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「電気事業会計規則等の一部を改正する省令」が10月1日施行

「電気事業会計規則等の一部を改正する省令」が2013年10月1日に施行されました。

今回の省令改正は異常なスピードで施行されました。

ワーキンググループでの議論は6月25日~8月6日の1ヶ月半、意見募集は8月10日~9月9日の1ヶ月間、意見募集締切から3週間後の9月30日には、出された意見に対する「考え方」を示すと同時に最終報告書を公表し、翌日(10月1日)には省令改正を施行、検討開始からわずか3か月です。 この間、国会での審議は全くなく、原発・核燃料サイクル政策の議論とは全く無関係に省令改正が強行されたのです。

その内容は次の通りです。

(1)これまでは運転停止(廃炉)時に廃炉費積立不足金があれば、その年度内に不足金を全額積立てなければなりませんでしたが、今後は、積立不足金を運転停止後も10年間、毎年一定額で積立てられるようにする(廃炉にならない原発も運転開始から50年間に定額で廃炉費を積立てる)。

(2)これまでは運転停止時に廃炉となる原発の関連資産を「固定資産除去費」として費用計上しなければなりませんでしたが、今後は、廃炉に必要な資産や維持管理する必要のある資産についてはこれまで通りに減価償却を継続できるようにする。

この結果、例えば、福島第一原発5・6号について今年度廃炉手続きをとれば、東京電力は廃炉費積立不足金266億円、資産の残存簿価1,564億円、合計1,830億円を一括費用計上しなければなりませんが、今回の省令改正により、積立不足金は10年間、毎年26.6億円ずつ電気料金から回収でき、残存簿価の大半は残りの減価償却期間中(通常15年間)、減価償却を継続できるのです。つまり、1,830億円のうち1,500億円程度(推定)は電気料金に転嫁できるのです。

敦賀2号が廃炉になるとすれば、廃炉費積立不足金237億円、資産の残存簿価720億円、合計957億円を日本原子力発電が一括費用計上すべきところ、今後約10年間に700億円程度(推定)を関西電力、中部電力、北陸電力の3社から「売電料金」として受け取れることになります。そのため、これら3電力管内の電力消費者は「受電なき電力購入費」を支払い続けることを強制されるのです。

若狭ネットニュース(pp.16-17)

廃炉に係る会計制度検証ワーキンググループ報告書

意見募集の結果

電気事業会計規則等の一部を改正する省令

「原子力発電所の廃炉に係る料金・会計制度の検証結果と対応策(案)」の意見募集へ応募

「原子力発電所の廃炉に係る料金・会計制度の検証結果と対応策(案)」の意見募集に対し3件の意見を提出しました。この「対応策案」は原発の廃炉時点で積立不足になった廃炉費を廃炉決定後に電気料金に転嫁して回収できるようにするというもので、「受電なき料金支払い」になり、商品交換の原則に反します。また、廃炉時点で原発関連資産を特別損金処理するのが普通ですが、これも一部を除く資産を損金処理せず、廃炉決定後に電気料金に転嫁して回収できるとしています。本来、電力会社等がかぶるべき積立不足金や特別損金を電力消費者に押しつけようとするものです。対応策案では制度はつくるが実際に電力消費者に転嫁するかどうかは電力会社次第だと逃げ道を作っていますが、発送電を分離せず、電力独占状態を維持したままでは、電力会社は確実に電力消費者に転嫁するでしょう。こんな理不尽なことは許せません。

詳しくは、以下の意見をご覧下さい。(「対応策(案)」はこちら

<意見その1>

該当箇所:「発電と廃炉は一体の事業」(p.8)および「廃止措置を完遂するまでが電気事業の一環」(p.9)

意見の具体的説明:「発電と廃炉は一体の事業」(p.8) および「廃止措置を完遂するまでが電気事業の一環」(p.9)というのは、原子力事業者が廃炉や使用済核燃料の「貯蔵・処理・処分」を含めたバックエンド事業についても責任を有するという責任範囲を規定するものとしては正しいが、運転終了後に廃炉費等を電気料金に転嫁する理由とするのは「商品交換の原則」に反する。

理由:電気料金は、電気を購入した対価として支払われるものであり、電力消費者にあらかじめ料金単価が示されている。廃炉になった原発はもはや商品たる電気を生み出すことができない。廃炉になった原発からは電気を購入しないにもかかわらず、当該原発の廃炉費等が料金原価に計上されるというのは商取引の原則に反する。発電と廃炉が一体の事業であるというのであれば、運転停止までに廃炉費等の全額を料金原価として計上しておくのが筋である。 「原子力発電所の廃炉に係る料金・会計制度の検証結果と対応策(案)」(以下「対応策案」)では「廃炉」は「原子力発電施設解体」のみを指しているようだが、解体撤去するには放射性廃棄物の処分場が不可欠である。福島第一原発事故による除染放射性廃棄物の処分場すら決まらない状態で、また、東海第一発電所の解体作業が放射性廃棄物の敷地内埋設に関する地元合意が得られないため停止している状態で、解体撤去の見通しは立っていない。結局、高線量の原子炉および原子炉建屋については解体できずに密閉管理し続ける以外にないのではないか。そうなれば、原子力発電施設解体引当金総額の算定根拠が崩れ、より長期間の廃止措置が不可欠になり、より多くの費用がかかることになろう。この費用も廃炉費として原子力事業者に積立てることを義務化しなければならない。 また、使用済核燃料も再処理工場へ搬出すれば終わりと考えているようだが、六ヶ所村再処理工場が操業せず、第二再処理工場も建たないというのがより現実的であり、使用済核燃料の超長期安全貯蔵管理が避けられない。したがって、巨額の再処理引当金そのものの取り崩しを含めて、廃炉措置のあり方そのものを使用済核燃料の「貯蔵・処理・処分」を含めて全面的に見直すべきであろう。とくに、「対応策案」でも、「原子力発電の特殊性として、ひとたび発電を開始すれば、運転終了後も一定期間にわたって放射性物質の施設外への拡散防止や遮へいなどの安全機能の維持が必要という点がある。また、廃止措置は原子炉等規制法に基づく原子炉設置者の義務とされており、義務を履行できないと想定される場合には、法律的にも社会的にも発電事業を継続していくことは困難と考えられる。」(p.7)としている。極めて危険な膨大な量の放射性物質が詰まった使用済核燃料の安全な「貯蔵・処理・処分」法が確立していない中では、原子力発電そのものを継続することは認められないはずである。廃炉に係る会計制度を議論する場合には、このような原発・核燃料サイクルをトータルに見る観点から議論すべきである。

<意見その2>

該当箇所:「運転終了後も減価償却費を料金原価に含め得ることとする」(p.9)および「(1)原子力発電設備の減価償却制度」(pp.11-12)

意見の具体的説明:運転終了後の解体作業前の貯蔵期間に必要な設備の減価償却費(p.9)については、原子力発電施設解体引当金の総額に算入して、当該原発の運転期間中に料金として回収するのが筋である。

理由:「廃止措置中も電気事業の一環として事業の用に供される設備」は商品たる電気を生み出さない。売るべきものがないにもかかわらず、料金を回収するというのは商取引の原則に反する。むしろ、当該設備の廃止措置中に必要な設備の減価償却費も原子力発電施設解体引当金の総額に算入し、発電期間中に回収するのが筋である。そうでなければ、廃止措置前の原子力発電原価が過小評価されることになり、原発以外の電源で電力市場に参入している事業者に対し不公平である。もっとも、発電停止以後の廃止措置中は発電に寄与しない原発が原価増に寄与することになるが、電力市場が完全自由化されていない現状では、電力消費者が当該原発による電気を購入しないにもかかわらず当該原価を支払わされることになり、消費者保護の観点から問題である。逆に言えば、電力独占状態が解消された完全自由化市場では、「対応策案」のような会計処理を行えば、原子力発電単価が高くなり、原発は他電源との競争力を失うことになろう。つまり、今回の「対応策案」は電力市場が完全自由化されておらず電力会社による地域独占状態が維持されていることを前提としてはじめて成立つ弥縫策に過ぎず、自由な商品交換を前提とした健全な会計制度とは到底言えない。「対応策案」を導入するのであれば、発送電を分離して中立な送電網管理ができる体制整備し、九電力会社を解体して電力市場の地域独占を廃止し、家庭を含めた電力市場の完全自由化を断行すべきである。そうすれば、「老朽化した炉でも、あくまで動かすと強弁し続けると料金に乗り、廃炉にするというと料金に乗せられなくなるので、廃炉と決断することがしにくくなるという歪んだインセンティブを取り除かなくてはいけない。」(旧第1回WG議事要旨)というような事態も自然と解消される。このようなインセンティブが働くのは会計制度に問題があるからではなく、このようなエゴイスティックな料金設定を行えるような電力独占状態があるからにほかならない。 たとえば、敦賀1・2号が廃炉になった場合、これらの原発が全く電力を供給しないにもかかわらず、関西電力、中部電力、北陸電力の電気料金原価に廃止措置中の設備の減価償却費や廃炉積立て不足金が計上され、各管内の電力消費者が選択の余地なくこれらを支払わされることになる可能性が出てくる。これは商品たる電気を供給することなく料金を徴収する詐欺的行為そのものであり、商取引に関する法令違反ではないか。 「対応策案」では福島第一原発1~4号の廃止措置中に必要となる新たな設備で中長期ロードマップに記載されていない設備については、その減価償却費を東京電力の原子力発電原価に計上できるとしているが、そもそも事故を起こした責任は東京電力にあり、東京電力と金融機関等投資者が負担すべきものである。この負担を電力消費者に転嫁するのは商品交換の原則に反する詐欺的行為であり、それを強行するというのであれば、それを正当化するための法的根拠を示すべきである。 また、東京電力の支払うべき損害賠償費や除染費を原子力損害賠償支援機構が資金援助でサポートしており、その全額を東京電力からの特別負担金や電力会社等からの一般負担金で回収することになっている。しかし、一般負担金は電気料金に転嫁され、電力消費者が支払わされている。ところが、原子力損害賠償支援機構法(2011年8月)には、これら負担金の納付義務は原子力事業者に課せられており、電力消費者に課されているわけではない。電力消費者には何の説明もなく、電気事業会計規則がこっそり改悪され、費用項目にこれらの負担金が計上され、電気料金に転嫁されている。原子力災害を起こしてもその損害賠償費等をそっくり電気料金で回収できるとすれば、原子力事業者に極めて大きなモラルハザードを引き起こす。汚染水対策が後手・後手に回っているにもかかわらず、まるで人ごとのように振る舞っている現在の東京電力の姿勢はまさにその結果ではないのか。この際、原子力損害賠償支援機構負担金(特別負担金と一般負担金)を電気料金の費用項目から削除すべきである。もし、これを残して、さらに、廃止措置中に必要な設備の減価償却費や廃炉費等の積立不足金を発電停止後に費用計上することを認めるのであれば、電力会社等に代わって電力消費者が電気料金原価として支払わねばならないという法的根拠を明確にすべきである。

<意見その3>

該当箇所:「運転期間40年に安全貯蔵期間10年を加えた50年を原則的な引当期間とする」」(p.10)および「(2)原子力発電施設解体引当金制度」(pp.12-13)

意見の具体的説明:原子力発電施設解体引当金制度を定額法に変えるのはよいが、「運転期間40年に安全貯蔵期間10年を加えた50年を原則的な引当期間とする」のは、商取引の原則に反する。運転中に引当を完了することを原則として「引当期間30年の定額法」とし、すでに30年を超えている場合や総額に変更があった場合には、例外として「10年を上限として運転期間中の引当期間延長を認める」定額法にすべきである。

理由:原子力発電施設解体引当金は、廃炉費総額を見積もり、運転期間40年で回収することを想定しており、設備利用率が76%より高ければ40年より早く回収でき、設備利用率が低ければ40年後も回収できない仕組みになっている。それを前提として、料金原価に計上されてきたのであり、運転期間40年を過ぎても積立不足が生じているのは原子力事業者の責任である。この点を曖昧にすると、pp.9-10の注釈に記されているようなモラルハザードが引き起こされる。もっとも、設備利用率を76%に設定して生産高比例方式としたのは危険な運転を奨励するおそれがあり、定額法にするのは妥当である。ただし、原発はそもそも立地時に30年が寿命だと立地点に説明してきた経緯があり、40年ではなく30年で回収すべきである。すでに30年を超えている原発については40年で回収するのもやむを得ないが、運転期間中に回収すべきであり、発電を停止した後に料金から回収するのは詐欺である。発電を停止した後に電気料金原価として積立不足金を回収できるというのであれば、そのような詐欺的行為を正当化できるという法的根拠を示すべきである。

若狭ネット資料室を開設

今年(2013年)5月に若狭ネット資料室を開設しました。設置場所は大阪府堺市ですが、福井県にも分室と言える、いくつかの活動拠点があります。室長には長沢啓行大阪府立大学名誉教授が就任しています。今後は、若狭ネットの取り組む脱原発の諸課題に理論的側面から取り組み、その活動をサポートしていく予定です。脱原発の課題は技術面だけでなく、コスト面やヒトの生き方を含めた総合的なものであり、とても少人数では取り組めません。すでに長年の活動経験豊富な方々だけでなく、これからの社会を作り上げていく若い世代の参加が不可欠です。脱原発に何か取り組んでみようと思っている皆さん、とりわけ若い皆さんの知恵と感性を持ち寄ってください。どんな課題からでも始められます。活動経験も不要です。意欲さえあれば、歓迎しますので、若狭ネット資料室までご一報ください。