行うこと、それを知りながら黙認することは許されません。この重大な変更を審査書(案)に書き込み、「その内容で関係者の理解が得られることを認可の条件とする」と明記すべきです。

理由:変更認可申請の「サブドレン他水処理施設の排水管理に関する運用について」(p.Ⅲ-3-2-1-2-添1-1)の添付資料1において、排水前の分析の結果、運用目標(Cs-134:1Bq/L,Cs-137:1Bq/L,Sr-90:3(1)Bq/L,H-3:1500Bq/L)を下回らない場合は「原因調査、及び再浄化又はタンク等へ移送」とされています。これは、「サブドレン及び地下水ドレンの運用方針」(2015.9)において「サブドレン及び地下水ドレン以外の水は混合しない(希釈は行わない)」、「運用目標を満たしていない一時貯水タンクの水は排水しない」と明記されたことを反映したものです。
また、この運用方針は、経済産業大臣(「経済産業大臣臨時代理 国務大臣 高市早苗」名)が2015年8月24日、福島県漁連への回答書「東京電力(株)福島第一原子力発電所のサブドレン水等排出に関する要望書について」を発出し、「(トリチウム水に関する)検証結果については、まず、漁業関係者を含む関係者への丁寧な説明等必要な取組を行うこととしており、こうしたプロセスや関係者の理解なしには、いかなる処分も行いません。」と約束し、その翌日に、廣瀬直己東京電力社長が同県漁連に「東京電力(株) 福島第一原子力発電所のサブドレン水等の排水に対する要望書に対する回答について」を出し、「建屋内の水は多核種除去設備等で処理した後も、発電所内のタンクにて責任を持って厳重に保管管理を行い、漁業者、国民の理解を得られない海洋放出は絶対に行わない事」との要望については「検証等の結果については、漁業者をはじめ、関係者への丁寧な説明等必要な取組を行うこととしており、こうしたプロセスや関係者の理解なしには、いかなる処分も行わず、多核種除去設備で処理した水は発電所敷地内のタンクに貯留いたします。」と確約したことを受けて了解された方針です。つまり、福島県漁連がサブドレン及び地下水ドレンに同意した大前提には、政府と東京電力による「ALPS処理水を海洋放出しない」との文書回答があり、「同意」はこれと一体のものです。現に地下水ドレン水6.5万トンがタンクへ移送されて「ALPS処理水」となっています。
来春からのALPS処理水の海洋放出は、今発生している汚染水をALPS処理して優先的に排出するものです。今後サブドレン及び地下水ドレンで(1500Bq/Lを超えた場合に)タンクへ移送されれば、それもALPS処理後、優先的に海洋に排出されることになります。そうなれば、「タンク等へ移送する」との運用方針が「タンク等へ移送後、ALPSで処理し海水で希釈し海洋放出する」という全く違う中身に書き換えられることになります。このような変更認可申請の根本的な書き換えについて、審査書(案)で全く触れていないのは重大な瑕疵と言えます。この重大な書き換えをこっそり行うこと、それを知りながら黙認することは許されません。この重大な変更を審査書(案)に書き込み、「その内容で関係者の理解が得られることを認可の条件とする」と明記すべきです。

意見(その3)————————————————-

該当箇所:「本審査においては、ALPS処理水の海洋放出が特定原子力施設全体のリスク低減及び最適化を図るものであることを確認する。」(p.3)
「海洋放出設備は、汚染水発生量以上の量のALPS処理水を海洋へ放出できる設計及び運用にするとしている。これにより、現在多核種除去設備等で浄化処理された水を貯蔵しているタンク(以下「貯蔵タンク」という。)の解体・撤去が可能となり、新たに燃料デブリ保管施設等を設置するためのエリアを確保できるため、東京電力は、海洋放出設備が、特定原子力施設全体の将来的なリスク低減及び最適化に資する設備であるとしている。」(p.4)
「以上のことから、措置を講ずべき事項「Ⅰ.全体工程及びリスク評価について講ずべき措置」を満たしているものと認める。」(p.4)

意見:「リスク低減及び最適化を図る」とされていますが、ALPS処理水を来春から海洋放出する理由として挙げられた「3つの理由」、(1)タンクは来春満水になる、(2)廃炉作業のために敷地を空ける必要がある、(3)汚染水は今後も発生し続ける、のいずれも大ウソだったことが4月19日の市民との意見交換で明らかになっています。ALPS処理水を海洋放出しなくてもリスク低減は十分可能であるという事実を直視し、審査書(案)を根本的に見直すべきです。

理由:脱原発福島県民会議など8団体が4月19日に経産省資源エネルギー庁、原子力規制委員会・原子力規制庁、外務省と意見交換の場をもち、次のことが明らかになっています。
(1)満水になるタンク以外に、フランジタンク解体によるタンク増設可能エリアが約9万トン分あります。さらに、空けた状態の予備タンクが2.5万トン、計12万トン程度あります。「切羽詰まっている」のであれば、これらを転用すれば数年は大丈夫です。
(2)東電が示した廃炉作業に伴う敷地利用計画は、「2030年度頃までに共用プールを空けるための乾式キャスク仮保管施設、将来的に燃料デブリ一時保管施設等」というものです。しかし、これらは全く緊急性がありません。現在ある乾式キャスク仮保管施設と共用プールを合わせると、使用済燃料貯蔵容量には2,071体の余裕がありますので、1・2号の使用済燃料879体を取出して貯蔵しても十分余裕があります。ですから、共用プールは満杯でも、十分冷えた使用済み燃料から、現在ある乾式キャスク仮保管施設に移動すれば、「共用プールを空ける」必要などありません。また、燃料デブリ取出しも、シールドプラグに事故時放出量の数倍ものセシウムが検出されていて、極めて困難になり、見通しが立たない状況です。急いで敷地を空けなければならない理由など存在しないのです。
(3)建屋内滞留水のALPS処理とサブドレンによる系統的な周辺地下水水位低減で、すでにタービン建屋と廃棄物処理建屋は床面露出しています。さらに今、原子炉建屋の床面露出へと進んでいて、汚染水発生ゼロが可能な段階に来ています。現在は2週間に10cmのペースで滞留水の水位を下げており、2022年度末には1号炉で水深0.5m、2・3号炉で水深2.0mになり、このペースを順次続ければ90週、2年以内に原子炉建屋の床面露出は可能になります。屋根からの雨水侵入も1号機だけとなり、屋根の設置をあと1~2年で終えれば、汚染水発生ゼロは可能です。
経産省担当者は、(1)~(3)に関するこれらの具体的な指摘に、まともに反論できませんでした。つまり、(1)タンク増設余地も空きタンクも十分ある、(3)急ぎの敷地利用計画など存在しない、(3)染水発生ゼロが実現可能な段階に来ている、のです。また、4月18日の第99回特定原子力施設監視・評価検討会では、1号炉では雨水以外の地下水の建屋流入はほとんどなく、屋根とフェーシング等で抑制可能であること、2・3号炉では屋根の補修が完了していて、サブドレンピット停止による地下水位上昇や雨水による建屋流入があったが、サブドレンピット復旧やフェーシング等で抑制可能と報告されています。2・3号炉では(3)の水位管理で地下水の建屋流入ゼロが可能です。これらを真摯に検討し直し、審査書(案)を根本的に見直すべきです。

意見(その4)————————————————-

該当箇所:「本章においては、原子炉等規制法第64条の3第3項に関する審査の内容を、以下のとおり関連する措置を講ずべき事項ごとに示した。(中略) 規制委員会は、これらの項目について審査した結果、変更認可申請の内容が、措置を講ずべき事項を満たすものであることを確認した。」(p.3)
「変更認可申請の内容を確認した結果、措置を講ずべき事項「Ⅱ.9.放射性液体廃棄物の処理・保管・管理」を満たしているものと認める。」(p.5)

意見:審査の内容を「措置を講ずべき事項を満たすものであることを確認」することに限定したのは、「線量告示」に違反している事実を隠蔽するためと言わざるを得ません。特定原子力施設に指定されても遵守すべき法令、とりわけ「線量告示」を満たすものであるかどうかを確認すべきです。そして、現状が線量告示を遵守できない違法状態にあることをまずもって確認すべきであり、そうすれば、緊急避難的な理由がない限り、ALPS処理水の海洋放出を認めることなどできないはずです。

理由:福島第一原発は特定原子力施設に指定されていますが、特例を定める政令では、線量告示は「適用」すべき「法の規定」から除外されてはいません(「核原料物質又は核燃料物質の製錬の事業に関する規則等の規定に基づく線量限度等を定める告示,2015年8月31日原子力規制委員会告示第8号」および「東京電力株式会社福島第一原子力発電所原子炉施設についての核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律の特例に関する政令,2013年政令第53号」)。
線量告示は、一般公衆の被ばく線量限度1mSv/年を担保するための法令であり、敷地境界(「周辺監視区域外」)において、「直接線やスカイシャイン線等による実効線量[mSv/年]+気体や液体の告示濃度限度比の総和」が1を超えないことが求められています。措置を講ずべき事項は、福島第一原発がこの線量告示を遵守できない状況にあるため、リスク低減管理のための措置事項を定めたものにすぎず、違法状態であることには変わりがありません。このことは、脱原発福島県民会議など8団体との今年4月19日の意見交換の場で、原子力規制庁担当者も認めているところです(2012年11月7日原子力規制委員会決定「特定原子力施設への指定に際し東京電力株式会社福島第一原子力発電所に対して求める措置を講ずべき事項について」)。
また、東京電力は、ALPS処理水海洋放出の法的根拠として規則第二号(工場又は事業所において行われる廃棄)第十六条第六号イならびに第七号を挙げていますが、同第七号には「前号イの方法により廃棄する場合は・・・排水口又は排水監視設備において排水中の放射性物質の濃度が原子力規制委員会の定める濃度限度を超えないようにすること」とされ、同規則第二条第二項第六号には、「『周辺監視区域』とは、実用炉規則第二条第二項第六号に規定する周辺監視区域をいう。」と定義され、この実用炉規則第二条第二項第六号では「『周辺監視区域』とは、管理区域の周辺の区域であって、当該区域の外側のいかなる場所においてもその場所における線量が原子力規制委員会の定める線量限度を超える恐れのないものをいう。」と定められています(「東京電力株式会社福島第一原子力発電所原子炉施設の保安及び特定核燃料物質の防護に関する規則,平成25年原子力規制委員会規則」)。さらに、この線量限度は、線量告示第二条第一項第一号で「実効線量については1年間(4月1日を始期とする1年間をいう。以下同じ。)につき1mSv。」と明記されています。つまり、特定原子力施設であっっても線量告示は遵守すべき法令であって、上記の規則第十六条第七号にいう「濃度限度を超えないようにすること」とは「周辺監視区域外において直接線・スカイシャイン線等による実効線量および告示濃度限度比の総和との合計が1mSv/年を超えないという規定を遵守しなければならない」ことを意味します。
以上のように、特定原子力施設が厳格に遵守すべき「法令のすべてを満たすかどうかを確認」すべきであり、「措置を講ずべき事項を満たすものであることを確認」すれば足りるとしているのは、重大な瑕疵を犯すものだといわざるを得ません。審査書(案)を法令遵守の観点から抜本的に書き直すべきです。

意見(その5)————————————————-

該当箇所: 「措置を講ずべき事項「Ⅱ.11. 放射性物質の放出抑制等による敷地周辺の放射線防護等」では、特定原子力施設から大気、海等の環境中へ放出される放射性物質の適切な抑制対策を実施することにより、敷地周辺の線量を達成できる限り低減すること、特に施設内に保管されている発災以降発生した瓦礫や汚染水等による敷地境界における実効線量(施設全体からの放射性物質の追加的放出を含む実効線量の評価値)を1 mSv/年未満とすることを求めている。」(p.10)
「規制委員会は、ALPS処理水を海水で希釈して海洋放出する場合の敷地境界における実効線量については、実施計画Ⅲ章「2.2.3 放射性液体廃棄物等による線量評価」に示されている地下水バイパス水の排水による評価を下回ること、また、排水する系統も異なることから、放射性液体廃棄物等による実効線量0.22mSv/年に変更はなく、引き続き敷地境界における実効線量の合計値が1mSv/年未満となることを確認した。」(p.10)

意見:福島第一原発の敷地境界モニタリングポスト実測値では、今なお敷地境界線量が1mSv/をかなり超える違法状態にあります。一般公衆の被ばく線量限度1mSv/年を担保するための線量告示に従えば、液体・気体のさらなる放射性物質の放出は線量告示違反であり、ALPS処理水の海洋放出など認められません。地下水バイパスやサブドレン及び地下水ドレンの海洋放出では「汚染水の大量発生を阻止するため」など緊急避難的な理由がありましたが、ALPS処理水の海洋放出には、このような緊急避難的な理由など全く存在しません。違法なALPS処理水の海洋放出を認可する審査書(案)は根本的に見直すべきです。

理由:政府方針の2(1)①では「ALPS小委員会の報告書やこれまで頂いた意見を踏まえ、福島第一原発において安全かつ着実に廃炉・汚染水・処理水対策を進めていくため、各種法令等を厳格に遵守するとともに、風評影響を最大限抑制する対応を徹底することを前提に、ALPS処理水の処分を行うこととする。」と明記されており、特定原子力施設に指定されている福島第一原発においても、現行法令を遵守する義務は原則として変らず、一般公衆の被ばく線量限度1mSv/年を担保するための敷地境界での1mSv/年の線量告示を守るべき義務があります(「東京電力ホールディングス株式会社福島第一原子力発電所における多核種除去設備等処理水の処分に関する基本方針,廃炉・汚染水・処理水対策関係閣僚等会議,2021年4月13日」)。
線量告示を厳格に遵守すれば「ALPS処理水の処分を行うこと」はできません。現状は遵守すべき法令を守れない違法状態にあるのです。「措置を講ずべき事項」にいう「発災以降発生した瓦礫や汚染水等による敷地境界における実効線量を2013年3月末までに1mSv/年未満とすること」という管理基準を満たしても、違法状態にあります。
脱原発福島県民会議など8団体との意見交換の場で、原子力規制庁担当者は、以上のすべてを認めています。つまり、現状のように、敷地境界線量が1mSv/をかなり超える違法状態にある限り、液体・気体のさらなる放射性物質の放出は告示違反であること、地下水バイパスやサブドレン及び地下水ドレンの海洋放出を「苦渋の選択」で漁連が承諾した2015年の時のように、「汚染水の大量発生を阻止するため」など、よほど緊急避難的な理由がない限り、放射能汚染水の放出は認められないことが改めて明らかになったのです。
ALPS処理水の海洋放出には、このような緊急避難的な理由など全く存在しません。ALPS処理水の海洋放出を認可する審査書(案)を根本的に見直すべきです。違法であるにもかかわらず、ALPS処理水を来春から海洋放出しなければならない緊急避難的な理由があるというのであれば、審査書(案)に明記し、独立した三条委員会(国家行政組織法3条2項に基づいて設置された委員会)の立場から国会と国民にその是非を問うべきです。福島第一原発の現状が線量告示を厳守できない違法状態になることを認識しながら、審査書(案)でそれに言及せず、パブリックコメントで国民の声を聴いて終わりにするという程度の対応では、重大な瑕疵を犯すことになるでしょう。

意見(その6)————————————————-

該当箇所:「本章においては、原子炉等規制法第64条の3第3項に関する審査の内容を、以下のとおり関連する措置を講ずべき事項ごとに示した。 (中略) 1-3 放射性固体廃棄物の処理・保管・管理 (中略) 規制委員会は、これらの項目について審査した結果、変更認可申請の内容が、措置を講ずべき事項を満たすものであることを確認した。」(p.3)

意見:ALPS処理水の放出立坑及び海底トンネル(パイプライン)を介した故意の海洋放出は、ロンドン条約/議定書で禁止された「その他の人工海洋構築物からの故意の海洋処分」に該当する可能性があるため、脱原発福島県民会議など8団体がその観点からも禁止するよう外務大臣に求めたところ、外務省担当者は「ALPS処理水海洋放出は投棄に該当しないと外務省決定した」と主張しながら、外務大臣を含めた会議や議事録の残る形の決定ではなかったことが4月19日の意見交換の場で明らかにされています。東京電力による実施計画変更認可申請においても「海洋への放出は、関係省庁の了解なくしては行わないものとする。」と明記されており、原子力規制委員会としても、外務省から事情聴取した上で、ロンドン条約/議定書に関して「各種法令等を厳格に遵守する」との政府基本方針を満たしているかどうかを確認し、「外務省の了解」がいつ、どのような形で行われたのかを確認し、審査書(案)に明記すべきです。

理由:東京電力は、ALPS処理水を放出立坑及び海底トンネル(パイプライン)を介して故意に海洋放出する計画です。これは、ロンドン条約/議定書で禁止された「その他の人工海洋構築物からの故意の海洋処分」に該当する可能性があるため、脱原発福島県民会議など8団体は、その観点からも禁止するよう求めていました。ところが、4月19日の意見交換の場で、外務省担当者は「ALPS処理水の海洋放出は投棄に該当しないと外務省決定した」と言いながら、いつ、どこで決定したのか追及されても明確に答えられず、挙げ句の果てに、「昨年4月の方針決定には外務省も入っているから、そこで決定された」と主張したのです。つまり、こんな大事なことを外務官僚の内輪だけで判断し、外務大臣を含めた会議や議事録に残る形では決定していなかったのです。
ロンドン条約/議定書の事務局である国際海事機関は、「法的観点からは、国連海洋法条約UNCLOSとロンドン条約/議定書LC/LPにおける投棄の定義の範囲とUNCLOS第207条の範囲の間に直接的な境界線はないようである。言い換えれば、UNCLOSの第207条〔陸にある発生源(河川、三角江、パイプラインpipelines及び排水口outfall structuresを含む。)からの汚染〕と第210条(投棄による汚染)の範囲が相互に排他的であることを示すものはない。したがって、LC/LP締約国は、排出管outfall pipesがLC/LPの『投棄』の定義の意味の枠内で『その他人工海洋構造物』であると決定し、そのような区別を明確にするために条約を改正するか、決議するか、それ相応の行動を起こすことができる。」との判断を示しています。外務省はそのような行動をとらないと決定した根拠を示す必要がありますが、会議で決定した事実がないのです。これでは正式に「外務省の了解」が得られたとは到底言えません。
変更認可申請「III 第3編 2.1.2 放射性液体廃棄物等の管理」では、「なお,海洋への放出は,関係省庁の了解なくしては行わないものとする。」(p.Ⅲ-3-2-1-2-6)と明記されており、また、政府基本方針においても、「各種法令等を厳格に遵守する」と明記し、「併せて、国民・国際社会の理解醸成に向けた取組に万全を期す必要がある。」と重要視しています。国際社会の理解醸成を得るためにも、外務省は、ロンドン条約/議定書で禁止された「その他の人工海洋構築物からの故意の海洋処分」に該当する可能性があり、その観点からも禁止すべきだとの日本国民からの指摘に対して、どのような根拠で禁止しないと判断したのかを国民および国際社会に説明する義務があり、原子力規制委員会も「外務省の了解」がいつ、どのような形で行われたのかについて確認し、審査書(案)に明記すべきです。

意見(その7)————————————————-

該当箇所: 「年間のトリチウム放出量が22兆Bqの範囲に収まるよう、年度ごとにALPS処理水の年間放出計画を定め、当該計画に沿った海洋放出を行う。」(p.25)
「年間のトリチウム放出量については、年間放出計画の策定及び運用により、福島第一原子力発電所全体として22兆Bqの範囲に収まるように管理されることを確認した。」(p.25)

意見:原子力規制委員会は、原子力推進行政とは切り離された、独立した三条委員会(国家行政組織法3条2項に基づいて設置された委員会)として設立された経緯があります。ところが審査では、ALPS処理水の年間放出量を22兆Bqの管理値以上に放出できる余地を残すように圧力を掛けており、規制側が推進側に推進圧力を掛けるというあってはならない事態が起きていました。幸い、東京電力が自重したため、変更認可申請補正書や審査書(案)では22兆Bq/年を上限とすることに留まりましたが、原子力規制委員会の姿勢に根本的な疑念を持たせるものでした。猛省を促したい。

理由:政府基本方針では、「放出するトリチウムの年間の総量は、事故前の福島第一原発の放出管理値(年間22兆ベクレル)を下回る水準になるよう放出を実施し、定期的に見直すこととする。」とされ、22兆Bq/年を上限として、その範囲内で見直すように指示しています。変更認可申請補正書でも、審査書(案)でも、そのように記されています。ところが、審査段階では、原子力規制委員会の側から、この22兆Bq/年の値そのものを変更する余地を残すよう東京電力に迫る場面が2度ありました。
最初は第11回審査会合(2022.3.1)で、新井安全審査官が「22兆Bqの内訳、それをどういうふうに管理するか・・・廃炉等の進捗に応じて年間放出量を適宜見直すとも表明しているんですけども、そこの具体的なやり方というのも説明をお願いします。」と問われ、松本室長(東京電力HD)は「特に22兆Bqを見直すというような考えは今のところは持っておりません。」と回答しましたが、金子対策監が「22兆Bq/年が変化するかもしれないという政府方針の見直しの規定の話がありましたけれども、別に今考えておられないということは理解をした上で、将来何が起こるか分からないので、この世界。一応政府方針にもそのように、弾力条項的に書いてあるので、そういう場合どうするのか、具体的な計画じゃなくて、実施計画の中でそれを読み込めるようにしておくのか、実施計画では一応このまま行くんだけど、そういうことが起きたら、もう一回実施計画書き直すっていうような腹にするのかは、ちょっと実施計画上の、申請上の分かれ道だと思うので、読めるように書いておいていただくのがいいのではないかと思っていますけれども、そこはちょっと東京電力で、ご検討していただいたほうがいいかなと先ほど思いました。」と、政府方針そのものを曲解し、22兆Bq/年の値そのものを見直す余地を残すよう迫ったのです。このため、松本室長(東京電力HD)は「承知いたしました。政府方針をしっかり順守するっていうのも、私共の責任でございますので、申請、特に補正の際に考えたいと思います。」と応じ、金子対策監は「はい、よろしくお願いいたします。」と議論を閉じたのです。
しかし、第14回審査会合(2022.4.11)で東京電力から示された「政府の基本方針を踏まえた当社の対応の実施計画への反映内容等について」では、「年間22兆Bqを上限とし,これを下回る水準とする」、「年間放出量22兆Bqの範囲内で柔軟に対応する」という内容に留まりました。これに伴信彦原子力規制委員が反応し、「当面は22兆Bq/年の範囲内で行うとして、これを増やすべきか減らすべきかという議論は行われていない。廃炉作業を早く円滑に進めるという観点からは、できるだけ早く流すという選択肢もないわけではない。22兆Bq/年の中でどんどん減らしますと読めてしまうので、そこはよろしいか。」と詰め寄り、東京電力は「廃炉の進捗に応じてどのような設定にするかというのは今後の検討課題だと思います。22兆Bq/年の範囲内で実績を積んで安全性を示していきたい。」とかわしています。このような原子力規制委員会の姿勢は、規制側が推進側に立ってALPS処理水放出を促すものであり、根本的な疑念を抱かせます。極めて重大であり、猛省を促したい。