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基準地震動及び耐震設計方針に係る審査ガイドの一部改正案に対する意見募集へ意見を出しました

(意見) 4.2.1の(解説)の改正前の(3)は表1(収集対象となる内陸地殻内の地震の例)とともに削除され、改正後の(3)は「(3)許可基準解釈別記2第4条第5項第3号丸括弧2に掲げる知見については、知見そのものの再度の妥当性確認は要しない。」に書き換えられているが、これを削除すべきである。

また、同(2)の丸括弧2を「丸括弧2 上部に軟岩や火山岩、堆積層が厚く分布する地域で発生した地震(例:2008年岩手・宮城内陸地震(基盤波が得られない場合は地中観測記録の2倍を基盤波とみなすこともある))」と括弧内の注意書きを追記すべきである。

(理由) 「許可基準解釈別記2第4条第5項第3号丸括弧2に掲げる知見」とは、2004年北海道留萌支庁南部地震の基盤地震動および今回新たに設定された標準応答スペクトルのことだが、これらはすでに確定されたスペクトルとして指定されていることから、改めて書く必要もない。にもかかわらず、「知見そのものの再度の妥当性確認は要しない。」としてしまうと、これらだけを考慮すればよいかのような解釈が生まれかねない。地中地震計が全国的に配置されて強震観測記録がとられ始めたのは最近のことであり、2004年北海道留萌支庁南部地震の基盤地震動を超える観測記録が今後生じる可能性は大きい。そもそも、今回の標準応答スペクトルは、2008年岩手・宮城内陸地震の一関西における三成分合成1,078ガルの地中観測記録(はぎとり波2,000ガル弱相当)の基盤波が電力会社のサボタージュによって求められていないこと等から、しびれを切らせた原子力規制委員会が自ら策定したものであり、これらの「知見そのものの再度の妥当性確認は要しない。」と、わざわざ書き込めば、電力会社に猛省を促すどころか、これらの知見さえ満たしておけばよいかのような誤った安心感を電力会社に与えてしまう恐れがある。

さらに、「許可基準解釈別記2第4条第5項第3号丸括弧2の上記2箇所について言えば、次のように「 」書き部分を追記すべきであるとの意見を別途出しているところであり(「実用発電用原子炉及びその附属施設の位置、構造及び設備の基準に関する規則の解釈等の一部改正について」への意見募集)、これとの関係からも、「改正後の(3)」は削除すべきである。

・2004年北海道留萌支庁南部の地震において、防災科学技術研究所が運用する全国強震観測網の港町観測点における観測記録から推定した基盤地震動「および今後収集されるMw6.5程度以下の地震観測記録から推定した基盤地震動で、その応答スペクトルが2004年北海道留萌支庁南部の地震のそれを超えるもの」

・震源近傍の多数の地震動記録に基づいて策定した地震基盤相当面(地震基盤からの地盤増幅率が小さく地震動としては地震基盤面と同等とみなすことができる地盤の解放面で、せん断波速度Vs=2200m/s以上の地層をいう。)における標準的な応答スペクトル(以下「標準応答スペクトル」という。)として次の図に示すもの「(ただし、この標準応答スペクトルは2000~2017年に発生したMw5.0~6.5程度の地震動の非超過確率97.7%(平均+2σ)の応答スペクトルを基に設定したものであり、今後の地震観測記録の収集によって改定された場合にはその応答スペクトル)」

(2)の丸括弧2の中の括弧内注意書きの追記については、電力会社による基盤波解析サボタージュを戒めるために、ぜひとも追記すべきであり、そうでもしない限り、電力会社が猛省して解析を進めることはありえない。原子力規制委員会として、しびれを切らしたと言うのであれば、これぐらいのことはすべきである。

実用発電用原子炉及びその附属施設の位置、構造及び設備の基準に関する規則の解釈等の一部改正案に対する意見募集へ意見を出しました

(意見) 別表第1および別表第2の別記2第4条第5項第三号丸括弧2ならびに別表第3別記2第7条第6項第三号丸括弧2の2箇所について、次のように「 」書き部分を追記すべきである。

・2004年北海道留萌支庁南部の地震において、防災科学技術研究所が運用する全国強震観測網の港町観測点における観測記録から推定した基盤地震動「および今後収集されるMw6.5程度以下の地震観測記録から推定した基盤地震動で、その応答スペクトルが2004年北海道留萌支庁南部の地震のそれを超えるもの」

・震源近傍の多数の地震動記録に基づいて策定した地震基盤相当面(地震基盤からの地盤増幅率が小さく地震動としては地震基盤面と同等とみなすことができる地盤の解放面で、せん断波速度Vs=2200m/s以上の地層をいう。)における標準的な応答スペクトル(以下「標準応答スペクトル」という。)として次の図に示すもの「(ただし、この標準応答スペクトルは2000~2017年に発生したMw5.0~6.5程度の地震動の非超過確率97.7%(平均+2σ)の応答スペクトルを基に設定したものであり、今後の地震観測記録の収集によって改定された場合にはその応答スペクトル)」

(理由) 「震源を特定せず策定する地震動」は「震源近傍における観測記録を収集し、これらを基に、各種の不確かさを考慮して敷地の地盤物性に応じた応答スペクトルを設定して策定すること」となっていたが、今回の改定で「収集し」が削除され、2004年北海道留萌支庁南部地震の基盤波と標準応答スペクトルだけが列挙される形になってしまうと、これ以降に収集される地震観測記録が無視されてしまう恐れがある。そうならないよう、2004年北海道留萌支庁南部地震の基盤波を超えるものが得られた場合にはそれを適用するように明記すべきである。 標準応答スペクトルについては、アプリオリに策定されたものではなく、18年間の地震観測記録に基づき、地震基盤面はぎとり波に不確かさを考慮して策定したものであり、震源を特定せず策定する地震動に関する検討チーム報告書(2019.8.7)に基づいて、策定根拠を明示すると共に、新たに地震観測記録が収集され、更新の必要性が生じた場合には標準応答スペクトルも更新されることを明記しておくべきである。とくに、今回の標準応答スペクトルは、2008年岩手 ・宮城内陸地震の一関西における三成分合成1,078ガルの地中観測記録(はぎとり波2,000ガル弱相当)の基盤波が電力会社のサボタージュによって求められていないこと等から、しびれを切らせた原子力規制委員会が自ら策定したものであり、電力会社に猛省を促す意味でも明記すべきである。

原子力規制委員会へ「平成12年科学技術庁告示第5号(放射線を放出する同位元素の数量等を定める件)の一部を改正する告示(案)」に対する意見を3つ提出しました

<意見その1>

 福島第一原発の敷地境界線量は1ミリシーベルト/年をかなり超える法令違反状態にあり、分析研究施設設置に限定した特例措置とは言え、敷地境界線量のさらなる増加につながる廃炉・汚染水対策の実施は認められないこと等について下記に意見を述べます。

「東京電力福島第一原子力発電所において放射性同位元素を取り扱うに当たっての事業所境界の実効線量の算定に関する原子力規制委員会告示の一部改正案及び意見募集の実施について」(2020年11月11日 原子力規制庁)では、「福島第一原発敷地内においては、自然放射線以外の同発電所事故により放出された放射性物質から発生する放射線により、事業所境界の実効線量が数量告示で定める線量限度(実効線量が3月間につき250マイクロシーベルト)を超えている状況にある。」と認めています。この線量限度は「線量告示」(2015年8月31日原子力規制委員会告示第8号「核原料物質又は核燃料物質の製錬の事業に関する規則等の規定に基づく線量限度等を定める告示」)における「周辺監視区域外の線量限度」、すなわち、「実効線量については1年間(4月1日を始期とする1年間をいう。)につき1ミリシーベルト」に相当します。この線量限度においても、「自然に存在するもの以外のもの」(実用発電用原子炉の設置、運転等に関する規則第2条)を実効線量として算定することとされています。

 福島第一原発敷地境界のモニタリングポスト(MP-1~MP-8)実測値(2020/11/1/pm9:00)は、0.387(MP-6)~1.189(MP-4)マイクロシーベルト/時、年換算値では3.39~10.4ミリシーベルト/年です。福島県における事故前の自然放射線は0.04マイクロシーベルト/時、年換算値0.35ミリシーベルト/年でしたので、自然放射線レベルを3.04~10.1ミリシーベルト/年も超えており、1ミリシーベルト/年の線量限度を2.04~9.1ミリシーベルトも超えています。つまり、現状は、依然として、数量告示にも線量告示にも違反した状態です。

 本来であれば、この違法状態を解消しない限り、「特定原子力施設」として認可された福島第一原発であっても、敷地境界線量のさらなる増加につながる廃炉・汚染水対策の実施は認められず、瓦礫等固体廃棄物および燃料デブリの性状把握のための「分析研究施設(第1棟および第2棟)」の設置や「トリチウム汚染水の海洋放出」などは認められないはずです。代替案が他に全く存在せず、緊急避難的措置が必要な緊急事態であれば別ですが、現状はそのような緊急事態では全くありません。  

ところが、数量告示の一部改正案では、新たに設置される分析研究施設からの敷地境界線量の増加分が1ミリシーベルト/年を超えなければよいとされ、「必要な遮蔽壁その他の遮蔽物を設ける」際の性能要求が大幅に引き下げられ、被ばく防護を犠牲にしたコスト削減が可能な「改正」案になっています。事故を起こした東京電力や国が、自らの責任を棚上げにした上、国民に被ばくを強要して東京電力によるコスト削減を手助けする案になっています。分析研究施設については、瓦礫等固体廃棄物および燃料デブリを扱うセルの遮蔽を強化すればよいのであり、それほど難しいこととは思われません。にもかかわらず、被ばく防護の水準を引き下げるという最もコストのかからない方法で対処しようとする姿勢は、国民の生命・健康を放射線障害から防護する責務を負った原子力規制委員会の立場とは相いれないはずです。

 トリチウム汚染水の海洋放出についても、同様であり、トリチウム以外の核種を極限まで除去した上で、最もトリチウム濃度の高い32万立方メートル、520兆ベクレルを固化埋設し、他の86万立方メートル, 340兆ベクレルは、空いたタンクをも利用して100年間タンク貯蔵すれば、トリチウムは自然に減衰します。その場所は敷地北側に現状でも存在します。しかも、汚染水対策の破綻は、国が凍土遮水壁を採用したことで運命付けられていたことです。通常の大規模土木工事で地下水の流れを大きく変える抜本的な対策があったのに、それでは東京電力救済になるから予算はつけられないとし、成否不明の凍土遮蔽壁なら科学技術予算から支出できるとして凍土遮水壁が選択されましたが、全く機能しませんでした。その失敗のツケを国民に転嫁し、安易な海洋放出で東京電力を救済するのは筋違いです。

 廃炉・汚染水対策で福島県民や国民に新たな被ばくは強要しないという基本原則を守るべきであり、数量告示の一部改正案は撤回し、違法状態の早期解消を求め、新たな対策による敷地境界線量の増分を事故前の自然放射線レベルの変動幅未満に抑えるとか、敷地境界線量遵守のより厳しい改正案とすべきです。

<意見その2>

福島第一原発の敷地境界線量の評価について、原子力規制委員会は、(a)事故当初からの未処理のものによる放射線と(b) 発災以降発生した瓦礫・汚染水等による放射線を分けた上で、線量告示ではリスク低減の目的のために(a)を除外して扱い、今回の数量告示では(a)だけでなく(b)も除外して扱おうとしていますが、いずれも現行法令違反です。これらについて下記に意見を述べます。

 原子力規制委員会は「特定原子力施設への指定に際し東京電力株式会社福島第一原子力発電所に対して求める措置を講ずべき事項について」(2012年11月7日原子力規制委員会決定)で、「特に施設内に保管されている発災以降発生した瓦礫や汚染水等による敷地境界における実効線量(施設全体からの放射性物質の追加的放出を含む実効線量の評価値)を、平成25年3月までに1ミリシーベルト/年未満とすること」を東京電力に求め、第24回特定原子力施設監視・評価検討会で、これは「事故当初から存在する未処理の瓦礫や地表等に沈着した放射性物質からの寄与は含めないとの考え方」に基づくと説明しています(原子力規制庁技術参与 近藤・平山・鈴木「福島第一原子力発電所における放射線管理に関する検討課題」,2014.7.7)。

 これらによれば、原子力規制委員会は、福島第一原発の敷地境界線量を、(a)「事故当初から存在する未処理の瓦礫や地表等に沈着した放射性物質からの放射線による実効線量」、(b)「発災以降発生した瓦礫や汚染水等(施設全体からの放射性物質の追加的放出を含む)による実効線量の評価値」の2つに分け、線量告示の敷地境界線量を評価する際には、(a)を除外し、(b)だけを考慮すればよいとしているかのように見えます。しかし、今回の数量告示の一部改定案によれば、「数量告示第24条の規定により、実効線量の算定から除外できるものは診療及び自然放射線による被ばくのみとなっている。」のであって、線量告示の敷地境界線量評価においても、上位規定の原子炉等規制法規則第二条に「放射線」とは「自然に存在するもの以外のものをいう」と明記されていることから、(a)を除外するのは線量告示違反であることは明白です。つまり、線量告示の敷地境界線量は(a)と(b)の合計からなるのであり、これが1ミリシーベルト/年を超えていれば、線量告示違反であり、敷地境界線量をさらに増やすような廃炉・汚染水対策については、それを講じてはならないことになるはずです。

 地下水バイパスやサブドレン・地下水ドレンの運用方針に基づく海洋放出は、地下水の流れを抜本的に変えるための土木工事を採用せず、成否不明の凍土遮水壁にこだわった汚染水対策の下で、地下水の建屋への流入が増え続けたことへの緊急避難措置として導入されましたが、今回のトリチウム汚染水の海洋放出は緊急避難措置とは到底言えず、法令違反の上に法令違反を上塗りするものだと言えます。ちなみに、地下水バイパスは2014年5月開始、サブドレン・地下水ドレンは2015年9月開始ですが、いずれの場合も、敷地境界モニタリングポストMP-7の実測値から自然放射線約0.35ミリシーベルト/年を除いた敷地境界線量「(a)+(b)」は20ミリシーベルト/年程度および15ミリシーベルト/年程度であり、東京電力による(b)の評価値も約10ミリシーベルト/年および約1.5ミリシーベルト/年でした。つまり、敷地境界線量は(a)を除外しても線量告示の1ミリシーベルト/年の制限値を超えていたのであり、明らかに違法状態ではありましたが、緊急避難的に福島県民、とりわけ、福島県漁連が苦渋の決断で受け入れを余儀なくされたものでした。にもかかわらず、東京電力は2016年3月末に(b)の評価値が0.96ミリシーベルト/年と1ミリシーベルト/年未満へ下がったことから、第2回多核種除去設備等処理水の取扱に関する小委員会(2016.12.16)で、線量告示違反ではなかったかのように説明していますが、お門違いも甚だしいと言えます。

 今回の数量告示一部改定案においては、分析研究施設による敷地境界線量の評価においては、(a)も(b)も除外してよいとの扱いですが、「福島第一原発敷地内の放射線施設」に限定された特例措置だとは言え、「診療及び自然放射線による被ばく以外の人工の放射性物質からの被ばく」を制限するという数量告示および線量告示の趣旨をねじ曲げ、骨抜きにするものです。これがまかり通れば、(a)+(b)の敷地境界線量が1ミリシーベルト/年を大幅に超えていても黙認することになり、敷地境界線量のさらなる増加を容認することになってしまいます。このような改正案は撤回し、違法状態の早期解消を求め、新たな対策による敷地境界線量の増分を事故前の自然放射線レベルの変動幅未満に抑えるとか、敷地境界線量遵守のより厳しい改正案とすべきです。

<意見その3>

原子力規制委員会は、福島第一原発敷地内が事故による原子力災害のため1ミリシーベルト/年をかなり超える現存被ばく状況にあり、「公衆被ばくではこれを線量限度の対象外にできる」との国際放射線防護委員会ICRP の1990年勧告・2007年勧告を引用していますが、それは現行法令にはとり入れられておらず、そのような扱いをすることは法令違反になることを認めています。ところが、数量告示の一部改正案では、まさに現存被ばく状況による放射線を敷地境界線量から除外することになっており、断じて認められないことについて下記に意見を述べます。

原子力規制庁は「放射線を放出する同位元素の数量等を定める件(数量告示)第24条の改正方針についての検討結果」(2020.11.11)において、公衆被ばくに関する国際放射線防護委員会ICRPの1990年勧告の一部、すなわち、「住居内及び屋外のラドン、既に環境中に存在する自然または人工の放射性物質は、介入によってのみ影響を与えることのできる状況の例である。それゆえ、これらの線源からの線量は、公衆被ばくに関する線量限度の範囲の外である。」との考えを引用して、「福島第一原発における既に環境中に存在する人工の放射性物質からの線量は、公衆被ばくに関する線量限度の範囲の外である一方、職業被ばくには含めることになると考えられる。」との判断を示し、「数量告示第24条について、『対象とする放射線施設で取り扱う放射性同位元素等から発生する放射線による被ばくについて算出する』という趣旨の規定とする場合には、公衆被ばくを想定して定めた線量の基準と職業被ばくを想定して定めた線量の基準を分類し、公衆被ばくを想定して定めた線量の基準に限定して行う必要がある。」としています。ところが、現行法令では「診療を受けるための被ばく及び自然放射線による被ばくを除くと規定」していて、「明示的に『職業被ばく』と『公衆被ばく』を区別しているわけではない」こと、さらに、「この分類を行うに当たっては、各規定の制定過程における議論の経緯や背景などを確認した上で、現時点における考え方を各規定ごとに整理する必要があるとともに、原子炉等規制法を含む他法令にも同趣旨の規定があることから、放射線審議会に諮問し、関係する技術的基準の斉一性の観点からの審議を経る必要があると考えられる。こういった作業については、相当の時間を要すると考えられる」ことに懸念を示し、今回の数量告示の一部改正については、福島原発敷地内に限定した放射線施設の遮蔽物に係る線量限度への特例的な規定に留めると結論づけています。

 この検討結果から明らかなことは、次の2つです。

 第1に、原子力規制委員会は、福島第一原発事故による放射能汚染を「現存被ばく状況」(ICRP1990年勧告を受けてICRP2007年勧告で示された新たな概念)として容認する方向を模索しているものの、現行法令では、公衆被ばくから除外できるのは「診療及び自然放射線のみ」であって「現存被ばく状況」による放射線は除外できないこと。

 第2に、現行法令を全面的に改定するとしても、公衆被ばくとは異なり、職業被ばくにおいては「現存被ばく状況」による放射線を除外できないため、公衆被ばくと職業被ばくを区別して規定する必要があるところ、それには長期の検討を要すること。

 つまり、数量告示の一部改正案では、福島原発敷地内の現存被ばく状況による放射線を敷地境界線量から除外しようとしていますが、それは、たとえ敷地内に限定した特例であっても、現行法令違反になります。もし、この改正案を強硬実施すれば、原子炉等規制法とその規則などの上位規定に反する規定を告示で導入することになり、違法な告示改定をなし崩し的に行うことになり、断じて認められません。

 さらに言えば、20ミリシーベルト/年未満という基準で避難指示を解除して1ミリシーベルト/年を超える汚染地域での住民の居住を認めた措置は、「現存被ばく状況による放射線の除外」を想定していない現行法令に違反していると言えます。この法令違反の避難指示解除についても即刻撤回し、たとえ避難指示が解除された場所に居住し続ける場合であっても、1ミリシーベルト/年の現行法令を遵守するため、公衆への被曝防護措置を強化・徹底すべきです。「人工の放射性物質による公衆被ばくを低減するための対策について、そのコストが便益よりも高ければその対策をとらなくてもよい」とは現行法令のどこにも規定されていないのですから。

「クリアランス規則等の制定案等に対する意見募集」へ2つの意見を提出しました

原子力規制委員会による「クリアランス規則等の制定案等に対する意見募集」(募集期間2020/3/12-4/10)へ4月9日に下記の2つの意見を提出しました。

意見募集要綱

クリアランス規則の制定案

クリアランス審査基準の一部改正案 新旧対照表

令和元年度第69回原子力規制委員会資料3

—– 意見(1) ————————————————

クリアランス新規則は、現行規則と同様に、IAEAのGSR Part 3 のクリアランスレベルの設定法とその値をそのまま受け入れ、拡張しようとしているが、クリアランスレベル設定の評価基準および設定法に大きな問題点があり、今回の規則改定を機に、少なくとも新規則案の値を1桁以上小さくした値をクリアランスレベルの値とすべきである。 その理由は、次の二つである。

 第1に、評価基準の10μSv/年は1985年のICRP Pub.46のリスク評価に基づいており、当時よりリスクが10倍(ないし5倍)と評価される現状では、評価基準を1μSv/年(ないし2μSv/年)にすべきであり、結果として、1桁小さくすべきである。

 第2に、IAEAのクリアランスレベル設定法は旧原子力規制委員会による決定グループに対する最悪シナリオに基づく設定ではなく、放射性廃棄物の国際流通を前提として、国による地理的・文化的・生活習慣の違いを捨象した包括的なシナリオを用いており、日本にそのまま適用すれば国際的な平均レベルを超えた被曝がもたらされる危険があり、この面からも1桁以上厳しくすべきである。

以下、これらについて詳しく述べる。

<第1の理由>  ICRP Pub.46(1985年)では、ICRP Pub.26(1977年勧告)のリスク評価に基づき、「年あたり10^-6以下のオーダーの年死亡確率は,個人が自分のリスクに影響があるかもしれない行動を決定するさいに考慮されないことを示していると思われる。」「このリスクレベルは100μSvのオーダーの年線量に相当する。」(83)とし、被曝によるガン・白血病等による死のリスクを「10^-2/Sv」と評価している。さらに、「規制免除されたいくつかの線源から一人の個人が受ける年線量の合計は,最も大きな個人線量を与える一つの免除された線源からの寄与分の10倍よりも低いことはほとんど確実であると考えられる。したがって,この観点は,年個人線量の規制免除規準を100μSvから10μSvに減らすことによって考慮に入れることができるであろう。」(84) つまり、「10μSv/年」の基準は死亡率10^-7/年に「10^-2/Sv」のリスク評価を適用して設定されたものである。

 ところが、ICRP Pub.60(1990年勧告)では「高線量・高線量率の低LET放射線に関する付属書Bのデータは,男女両性で就労年齢の基準集団における生涯致死確率係数が,全悪性腫蕩の合計について約8×10-2/Svであることを示している。この値を線量・線量率効果係数DDREF=2と組み合わせて,作業者に関する名目確率係数は4×10-2/Svとなる。子供を含む全集団についての対応する値は,高線量・高線量率の場合約10×10-2/Sv、低線量・低線量率の場合5×10-2/Svとなる。」(83)としており、リスクは「10×10-2/Sv(DDREF=2の場合5×10-2/Sv)」と10倍(ないし5倍)へ増えている。

 つまり、10^-7/年の死亡率に対応するのは10μSv/年ではなく1μSv/年(DDREF=2を考慮すれば2μSv/年)としなければならない。その結果、クリアランスレベルの値は1桁小さく設定しなければならない。

<第2の理由>  IAEAのGSR Part 3 のクリアランスレベルの設定法はIAEAのSRS No.44の方法に基づいている。それは、決定グループに対する最悪シナリオでの被曝量を10μSv/年に抑える放射能濃度としてクリアランスレベルを設定した旧原子力安全委員会の方法とは根本的に異なり、クリアランスされた放射性廃棄物が国際流通されることを念頭に置き、国による地理的・文化的・生活習慣の違いを捨象した包括的なシナリオを用い、「現実的」なパラメータ値を設定して算出されたものであり、低発生確率のパラメータ値の下でも、1mSv/年を超えないこと、および皮膚線量が50mSv/年を超えないことを確認して得られる値とされている。さらに、「0.3~3を1とする」方法で丸めているが、これでは、最悪の場合、算出濃度が3.3(=10/3)倍に緩和される。

 旧原子力委員会によるクリアランスレベルの再評価結果と比べると、トリチウムやSr-89、Sr-90、Ni-59、Cm-242、243および244など重要な核種で規制が緩和されることになる。とくに、Cl-36とCm-243は0.3が1へ、Ni-59では30が100へ、Cm-242では3が10へ丸められているが、1桁小さくすべきところである。にもかかわらず、「大部分の核種について1桁以内となっており、両者の値は、ほぼ同等であると言える」との旧原子力安全委員会の評価をそのまま妥当とするのは国民の生命・健康を軽視するものである。

—– 意見(2) ————————————————

放射能濃度についての確認を受けようとする物に含まれる放射性物質の放射能濃度の測定及び評価の方法に係る審査基準 新旧対照表(p.11左1~5行)について 「イ:放射能濃度確認対象物の汚染が表面汚染のみであって建屋コンクリートのように部材が厚い場合には、決定される放射能濃度が過小評価とならないように、適切な厚さ(5cm程度)に応じた当該対象物の重量をもとに放射能濃度の決定が行われていること」とあるが、「表面汚染のみ」または「表面汚染が支配的である場合」には、評価厚さ[cm]によって換算核種濃度[Bq/g]が異なることから、コンクリートを例にあげて「適切な厚さ(5cm程度)」としているが、核種濃度[Bq/g]と表面汚染[Bq/cm^2]を重畳的に規制する基準が必要ではないか。特に、金属表面汚染とコンクリート表面汚染とでは比重が異なるため(鉄7.85g/cm^3、コンクリート2.3g/cm^3、鉄筋コンクリート2.45g/cm^3など)、「適切な厚さ(5cm程度)」で、一律には表面汚染を濃度に換算できないはずである。

IAEAのSRS No.44でも「This aspect has been intensively considered in several studies relating specifically to the clearance of material from nuclear installations. For the purpose of the generic derivation of activity concentration values, however, such factors cannot be taken into account. Therefore it has to be recognized that for specific situations such as the clearance of metal or the reuse of buildings from nuclear installations, additional criteria relating to the surface contamination may have to be applied that are not reflected in the derived activity concentration values. This may lead to a decision of the regulatory body not to release some material even if the activity concentration values are not exceeded for the bulk quantity.」(SRS No.44, p.20)とされており、重量濃度規制とは別に表面汚染を追加的に規制すべきだとされ、重量濃度規制を満足していても表面密度規制を満足していなければクリアランスしてはならないと指摘している。

 たとえば、放射線管理区域からの物品持ち出し基準「ベータ・ガンマ核種に対し4Bq/cm^2未満」を満たす場合でも、核種濃度[Bq/g]=(表面密度[Bq/cm^2]×対象面積[cm^2])/(評価厚さ[cm]×対象面積[cm^2]×密度[g/cm^3])の換算式で評価厚さを5cmとすれば、表面密度4Bq/cm^2は、鉄の場合0.10Bq/g、コンクリートの場合0.35Bq/gの核種濃度に換算されてしまう。I-129のクリアランスレベルは0.01Bq/gだから、I-129の表面密度が4Bq/cm^2未満でもクリアランスされないが、Co-60のクリアランスレベルは0.1Bq/gなので、鉄でCo-60の表面密度が4Bq/cm^2未満でも、「5cm弱」ではクリアランスされず、「5cm強」でクリアランスされる可能性がある。

つまり、「適切な厚さ(5cm程度)」の根拠が曖昧であり、これでは表面汚染を規制したことにはならない。  したがって、重量濃度だけでなく、重量濃度と表面密度の両方でクリアランスレベルを定めるべきである。

原子力規制委員会のパブリックコメントへ意見を3つ提出しました

原子力規制委員会のパブリックコメントへ意見を3つ提出しました

原子力規制委員会による「原子力発電所敷地内での使用済燃料の貯蔵に用いられる兼用キャスクに係る関係規則等の整備及びこれらに対する意見募集」(2018.12.6~2019.1.4)へ提出した意見は以下の通りです。

<意見その1>
原子力発電所敷地内での輸送・貯蔵兼用乾式キャスクによる使用済燃料の貯蔵に関する審査ガイド(案)p.20の「4.7 設計貯蔵期間」には「【審査における確認事項】設計貯蔵期間は、設置(変更)許可申請書で明確にされていること。【確認内容】設計貯蔵期間は、当該設計貯蔵期間中の兼用キャスクの安全機能を評価するに当たり、材料及び構造の経年変化の考慮を行うための前提条件となるため、設置(変更)許可申請書で明確にされていること。」とあるが、「中間貯蔵」とは名ばかりで、電力会社の「想定」している50年を超える貯蔵が避けられない可能性もある。ところが、設計貯蔵期間を超える貯蔵が必要になった場合の措置が明記されていない。設計貯蔵期間を超える可能性がある以上、設計貯蔵期間に至る何年前に再申請するとかの措置を明記すべきではないか。
また、乾式キャスクやそこに収納された使用済燃料の健全性はシミュレーション計算や加速実験によるものにとどまり、様々な照射・運転履歴をもつ、個々の使用済燃料についての50年以上の長期間に及ぶ実験データは存在しない。したがって、乾式キャスクの取替が必要になった時点で、収納された使用済燃料の実状がキャスク取替に耐えうる状態にあるという具体的な保証や実物検証をどのように行うのかについても明記すべきである。
さらに、設計貯蔵期間が50年以上の超長期に及ぶ場合、それを維持管理すべき電力会社等が経営体として存続しない場合も考えられる。超長期に及び乾式貯蔵能力をどのように評価するのか、明記すべきであろう。
原子力発電所敷地外での貯蔵については、審査ガイド案が提示されていないが、敷地内外で、どのような点が異なるのか。

<意見その2>
原子力発電所敷地内での輸送・貯蔵兼用乾式キャスクによる使用済燃料の貯蔵に関する審査ガイド(案)p.12の「4.2.4 その他の外部事象」の「火山立地評価」において、「新規制基準(平成25年7月及び同年12月の改正原子炉等規制法の施行に伴い改正された規則等をいう。以下同じ。)への適合性審査を経ていない発電用原子炉施設において、新規制基準の施行時に既に存在していた使用済燃料を使用済燃料貯蔵槽から兼用キャスクに移し替えることは、施設の維持・管理上の安全性を高めるものであり、当該移替えのための兼用キャスク設置に係る設置変更許可に当たっては、火山の立地評価は不要とする。」とあるが、乾式キャスクの自然冷却が火山灰で長時間阻害された場合には、プール貯蔵の場合とは異なり、キャスク内外の温度が制限値を超える場合もあるから、その対策を審査すべきではないか。

<意見その3>
実用発電用原子炉及びその附属施設の位置、構造及び設備の基準に関する規則の解釈(原規技発第1306193号(平成25年6月19日原子力規制委員会決定)の第16条第5項に「また、上記第1項から第4項までの基準を満足するため、兼用キャスクは、当該兼用キャスクを構成する部材及び使用済燃料の経年変化を考慮した上で、使用済燃料の健全性を確保する設計とすること。ここで、「兼用キャスクを構成する部材及び使用済燃料の経年変化を考慮した上で、使用済燃料の健全性を確保する設計」とは、以下を満たす設計をいう。
・設計貯蔵期間を明確にしていること。
・設計貯蔵期間中の温度、放射線等の環境条件下での経年変化を考慮した材料及び構造であること。」
とあるが、設計貯蔵期間を超えた場合には、乾式貯蔵の操業停止命令を出すことになるが、監視作業が主体の乾式貯蔵では、安全対策上、監視をやめるわけにはいかないから、具体的には乾式貯蔵からプール貯蔵へ戻す命令、もしくは、変更申請による設計貯蔵期間の延長または再申請による新たな乾式キャスクへの収納物入替えが必要になるが、いずれも規定されていない。
 プール貯蔵へ戻す場合には、設計貯蔵期間にわたってプール貯蔵へ戻せる状態を保持することが必要であり、その性能要求の規定が不可欠である。
 設計貯蔵期間を延長する場合には、当初の設計貯蔵期間終了時点での現物のキャスクの健全性を確認できることが前提だが、上蓋やシールは交換できても、キャスク本体の補修は不可能であり、非破壊検査だけでは、その健全性を確認できないのではないか。
 また、新たな乾式キャスクへの収納物入替えに際しては、プール貯蔵へ戻す場合と同様に、当初の設計貯蔵期間にわたって新たな乾式キャスクへの入れ替えが可能な状態を保持することが必要であり、その性能要求の規定が不可欠である。