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経団連の1月16日提言を受け、中間取りまとめに対する9つ目の意見を出しました

経団連による1月16日の提言=「電力システム改革貫徹のための政策小委員会(貫徹小委)」の中間取りまとめに対する提言を受け、9つ目の意見を出しました。経団連は「原発再稼働が進まない中では、非化石電力が不足し、電気料金全体の上昇の懸念があるとして、平成29年度の市場創設には反対」(産経新聞2017/1/16)しているようですが、これは原発が再生可能エネルギーの普及を妨げているからです。それを指摘するための意見を下記のように提出しました。

「2.5. 非化石価値取引市場の創設」(pp.11-15)について

非化石価値取引市場の創設については、「エネルギー供給事業者による非化石エネルギー源の利用及び化石エネルギー原料の有効な利用の促進に関する法律(以下、「高度化法」という。)により、小売電気事業者は、自ら調達する電気の非化石電源比率を2030年度に44%以上にすることが求められている。(中略)取引所取引の割合が比較的高い新規参入者にとっては特に、非化石電源を調達する手段が限定される状況になっており、高度化法の目標達成が困難な面がある。」(p.11)ことから、「(1)非化石価値を顕在化し、取引を可能とすることで、小売電気事業者の非化石電源調達目標の達成を後押しするとともに、(2)需要家にとっての選択肢を拡大しつつ、FIT制度による国民負担の軽減に資する、新たな市場である非化石価値取引市場を創設することが適当である。」(pp.11-12)とされている。後者の(2)については市場の設計と運用次第で国民負担軽減に寄与すると期待されるが、前者の(1)は政府のエネルギー基本計画に強く依存しており、再生可能エネルギーを大幅に拡大するように変更しない限り、実現できない。

とくに、「非化石証書に関して、その由来する非化石電源種は再生可能エネルギー、原子力が考えられる」(p.13)としているが、「震災前の設備利用率で廃炉になっていない全原発が稼働する」ことを想定した上で再生可能エネルギーの「接続可能量」が毎年設定されており、これを超える場合には「無制限の出力制限」が行われるため、再生可能エネルギー開発事業者は再エネの設置拡大を抑制せざるを得ない状況に置かれている。原子力については、国民の過半数が再稼働に反対しているにも係わらず、原子力が再生可能エネルギーの拡大を政策的に抑制しているのである。

原子力を非化石電源種と見なして「非化石証書」の発行を認めるのは、再生可能エネルギーの普及拡大を妨げるものであり、原子力を「非化石証書」の対象から外すべきである。そして、原子力が再生可能エネルギー普及の桎梏となっている現状を打開するため、エネルギー基本計画を抜本的に改定し、2030年の原子力の比率をゼロにするよう勧告すべきである。そうしない限り、再生可能エネルギーの抜本的拡大は望めないし、「非化石証書」が「非化石電源比率を2030年度に44%以上にする」目標達成に寄与することもできない。

原子力は、発電時にCO2を出さないとされるが、核燃料サイクル全体ではかなりの電力を消費しCO2排出源にもなっているし、発電すれば確実に極めて危険な「死の灰」や超ウラン元素が生み出される。この「負の遺産」はCO2以上に深刻な環境破壊をもたらす源泉であり、福島第一原発事故のように原発重大事故の際には直接的な原子力災害をもたらす。それを実際に経験した日本で、原子力を再生可能エネルギーと同列に置き、「非化石電源種」とみなして「非化石証書」まで発行させるのは余りにも非常識であり、許されることではない。福島の原子力被災者を前にして「原子力は非化石電源種だ」と主張できる鉄面皮な人間はいないはずである。

「FIT電源については、2017年度に発電したFIT電気から市場取引対象とし、できるだけ早い時期に取引を開始できるよう詳細設計・システム対応等に努めることとする。」(p.29)としているが、同時に「接続可能量」の撤廃による再生可能エネルギーの普及拡大を政府に勧告すべきである。経団連は原発再稼働の見込みが乏しいことから2017年度の市場創設に反対しているが、むしろ、逆に、市場創設により、非化石証書の絶対数が不足している現状を浮きださせ、再生可能エネルギーの普及を原子力が妨げている事実を明らかにし、再生可能エネルギー普及に向けたエネルギー基本計画の抜本的改定を求めるべきである。これなくして、非化石価値取引市場は機能せず、意味をなさないのだから

 

「電力システム改革貫徹のための政策小委員会中間とりまとめ」に8つ目の意見を出しました

「電力システム改革貫徹のための政策小委員会中間とりまとめ」に8つ目の意見を出しました。

「2.2. ベースロード電源市場の創設」(pp.3-7)について

中間取りまとめにおけるベースロード電源市場創設の最大の理由は、「石炭や大型水力、原子力等の安価なベースロード電源」に対する「旧一般電気事業者と新規参入者のベースロード電源へのアクセス環境のイコールフッティングを図ること」である。しかし、これは時代遅れであり、自由な電力市場という考え方にもそぐわない。第1に、「活発な競争が行われている自由化先進国」では「ベースロード電源」という位置づけをなくす方向であり、ドイツ等では「脱原発」を国家の政策として掲げて原子力をなくす方向をとっている。「卸電力市場の流動性」を高めることこそが重要であり、そのためには旧一般電気事業者の電力のほとんどを卸電力市場に供出させ、すべての小売り事業者が卸電力市場で電力を調達できるようにする仕組みをこそ検討すべきである。そうでなければ、「スポット市場における取引量の国内電力消費量に占める割合」を「英国:約51%(2013年度)、北欧:約86%(2013年度)、フランス:約25%(2015年)」(p.3注)のように高めることはできない。第2に、中間とりまとめでは「同市場に供出することができる電源種は基本的には限定しないこととする。」(pp.4-5)ともしており、そうであれば、「ベースロード電源」という名称は全く不要であり、電源種を問わない「卸電力市場」に旧一般電気事業者から電力を供出させる仕組みをこそ検討すべきである。第3に、原子力を「安価なベースロード電源」と位置づけるのであれば、「3.2. 原子力事故に係る賠償への備えに関する負担の在り方」、「3.3. 福島第一原子力発電所の廃炉の資金管理・確保の在り方」および「3.4. 廃炉に関する会計制度の扱い」は全面的に削除すべきである。なぜなら、原子力が安価な電源であるというのであれば、原子力に特段の優遇措置を講じる必要は認められないからである。また、国民の過半数が原発の再稼働に反対している現状からすれば、原発再稼働を前提にして、原子力による電力を「ベースロード電源市場」や卸電源市場に強制的に供出させることは断じて行うべきではない。第4に、石炭火力についても、国際的には石炭火力を削減する方向であり、これをベースロード電源として積極的に活用する政策を打ち出すのはパリ協定締約国として恥ずかしい。最も安価な大型水力を除けば、中間とりまとめが念頭に置いている「ベースロード電源」は原子力と石炭火力であり、「脱原発・脱石炭」の国際的な流れに反する。以上より、「ベースロード電源市場の創設」を断念し、原子力と石炭を可能な限り速やかに削減していくような電力市場の設置・運営方針を検討し直すべきである。

また、本来、東京電力や原子力事業者が負担すべき福島原発事故関連費や廃炉関連費を託送料金によって新電力契約者からも徴収する仕組みを導入するに際して、その代償として原子力の電力を新電力にも提供するとしているが、これは筋が違うので、全面的に撤回すべきである。むしろ、新電力が原子力にアクセスできないようにすべきである。新電力へ契約変更した家庭(低圧電力消費者)の多くは原子力を拒否したいのだから。

たとえば、「3.2. 原子力事故に係る賠償への備えに関する負担の在り方」の「(3)留意事項」には「原子力に関する費用について、託送料金の仕組みを通じた回収を認めることは、結果として、原子力事業者に対し、他の事業者に比べて相対的な負担の減少をもたらすものである。このため、競争上の公平性を確保する観点から、原子力事業者に対しては、例えば、原子力発電から得られる電気の一定量を小売電気事業者が広く調達できるようにするなど、一定の制度的措置を講ずるべきである。」(p.20)としているが、「競争上の公平性を確保する観点」と「原子力へのアクセス確保」は無関係である。家庭の電力消費者から見れば、原子力事業者でない新電力の魅力は「再生可能エネルギーなど原子力以外の電力を供給」している点にあるからである。「原子力事故に係る賠償への備えに関する負担」を新電力に義務づけるのをやめ、新電力の原子力へのアクセスを不可能にし、旧一般電気事業者には原子力と石炭火力以外の電力の卸電力市場への供出を措置すべきである。

「3.4. 廃炉に関する会計制度の扱い」の「(3)留意事項」でも「発電に係る費用については、本来、発電部門で負担すべきであり、託送料金の仕組みを利用して廃炉会計制度を継続することは、制度を適用した事業者と他の事業者との公平な競争環境を損なうこととなる。(中略)原子力発電から得られる電気の一定量を小売電気事業者が広く調達できるようにする」(p.24)としているが、これも同様である。

電力システム改革貫徹のための政策小委員会 中間とりまとめに対する7つめの意見を提出しました

「3.4.廃炉に関する会計制度の扱い (2)原子力発電施設解体引当金について」(p.25)の「(参考図18)見直しのイメージ」には、「引当方法は、定額法を維持し、引当期間を40年に前倒した上で全額を事業者の負担で引当て。ただし、運転期間の延長が認められた場合には、適切な費用配分の観点から、その時点で引当期間を60年に延長することを認める。」とある。これでは、早期廃炉にして廃炉会計制度の対象とする(解体引当金残額を10年間で分割回収する)よりも、新規制基準適合のための対策工事を行って運転期間を60年に延長させるほうが有利になる。高浜1・2号や美浜3号のように、40年を超えて運転を続けようとするものに対しては、早期廃炉にしないのだから、例外なく、引当期間を40年に前倒しすべきである。
とくに、廃炉会計制度によるコスト回収が託送料金を通じて行われることになれば、巨額の対策工事費を費やしても、運転60年またはそれ以前に廃炉になっても、その時点で未償却資産はすべて、廃炉後10年間での定額償却と確実なコスト回収が保証されることから、早期廃炉への動機付けはますます失われる。
いやしくも、早期廃炉への動機付けを主張するのであれば、「運転期間の延長が認められた場合には・・・引当期間を60年に延長することを認める」とのただし書きは撤回すべきである。
また、廃炉会計制度によるコスト回収を託送料金に転嫁して行う方針は、高浜1・2号や美浜3号で典型的に見られたように、巨額の工事費を要する40年超運転への動機付けを一層高めるものであり、撤回すべきである。
電力自由化の下では、廃炉会計制度の対象となるものも含めた、すべての原発コストについて、電力市場で決まる電気料金で回収すべきである。それが困難だというのであれば、電力会社が自ら原発の40年超運転を断念すべきである。早期廃炉を決断した場合にも、廃炉後の未償却資産の長期分割回収を認めて特別損失の一括計上を求めないことはあっても、それを託送料金に転嫁して確実に回収するようなことを保証すべきではない。それは電力自由化の考えに反するからである。

「電力システム改革貫徹のための政策小委員会中間とりまとめ」の意見公募に意見を6つ提出しました

「電力システム改革貫徹のための政策小委員会中間とりまとめ」の意見公募に意見を6つ提出しました。

意見募集のサイトはこちら(2016年12月19日~2017年1月17日)

黙っていては国民が馬鹿にされます。皆さんも、意見をドンドン出してください。
とんでもない経産省と東京電力、電力会社などをギャフンと言わせましょう。
署名もやっていますので、ご協力ください(署名はこちら)。

<意見1>——————————————–
「3.2.原子力事故に係る賠償への備えに関する負担の在り方」(pp.17-21)と東電の破産処理について
福島第一原発事故の損害賠償費7.9兆円、福島原発廃炉費8兆円、除染費4兆円、放射能汚染土等中間貯蔵施設費1.6兆円など合計21.5兆円、さらに来年度予算から公共事業費で賄おうとしている帰還困難区域除染費等は全額、事故を起こした責任者である東京電力が支払うべきである。それができないのであれば、東京電力を破産処理し、東京電力の歴代役員は私財を供出し、社債株主、一般株主、金融機関は債権放棄し、事故の連帯責任をとるべきである。2016年3月末現在、東京電力ホールディングスの純資産は2.2兆円だが、社債2.9兆円、長期借入金1.9兆円、流動負債2.8兆円で合計7.6兆円の負債があり、これらを債権放棄させれば9.8兆円もの資金が引き出せる。また、原発重大事故の危険を顧みず、福島第一原発の建設を許可し、その安全性にお墨付きを与え、巨額の原子力予算で東京電力をはじめ原子力事業者を支援し、原発推進策をとり続けた歴代政府の責任を明らかにし、原発推進政策を脱原発へ転換すべきである。その上で、東京電力を破産処理してもなお不足する費用については、まず、原子力発電による最大の利益享受者である原子力メーカー、電力会社など原子力事業者、鉄鋼・金属産業の大企業メーカーに法人税で供出を求め、それでも不足する分については、電気料金や託送料金からではなく、富裕層により多くの負担を求める累進課税による国民負担とすべきである。
2011年に制定された「原子力損害賠償支援機構法」(2014年8月「原子力損害賠償・廃炉等支援機構法」に改訂)に基づき、現在9兆円の交付国債の元本を賄うため、東京電力には特別負担金、東京電力を含む電力会社・日本原子力発電・日本原燃の原子力事業者11社には一般負担金が課せられ、「原子力損害賠償・廃炉等支援機構」に毎年納付することになっている。しかし、電力会社など原子力事業者はこれまで、電気料金が総括原価方式で決められていたことから一般負担金1,630億円をそのまま電気料金のコストに転嫁し、「コストとして計上され保証された報酬を含めて得られた純利益」からは一円の負担金も出していない。機構法には「(原子力事業者は)負担金を納付しなければならない」と定められているだけで、「負担金を電気料金のコストに転嫁してよい」とは書かれていない。にもかかわらず、経済産業省は一般負担金の電気料金への転嫁を省令改訂でこっそり強行し、今また、一般負担金の「過去分」2.4兆円を託送料金へ転嫁しようとしている。「過去分」を含めて、一般負担金は原子力事業の利益から身を切って納付すべきであり、それで初めて相互扶助制度の意味が出てくるのであって、それを電気料金のコストに転嫁して電力消費者から徴収し、原子力事業者が身を切らずに納付するのであれば、相互扶助制度にはならず、単なる収奪になり、原子力事業者のモラルハザードを招く。電気料金の支払いにも苦労している低所得者層に一層の負担を強い、脱原発の再生可能エネルギーを志向して新電力に切り替えた電力消費者に原発コストの支払いを強要する「一般負担金『過去分』の託送料金への転嫁」は止めるべきである。
経済産業省は今回、「過去分」以外の本来の一般負担金を託送料金へ転嫁する方針を断念したようだが、電力自由化の下で電気料金が下がれば、これをコストとして回収できなくなり、「過去分」と同様に、規制制度の残る託送料金へ転嫁するのではないかと危惧される。今回は「一般負担金過去分」に限って託送料金で回収するシステムを国民に認めさせ、数年後に「過去分」の文字を消し去って、一般負担金を託送料金で全額回収するようになるのではないかと非常に危惧される。なんとなれば、経済産業省は2013年以降の原発廃炉会計制度においても、小さな穴を開けて、数年後に大きく対象を拡大させる方法を駆使してきた前例があるからである。また、2005年度に再処理費準備金制度を創設し、それ以前の「過去分」を「使用済燃料再処理等既発電費相当額」として15年間、託送料金で回収することになった際、河野太郎衆議院議員によれば「(過去分をPPSの顧客に負担させるのは)今回の小委員会で最後」にするとして、議論が終了したとされる。今回の一般負担金「過去分」は「最後のはずの託送料金への転嫁」を何の反省もなく再度行おうとするものである。このような国民だましの欺瞞的方策をくり返すのはもう止めるべきである。

<意見2>——————————————–
「3.2.原子力事故に係る賠償への備えに関する負担の在り方」(pp.17-21)の一般負担金「過去分」について
経済産業省は損害賠償費の一般負担金「過去分」2.4兆円を40年間にわたって毎年600億円を託送料金で回収しようとしているが、電力会社など原子力事業者が本来の一般負担金1,630億円/年とともに、自らの利益から賄うべきであり、託送料金への転嫁は止めるべきである。
なぜなら、第1に、これは「原子力事業者間の相互扶助制度」による負担金であり、東京電力の特別負担金と同様に、原子力事業者の利益から賄うべき性質のものである。原子力損害賠償・廃炉等支援機構法には原子力事業者が「負担金を納付しなければならない」と明記されているにもかかわらず、原子力事業者は現在、一般負担金の全額を電気料金のコストに転嫁して電力消費者から回収しており、一円たりとも自分の利益によっては負担していない。電力自由化の下では電気料金は市場で決まるため、電気料金のコストとして回収できる保証はなくなったが、今後はその下で利益を削ってでも、2.4兆円の「過去分」を含めて一般負担金の全額を自ら工面して納付すべきである。それが本来の姿である。にもかかわらず、回収できない可能性があるからといって、「過去分」を託送料金へ転嫁するのであれば、「原子力事業者間の相互扶助制度」とは言えず、「原子力事業者の負担を電力消費者に転嫁する制度」としか言えなくなるからである。
第2に、損害賠償費が2013年見積もりの5.4兆円から7.9兆円へ増加したのだから、本来なら、原子力事業者に義務づける一般負担金を1.5倍程度にすべきである。にもかかわらず、経済産業省は、一般負担金に「過去分」があると称して、無理矢理「過去分」2.4兆円の支払いを電力消費者に転嫁しようとしている。しかし、「過去分」であっても、相互扶助制度の下で納付が義務づけられるのはあくまで原子力事業者であり、電力消費者ではない。「原発の恩恵を被ってきた」から電力消費者が負担すべきだという論理には飛躍があり、法令違反である。なんとなれば、原子力損害賠償・廃炉等支援機構法のどこにも電力消費者が負担金について納付の義務を有するとは書かれていない。負担金の納付義務は原子力事業者にあるのであって、「過去分」を請求されるべきは原子力事業者である。電力消費者はこれまで、原子力事業者の納付すべき一般負担金を電気料金のコストとして支払わされてきたが、それ自体が間違いなのであって、電力消費者には一般負担金を納付すべき義務はない。電力自由化の下で原子力事業者が一般負担金を電気料金から回収できなくなったとしても、それは電力消費者の責任ではなく、あくまで、原子力事業者が相互扶助制度として利益を削ってでも支払うべきものである。
第3に、経済産業省は、一般負担金「過去分」は0.07円/kWhで毎月平均18円程度の負担ですむと試算しているが、これは「過去分」だけを取り出して小さく見せかけて国民をだますトリックであり、「電力会社と新電力との電気料金の格差を縮めて電力会社に有利にしよう」という本来の意図を覆い隠すためのものにほかならない。新電力と電力会社の規制料金との差は電灯料金で0.5円/kWh程度であり、「過去分」0.07円/kWhを電力会社が負担すると、その差が0.57円/kWhへと広がる。これを新電力にも負担させれば、その差は開かない。「過去分」だけなく、今の1,630億円の一般負担金も託送料金に転嫁できれば、電力会社の負担は変わらないが、0.2円/kWhを新電力に負担させることができて、電灯料金の差は0.5円/kWhから0.3円/kWhへ縮まる。経済産業省は猛烈な反対にあって、今は黙っているが、これが託送料金への「過去分」の転嫁の次の目標となっているのは間違いない。
第4に、一般負担金「過去分」は、商品を売った後で「製造費を少なく見積もっていたので、製造費の見直し分を払ってください」という請求書を後出しで送ってくるようなものであり、商法に違反し、政府による詐欺的行為である。商法第502条三項には「電気又はガスの供給に関する行為」を「営業としてするときは、商行為とする。」と記載されており、どこにも電気に関しては商取引が終わった後で、しかも、数十年も経った後で、付け忘れていたコストの請求書を出して回収できるとは、「特例」としても、書かれていない。経済産業省は商法違反の商取引を経産省の政令で行えるとする根拠を示すべきである。

<意見3>——————————————–
「3.2.原子力事故に係る賠償への備えに関する負担の在り方」(pp.17-21)と「過去分」2.4兆円の内実について
「電力システム改革貫徹のための政策小委員会中間とりまとめ」では、一般負担金「過去分」2.4兆円について、「(参考図12)過去分の規模」に示された1966年度~2010年度の設備容量(熱出力)の累計35億kWに約1,070円/kW(日本原燃負担分30億円を除く一般負担金1,600億円を2015年度設備容量1.5億kWで割った値)を掛けて「過去分の総額は約3.8兆円」と推計したうえで、「全ての需要家から公平に回収する過去分の算定に当たっては、2011年度から2019年度までに納付される一般負担金を全需要家から回収する過去分と同様のものと扱い、過去分の総額から控除する。2019年度までに原子力事業者が納付することが想定される一般負担金は、今後の負担金が2015年度と同条件で設定されると仮定すれば約1.3兆円であり、これを過去分総額から控除すると、約2.4兆円となる。」(p.18)としている。しかし、3.8兆円には「2011~2019年度の1.3兆円」は含まれておらず、「控除する」対象にはならない。このようにしたのは、福島事故の損害賠償費が8兆円になると見積もられることから、これに合わせるために用いた理由にならない理屈にすぎない。損害賠償費総額が5.4兆円の見積もりから7.9兆円に増大したと素直に認めれば、この増加分は東京電力の特別負担金と原子力事業者の一般負担金となり、新電力には負担を求められなくなる。そのため、わざわざ一般負担金「過去分」と言う屁理屈を持ち出したと考えられる。その結果、「後出し請求書」という商取引違反行為を政府が犯すという事態に陥ったのである。このような屁理屈は即刻撤回し、損害賠償費の増額だと素直に認めて、東京電力と原子力事業者の責任で全額負担させ、新電力契約者に負担を求めるようになる「託送料金への転嫁」は撤回すべきである。一般負担金は、そもそも、原子力事業者が報酬や利益を削ってでも相互扶助で賄うものであり、それを電力消費者にコストとして全額転嫁して自らは一円も支払わないという制度は相互扶助制度ではなく電力消費者への損害賠償費転嫁制度にほかならない。
この一般負担金「過去分」2.4兆円は、新電力分を除く全額が東京電力を含めた電力会社の一般負担金になるのかと思えば、これも違う。東京電力改革・1F問題委員会の東電改革提言「参考3:確保すべき資金の全体像」や第6回同委員会「参考資料:福島事故及びこれに関連する確保すべき資金の全体像と東電と国の役割分担」によれば、東電を含む電力会社等(日本原燃を含む)には1.53兆円しか求められていない(東電以外の「大手電力」に1.0兆円、東京電力に0.53兆円)。新電力の0.24兆円を含めても1.77兆円に留まり、0.67兆円は東京電力に特別負担金として割り当てられている(東京電力賠償増加分1.2兆円のうち特別負担金0.67兆円)。これでは、新電力に0.07円/kWhの負担を求めながら、電力会社等には0.05円/kWh(=1.53兆円/40年/2015年度電力9社販売電力量7,894億kWh)しか求めないことになる。このような不公平な割り当ては許されない。新電力には一般負担金「過去分」だと称しながら、蓋を開けてみると、東京電力と原子力事業者には一般負担金と特別負担金に分けて割り当てており、国民だましもいいところである。経済産業省は、このような二枚舌が許されると本当に考えているのか。国民を馬鹿にするにもほどがある。
ちなみに、一般負担金「過去分」算定時に、「(参考図12)過去分の規模」では2015年度の一般負担金1.630億円から「日本原燃負担分(約30億円)除く」として1,600億円で計算しているが、日本原燃負担分は日本原燃への出資比率に合わせて電力会社が代理負担しており、これを除く意味がない。一般負担金は日本原燃を含むすべての原子力事業者が負担すべきものであり、ここでも、実質的に電力会社を優遇している。経済産業省はどこを向いて仕事をしているのか、その基本姿勢が疑われる。

<意見4>——————————————–
「3.2.原子力事故に係る賠償への備えに関する負担の在り方」(pp.17-21)の除染費等の東電求償について
政府は12月20日の閣議で「原子力災害からの福島復興の加速のための基本指針」を決定し、原子力損害賠償・廃炉等支援機構を通じた東京電力への資金援助額を3年前の9兆円から13.5兆円に増やした。それは損害賠償費が5.4兆円から7.9兆円に、除染費が2.5兆円から4兆円に、中間貯蔵施設費が1.1兆円から1.6兆円に増えたためである。損害賠償費は東京電力の特別負担金と原子力事業者による一般負担金で元本を補填する方針だが、除染費と中間貯蔵施設費の計5.6兆円は、東京電力の株売却益で賄うことになっており、それで不足する分については「円滑な返済の在り方について検討する」とされており不明である。ところが、会計検査院は2015年3月報告で9兆円の交付国債の一般負担金による返済計画を試算しており、一般負担金は、株売却益が3.5兆円の場合3.7兆円、同2.5兆円の場合4.4兆円、同1.5兆円の場合5.0兆円と増大し、それに伴って回収期間も24年間、28年間、33年間と伸びている。しかも、その前提として東京電力の特別負担金を500億円/年と仮定しており、東京電力が経営難に陥れば、特別負担金は削減され、その分、一般負担金が増やされるか、回収期間が伸ばされる。交付国債が9兆円から13.5兆円に増えると、一般負担金の回収金額と回収期間がさらに1.5倍程度に増えることが懸念される。
株売却益が除染費の4兆円を超え、中間貯蔵施設費1.6兆円を賄える5.6兆円に達するには株価が今の約500円から4倍の1,982円、震災前と同程度にまで回復し、関西電力の今の1,310円の1.5倍にも増える必要がある。福島原発の廃炉作業が30~40年間続くことを考慮すれば、その可能性はないと言っても過言ではない。したがって、このまま放置すれば、一般負担金の回収期間が「過去分」と同様に40年へ延ばされて除染費の不足分が一般負担金で回収される恐れがある。それを警告したのが会計検査院の2015年3月報告だと言える。一般負担金は回収期間が明示されずに回収されるシステムになっており、「電力システム改革貫徹のための政策小委員会中間とりまとめ」はこれについて何も触れていない。電力消費者が知らぬ間に一般負担金が徴収され続けるシステムになっており、回収金額と回収期間が明示されていないのは極めて問題である。株価に係わらず、回収されるべき一般負担金の総額と期間を限定すべきである。「0.24兆円を40年間にわたって託送料金の仕組みを使って新電力に負担させる」という以外の損害賠償費の増分2.2兆円については全額が原子力事業者の一般負担金になるのではなく、東京電力改革・1F問題委員会の東電改革提言「参考3:確保すべき資金の全体像」や第6回同委員会「参考資料:福島事故及びこれに関連する確保すべき資金の全体像と東電と国の役割分担」によれば、2.2兆円の1/4程度が東京電力の特別負担金に割り当てられているようなので、なおさら判然としない。「過去分」を含めて、電力消費者だましの託送料金を通じた一般負担金回収システムは止めるべきであり、原子力損害賠償・廃炉等支援機構法に規定された「原子力事業者の負担」は、電気料金や託送料金のコストに入れて回収するのではなく、「原子力事業者の利益で賄う」ように経産省令を改めるべきである。そうでなければ、原子力事業者が一円も負担しない相互扶助制度がこれまでのように続けられることになる。電力自由化と発送電分離を機に、この悪弊を断つべきである

<意見5>——————————————–
「3.3.福島第一原子力発電所の廃炉の資金管理・確保の在り方」(pp.21-22)について
「電力システム改革貫徹のための政策小委員会中間とりまとめ」では、福島原発廃炉費が当初の2兆円から8兆円に膨らんだことから、その追加分6兆円を託送料金に潜り込ませようとしているが、それは「東京電力の破産を回避するため、その負担を電力消費者に転嫁し、託送料金による負担を強要する」ものであり、断じてやるべきではない。そうでなければ、「重大事故を起こしても、企業は破産せず、逆に、国が電力消費者や国民に負担を強いて支援してくれる」という史上最悪の前例を作ることになる。これは極めて深刻な「原子力事業者のモラルハザード」を招く。「原発重大事故を起こした企業は破産させられ、原子力事業者は連帯責任をとらされる」という前例をこそ作るべきである。
経済産業省は、福島第一原発の廃炉費追加分6兆円を託送料金で賄うことを目論み、「東電による合理化努力」で年間約2,000億円を浮かし、30年程度続けることを想定している。ところが、努力しなくても託送料金コストは下がる。なぜなら、送配電事業は固定資産比率が高く、電力会社の報酬の半分以上を稼ぎ、コストの半分が資産の減価償却費なので、送配電網を新たに建設した分の減価償却費が増える以外は、何もしなくても減価償却費が下がり、毎年コストが減っていく。そのため、託送料金のコストは毎年数%ずつ安くなっていき、規制料金で保証された報酬に加えて、コスト減少分の利益が貯まり続ける構造になっている。利益が貯まりすぎたり、コストが5%以上に下がりすぎたりすると、託送料金を引き下げる決まりになっているが、東電管内に限って、これを引き下げずに、貯まった利益を原賠機構に預けて「廃炉基金」として積み立てようとしている。結局、東電管内の電力消費者が、新電力の契約者も含め、引き下げられずに高止まりになった高い託送料金を払わされることになる。経産省は「託送料金への上乗せ」には猛反発されて断念したが、「託送料金への潜り込ませ」なら大きな反対はないだろうと踏み、国民を馬鹿にしている。託送料金を下げずに高止まりにして消費者に高い託送料金を支払わせるような欺瞞は断じて許せない。しかも、このシステムが一旦導入されると、廃炉費が8兆円からさらに増大しても、電力消費者が全く気付かない間に、経産省令を少しいじることでコスト増分を託送料金へ簡単に転嫁できるようになる。経産省は「託送料金や電気料金が上がらないようにする」と強調しているが、逆である。経産省がやるべきことは、電力自由化の下で電気料金や託送料金をいかに下げるか、再生可能エネルギーをいかに普及させるかに知恵を絞るべきであり、電気料金や託送料金が下がらない仕組みを導入してまで東京電力を救済するのは止めるべきである。

<意見6>——————————————–
「3.4.廃炉に関する会計制度の扱い」(pp.22-26)について
原発コストのうち、廃炉時点での廃炉費積立不足金や未償却資産については、特別損失として一括計上せずに廃炉後も10年間定額回収などで確実に回収できるようにする会計制度が2013年と2015年に制定され、電力完全自由化後には託送料金を通じて回収できるように検討することになっていた。今回の「電力システム改革貫徹のための政策小委員会中間とりまとめ」では、これらのコストを託送料金へ転嫁するのが妥当だとしているが、その根拠が不明である。電力自由化で「規制料金が撤廃される」のは当たり前のことであり、それ自身は根拠にならない。「原発は最も発電単価の安い電源だ」と称してきたのであるから、他の電源よりもそのコスト回収は容易なはずであり、「他の電源の発電コストは回収可能なのに、なぜ原発のコストが回収できなくなるのか」その根拠を示すべきである。それを示さずに、原発だけ規制制度の残る託送料金でコストを回収するというのは筋が通らない。「原発依存度の低減や廃炉の円滑な実施等のエネルギー政策の目的を達成するために講ずる例外的な措置」だと言うが、託送料金へ転嫁しなければこれらのコストを回収できないとは断じていない。託送料金へ転嫁しなくてもこれらのコストを回収できるのであれば、「原発依存度の低減や廃炉の円滑な実施等のエネルギー政策」に何の影響もないはずである。経産省は。「託送料金へ転嫁しなければ、これらのコストを回収できなくなる」という根拠をこそ示すべきである。そうでなければ、議論の前提が成立たない。もし、「回収できない」のが現実であれば、「原発の発電単価は他の電源より高い」ということであり、原発を推進する一つの根拠が崩れることになる。この最も重要な点についてキチンと説明できないようでは、電力自由化の下でこれらのコストを託送料金に転嫁することは、前提が成立たず、断じて認められない。
そもそも、託送料金に規制制度が残るのは、経産省自身が「電力の小売り全面自由化の概要」(2015年11月)で述べている次の理由からである。送配電事業では、(1)需給バランス維持を義務づけ、(2)送配電網の建設・保守を義務付け、(3)誰でも電気の供給を受けられる最終保障サービスを義務付け、(4)離島でも他地域と遜色ない料金水準で電気を供給するユニバーサルサービスを義務付けることが必要であり、そのために現行と同様の地域独占と料金規制(総括原価方式等)を措置する。したがって、規制制度を残す理由とは無関係な「原発のコストを確実に回収するため」という理由では、託送料金へコスト算入することはできないはずである。ましてや、原発の発電単価が最も安いのであれば、なおさら、託送料金へ繰り入れる理由がない。
また、「原発依存度の低減」のための会計制度だと経産省は主張しているが、40年運転ルールで廃炉になった原発は6基にすぎず、関西電力は美浜3号、高浜1・2号は約4,000億円の安全対策工事と2,000億円ものテロ対策工事を注ぎ込んで40年超運転の準備を進めている。なぜなら、再稼働できずに廃炉になってもこれらを未償却資産として回収できるからである。廃炉になった第1世代の小規模原発6基は投資効果に乏しいから廃炉になったのであり、廃炉時の未償却資産が回収できずに損失になるからではない。現に、これら6基の廃炉費積立不足金は252億円、未償却資産は1,540億円、合計1,792億円、1基当り平均300億円弱にすぎない。これに対し、美浜3号の安全対策工事費は1,650億円であり、さらにテロ対策工事費に1,000億円近くがかかる。このような出費に投資効果がでなければ、電力会社は投資しないのであり、美浜3号では投資をして失敗しても回収できる会計制度があるから40年超運転へ動いたのである。経産省の言う「事業者が合理的な意思決定ができず廃炉判断を躊躇する」という事態はむしろ起きておらず、逆に、「再稼働できなくても、廃炉会計で投資を回収できるから安全対策工事をやって40年超運転をめざす」という合理的意思決定を行ったのであり、「廃炉判断を躊躇せず拒否した」のである。したがって、今の廃炉会計制度の対象となるコストは、電力自由化の下で託送料金に転嫁せず、通常の競争下でこれらのコストを回収すれば良いのである。「原発は安い」のだから。

美浜3号審査書(案)に関するパブコメ回答は審査ガイド違反です

原子力規制委員会は2016年10月5日の第35回本会議で「関西電力株式会社美浜発電所の発電用原子炉設置変更許可申請書(3号発電用原子炉施設の変更)に関する審査書」を確定させ、パブコメへの回答=「審査書(案)に対する御意見への考え方」を承認しました。しかし、その回答は出された意見を正面から受け止めず、審査ガイド違反を糊塗する内容であり、容認できません。ここでは、私が提出した4つの意見への回答について、その主な内容に限って批判しておきます。
–<整理番号901E145:意見1(16-18ページ)>———
【御意見の概要】
 「C断層」と「大陸棚外縁~B~野坂断層」では震源断層が傾斜して交叉しており、地下震源断層長さは地表断層長さとは異なっているため、松田式で地震規模を算定する際には地下震源断層の平均長さを用いるべきである。また、それを踏まえて、「大陸棚外縁~B~野坂断層」に耐専式を適用して地震動評価を行うべきではないか。
【御意見への考え方】
 「応答スペクトルに基づく地震動評価」に用いる断層長さについては、申請者が、文献調査のほか、変動地形学的調査、地表地質調査、海上音波探査等による詳細な調査を行い、活断層長さを適切に評価し、C断層や大陸棚外縁断層~B断層~野坂断層においては地表で断層が認められない部分も含めて設定していることを審査で確認しています。Noda et al.(2002)による地震動評価のために必要な地震規模(マグニチュード)については、地表地震断層の長さと地震規模との関係の経験式である松田式を用いて算定していることを審査で確認しています。
 また、「応答スペクトルに基づく地震動評価」における距離減衰式については、申請者が、その適用条件、適用範囲を検討用地震ごとに検討を行い、適切に選定していることを審査で確認しています。C断層については、Noda et al.(2002)の方法の適用性について、極近距離からの乖離に着目して吟味し、乖離が小さいため、当該方法により評価を実施していますが、大陸棚外縁~B~野坂断層については、極近距離から大きく乖離しており、当該方法の適用範囲外であるため、他の距離減衰式を用いて地震動評価を行っていることを審査で確認しています。
 なお、申請者が、Noda et al.(2002)の方法におけるパラメータの設定に当たっては、不確かさを考慮していること、Noda et al.(2002)の方法における内陸地殻内地震の補正係数は適用しないものとしていることを審査で確認しています。
【考え方への批判】
  原子力規制委員会・規制庁は「地表地震断層の長さと地震規模との関係の経験式である松田式」と記していますが、1995年兵庫県南部地震の後に、旧原子力安全委員会で松田式は「地表地震断層の長さ」とではなく「地下に広がる震源断層の長さ」と地震規模との関係式として地震データに適合することが確認され、発案者である松田時彦による新松田式を採用する必要はないとの結論を出しています。これによれば、地表における地震断層や活断層の長さではなく、地下の震源断層の平均長さを用いるべきです。これが意見の核心であるにもかかわらず、無視しようとしているのです。
 また、「Noda et al.(2002)の方法におけるパラメータの設定に当たっては、不確かさを考慮している」と記していますが、意見4にも記載したとおり、新潟中越沖地震の教訓から震源特性を1.5倍にする、すなわち、「内陸補正係数を適用しない」のは不確実さの一つ(正確には認識論的不確実さの考慮)にすぎず、人間には制御できない自然現象の偶然変動=偶然的不確実さを全く考慮しようとしていません。しかも、意見4で指摘したとおり、最新の知見では、認識論的不確実さから区別される偶然的不確実さは「平均+標準偏差」で「平均の1.75倍」に相当します。意見1ではあくまで平均像としての地震動の過小評価を指摘しており、認識論的不確実さや偶然的不確実さはその次に検討すべき問題なのです。
<提出した意見1(16-18ページ)>
「C断層」と「大陸棚外縁~B~野坂断層」では震源断層が傾斜して交叉しており、地下平均断層長さは地表断層長さとは異なっており、松田式で地震規模を算定する際には地下震源断層の平均長さを用いるべきである。これは、旧原子力安全委員会での審議結果を受けてそのように改訂されたものであり、これに従うべきである。
また、入倉式では地震規模が過小評価される傾向があるため、とりわけ「大陸棚外縁~B~野坂断層」では地震調査研究推進本部のレシピ(イ)を用いるべきであり、そうすれば、国内地震観測記録に基づく耐専スペクトルと同等の地震動評価結果になる。
以下、具体的に述べる。
(1)美浜3号の「C断層」では、断層が60度傾斜し外側へ広がる形で交叉しているため、地表断層長さより地下震源断層の平均断層長さの方が大きい。耐専スペクトルの方が断層モデルよりやや小さくなっている。このため、耐専スペクトルのほうが断層モデルによる地震動評価結果より小さくなっている。
これは耐専スペクトルの地震規模を求める際に地下震源断層の平均断層長さを用いていないからであり、地表断層長さ18kmからは松田式でM6.9となるが、地下震源断層の平均断層長さ20.6kmを用いればM7.0になる。
したがって、耐専スペクトルをM6.9からM7.0へやや大きくすべきであり、そうすれば、両者がほぼ一致する。
この場合には、断層が外側へ傾斜して断層面積は大きくなっているため入倉式でもほぼM7.0になり、地震調査研究推進本部(推本)のレシピ(ア)と(イ)でほとんど結果は変わらない。
(2)「大陸棚外縁~B~野坂断層」では「大陸棚外縁断層」の部分が60度傾斜し内側に交叉しているため、地表断層長さより地下震源断層の平均断層長さのほうが小さい。
耐専スペクトルはC断層と同様に地下震源断層の平均長さを用いるべきであり、そうすればM7.7(断層長さ49km)からM7.5(同40.4km)と小さくなり、C断層と同等に極近距離からの乖離が小さくなるため、これを「適用外」にする根拠はなくなる。これを適用すれば900ガル程度の耐専スペクトルになり、Ss-1を現在の750ガルから900ガル以上へ引上げる必要がある。断層モデルでは、入倉式では地震規模がM7.4に留まり、また、Δσa=12.2MPaにすぎないため1.5倍にしても18.3MPaに留まり、20MPaを超えない。これは「1.5Δσaもしくは20MPaとする」方針に違反している。
推本のレシピ(イ)によれば、地震規模をM7.5として、Δσ=3.5MPa、Δσa=19.5MPa(Sa/S=0.22と設定)となり、1.6倍になる。そうすれば、耐専スペクトルと断層モデルの地震動評価結果はほぼ同等になる。
このように、地震動評価結果は国内地震観測記録に基づく耐専スペクトルと断層モデルがほぼ一致するのが当然であり、大差が出ているのがおかしいのである。美浜3号では、C断層で耐専スペクトルを採用し、「大陸棚外縁~B~野坂断層」で適用外にしているが、上述のように断層長さを正しく取り直せば適用外にする理由はなく、これを採用し、Ss-1を900ガル以上へ、断層モデルによる地震動評価結果を1.6倍へ引上げるべきである。

–<整理番号901E139:意見2(18-20ページ)>———
【御意見の概要】
 原子力安全基盤機構(2005)は、「M6.5 の横ずれ断層が直下で動けば、Vs=2600m/s の地震基盤表面上で1340 ガルの地震動が生じる」ことを断層モデルで解析しており、これを「震源を特定せず策定する地震動」として評価すべきである。「震源を特定せず策定する地震動」の評価対象を、「得られた地震観測記録」に限るとする科学的根拠はない。
【御意見への考え方】
 震源を特定せず策定する地震動については、震源と活断層を関連付けることが困難な過去の内陸地殻内の地震について得られた震源近傍における観測記録を収集・検討し、原子力発電所の敷地の地盤物性に応じた応答スペクトルを設定して策定することを要求しています。
 評価に当たっては、観測記録を収集し評価することを要求しています。旧独立行政法人原子力安全基盤機構が試算した地震動は、地震動評価の際に参照する基準地震動の超過確率が、どの程度の大きさになるか確認する目的でパラメータを設定して評価した結果であり、試算した地震動をそのまま震源を特定せず策定する地震動として用いるためのものではないことから、検討の対象にしていません。
【考え方への批判】
 「基準地震動及び耐震設計方針に係る審査ガイド」(2013.6)の「2 基本方針」には「(3)「震源を特定せず策定する地震動」は、震源と活断層を関連づけることが困難な過去の内陸地殻内の地震について得られた震源近傍における観測記録を収集し、これらを基に各種の不確かさを考慮して、敷地の地盤物性に応じた応答スペクトルを設定して策定されていること。」と記されているにもかかわらず、意図的に下線部を省略していまう。地震計の設置不足による地震観測記録の不確かさ、破壊開始点が変わったときの不確かさなどは地震観測記録だけでは考慮できないため、再現モデルや地震観測記録に適合したJNESの断層モデル等による地震動解析結果を採用すべきです。それをやらないのであれば、一体どのようにして「各種の不確かさを考慮」するのか、その方法を示すべきです。
<提出した意見2(18-20ページ)>
原子力安全基盤機構JNESによる「M6.5の地震動解析結果」は2004年北海道留萌支庁南部地震および2016年熊本地震の2つの地震観測記録によってその正しさが裏付けられており、JNESによる1,340ガルの地震動を「震源を特定せず策定する地震動」に採用すべきである。
原子力安全基盤機構JNESは「震源を特定しにくい地震による地震動の検討に関する報告書(平成16 年度)」(2005.6)の中で、国内地震データに合わせて独自の断層モデルを構築し、震源近傍の地震動評価を行っている。
その結果、横ずれ断層によるM6.5の地震において、震源近傍の地震基盤(せん断波速度Vs=2600m/s)表面で1,340.4ガルの地震動になるとしている。この地震動解析結果が単なる解析ではなく、実際の地震観測記録によっても裏付けられる。
第1に、2004年北海道留萌支庁南部地震M6.1の地震動とJNESによる縦ずれ断層M6.0ないしM6.5の地震動評価(最大値)が良くあっている。これは原子力規制庁も認めているところである。
第2に、2016年熊本地震の益城観測点での地下地震観測記録はぎとり解析概算約470ガル(南北237ガルを約2倍にしたもの、新潟県中越沖地震での柏崎刈羽原発サービスホールのはぎとり解析では約1.7倍だったが、1.7倍でも400ガルになる)はJNESの解析結果(加速度分布図上の位置と値)とよく合っている。これも原子力規制庁が認めるところである。
ただし、原子力規制庁ははぎとり解析を行う予定はないとしているが、はぎとり解析を行ってこれを正確に確認し、基準地震動策定に生かすべきである。そうすれば、「震源を特定せず策定する地震動」にJNESの1,340ガルの地震動を採用すべきであることがより明確になる。
美浜3号のクリフエッジは1,320ガル(関西電力による第一次評価結果2011.12)であり、JNESの1,340ガルの地震動はこれ以上である。美浜3号の基準地震動にJNESの1,340ガルの地震動を採用すれば、美浜3号の再稼働など認められないはずである。

–<整理番号901E164:意見3(16-21ページ)>———
【御意見の概要】
 実際に地震が発生する前には、断層幅は詳細調査でもわからないため、断層幅等から地震モーメント等を求めるレシピ(ア)よりも、地表の断層長さ等から地震モーメント等を求めるレシピ(イ)を採用すべき。
【御意見の概要】
 断層モデルによる地震動評価結果が、耐専スペクトルのそれに比べ過小になっている場合には、レシピ(イ)を用いて地震動評価をやり直すべき。
【御意見への考え方】
 大飯発電所の地震動について、島﨑元委員長代理の指摘を踏まえ、原子力規制委員会の指示に基づき、原子力規制庁が、地震モーメントを入倉・三宅式とは別の式である武村(1998)の式に置き換え、他を関西電力と同じ条件で試算しようと試みました。しかし、アスペリティの総面積が震源断層の総面積より大きくなり、アスペリティは震源断層の一部であるべきこととの矛盾が発生するなど、地震動評価のための科学的に適切な震源モデルを作成することができず、地震動への影響を議論できる結果を得られませんでした。また、震源断層の詳細な調査結果を用いてレシピにおける入倉・三宅式を用いる方法以外の方法によって基準地震動を作成するというアプローチについては、どのように保守性を確保していくかに関し、妥当な方法が現時点で明らかになっているとは言えず、規制において要求又は推奨すべきアプローチとして位置付けるまでの科学的・技術的な熟度には至っていないと考えています。地震動の計算方法高度化については、まずは、地震調査研究推進本部のような場で議論されるべきであり、そこでの検討結果も含め、新たな知見が得られれば、原子力発電所の規制にどのように取り入れるかについて、原子力規制委員会として適切に判断していきます。
【考え方への批判】
 2005年に公表された推本のレシピ(ア)では実際の地震観測記録に合わないことから2008年にレシピ(イ)が追加され、推本のレシピは事実上これに置き換わったのです。2016年熊本地震でも東大地震研での評価によれば、レシピ(ア)ではなくレシピ(イ)に適合することが示されています。原子力規制委員会・規制庁は「地震調査研究推進本部のような場で議論されるべきであり、そこでの検討結果も含め、新たな知見が得られれば」という悠長なことを言っていますが、レシピ(イ)が策定された経緯をよく理解し、レシピ(イ)で地震動評価をやり直すべきです。「どのように保守性を確保していくか」という議論は基本ケースとしてレシピ(イ)を用いることとは無関係であり、基本ケースがレシピ(イ)で算定されれば、それに基づいて同様の不確実さを考慮すべきです。なお、不確実さ考慮の際に最もよく効いてくる「震源特性1.5倍化」は新潟中越沖地震による200km圏内の地震観測記録と耐専スペクトルとの比較によって得られた知見であり、断層モデルとしてレシピ(ア)とレシピ(イ)のいずれを使うのかとは無関係であり、レシピ(イ)で得られた応力降下量と短周期レベルを1.5倍にすれば良いだけです。ただし、これはあくまで平均像を評価する際の議論であり、耐専スペクトルで「倍半分」のバラツキ(認識論的不確実さと偶然的不確実さの両方を含む)に相当する不確実さを断層モデルにおいても考慮すべきことは当然です。
<提出した意見3(16-21ページ)>
断層モデルが耐専スペクトルと比べてかなり小さい場合には、入倉式による断層モデルのレシピ(地震調査研究推進本部のレシピの(ア)の方法)が地震動を過小算定した結果であり、推本のレシピの(イ)の方法を用いて地震動評価をやり直し、耐専スペクトルと同等のレベルにまで地震動評価を大きくすべきである。その理由は以下の2つである。
(1)耐専スペクトルは国内地震観測記録に基づいて、その平均像を求めるものであるのに対し、断層モデルはシミュレーションに過ぎず、パラメータ次第でどのようにでも操作できるからである。
断層モデルによる地震動評価結果が耐専スペクトルよりかなり小さい場合には地震動を過小評価しているといえる。耐専スペクトルには最近の震源近傍での大きな地震観測記録が反映されていないため、耐専スペクトルそのものが震源近くで過小評価になっている可能性が高く、震源近くでは地震動を一層過小評価している可能性が高いといえる。
(2)不確実さ考慮における「短周期レベル1.5倍」と「応力降下量1.5倍(20MPaより小さい場合は20MPaとする)」は、2007年新潟県中越沖地震の震源特性が通常の地震より1.5倍大きかったという経験に基づいている。
具体的には、「震源距離200km以下で、S波速度700m/s以上の地層が存在し、第三紀以前の地質条件」という条件に合う広域観測記録(K-NET、KiK-net 地表記録)のはぎとり波の応答スペクトルが耐専スペクトル(内陸補正なし)と同等であったという事実に基づいている。つまり、断層モデルによる地震動評価が耐専スペクトルよりかなり小さい状態で応力降下量と短周期レベルを1.5倍にしても意味がない。
美浜3号の場合には、「大陸棚外縁~B~野坂断層」の耐専スペクトルが極近距離よりかなり乖離していることから「適用外」としているが、耐専スペクトルを採用し、断層モデルによる地震動評価結果が過小になっている場合には、推本のレシピ(イ)を用いで地震動評価をやり直すべきである。
このレシピ(イ)について、原子力規制庁は7月27日規制委本会議で、「どのように保守性を確保していくか(断層長さの設定(連動の考慮を含む)、各種の不確かさの取り方等)に関し、妥当な方法が現時点で明らかになっているとは言えず、規制において要求または推奨すべきアプローチとして位置付けるまでの科学・技術的な熟度には至っていないと考える」とケチを付け、その後の記者ブリーフィングでも、「(ア)の方法(推本の入倉式に基づくレシピ)は福岡県西方沖地震など大きな地震が起こるたびにシミュレーションと観測記録を比較してキチンと検証されてきたが、(イ)の方法は検証されていない。
そういう点では地震動評価として用いるにはアの方が適切だと考えている」と主張しているが、嘘をつくのはやめるべきである。
震源断層の推定法は,推本による「活断層の長期評価手法」報告書(暫定版)(2010.11.25)に則って行われており、地震動評価に際して推本のレシピの(ア)と(イ)のどちらを用いるのかとは別問題である。ただし、入倉式による(ア)のレシピを用いる場合には、事前に当該震源断層における地震観測記録が得られていない限り、入倉式に必要な「地下のすべり量分布に基づく不均質な震源断層の広がり」を算出する術はなく、「活断層評価や変動地形学等の測地データに基づく均質な震源断層の広がり」に基づく地震動評価に対しては、(イ)のほうが適切だと言える。
また、推本は2000年鳥取県西部地震や2005年福岡県西方沖地震などの大地震の地震観測記録に基づいてレシピの検証を行い、 「これらの報告を踏まえ、断層モデルの設定において、『長期評価』のマグニチュードと整合し、かつ、簡便な手順でパラメータを設定できる手法を用いて強震動評価を行い、その妥当性を検討した」のが「警固断層帯(南東部)の地震を想定した強震動評価」であり、その手法が修正レシピである。規制庁は事実関係を逆転させて捉え、大嘘をついているが、このような国民をだます主張は撤回し、レシピ(イ)を採用すべきである。

–<整理番号901E155:意見4(16-21ページ)>———
【御意見の概要】
 国内の地震観測記録から得られた経験式である耐専スペクトルは平均像を示すに過ぎず、国内の地震データの分析により得られた結果及び不確かさを考慮するとその値を2倍にする必要がある。
【御意見への考え方】
 地震ガイドでは、応答スペクトルに基づく地震動評価において、用いられている地震記録の地震規模、震源距離等から、適用条件、適用範囲について検討した上で、距離減衰式を適切に選定することを示しており、原子力規制委員会は、審査において、対象となる検討用地震の地震規模や震源距離がNoda et al.(2002)の適用条件、適用範囲を満足しているか否かを確認しています。また、解釈別記2は、「敷地ごとに震源を特定して策定する地震動」の策定においては、検討用地震ごとに「応答スペクトルに基づく地震動評価」及び「断層モデルを用いた手法による地震動評価」を行うとともに、敷地における地震観測記録を踏まえて、地震発生様式、地震波の伝播経路等に応じた諸特性を十分に考慮することを求めています。原子力規制委員会は、申請者が実施した応答スペクトルに基づく地震動評価は、用いる距離減衰式の特徴や適用性、地盤特性を考慮するとともに、断層傾斜角や断層長さ等の震源の不確かさも踏まえて評価していることから、解釈別記2の規定に適合していることを確認しています。
【考え方への批判】
 「敷地における地震観測記録を踏まえて、地震発生様式、地震波の伝播経路等に応じた諸特性を十分に考慮すること」、および、「用いる距離減衰式の特徴や適用性、地盤特性を考慮するとともに、断層傾斜角や断層長さ等の震源の不確かさも踏まえて評価していること」というのは認識論的不確かさの考慮にすぎません。偶然的不確かさはこれとは別であることを意見の中で詳しく説明しているにもかかわらず、全く無視しようとしています。「基準地震動及び耐震設計方針に係る審査ガイド」(2013.6)の「3.3 地震動評価」-「3.3.3 不確かさの考慮」の中でも「地震動評価においては、震源特性(震源モデル)、伝播特性(地殻・上部マントル構造)、サイト特性(深部・浅部地下構造)における各種の不確かさが含まれるため、これらの不確実さ要因を偶然的不確実さと認識論的不確実さに分類して、分析が適切になされていることを確認する。」とあるにもかかわらず、偶然的不確実さについては無視しようとしているのです。これは明らかにガイド違反だと言えます。
<提出した意見4(16-21ページ)>
耐専スペクトルは国内地震観測記録に基づき、その平均像を求めるものであり、そのバラツキは大きく、「平均+標準偏差」は平均の2倍にもなる。地域性などの認識論的不確実さは知見を重ねることで小さくできるが、偶然的不確実さは知見を重ねても小さくできず、その大きさをより正確に推定できるだけである。
内山・翠川(2013)は、防災科学研究所のK-NETおよびKiK-netを対象に,1996~2010年のMw4.5~Mw6.0かつ震源深さ100km以浅の地震で得られた強震記録、756地震40,193データ(165内陸地殻内地震8,431データ、439プレート境界地震22,242データ、152スラブ内地震9,520データ)という膨大な量の国内地震データを分析し、 最大加速度のばらつきは「平均+標準偏差」が平均の2.34倍になること、 地震間のばらつきの43%が偶然的不確定性によるものであることを導出している。
地震内のばらつきも同様になるとすれば、たとえ、不確かさの考慮によって認識論的不確定性によるばらつきをゼロにできたとしても、低減不可能な偶然的不確定性によるばらつきは「平均+標準偏差」が平均の1.75倍になる。
認識論的不確実さをゼロにすることは至難であり、その残余を含めると「平均+標準偏差」は平均の約2倍になると言える。つまり、耐専スペクトルは平均像を示すものにすぎないため、実施の地震動のバラツキを考慮すれば、2倍にする必要があるということになる。この最新の知見を考慮して、美浜3号の耐専スペクトルについても、基準地震動を作成する際には2倍にすべきである。
断層モデルについても、統計的グリーン関数法を用いた断層モデルによる地震動評価時には、要素地震を50個ほど確率論的に作成して地震動を求め、その平均スペクトルに近いメジアンの地震波を代表波としているが、これも平均像に過ぎない。断層モデルについても代表波の振幅を2倍にして耐専スペクトルと同様の余裕を確保すべきである。
このように、耐専スペクトルや断層モデルで2倍にしても平均+標準偏差のバラツキを考慮したに過ぎないが、美浜3号の現在の基準地震動を2倍にするだけで、美浜3号のクリフエッジ1,320ガル(関西電力によるストレステスト一次評価結果2011.12)をこえるため、再稼働できないはずである。