若狭ネット

福井と関西を結び脱原発をめざす市民ネットワーク

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ニュース

福井県の関西電力「使用済燃料対策ロードマップ」受入れに抗議・提出していた公開質問状への回答・説明を11月20日に受け、県原子力安全対策課を追及しました

2023年11月20日午後1時半~3時40分頃、福井県庁1階会議室で、福井県原子力安全対策課と交渉し、10月16日に提出していた公開質問状に基づき、関西電力が「2023年末までに中間貯蔵施設立地点を公表できない場合には美浜3号と高浜1・2号の運転を停止する」という約束を破ったにもかかわらず、それが4度目の約束違反であるにもかかわらず、それを容認し、3基の原発の運転停止を求めなかった福井県知事の責任を追及しました。
同交渉は、サヨナラ原発福井ネットと若狭ネットの呼びかけで、福井と関西から8名が参加し、新聞記者も数名が取材しました。
原子力安全対策課からは、吉田参事と内園主任の二人が対応し、公開質問状への回答は主に吉田参事が行い、質問項目6の関西電力による使用済燃料ピット満杯年の法令違反を前提とした過大算定については内園主任が回答しました。

「関電の『使用済燃料対策ロードマップ』受入れに関する公開質問状」に関する福井県交渉の映像(2023.11.20 福井県庁)

関電の「使用済燃料対策ロードマップ」受入れに関する公開質問状(2023年10月16日)

20231120福井県交渉資料

県原子力安全対策課の回答は、質問項目1には「国において確実に実施してもらう、国の責任で対応していくものと考える」、項目2には「仏での再処理実証計画に応じて必要があれば、積増しが検討される」、項目3には「国が前面に立って進め、関電が実行するよう指導する」、項目4には「現在も県外搬出を求めている、サイト内乾式貯蔵については事前了解願いが出れば総合的に考えていく」、項目5には「搬出量が決まっていない点は不十分だが、社長自ら先頭に立って進める、西村大臣は前面に立って進めると明言したので、全体として理解し、3基の運転継続を了解した」と、マスコミで報道された内容から一歩も出ませんでした。
項目6では、関西電力の主張をそのまま繰り返す説明に留まり、「使用済燃料プールに1炉心分の空きのない違法運転」や「廃炉になった美浜1・2号のプールの空きを美浜3号用に使う違法利用」に基づく過大算定である証拠を目の前に突きつけられ、うろたえながらも、「ご指摘の点は持ち帰って共有する」と言い逃れようとするなど、違法運転を前提とした過大算定を見抜けず、関電の説明に「納得」し「追認」してきた原子力安全対策課の責任を認めようとはしませんでした。このような姿勢で本当に職責を果たせるのでしょうか。
私たちは「2023年末までに中間貯蔵施設立地点を公表する」との関電の約束を守れない以上、3基の運転を停止すべきだと迫りましたが、聞く耳もたずでした。
質問項目1~5の内容はロードマップの実現可能性に関するものなので、その破綻は、すでにほぼ明らかではあるものの、実施できるかどうかはロードマップに記されたそれぞれの項目の期限が近づけば、一層明らかになるでしょう。私たちはこれからも追及の手を緩めず、継続して福井県の責任を追及し続けます。あわせて、質問項目6の違法運転を前提にした満杯年の過大算定についても、関西電力は元より原子力安全対策課の責任を含めて、今後も追及していきたいと思います。
交渉の最後の場面では、老人ホームからタクシーで駆けつけた参加者の一人が、「元福井県職員だから、参事や主任の立場はわかる、この場で指摘されたことを知事などに進言できるかどうかが問われている」と、自らの体験から切々と語られ、大きな拍手が起きました。
くわしくは、上の映像をご覧ください。

ALPS処理水海洋放出に関する「2023.8.7追加質問への原子力規制委員会(2023.10.17)と東京電力(2023.10.18)の回答について」の批判文書を掲載しました

2023.8.7追加質問への原子力規制委員会(2023.10.17)と東京電力(2023.10.18)の回答について

長沢啓行(若狭ネット資料室長、大阪府立大学名誉教授)

批判全文はこちら

(まえがき)トリチウム汚染水(ALPS処理水)の海洋放出が2023年8月24日から始まりました。それは政府と東京電力の強さと正しさを表わすものでは断じてなく、漁民、労働者、市民の反対運動の敗北でもありません。「関係者の理解なしに海洋放出が一方的に強行された」のであり、「廃炉作業を進めるためには避けて通れない」という政府の主張が根本的に誤っていることは、早晩、名実ともに明らかにされ、「何のための放出だったのか」が改めて問われ、「放出中止に追い込まれる」ことは必至です。数年にわたる10団体※による政府・東京電力の追及の結果がそれを示しています。10月17、18日に得た原子力規制庁と東京電力からの「8.7追加質問への回答」(7~10ページ参照)は、私たちの主張が正しかったことを極めて鮮明に裏付けてくれました。一連の交渉の司会進行役の一角を務め、追及の矢面に立ち、全力で交渉を成功に導こうと尽力してきた者の一人として、その責任を果たすため、以下にそれを整理しておきます。それは、私たちの主張に断固たる確信を与え、1日も早く海洋放出中止を勝ち取るための一助になると確信します。(2023年10月28日記)

※交渉呼びかけ10団体:脱原発福島県民会議、双葉地方原発反対同盟、福島原発事故被害から健康と暮しを守る会、フクシマ原発労働者相談センター、原水爆禁止日本国民会議、原子力資料情報室、全国被爆2世団体連絡協議会、原発はごめんだ!ヒロシマ市民の会、チェルノブイリ・ヒバクシャ救援関西、ヒバク反対キャンペーン

項目1.実施計画違反の地下水ドレン中継タンクからウェルタンクを介した2号機タービン建屋への移送について

項目2.実施計画にない「集水タンク満水時に1,500Bq/Lを超えた場合の移送先および移送ライン」について

項目3.集水タンク満水時に1,500Bq/Lを超えた場合の移送先タンク等と移送ラインの仕様不記載について

項目4.IAEAの国際安全基準、正当化、最適化、線量限度について

(参考資料)政府交渉呼びかけ10団体の追加質問への回答
2023年10月17日原子力規制庁
2023年10月18日東京電力

10.26反原子力デーに際して、関電本社へ申し入れを行いました

10月26日は全国一斉に反原発行動を行う「反原子力デー」です。
そもそもの始まりは、60年前の1963年10月26日、日本原子力研究所(現「日本原子力研究開発機構」)の動力試験炉JPDRで日本初の原子力発電に成功したこと。原子力ムラは、この日を「原子力の日」として、全国各地で原子力推進のイベントを繰り広げていました。これに対抗するため、原水禁運動と全国各地の反原発市民運動が連携して1977年10月26日、第1回「反原子力の日」の全国一斉行動に取り組んだのです(原子力資料情報室編「原子力市民年鑑」巻末年表)。今年は47回目になりますが、私たちも毎年かかさず、関西電力本社への一斉申し入れ行動に取り組んできました。

関西電力は、八木誠社長時代に、2015年2月公開質問状への回答を拒否し、面談も拒否して以降、8年以上、私たち市民グループとの面談を拒否し続けています。
今回も、2週間前に関西電力本社広報へ電話で「10月26日午後1時に申し入れるので受け取るように」と依頼しましたが、面会を拒否されたため、予告通りに関西電力本社へ押しかけました。しかし、広報は出てこず、総務が代わりに申し入れや抗議文を受け取りました。

今回の申し入れ行動では、若狭連帯行動ネットワーク、チェルノブイリ・ヒバクシャ救援関西、ヒバク反対キャンペーン、地球救出アクション97、原発の危険性を考える会の5団体が申し入れ文を提出し、さらに、姫路から駆けつけて来られた「上関に原子力施設はいらない兵庫の会」が抗議文を手渡しました。

この「異常」状態は、8年以上続いていますが、私たちは決してくじけません。関西電力が公益事業者としての責任を果たし、市民との対話路線へ復帰するまで、とことん、粘り強く、押しかけ続けます。

申し入れpdfはこちら

2023年10月26日

関西電力株式会社 取締役代表執行役社長 森 望 様

10・26反原子力デーに際して、関西電力への申し入れ

若狭連帯行動ネットワーク

貴社は、10月10日、福井県に「使用済燃料対策ロードマップ」を提示し、「2023年末に使用済燃料中間貯蔵施設の立地点を県外に確定できなければ、美浜3号、高浜1・2号の運転を止める」との約束を守れなかったことには一切触れず、六ヶ所再処理工場のフル操業や仏への搬出量積増しなど実現不可能な搬出計画をさも代替案であるかのように示し、あろうことか福井県内原発サイトでの乾式貯蔵も検討するとしています。これは明らかに貴社の約束違反です。カルテル問題で問われた貴社の公益事業者としての適格性が改めて問われています。福井県との4度目の約束違反を目前にして、立ち止まり、約束違反を率直に認め、直ちに美浜3号と高浜1・2号の運転を停止すべきです。
再稼働を進める中、使った燃料を冷やす使用済燃料ピットが満杯に近づいており、高浜原発は3回、大飯原発は4回、美浜原発は5回の燃料交換で満杯になるため、これらを超えての燃料交換はできず、運転停止を余儀なくされます。貴社は6月12日の記者会見で、高浜・大飯原発の満杯年をそれぞれ4.6年と5.8年と発表していますが、これは使用済燃料ピット内に1炉心分の空きのない違法運転を前提としたものであり、実際には3.8年と5.1年にすぎません。このような違法運転を前提とした試算は国民を欺くものであり、即刻撤回・修正すべきです。
貴社は、8月2日、中国電力と共同で、山口県上関町での中間貯蔵施設建設に向けた調査を実施すると発表しましたが、調査は来春までかかり、建設計画が上関町民や周辺自治体・山口県に受け入れられるとは限りません。地域の住民を分断し、地域生活を破壊するのはもうやめるべきです。「2030年に中間貯蔵施設を操業させる」というロードマップは、残り7年では実現不可能であり、断念し、ロードマップ自体を撤回すべきです。
高浜原発では、トラブルが相次いでいます。高浜4号では原子炉内で核分裂反応を抑える制御棒が落下、電気ケーブルの接続不良で原子炉が自動停止。3号でも昨年7月以降、テロ対策施設の部品不備など、運転上の制限からの逸脱が4件も相次ぎました。原子力規制委員会は今年8月23日、3号の追加検査を決め、高浜原発全体の根本原因の特定など再発防止に向けた改善計画を11月末までに報告するよう指示しています。まさに、貴社の原発は危険な状態にあると認識すべきであり、高浜3・4号40年超運転申請(4月25日)を撤回すべきです。
原発再稼働・40年超運転による利潤追求を続けていては、老劣化によるトラブル・故障・事故を頻発させ、次の定検までのひび割れ放置の強硬運転、異常発見時の無理な運転継続や異常対策等が不完全なままでの運転再開前倒しなどで、予想外の危険な事態を招き、福島事故を繰り返すことになりかねません。一層大量の使用済核燃料を生み出し、次世代に重い「負の遺産」を残します。
原子力は夢のある産業ではなく、若者が将来を夢見ることのできない産業へと転落しています。脱炭素・脱原発の社会に寄与する産業こそ若者に夢を与える産業です。にもかかわらず、貴社は、原発再稼働を最優先させ、目指すべき社会の実現を遠ざけているのです。
以上を踏まえ、次のことを強く申し入れます。公益事業者として自覚した上で、真摯に対応してください。

1.「使用済燃料対策ロードマップ」を撤回し、「2023年末に使用済燃料中間貯蔵施設の立地点を県外に確定できなければ、美浜3号、高浜1・2号の運転を止める」との約束を遵守してください。運転開始40年を超えたこれらの原発を3基とも廃炉にしてください。

2.制御棒落下、配管のひび割れ放置や蒸気発生器細管の減肉など老劣化の進む高浜3・4号と大飯3・4号を廃炉にしてください。

3.むつ市や上関町への使用済燃料中間貯蔵押しつけを断念し、使用済燃料をこれ以上生み出さないでください。

4.プルサーマルを即刻中止してください。プルトニウム利用を断念し、これ以上、MOX燃料の発注・輸送・輸入をしないでください。

5.取替や廃炉による美浜・大飯・高浜原発の蒸気発生器33基をはじめ給水加熱器や核燃料輸送・貯蔵用キャスクなど大型放射性廃棄物の輸出、海外での溶解・再利用の計画を断念し、密閉管理し続けてください。

6.「送配電会社の所有権分離」と「発電会社の所有権分離」を断行し、新電力との公平な競争環境を保障してください。

7.老朽原発の延命や革新軽水炉SRZ-1200の共同開発を断念し、原発依存の経営方針を「脱原発・脱石炭」、「再エネ拡大・優先接続・優先給電」へ大転換してください。

8.原子力発電所の廃止措置においては、放射能で汚染された原子炉建屋等施設・構造物、機器・配管等の早期の解体撤去は行わず、そのまま密閉管理し、100年程度の安全貯蔵期間をとってください。

以上

 

福井県知事に「若狭を核のゴミの墓場にしないでください!! 2023年末までに中間貯蔵施設立地点を確定できないことは明白。関電に、約束通り美浜3号と高浜1・2号の運転を停止するよう求めてください!」の申入れと関電の「使用済燃料対策ロードマップ」受入れに関する公開質問状を提出しました。

関西電力は、「2023年末までに使用済燃料中間貯蔵施設立地点を確定できなかった場合は美浜3号と高浜1・2号の運転を止める」との約束を守れなくなったため、6月12日、高浜原発の使用済MOX燃料10tと使用済ウラン燃料190tの計200tを仏へ搬出する計画を示して、「約束と同等の意義があり約束は守った」と言い逃れようとしました。しかし、福井県議会をはじめ立地町議会などから異議が噴出したため、杉本福井県知事は4項目の質問を政府に投げかけ、回答を待っていました。ところが、関西電力は10月10日、新たに「使用済燃料対策ロードマップ」を福井県に提示し、関西電力をバックアップする政府とともに受入れを迫ったのです。そのわずか3日後の10月13日、杉本知事は「使用済燃料対策ロードマップ」を受入れ、美浜3号と高浜1・2号の運転継続に同意してしまいました。この暴挙に対し、サヨナラ原発福井ネットと若狭連帯行動ネットワークは、共同で、杉本知事への申し入れ(6月15日)と質問書の提出(7月28日)に続き、10月16日、杉本福井県知事へ下記の申し入れと公開質問状を提出しました。
私たちは、この申入れと公開質問状に沿って、杉本福井県知事には、「ロードマップ受入れ」と「老朽炉3基の運転継続同意」の撤回を求め、関西電力には、あくまで、「2023年末に中間貯蔵施設の立地点を確定できない以上、約束通り、美浜3号と高浜1・2 号の運転を止める」こと、「実現可能性のないロードマップを撤回する」ことを求めていきます。

福井県知事宛申入れ(2023年10月16日:pdfのダウンロード)
若狭を核のゴミの墓場にしないでください!!
2023年末までに中間貯蔵施設立地点を確定できないことは明白。
関電に、約束通り美浜3号と高浜1・2号の運転を停止するよう求めてください!

関電の「使用済燃料対策ロードマップ」受入れに関する公開質問状(2023年10月16日:pdfのダウンロード)

サヨナラ原発福井ネットワーク 若泉政人
若狭連帯行動ネットワーク 山崎隆敏

若狭ネット第195号を発行:関西電力は使用済燃料対策ロードマップを撤回せよ! 「約束違反」を認め、美浜3号と高浜1・2号の運転を停止せよ! 正当な理由なきトリチウム汚染水の海洋放出を即刻中止せよ!

若狭ネット第195号を発行しました。

第195号(2023/10/15)(一括ダウンロード5.2Mb
巻頭言–関西電力は使用済燃料対策ロードマップを撤回せよ!
「約束違反」を認め、美浜3号と高浜1・2号の運転を停止せよ!
正当な理由なきトリチウム汚染水の海洋放出を即刻中止せよ!
1. 2023年末までに中間貯蔵施設立地点を確定できない以上、美浜3号と高浜1・2号の運転を停止せよ! まやかしのロードマップを撤回せよ!
2. 混迷する福島第一原発の燃料デブリ取出し工法—廃炉作業を妨げているのは、タンク水ではなくデブリそのもの
3. 東京電力への資金援助額=交付国債13.5兆円の増額を許すな!損害賠償・除染・中間貯蔵・廃炉費は、東電・電力会社負担に!

福井で8月27日「使用済燃料と核のゴミを考える市民シンポジウム」が開かれました

原発が生み出す問題
“使用済燃料”と“核のゴミ”を考える市民シンポジウム
2023年8月27日(福井県国際交流会館 特別会議室)
主催:サヨナラ原発福井ネットワーク

当日は、約40名(登壇者4名を除く)の市民が参加し、熱い質疑を交わしました。

第一部では、NUMOは「次の世代に負担を残さないためにも、原子力発電による電気を利用してきた私たちの世代でできるだけ早く処分に道筋をつけなくてはなりません。」と主張し、長沢氏は「地震・火山列島の日本に科学的有望地などない。使用済燃料など高レベル放射性廃棄物をこれ以上生み出さないことこそが現世代の責任だ。」と真っ向から対立。フィンランドやスウェーデンには19億年前の安定した岩盤が存在するが、日本には数百m地下にそんな岩盤はなく、260万年前~2,300万年前の地層などが「科学的特性マップ」として検討されているに過ぎない点が浮上し、質疑でも取り上げられました。さらに、ドイツのアッセII研究鉱山(岩塩層)では1967~78年に低・中レベル放射性廃棄物4.7万立方メートルの試験的処分が行われましたが、その30~40年後に、地下水が浸入する可能性が指摘され、ドイツ政府は2010年に回収を決定、汚染された岩塩層を含めて20万立方メートル(2023年3月現在推定量)を2033年から数十億ユーロ(2010年に10万立方メートル回収で33.5億ユーロ、約4千億円と試算)をかけて回収作業を開始する点も問題になりました。深地層処分は立地点を決めればよいというものではなく、アッセII研究鉱山のように、処分後に処分場の不安定さなど科学的に未解明な事実が判明する可能性が高く、高レベル放射性廃棄物の「回収可能性」や処分場を元の状態へ戻す「可逆性」も問われました。

第二部では、福井県下でも溜まり続ける使用済燃料の問題が取り上げられ、原発を再稼働すれば使用済燃料が生み出され、使用済燃料プールが数年で満杯になれば、再稼働できなくなる。しかし、中間貯蔵施設ができれば、原発を再稼働させることができ、使用済燃料が際限なく生み出されてしまう。「目先の電気のために、使用済燃料を生み出し続けて良いのか」、将来世代のために、現世代が、もう一度、立ち止まって考え直すべきとの問題提起で、広い分野にわたって熱い質疑が交わされました。

詳しくは、下記の資料および映像をご覧ください。ただし、第一部のNUMOによる説明および質疑については、NUMOから録音・撮影が禁止されたため、映像も音声もありません。

【第一部 核のゴミ、地層処分ってなに?】
◇推進・反対の立場からの説明
<推進の立場から>
原子力発電環境整備機構NUMO
富森 卓(地域交流部専門部長)
山田基幸(技術部部長)
古川 宏(地域交流部、PC操作補助)
説明資料はこちら
<反対の立場から>
長沢啓行(若狭ネット資料室長、大阪府立大学名誉教授)
説明資料はこちら
◇質疑応答
主催者からの事前質問はこちら
NUMO回答追加資料はこちら

New! 質疑応答でのNUMOによる回答はこちら

第一部映像はこちら

【第二部 原発の使用済燃料問題の核心とは?】
長沢啓行(若狭ネット資料室長、大阪府立大学名誉教授)
説明資料はこちら
◇質疑応答

第二部映像はこちら

2023年7月23日ALPS処理水海洋放出方針に関する原子力規制庁・東京電力との10団体交渉報告:IAEA報告は、ロンドン条約を外して国際基準に合致すると強引に結論づけ、トリチウム汚染水(ALPS処理水)の海洋放出を正当化できず、日本政府の責任だと逃げ、推奨も、支持もしないと弁解するだけ=「錦の御旗」にはならない! 東京電力は、関係者の理解が得られていないことを認め、文書確約通り、「たとえ、政府がゴーサインを出しても、放出しない」と約束せよ!

交渉報告> <交渉議事録> <交渉資料> <公開質問状
原子力規制委員会・規制庁への追加質問> <東京電力への追加質問

IAEA報告は、ロンドン条約を外して国際基準に合致すると強引に結論づけ、
トリチウム汚染水(ALPS処理水)の海洋放出を正当化できず、日本政府の責任
だと逃げ、推奨も、支持もしないと弁解するだけ=「錦の御旗」にはならない!
東京電力は、関係者の理解が得られていないことを認め、文書確約通り、
「たとえ、政府がゴーサインを出しても、放出しない」と約束せよ!

トリチウム汚染水(ALPS処理水)の「春頃から夏頃に海洋放出を始める」との方針に対し、「関係者の理解」は全く得られていません。全漁連・福島県漁連等が4回目の「反対」を総会決議し政府に申し入れたにもかかわらず、東京電力は6月26日に海底トンネル工事等を強硬的に完遂させ、日本政府の要請を受けた国際原子力機関IAEAが7月4日に包括報告書を提出し、原子力規制委員会は7月7日に海洋放出設備使用前検査の終了証を発布しました。関係者を無視して海洋放出へひた走る動きが緊迫する中、私たち、脱原発福島県民会議をはじめ10団体は7月23日午後1:30~4:35、海洋放出方針撤回を求め、郡山市内で原子力規制委員会・東京電力との交渉をもちました。市民側参加者約40名(マスコミ数名を含む)で、前回(6/12)の交渉に続き、福島県内各地から多くの市民が駆けつけ、「『関係者の理解なしにはいかなる処分もしない』との文書確約を守れ!」、「IAEA報告は錦の御旗にならない!」、「たとえ、政府がゴーサインを出しても、東京電力は『海洋放出しない』と約束せよ!」と、強い怒りを持って東京電力に迫りました。新地町から参加した漁師歴55年の小野春雄さんは、「海は仕事場だ。神事に身体を清める大事なものだ。海にゴミを捨てることは禁止されているのに、なんで汚染水だけがまかり通るんだ」、「岸田総理は『待ったなし』だと言うが、『待った』はある。一度立ち止まって、冷静に考えれば、子どもでもわかる。流せば、福島がなくなる。福島は死ぬんですか」と、必至に訴え、参加者全員の心に強く響きました。

にもかかわらず、東京電力は、平然と、これまでの回答を淡々と繰り返し、厳しく追及されると、「沈黙」し、「社内へ持ち帰って改めて回答する」との答弁に終始しました。原子力規制庁は、福島担当の総括調整官のため本庁での議論に精通していないためか、不正確な理解に基づく説明をしたため、それは誤解だとたしなめられる始末で、改めて本庁に問い合せて回答し直すことになりました。

東京電力も規制庁も不十分な回答でしたが、それでも、次のように重要な成果が得られました。

政府がゴーサインを出しても、「関係者の理解が得られない限り、東電として海洋放出を強行するな」と迫る

第1に、「ALPS処理水は関係者の理解なしにはいかなる処分もせず、タンクに貯留し続ける」との福島県漁連への文書確約について、前回(6/12)に続き、私たちは、海洋放出反対の全漁連(6/22)・福島県漁連(6/30)による4回目の総会決議、「政府説明不十分80%」との国内世論調査、周辺諸国や太平洋島嶼国の反対など「国内外の関係者の理解」など得られていないことを改めて示し、「たとえ政府がゴーサインを出しても『関係者の理解が得られない限り、東電として海洋放出を強行することはない』と明言せよ」と強く迫りました。しかし、「当社としては、引き続き・・・丁寧にご説明させていただく取り組みを重ねてまいります。」と繰り返すだけで、「放出しない」とは約束しませんでした。そこで、関係者とは誰かと問い直すと、東電は「『関係者』については、人によって、様々なお立場、背景、影響の度合いがあり、考え方、捉え方もそれぞれ異なることから、明確に線引きすることは難しいと考えております。」と同じ回答を読み上げるだけでした。

「放出に反対する私たちは関係者か」と具体的に問うても同じ回答を読み上げ始めたため、「漁師の小野さんの発言は無視するということか」と一喝すると、沈黙を決め込んだのです。これには参加者の怒りが爆発、「関係者が誰かわからなかったら、説明できないじゃないか」と詰め寄られ、「さまざまなメディアを通じて海外とかも含めて、いろんな方々に説明を尽くしている」と逃げようとするなど、しどろもどろの対応に終始したのです。結果として、海洋放出に「理解」は得られていないという事実が明らかになり、「こんな中で流せるはずがない。社内へ持ち帰って、努力したけど理解は得られませんでしたと上に報告する」よう求め、東電として「この状況では放出できない」と表明するよう改めて求めました。

地下水ドレン汲上げ水6.5万m3のALPS処理水への混在は「緊急な対応」との主張に矛盾が顕在化

第2に、「サブドレンおよび地下水ドレン汲上げ水の混在するALPS処理水は海洋放出できない」との原子力規制庁担当者の断言(2023.2.9対政府交渉)に基づき、私たちは、前回(6/12)に続き、ALPS処理水には地下水ドレン6.5万m3が混在しており、それが「緊急的な対応」だったのでやむを得なかったように言うが、そのような事実はなく、ALPS処理水は海洋放出できないはずだと迫りました。東京電力は前回交渉での宿題に対する7月3日回答で、海側遮水壁閉合に伴う地下水ドレン汲上による「集水タンクへの移送量が想定よりも多く、集水タンクへの移送停止で地下水位の上昇が継続し、地下水ドレンの汲み上げ水の移送先を集水タンクから2号タービン建屋へ切り替えた」と答えていました。これが「緊急的な対応」の中身でしたので、私たちは、「集水タンクが満杯になる危機的状況はなく、集水タンクからタービン建屋へ移送先を切り替えた事実もない」ことを具体的にデータで示しました。東電は、それには正面から答えず、「地下水ドレンが稼働した2015年11月以降の地下水位及び移送量のデータが示すように降雨により地下水位が上昇してきたために、先回回答の通り、汚染した地下水が海洋へ流出することを回避するためにタービン建屋へ移送しています。2015年11月汲み上げ開始当初はT.P.2m(東京湾平均海面基準の標高2m)を一つの目安として、降雨により水位が上昇すると、汲み上げ量を増加させて、T.P.2mに水位低下させるという運用を行っておりました。」と、降雨が緊急事態であるかのように言い繕おうとしたのです。前回は、「地下水ドレン汲上げ水のタービン建屋への移送」は、海側遮水壁閉合に伴う地下水上昇に対処するための「緊急的な対応のもの」で、集水タンク満水時に「トリチウム濃度が運用目標の1,500Bq/Lを超えないようにタービン建屋へ移送したものではない」と繰り返し、今回は「降雨による地下水位上昇」への「緊急的な対応」にすり替えようとしたのです。たとえ、地下水位の上昇が、「海側遮水壁閉合による地下水位上昇」と「降雨による影響」が重なったものであったとしても、現に、集水タンクが満杯になる危機的状況など存在せず、地下水ドレン汲上げ水は、中継タンクA・Bはタービン建屋へ、中継タンクCは集水タンクへ、それぞれほぼ全量が最初から移送されていて、集水タンクからタービン建屋への移送切換もなかったのです。つまり、「緊急対応」をでっち上げてタービン建屋へ移送していたのです。これを裏付けたのが2015年8月28日の面談資料でした。そこには「集水タンクのトリチウム濃度が上昇した場合,集水タンクの水質に影響を与えている可能性のあるサブドレンのくみ上げを調整するなどの対応も検討します。一方,地下水ドレンは集水タンクの水質に影響を与えている可能性があった場合にも,海側遮水壁から地下水が溢れないよう,くみ上げを継続します。」「地下水ドレンでくみ上げた地下水は,トリチウム濃度上昇時に備えて、地下水ドレンの中継タンクからタービン建屋に移送できるよう移送ラインを設置済みです。」とあります。これを東京電力に示すと、それは2015年8月21日にすでに公表していると発言し、「移送ラインの設置」をいつ公表したかに論点をすり替えようとしました。そこで、「中継タンクA・Bでは、トリチウム濃度の上昇傾向が事前にわかっていたため、事前にタービン建屋への移送ラインを設置し、海側遮水壁閉合後もトリチウム濃度が高かったため、タービン建屋へ最初から移送した。中継タンクCでは、トリチウム濃度が低かったため、最初から集水タンクへ移送し、地下水位が上がっても集水タンクへ移送し続け、タービン建屋への切換はしていない。」という事実を突きつけたところ、東電は沈黙しました。

代わりに、それまで黙って聞いていた規制庁が、不正確な理解に基づく的外れな質問を司会者に繰り返してきたため、それは誤解だと詳しく説明し、詳細がわからないのであれば、本庁に問い合せて回答し直してくださいとたしなめました。ただし、仮設ポンプでタービン建屋へ移送するのが緊急対応であれば認められるが、緊急対応でなければ認められないこと、定常的にやっているのであれば「まずい」ということ、が明らかになりました。6.5万トンの移送は定常的ではないのか、との質問には沈黙し、本庁へ問い直すことになったのです。結果として時間切れで、東京電力への追及は中途半端に終わりましたが、重大な矛盾点が浮き彫りにされたと言えます。

8月21日の東電ホームページでの公表内容は8月28日の面談資料と全く同じものでしたが、「サブドレン他水処理施設における中低濃度タンクへの移送ライン増設」などの実施計画変更申請を行った際の説明資料でした。これは、「地下水ドレンでくみ上げた地下水は,海近傍からくみ上げた水であるため,塩分濃度が高いことも予想され,タービン建屋に移送した場合,セシウム吸着装置の処理に影響を及ぼす可能性があることから,移送先の多様化を図るために,集水タンクを経由して,35m盤のタンクを移送先とした移送ラインを設置します。」というもので、タービン建屋へ移送できないほど塩分濃度の高い地下水ドレン汲上げ水を集水タンクを介して35m盤のRO濃縮水処理水中継タンク(1,000m3)へ移送するというものです。
これは集水タンク満水時に1,500Bq/Lを超えた場合に「タンク等へ移送」とされているタンクとは別物で、後者のタンクは実施計画には未だに存在しないのです。さらに重要なことは、2015年8月21日に実施計画変更申請を行いながら、そこでは「タービン建屋への移送ライン」の追記がなされていないのです。

いずれにせよ、海側遮水壁閉合に伴う地下水上昇は計画段階から予想され、トリチウム濃度の高い地下水が多く含まれることもわかっていましたので、集水タンクへ全量移送すれば、満水時に1,500Bq/Lを超えることは「事前に十分想定」された事態だったのです。実施計画未記載の瑕疵や実施計画違反の責任を「緊急対応」や「緊急的対応」で正当化することなど許されません。

IAEA報告は、ロンドン条約を国際安全基準から除外し、「線量告示」違反を無視している

第3に、IAEA包括報告は、「ALPS処理水の海洋放出に対するアプローチおよび東京電力、原子力規制委員会、日本政府による関連活動は、関連する国際安全基準と合致している」とし、「総合的な評価に基づいて、東京電力が現在計画しているALPS処理水の放出が人々と環境に及ぼす放射線影響は無視できる程度である」と結論づけています。東京電力や政府はIAEA報告を「科学的根拠となる錦の御旗」のように見なしていますが、私たちは、IAEAの国際安全基準には、「種類、形状または性状によらず、放射性廃棄物その他の放射性物質の故意の海洋処分(投棄)を全面禁止」したロンドン条約が除外されていること、同条約では「リスクが10億分の1未満と小さいが、人命に害を与えたり重大な損傷を引き起こしたりしないとは証明できない」という専門家パネル報告を受けて全面禁止が採択され、「薄めれば安全になる」という主張はロンドン条約で明確に否定されていること、しかも、IAEAはALPS処理水の海洋放出を「正当化」できず、「それは日本政府の責任」だと逃げ、「その政策を推奨したり支持したりするものではない」と弁解さえしていることを指摘し、「科学的根拠」もなく「錦の御旗」にもならないと批判しました。東京電力は、ロンドン条約事務局IMOもIAEAの国際安全基準策定に関与していると反論しましたが、IMOは基準策定には関わっても、報告書作成には関わっていないという当たり前の事実を指摘すると、沈黙し、「社に持ち帰って検討する」ことになりました。

放射線被ばくを労働者や人々に強要する際には、IAEAも国際放射線防護委員会ICRPも「正当化、最適化、線量限度」の三原則を遵守するよう求めています。しかし、IAEA報告では、ALPS処理水の海洋放出の「正当化」はなされず、「最適化」では、「タンク保管継続で被ばくのリスクをなくせる」という現実を見ず、「線量限度」についても、福島第一原発では、2023年6月1日現在なお敷地境界モニタリングポストで空間線量が2.9~8.9mSv/年と依然高く、公衆の被ばく線量限度1mSv/年を担保するための「線量告示」を満たせない違法状態にあり、ALPS処理水の海洋放出など新たな放射能放出が許されないことには目をつむっています。東京電力は今回も、原子力規制委員会から措置を講ずべき事項で「追加的な放出等による敷地境界での実効線量を年間1mSvとすることが求められている」と主張して原子力規制委員会に下駄を預け、この「追加的な実効線量(追加線量)が1mSv/年以下なら線量告示違反にならない」という法的根拠を示すことはできず、「詳細は原子力規制庁へご確認ください」と逃げたのです。規制庁も追加線量で規制しているとはいうものの、その法的根拠は示せないままでした。「追加線量」の趣旨は、敷地境界の実効線量から事故時の放射能災害による放射線の寄与分を「現存被ばく状況」と見なして除外するというものですが、線量告示には、現存被ばく状況や計画被ばく状況の区別はなく、実効線量から除外できるのは自然放射線と医療被ばくだけです。「追加線量が1mSv/年を超えなければ違法ではない」とする根拠法令など存在しないことが前回に続き明らかにされたと言えます。そうである以上、法令違反(線量告示違反)のALPS処理水は海洋放出できないはずです。

ALPS処理水を海洋放出しなければならない3つの理由は、「海洋放出ありき」が大前提

第4に、東京電力や政府が挙げる「ALPS処理水を海洋放出しなければならない3つの理由」(①タンクは2023年春頃満水になる(現時点の評価では来年2月~6月頃)、②廃炉作業のために敷地を空ける必要がある、③汚染水は今後も発生し続ける)には根拠がないとする私たちの主張に対し、東京電力は今回もまともに答えず、①は「タンク増設はしない」方針ありき、②は「不要不急の敷地利用」計画ありき、③は「汚染水発生ゼロはめざさない」方針ありき、の回答に終始しました。つまり、3つの理由は、「海洋放出ありきを前提に捻出されたもの」だったことが、前回に続き、今回も明らかになったのです。

一つもタンクが建たないわけではない!ALPS処理水の海洋放出で廃炉に見通しがつく!?

①については、「フランジタンク解体エリアには溶接タンク約9万トンが増設可能で、空けた状態の予備タンクが2.5万トンもあり、計12万トンの余裕がある」との私たちの指摘に、東京電力は今回も正面から答えず、「今後、福島第一原子力発電所において、より本格化する廃炉作業を安全・着実に進めるためには、敷地内に新しい施設を建設する必要があります。敷地内にタンクをこれ以上の増設は、今後の廃炉作業に支障が出る虞があり、ALPS処理水を処分してタンクを減らすことが必要と認識しています。」と前回より抽象的な回答に後退しました。福島第一原発の敷地近くに住んでいた住民が、「線量が高すぎてもう住めないのでタンク増設に使うんだったら手放す意思がある」と言っていると参加者から紹介されても、東京電力は、「非常に有り難いご意見だが、敷地の中で廃炉を完遂したい。一つもタンクが建たないわけではないが、それを続けていると先々行き詰まる。」と弁解し、「増設できるけど、増設しない」との本音を吐露したのです。

②の敷地利用計画についても、「廃炉の一環であるALPS処理水の処分についても見通しを付けることは、廃炉作業の見通しを付けることになると考えております。」と、「ALPS処理水を海洋放出すれば廃炉の見通しがつく」かのような非科学的虚言をつくほどに後退しました。

③については、「配管貫通部以外からも建屋内へ流入する可能性は否定できないことから、建屋内滞留水の水位よりも周辺の地下水位を高い水位で管理することにより、建屋外へ汚染水が流出しないよう管理しております。」と周知の水位管理法を抽象的に回答するだけでした。他方では、「地下水位低下による汚染水発生量ゼロ」を「床面露出」と短絡させ、「α核種がダスト化するのでのよくない」と主張するなど、思い込みによる反論ばかりでした。1・4号機はすでに地下水流入がほぼゼロですが、床面露出しているわけではありません。2・3号機も建屋内水深2mのまま、サブドレン水位を下げることで地下水流入ゼロになると主張しているのに、東京電力には「理解」できないのでしょうか。

この交渉でも明らかなったように、ALPS処理水を海洋放出しなければならない理由など存在せず、正当化することなどできないのです。こんな理不尽なトリチウム汚染水(ALPS処理水)の海洋放出は何としても阻止しましょう。

呼びかけ10団体:脱原発福島県民会議、双葉地方原発反対同盟、福島原発事故被害から健康と暮しを守る会、フクシマ原発労働者相談センター、原水爆禁止日本国民会議、原子力資料情報室、全国被爆2世団体連絡協議会、原発はごめんだ!ヒロシマ市民の会、チェルノブイリ・ヒバクシャ救援関西、ヒバク反対キャンペーン

連絡先:原子力資料情報室(担当:高野聡)Tel:03-6821-3211<takano@cnic.jp>
チェルノブイリ・ヒバクシャ救援関西(担当:振津かつみ)Tel:090-3941-6612<cherno-kansai@titan.ocn.ne.jp>

 

福井県知事に「約束通り、高浜1・2号機、美浜3号機の運転を止めるよう関電に求めてください!」の申し入れと質問書を提出しました!

サヨナラ原発福井ネットと若狭ネットの共同で、杉本福井県知事へ申し入れ(6月15日)と質問書の提出(7月28日)を行いました。
7月28日の質問書提出には、福井県原子力安全対策課の吉田参事が受け取り、質問書については持ち帰って検討し、回答するとの約束をとりつけました。
関西電力は、使用済MOX燃料の仏への搬出・再処理研究が「2023年末までに中間貯蔵施設立地点を公表できなければ高浜1・2号と美浜3号の運転を止める」との約束の前提が果たせたと主張していますが、私たちは、これは欺瞞であり、県民を馬鹿にした態度だと厳しく追及し、福井県としてこれを受入れず、厳正に対処するよう求めました。
吉田参事は、県としては6月23日に政府への再回答を求めていて、その回答待ちだと繰り返すだけでした。

関西電力は6月12日の仏搬出・再処理研究を記者発表した際、県内原発の使用済燃料の満杯時期について「美浜3号6.6年、高浜1~4号4.6年、大飯3・4号5.8年」と答えています。しかし、これは「管理容量の定義が異なり、使用済燃料プールに1炉心分の空きのない状態での違法運転を想定している」ことを私たちは資料で具体的に指摘しました。
また、以前は「美浜3号は9年運転できる」と豪語していましたが、今回の記者発表では6.6年へ大幅に短くなっていると指摘し、これは「美浜3号では廃炉になった美浜1・2号の貯蔵プールの空きを3号用に使うことを想定していた」ものを今回は想定から外したためだと指摘しました。
いずれも、福井県原安課は、かつて関西電力から説明を受けた際に、これらの違法運転やプール容量の不正利用が想定されていることに気付かず、満杯年の説明に「納得」していたのです。私たちの従来からの指摘を真摯に検討していれば、自分たちでもそれを見抜けたはずですが、その反省もない様子でした。
福井県原安課として、かつての姿勢を深く反省し、今回の質問書には真摯に向き合うよう期待したいと思います。

約束通り、高浜1・2号機、美浜3号機の運転を止めるよう関電に求めてください!

杉本達治福井県知事への申し入れ書(2023年6月15日)
杉本達治福井県知事への質問書(2023年7月28日)
質問書に関する詳細資料はこちら
7月28日の動画はこちら

サヨナラ原発福井ネットワーク(連絡先:若泉政人)
若狭連帯行動ネットワーク(連絡先:山崎隆敏)

若狭ネット第194号を発行:トリチウム汚染水(ALPS処理水)海洋放出絶対反対! 関電は約束違反を認め、高浜・美浜原発の運転を止めよ!

若狭ネット第194号を発行しました。

第194号(2023/7/20)(一括ダウンロード3.7Mb)
巻頭言–トリチウム汚染水(ALPS処理水)海洋放出絶対反対!
関電は約束違反を認め、高浜・美浜原発の運転を止めよ!
1. 使用済MOX燃料等の仏搬出・再処理は関西電力の「約束」とは無関係!
関西電力は約束違反を認め、高浜1・2号と美浜3号の運転を停止せよ! 山崎隆敏(越前市)
2. IAEA報告は、ALPS処理水の海洋放出を「正当化」できず、ロンドン条約・国内法令違反を無視し、「害の受忍」を世界に迫るもの
3. 原子力規制委員会は、実施計画の違反容認・不記載の責任をとり、「実施計画違反のALPS処理水海洋放出」を即刻中止せよ!

2023年6月12日ALPS処理水海洋放出に関する10団体主催・東京電力との交渉報告:東京電力は文書確約を遵守し、真水による試験放出など準備作業を直ちに中止し、「福島県漁連などが反対している限り放出しない」と約束せよ!サブドレン及び地下水ドレン運用方針違反、実施計画違反の責任をとり、「トリチウム汚染水(ALPS処理水)の夏頃海洋放出」を断念せよ!

2023年6月12日ALPS処理水海洋放出に関する10団体主催・東京電力との交渉報告

東京電力は文書確約を遵守し、真水による試験放出など準備作業を直ちに中止し、「福島県漁連などが反対している限り放出しない」と約束せよ!サブドレン及び地下水ドレン運用方針違反、実施計画違反の責任をとり、「トリチウム汚染水(ALPS処理水)の夏頃海洋放出」を断念せよ!

東京電力への質問書(2023.5.30)
東京電力との交渉報告
東京電力との交渉記録
東京電力との交渉資料

トリチウム汚染水(ALPS処理水)の海洋放出に向けた準備作業が「汚染水を真水に置き換えての海洋放出の試験運転」という最終段階に入った6月12日、早朝から試験放出が始まる緊迫した状況の中、私たち、脱原発福島県民会議をはじめ10団体は午後1時半から4時前まで、海洋放出撤回を求め、福島市内で東京電力との交渉をもちました。市民側参加者約50名(マスコミ5名を含む)で、その大半は福島県内の各地から駆けつけた市民で、「これまで何度も、関係者の理解を得ない限りは放出しないと言っていたのに、真水で試験放出を開始するとは、東電は何を考えているのか!」「約束違反ではないか!」と、強い怒りを持って東電に抗議しました。そして、参加者が一体となって東京電力の無責任な姿勢を追及し、海洋放出の撤回を求めました。
東京電力は当初、「マスコミは最初の挨拶までで退席するように」と求めていましたが、会場の強い抗議の声で「一通りの東電回答終了まで取材可」となりました。ところが、東京電力は今回、文書回答の事前提出に応じず、準備した東電回答を次々と読み上げたのですが、「重要な質問項目を飛ばして回答しない」、「全く異なる質問に同じ回答を延々と続ける」など人を馬鹿にした回答が続いたため、回答のいい加減さをデータで具体的に指摘し、質問の趣旨を正確に説明して具体的に回答するよう求めました。すると、東電側出席者4名全員が回答できずに黙ってうつむく「沈黙の時間」が増え、「(指摘された点について)ここでは肯定も否定もできない」、「社へ持ち帰ってしかるべき部門に伝え、すべての質問項目に対して6月末を目途に文書回答を出す」という結果になったのです。結局、一通りの東電回答だけで2時間を費やしたものの、マスコミは最後まで退席せずに取材できました。
不十分な東電回答でしたが、それでも、質問の趣旨を巡るやりとりや東電の「度重なる長い沈黙」・回答姿勢などを通じて、次のように重要な成果が得られました。

ALPS処理水海洋放出に「理解」は得られず、準備作業強行が逆に「理解」を妨げ、不信感を増している

第1に、「ALPS処理水は関係者の理解なしにはいかなる処分もせず、タンクに貯留し続ける」との福島県漁連への文書確約について、私たちは、福島県漁連が「絶対反対」を貫いており、「国内外の関係者の理解」など得られていないこと、海底トンネル掘削工事や真水による試験放出は文書確約違反であり、関係者の理解を一層困難にしていることを改めて示し、「真水による試験放出を直ちに中止し、福島県漁連などが反対している限り放出しない」と約束するよう強く迫りました。司会や会場からの鋭い追及に、東京電力は長く「沈黙」して答えられず、「予め頂いていない質問だ」とかわそうともしましたが、質問内容そのものだと迫られると、「『理解』については、いろんな立場、考えの方がいて一律には言えない」、「準備作業が『理解』を妨げることにはならない」と開き直りました。すると、司会や会場から一層激しく追及され、東京電力は論点を変えようとしたり、「それぞれの立場を尊重して説明させて頂いている」と逃げようとするなど、しどろもどろの対応に終始したのです。結果として、海洋放出に「理解」は得られておらず、準備作業の強行が逆に「理解」を妨げていることが事実で示されました。

地下水ドレン汲上げ水6 .5万 m 3のALPS処理水への混在は「緊急的な対応」の結果だと口裏合わせ

第2に、「サブドレンおよび地下水ドレン汲上げ水の混在するALPS処理水は海洋放出できない」との原子力規制庁担当者の断言(2023.2.9対政府交渉)に基づき、私たちは、ALPS処理水には地下水ドレン6.5万 m 3が混在しており、ALPS処理水は海洋放出できないはずだと迫りました。すると、東京電力は、「地下水ドレン汲上げ水のタービン建屋への移送」は、海側遮水壁閉合に伴う地下水上昇に対処するための「緊急的な対応のもの」で、集水タンク満水時に「トリチウム濃度が運用目標の 1 ,500Bq/Lを超えないようにタービン建屋へ移送したものではない」と主張し、「タービン建屋へ移送した地下水ドレン汲上げ水6 .5万トンは、混在してはならない地下水ドレン汲上げ水」とは異なるかのように言い繕おうとしました。これに対し、トリチウム濃度が高い場合はタービン建屋へ、低い場合は集水タンクへ移送していることを示すデータを突きつけたところ、「ここでは否定も肯定もできない」と逃げ、「社へ持ち帰り、改めて回答する」ことになったのです。この背景には、東京電力の運用方針違反(「 1 ,500Bq/Lを超える地下水ドレン汲上げ水は希釈しない、排水しない」に違反)・実施計画違反(「地下水ドレン汲上げ水はすべて集水タンクへ移送し、満水時に 1 ,500Bq/Lを超えたらタンクへ移送する」に違反)を覆い隠し、原子力規制委員会・規制庁の実施計画不備の瑕疵を隠蔽しようという目論見があるのです。原子力規制委員会・規制庁については、実施計画では地下水ドレン汲上げ水はすべて集水タンクへ移送することになっていて、タービン建屋への移送は実施計画違反なのにそれを黙認したこと、集水タンク満水時に 1 ,500Bq/Lを超えた場合に移送先となるタンクや移送配管・移送ラインが実施計画に記載されていないことなどが重大な瑕疵となります。これらの責任を追及されないよう、「地下水ドレン汲上げ水のタービン建屋への移送」について、原子力規制庁は「緊急対応の一環」だと言い、東京電力は「緊急的対応」だと主張するなど、事前に口裏合わせをして逃げようとしていることも明らかになりました。ちなみに、東京電力回答で「緊急対応」とせず「緊急的対応」としたのは、「緊急」とは言えない後ろめたさからからだと思われます。
いずれにせよ、海側遮水壁閉合に伴う地下水上昇は計画段階から予想され、トリチウム濃度の高い地下水が多く含まれることもわかっていましたので、集水タンクへ全量移送すれば、満水時に 1 ,500Bq/Lを超えることは「事前に十分想定」された事態だったのです。実施計画未記載の瑕疵や実施計画違反の責任を「緊急対応」や「緊急的対応」で正当化することなど許されません。

タービン建屋への移送先を2号機と3号機に分けたのは「平準化」のためというが、事実無根である

第3に、「(2015年11月からの)地下水ドレン汲上げ水のタービン建屋への移送先は2号機タービン建屋(実施計画未記載の既設ライン)」である一方、「(2017年2月からの)地下水ドレン汲上げ水の前処理後の濃縮塩水移送先は3号機タービン建屋(実施計画記載の新設ライン)」と異なっている理由について、東京電力は「タービン建屋からの移送ポンプの移送量を平準化すること」が目的だと主張しました。しかし、2号機と3号機の建屋内の滞留水量は2016年平均で16 ,217 m 3と16,558 m 3、2017年平均でも13 ,317 m 3と13 ,255m3でほぼ同程度であり、タービン建屋からの移送ポンプの移送量を平準化しなければならないほどの不均衡はありません。また、地下水ドレン汲上げ水とウェルポイント汲上げ水の2号機タービン建屋への合計移送量は2016年の78 ,029 m 3から2017年に8 ,820m3へ一桁下がり、2018年には地下水ドレン汲上げ水の2号機タービンへの移送がゼロになってウェルポイント汲上げ水の移送量3 ,768 m 3だけになる一方、3号機タービン建屋への濃縮塩水の移送量は2017年に805m3で2号機への移送量の1割弱にすぎず、201 8年には46 m3へさらに減っています。これでは、とても「平準化」などと言えるものではありません。つまり、2号機と3号機の「タービン建屋からの移送ポンプの移送量を平準化」する目的だとは到底言えないのです。
要するに、地下水ドレン汲上げ水前処理後の濃縮塩水移送先を3号機とした本当の理由は、「ウェルポイント汲上げ水と地下水ドレン汲上げ水のウェルタンクを介した2号機タービンへの移送ラインがすでにあり、それが実施計画に未記載の違反状態にあったため、今さら濃縮塩水の2号機タービン建屋への移送を『新設』ラインとして申請できない」という事情があったのではないかと思われます。これも、実施計画違反や実施計画未記載の瑕疵などを隠蔽する行為の一環だと思われます。

ALPS処理水海洋放出は、公衆の被ばく線量限度1 mSv/年を担保するための「線量告示」に違反する

第4に、私たちは、福島第一原発では、2023年6月1日現在なお敷地境界モニタリングポストで空間線量が2.9~8 .9 mSv/年と高く、公衆の被ばく線量限度1mSv/年を担保するための「線量告示」を満たせない違法状態にあり、ALPS処理水の海洋放出など新たな放射能放出は許されないと主張しました。これに対し、東京電力は、原子力規制委員会から措置を講ずべき事項で「追加的な放出等による敷地境界での実効線量を年間 1mSvとすることが求められている」と主張して原子力規制委員会に下駄を預け、この「追加的な実効線量(追加線量)が 1mSv/年以下なら線量告示違反にならない」という法的根拠を示すことはできませんでした。そうである以上、法令違反(線量告示違反)のALPS処理水は海洋放出できないはずです。
かつては、「 ①事故直後には、その前の1年間と比べると1 mSvを超えていて違法状態だったが、 ②次年度からは、敷地外(周辺監視区域外)に存在する放射性物質による放射線量は、「元々あったもの」であり、「自然放射線」と同じとみなされる、 ③事業所内の作業で前年度と比べてどれだけ放射線量が上乗せされたかが法令での規制対象になる。したがって、敷地境界での空間線量のモニタリングの実測値とは関係なく、前年度に比べて、上乗せされる計算上の線量が年 1mSv以内であれば法令遵守である。」(脱原発福島県民会議との 2022.4.12意見交換後のアドバイザーへの東電担当者の説明)という極論を述べていましたが、この点に関する脱原発福島県民会議による2022年5月26日付け質問書への2022年6月17日付け東電回答では、「十分なご説明が出来ず、誤解を与えてしまったと考えております。今後は、資料に基づき、事前に準備のうえ、対応させていただきます。」と前言を撤回し、今回と同じ内容を回答していたのです。線量告示には、現存被ばく状況や計画被ばく状況の区別はなく、実効線量から除外できるのは自然放射線と医療被ばくだけです。「追加線量が 1mSv/年を超えなければ違法ではない」とする根拠法令など存在しないことが改めて明らかにされたと言えます。

ALPS処理水を海洋放出しなければならない3つの理由は、「海洋放出ありき」が前提で捻出されたもの

第5に、東京電力や政府が挙げる「ALPS処理水を海洋放出しなければならない3つの理由」(①タンクは2023年春頃満水になる、②廃炉作業のために敷地を空ける必要がある、 ③汚染水は今後も発生し続ける)には根拠がないとする私たちの主張に対し、東京電力はまともに答えず、 ①は「タンク増設はしない」方針ありき、②は「不要不急の敷地利用」計画ありき、 ③は「汚染水発生ゼロはめざさない」方針ありき、の回答に終始しました。つまり、3つの理由は、「海洋放出ありきを前提に捻出されたもの」だったのです。

<敷地に余裕があっても、タンク増設せず、不要不急の5・6号機使用済燃料乾式貯蔵施設建設を急ぐ>

①については、「フランジタンク解体エリアには溶接タンク約9万トンが増設可能で、空けた状態の予備タンクが2.5万トンもあり、計12万トンの余裕がある」との私たちの指摘に、東京電力は正面から答えませんでした。その代わりに、 ②との関連で、「燃料デブリ取出しに関連するメンテナンス施設・保管施設や、1~6号機の使用済燃料プールを空にするために必要な乾式キャスク仮保管設備などを2020年代前半頃に着工する」ため、「フランジタンク解体跡地を含め敷地を有効活用する計画」を対置したのです。つまり、「タンクが満杯になる」との主張は、「溶接タンクをこれ以上増設しないという方針ありきの人為的な理由」にすぎなかったことが明らかになったのです。
また、②の敷地利用計画については、事故を起こした1~4号機の使用済燃料の保管だけなら十分すぎる容量(共用プールと乾式キャスク仮保管設備の容量10 ,699体に対し9 ,507体貯蔵中で1 ,192体の余裕あり)がすでにあるのですが、事故を起こしていない5・6号機の使用済燃料2,830体の貯蔵プールからの搬出・保管が必要だとし、共用プール6,595体(容量6,734体)の乾式貯蔵化も進めるという新たな敷地利用計画を持ち出し、敷地が足りない状況を人為的に作り出そうとしたのです。東京電力は、プール貯蔵より乾式貯蔵の方がリスクが小さいと主張していますが、間違いです。使用済燃料をプール貯蔵から乾式貯蔵へ移すには、5~10年以上プールで冷やし、人の発熱量(2~3kW/tU)程度にまで崩壊熱を下げ、空気中でも自然空冷可能な状態にする必要があります。この状態に至ればプール貯蔵と乾式貯蔵のリスクに差はありません。乾式キャスクの表面線量は強い中性子線やガンマ線のため10 μSv/h(年換算88 mSv)程度と高く、コンクリート貯蔵施設で遮蔽しないと85m圏内(伊方原発の場合)を管理区域(3ヶ月当り1.3 mSv)に指定しなければならないほどです。この意味では、共用プールのほうが、放射線を遮蔽できるため、労働者被曝を減らせますし、崩壊熱の高い使用済燃料が今後持ち込まれることもなく、東日本大震災の地震・津波に耐えた共用プールをわざわざ解体して乾式貯蔵へ移行させる必要など全くないのです。
デブリ取出し関連施設もデブリ取り出し作業そのものが止まっていて見通しが全く立たないのが現状です。東京電力は、2号機デブリは横から取出すから原子炉上部のシールドプラグでの高汚染状態は直接影響ないと回答しましたが、これは「極めて能天気な思考」であり、原子炉内に残存するデブリ取出しの困難さを軽視し、当面の場当たり的な取り出し作業しか見ようとしない安直な発想であり、東京電力の「廃炉作業全体を俯瞰しながら作業を進める能力のなさ」を改めて示したものと言えます。

<「地下水の建屋流入」はサブドレン水位を T.P.-2.0mへ下げれば、すぐにもゼロにできる>

③については、「2028年度に汚染水発生量を1日当り50~70m3まで低減することをめざし取り組んでおり、現状において十分管理されていることから、この措置を継続していきます。従って、地下水の流入を完全にゼロとすることはできません。」という回答でした。これも「汚染水発生ゼロはめざさない」方針ありきの回答です。そこで、私たちは、「1号機の建屋貫通部はT.P.2.0m以上と高く、少雨期の地下水の建屋流入量はすでにゼロ、4号機でもサブドレン水位以下の貫通部は2箇所程度で、少雨期の地下水の建屋流入量はほぼゼロ、1号機屋根完成とフェーシングで雨水の地中浸透を防げば、1・4号機では2023年度末頃にかなりゼロへ近づく。2・3号機でも、T.P.-2.0m以下に貫通部はなく、サブドレン水位をそこまで下げれば少雨期の地下水の建屋流入量をゼロにできる。原子炉建屋内滞留水の水位は、2023年3月末に、1号機でT.P.-2.2m程度、2・3号機でT.P.-2.8m程度へ下がっており、サブドレン水位をT.P.-2.0mまで下げれば、貫通部からの地下水流入量はゼロにできる。」と具体的に指摘しました。すると、東京電力は、止水施工をしているとか、原子炉建屋を床面露出させると建屋内の放射性ダスト濃度が上がるとか、サブドレン水位は毎日変化しており建屋内滞留水の水位より低くなると汚染水が漏れ出すとか、汚染水発生量ゼロをめざさない理由を探そうとしました。私たちは、止水施工は雨水対策であり、進めてもらえばいいが、汚染水発生の最大要因である地下水の建屋流入抑制とは関係ないこと、床面露出によるダスト問題は水を低水位で残せばすむこと、建屋内水位と地下水位の逆転防止のために80cmの水位差が設定してあり、これを維持すれば逆転は起こらないこと、などを具体的に示して反論した結果、東京電力は長い沈黙の末に、「ご意見を社へ持ち帰って、しかるべき部門へ伝え、6月末を目途に全質問に対して改めて回答する」ことを約束せざるを得なかったのです。
いずれにせよ、ALPS処理水を海洋放出しなければならない理由など存在せず、東京電力や政府の主張するいずれの理由も、「海洋放出方針ありきの取って付けた理由」に過ぎないことが改めて明らかにされたと言えます。こんな理不尽なトリチウム汚染水(ALPS処理水)の海洋放出は断じて許せません。

東京電力の不誠実な回答を広く伝え、国内外のすべての反対勢力の総力を結集して、福島県漁連との文書確約違反、運用方針違反、実施計画違反、線量告示等法令違反、ロンドン条約違反の責任を追及し、トリチウム汚染水(ALPS処理水)の海洋放出をなんとしても止めましょう!

呼びかけ10団体:脱原発福島県民会議、双葉地方原発反対同盟、福島原発事故被害から健康と暮しを守る会、フクシマ原発労働者相談センター、原水爆禁止日本国民会議、原子力資料情報室、全国被爆2世団体連絡協議会、原発はごめんだ!ヒロシマ市民の会、チェルノブイリ・ヒバクシャ救援関西、ヒバク反対キャンペーン
連絡先:原子力資料情報室(担当:高野聡)< takano@cnic.jp>
チェルノブイリ・ヒバクシャ救援関西(担当:振津かつみ) <cherno-kansai@titan.ocn.ne.jp>